文献詳細
SCOPE
医療の質を高める臨床研究の実現を目指して―日本製薬医学会の「臨床研究に関する提言」
著者: 今村恭子1
所属機関: 1一般財団法人日本製薬医学会(JAPhMed)
ページ範囲:P.334 - P.337
文献概要
2009年12月5日,第30回日本臨床薬理学会のシンポジウム14「大規模臨床試験の基盤整備:ルール・ファンド・利益相反」にて,澤田らは心血管イベントを真のエンドポイントとして行われた被験者数300人以上の119臨床試験について,スポンサー(試験の実施者)を対象にしたアンケート調査の結果を発表した1).それによると,研究費の提供者としては「財団」が25試験(39.7%),「公的機関」が21試験(33.3%),製薬企業等の「私的機関」が13試験(20.6%),「自己調達」が10試験(15.9%)であった(「薬事日報」2009年12月9日朝刊より).一方,財団の資金源としては,回答があったすべての16試験が私的機関からの資金提供を受けており,実際には約半数の試験が製薬企業等の支援によって行われている実態が報告された.
昨今,研究者の利益相反が社会の注目を集めるようになり,研究の実施や成果の公表に際しては利益相反の申告が必要となってきている.さらに,厚生労働省告示で2009年に施行された「臨床研究に関する倫理指針」2)にある通り,優れた臨床研究は医療の質を高めるうえで重要な役割を果たすだけに,適切な試験の管理や人材育成が焦眉の急であることは言うまでもない.
今回,こうした臨床研究の現状と課題について製薬医学(Pharmaceutical Medicine)の観点から考察し,今後の改善策と期待をまとめた.
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