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文献詳細

雑誌文献

medicina47巻4号

2010年04月発行

文献概要

連載 外来診療に差をつけるコミュニケーションスキル・7

家族に付き添われた患者とのコミュニケーション:相手は患者か家族か

著者: 木村琢磨1

所属機関: 1国立病院機構東埼玉病院総合診療科

ページ範囲:P.720 - P.724

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事例紹介●娘と来院した高齢男性

88歳の男性.これまで医療機関にかかったことはないが,最近食が細くなり,心配した娘に付き添われて外来を受診した.

医師 「こんにちは,今日はどうなさいましたか?」

患者 「自分では心配していないんですが,娘がどうしてもと言うもんですから参りました」

医師 「どういうことでしょう?」

患者 「元々,食は細いほうなんですが,そうそう,いつだっけ,この前は吐き気があったよな?」(娘にゆっくり話しかけている)

患者はしっかりしているようだが,とてもゆっくりと話し,話の要領を得ない.カルテはどんどん積まれていく.手際よく診療しなくては…….

そんな医師の気持ちを悟ってかはわからないが,娘が話し始めた.

娘 「すいません.父がのろのろしていまして.実は……」

娘は,とても手際よく症状の経過を教えてくれた.

医師 「はーなるほど」「そうですか」

医師は,本人のほうを時々向いてはいたものの,いつのまにか,本人とほとんど話をせず,娘とばかりやり取りしたまま診療は終了となった.果たして,これでよかったのであろうか…….

参考文献

1)McDaniel SH, et al:家族志向のプライマリ・ケア.松下 明(監訳):個人の患者に対する家族志向のアプローチ,pp 40-50, シュプリンガー・フェアラーク東京,東京,2006
2)Brown JB, et al:Roles and influence of people who accompany patients on visits to the doctor. Can Fam Physician 44:1644-1650, 1998
3)Schilling LM, et al:The third person in the room;Frequency, role, and influence of companions during primary care medical encounters. J Fam Pract 51:685-690, 2002
4)Wolff JL, Roter DL:Hidden in plain sight;Medical visit companions as a resource for vulnerable older adults. Arch Intern Med 168:1409-1415,2008
5)Ishikawa H, et al:Physician-elderly patient-companion communication and roles of companions in Japanese geriatric encounters. Soc Sci Med 60:2307-2320,2005
6)Ishikawa H, et al:Patient contribution to the medical dialogue and perceived patient-centeredness;An observational study in Japanese geriatric consultations. J Gen Intern Med 20:906-910, 2005
7)Clayman ML, et al:Autonomy-related behaviors of patient companions and their effect on decision-making activity in geriatric primary care visits. Soc Sci Med 60:1583-1591, 2005
8)Ishikawa H, et al:Patients' perceptions of visit companions' helpfulness during Japanese geriatric medical visits. Patient Educ Couns 61:80-86, 2006
9)大坊郁夫:コミュニケーション・スキルの重要性.日本労働研究雑誌546:13-22, 2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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