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連載 外来診療に差をつけるコミュニケーションスキル・8
三者関係を診療に生かす①:家族を意識した患者とのコミュニケーション
著者: 木村琢磨1
所属機関: 1国立病院機構東埼玉病院総合診療科
ページ範囲:P.908 - P.911
文献購入ページに移動5歳の女児が,今朝から発熱と鼻汁があるため,母親に連れられて外来を受診した.医師は上気道症状が受診動機と考え,病歴聴取を手短に切り上げ身体診察を行って,母親へ説明を行った.
医師 「熱が出たのでお母様もご心配と思いますが,風邪のようですから大丈夫ですよ」
母親 「先生,風邪はあまり心配していないんです.実は昨日の朝,いすから落ちて頭を打ちまして……」
医師 「そうでしたか」
医師は,母親からの意外な返答に内心驚かされた.明らかな感冒症状で来院しても,解釈モデルや受診動機を診療の前半で確認しておくべきだったと反省した.その後,母親から頭部を打った際の様子を聴取したところ,「母親が目を離した隙にいすから床へ落ちて後頭部を打ったが,いすの高さも低いうえ,床には絨毯が敷かれていた」という.追加の身体診察では神経学的に異常を認めず,臨床的に問題ないと考えられた.ただし,なぜ,昨日ではなく本日受診したのかが気になり,医師は母親に尋ねた.
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