icon fsr

文献詳細

雑誌文献

medicina47巻6号

2010年06月発行

文献概要

今月の主題 酸塩基・電解質―日常で出くわす異常の診かた 処方で多くみられる電解質異常―症例検討とshort review

鉄静注製剤(含糖酸化鉄)による低リン血症

著者: 清水祐一郎1 福本誠二1

所属機関: 1東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科

ページ範囲:P.1068 - P.1071

文献購入ページに移動
症例検討

症例 43歳,女性.

主訴 背部痛.

家族歴 特記事項なし.

生活歴 機会飲酒.

現病歴 30歳時に月経過多で近医を受診し,子宮筋腫を指摘された.35歳頃から鉄欠乏性貧血が増悪,経口鉄剤を処方されたが,消化器症状の副作用のため継続できず,含糖酸化鉄の経静脈投与が開始された.ひと月に1~2回程度,40歳時の多いときには週1~2回の投与を継続していた.40歳時に子宮筋腫核出術を施行したが,鉄欠乏性貧血は持続し,含糖酸化鉄の投与も継続していた.43歳時,スキー中に転倒後,腰や股関節,膝などの骨痛が出現,近医整形外科で脊椎の多発圧迫骨折(第5~9,11,12胸椎,第1,5腰椎)が発見された.多発骨折の原因として,多発性骨髄腫や悪性腫瘍の多発骨転移,代謝性骨疾患が疑われ,精査により著明な低リン(P)血症(P 1.2mg/dl)が発見された.低P血症性骨軟化症の原因検索のため,当院に紹介受診となった.

 来院時低P血症に加え,尿細管P再吸収閾値であるTmP/GFR(tubular maximum for phosphate)が1.0 mg/dl(基準値2.3~4.3)と低下しており,その他の尿所見は異常を認めなかった.したがって,何らかの原因によるP利尿が,低P血症の原因と考えられた.来院時の血液検査所見を表1に示す.

参考文献

1)岡田光男,他:鉄剤の経静脈投与と低リン血症.医学のあゆみ117:21-24, 1981
2)Sato K, et al:Saccharated ferric oxide-induced osteomalacia in Japan. Endocr J 645:431-439, 1998
3)Endo I, et al:Clinical usefulness of measurement of fibroblast growth factor 23 in hypophosphatemic patients;Proposal of diagnostic criteria using FGF23 mesurement. Bone 42:1235-1239, 2008
4)Shimizu Y, et al:Hypophosphatemia induced by intravenous administration of saccharated ferric oxide;Another form of FGF23-related hypophosphatemia. Bone 45:814-816, 2009

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら