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雑誌目次

雑誌文献

medicina47巻9号

2010年09月発行

雑誌目次

今月の主題 虚血性心疾患―プライマリケアは内科医が担う

著者: 前村浩二

ページ範囲:P.1525 - P.1525

 虚血性心疾患の検査法や治療法は飛躍的に進歩し,患者の症状や予後の改善に大きく貢献しています.特に急性冠症候群の場合,冠動脈疾患の集中治療が可能な施設に迅速に搬送され,的確な治療を受けた際の救命率は向上しています.しかし,胸痛を訴える患者が最初から専門施設を受診するとは限らず,胸痛患者に対するプライマリケアにはすべての内科医が習熟しておく重要性が叫ばれています.胸痛を訴える患者の多くがかかりつけ医を受診しますが,虚血性心疾患の診療のコツをおさえ,再灌流療法など迅速な対応が必要な場合は,すばやく専門施設に搬送する必要があります.

 また,病院の救急外来には胸痛を訴えて受診する患者が多くいますが,内科医が当直として交代で対応する施設が多いと思います.胸痛患者の救急診療においてはASAPで表される4つの疾患,すなわちA:acute myocardial infarction(急性心筋梗塞),S:spontaneous pneumothorax(自然気胸),A:aortic dissection(大動脈解離),P:pulmonary thromboembolism(肺血栓塞栓症)を常に鑑別疾患に考えて診療にあたるとともに,心窩部痛など胸痛以外の訴えでも心筋梗塞の可能性があることを常に念頭に置く必要があります.

理解のための24題

ページ範囲:P.1661 - P.1665

Editorial

虚血性心疾患診療の最近の動向

著者: 前村浩二

ページ範囲:P.1526 - P.1528

ポイント

★日本人の狭心症は冠攣縮によるものが多い.

★急性冠症候群は不安定プラークの破綻による一連の病態であり,不安定狭心症,心筋梗塞,心臓突然死を含む.

★急性冠症候群の治療方針はST上昇型と非ST上昇型に分けて方針を立てる.

★急性心筋梗塞の救命率を上げるためには院内での治療のみならず,プレホスピタルケアの充実が必須である.

虚血性心疾患の基礎知識

虚血性心疾患の疫学

著者: 福原正代 ,   清原裕

ページ範囲:P.1530 - P.1533

ポイント

★一般住民では集団全体の虚血性心疾患(CHD)発症率に有意な時代的変化は認めない.

★肥満,高コレステロール血症,耐糖能異常など,代謝性疾患の頻度が急増している.

★現代の日本人では,メタボリックシンドロームはCHDの重要な危険因子である.

冠動脈プラークの病理

著者: 佐藤勇一郎 ,   浅田祐士郎

ページ範囲:P.1535 - P.1537

ポイント

★冠動脈病変には,破綻しにくい安定プラークと,破綻しやすい不安定プラークがある.

★不安定プラークは脂質成分に富み,線維性被膜の薄い病変で,プラーク破裂による急性冠症候群を起こしやすい.

★無症候性の冠動脈血栓形成も認めることがあり,動脈硬化の進展に関与する.

虚血性心疾患の診断

虚血性心疾患の病歴と症候

著者: 小出優史 ,   前村浩二

ページ範囲:P.1538 - P.1541

ポイント

★病歴聴取は医師の最も重要な技量であり,病歴のみで診断にたどり着くことも多い.

★診断は症候論的思考で多くの鑑別疾患を列挙してから絞り込んでいく.

★4つの致死的胸痛疾患の鑑別も行いながら,OPQRST2Aを利用する.

急性冠症候群の血液マーカー

著者: 大場崇芳 ,   栗原理 ,   清野精彦

ページ範囲:P.1542 - P.1545

ポイント

★心筋細胞傷害マーカーには,細胞質可溶性マーカー(CKMB,ミオグロビン,心臓型脂肪酸蛋白(H-FABP)と筋原線維マーカー(トロポニンT,トロポニンⅠ,ミオシン軽鎖がある.

★心室壁ストレスや虚血などの心筋ストレスに応じてBNP,NT-proBNPの血中濃度が上昇する.

★2007年に「心筋梗塞のuniversal definition」が発表された.

★高感度トロポニン導入により,より精緻で早期からの心血管疾患リスク層別化が期待される.

急性冠症候群の心電図検査のピットフォール

著者: 速水紀幸 ,   村川裕二

ページ範囲:P.1546 - P.1550

ポイント

★胸部症状がある患者では,急性冠症候群の心電図変化があると疑って読む.

★心電図は最低でも発作時・非発作時の2回,できればそれ以上記録し,比較する.

★エコーや生化学的マーカー,特に病歴は大いに参考にする.

虚血部位診断に有用な心エコー図

著者: 宇野漢成

ページ範囲:P.1551 - P.1554

ポイント

★虚血部位の心エコー診断には冠動脈の支配図の理解が必要である.

★超急性期の心筋虚血診断にはエコーが不可欠である.

★急性虚血と慢性虚血の心エコー像は違う.

冠動脈CT検査の進歩

著者: 陣崎雅弘 ,   田波穣 ,   栗林幸夫

ページ範囲:P.1556 - P.1559

ポイント

★冠動脈の有意狭窄の検出は,64列冠動脈CTにおいて感度90%程度,特異度は95%程度で,高い診断能を有している.

★狭窄度診断,プラーク性状診断,ステント内腔評価,重度石灰化病変などは今後の課題である.

★冠動脈CTのよい適応は,冠動脈奇形の診断,中等度リスクの胸痛患者,中等度リスクの急性冠症候群患者である.

虚血性心疾患の核医学検査

著者: 西村重敬

ページ範囲:P.1560 - P.1564

ポイント

★心臓核医学検査のなかで,負荷心筋血流シンチグラフィは,冠動脈狭窄病変の機能的重症度を描出,評価できる検査である.

★負荷心筋血流シンチグラフィは,虚血性心疾患の検査前有病率が中等度例に行うのが診断効率がよい.

★画像上,負荷欠損(誘発される虚血)が広範である例ほど,重症で予後不良である.

虚血性心疾患の救急診療

救急外来での初期診療

著者: 今井靖

ページ範囲:P.1566 - P.1571

ポイント

★患者の来院前からすでに情報収集は始まっている.症状,検査所見から速やかに急性循環器疾患の鑑別を行う.

★心電図,X線,エコー,血液検査など,一連の検査を迅速に行う.検査所見が陰性でも疑わしいときには経過観察を.

★急性心筋梗塞の初期治療としてMONA〔モルヒネ(M),酸素(O),硝酸薬(N),アスピリン(A)〕を忘れないようにする.

急性冠症候群への再灌流療法の実際

著者: 髙木拓郎 ,   中村正人

ページ範囲:P.1573 - P.1577

ポイント

★再灌流治療はSTEMIに対する最も重要な治療であり,本邦ではprimary PCIが主体で血栓溶解療法は少ない.

★施設ごとの状況により,door-to-needle time, door-to-balloon timeに応じた治療戦略を迅速にたてる必要がある.

★血栓溶解療法施行後もPCIが可能な施設へ速やかに移送することが推奨されている.

地域医療ネットワークの実際:東京都CCUネットワークの取り組み

著者: 高山守正

ページ範囲:P.1578 - P.1583

ポイント

★急性心血管疾患を発症後,迅速にCCUに収容するシステムである.

★東京都全体で67施設が加入し,毎年,収容患者の集計を行い,診療成績を公表している.

一般市民への救急蘇生法の普及活動

著者: 西山知佳 ,   石見拓

ページ範囲:P.1584 - P.1587

ポイント

★bystander CPRによって心停止例の救命率が向上するが,その実施割合は低い.

★AED使用により救命率向上が期待されるが,使用できる人を増やす必要がある.

★心原性心停止では,胸骨圧迫のみの心肺蘇生法は人工呼吸付きの蘇生法と同等の救命効果がある.

★胸骨圧迫のみの心肺蘇生法を活用して,bystander CPRを増やす取り組みが必要である.

虚血性心疾患の治療と管理

狭心症の薬物治療

著者: 辻田賢一 ,   海北幸一 ,   小川久雄

ページ範囲:P.1588 - P.1593

ポイント

★慢性虚血性心疾患の治療目標は,不安定狭心症,急性心筋梗塞への移行あるいは突然死を予防し,生命予後を改善することである.

★発作を抑制し,運動耐容能を増加させ生活の質を改善させるため,狭心症の病態・発症機序に応じた適切な薬物選択が重要である.

★心事故を予防し生命予後を改善する薬と,狭心症発作を予防し生活の質を改善する薬を使い分ける.

★禁煙や食事,運動などについて患者への教育および冠危険因子の是正が症状そのものに対する治療の前提である.

経皮的冠動脈インターベンションの実際

著者: 田辺健吾

ページ範囲:P.1594 - P.1597

ポイント

★血栓症・再狭窄といった経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の問題点を克服すべく進化してきている.

★植え込まれたステントがベアメタルステント(BMS)か薬剤溶出性ステント(DES)かによって,抗血小板薬を2剤投与する期間が異なるので注意を要する.

冠動脈バイパス術の進歩と展望

著者: 天野篤

ページ範囲:P.1598 - P.1602

ポイント

★on pump CABG:体外循環心拍動下も含むが,従来型CABGといえば心筋保護心停止下を示す.

★Yグラフト:グラフト同士の吻合で,Y字型として上行大動脈への中枢側吻合を省略する.

★左室機能と大動脈弁狭窄症:左室機能低下例では大動脈弁圧較差が過小評価されやすいので,血行再建後に再評価する.

心筋梗塞後の心臓リハビリテーション

著者: 長山雅俊

ページ範囲:P.1604 - P.1607

ポイント

★心臓リハビリテーションとは,運動療法が中心となるが,教育やストレス管理などを含んだ包括的な内容でなくてはならない.

★心筋梗塞後の心臓リハビリテーションは,再発予防を目的とした積極的な治療法の1つと考えるべきである.

★心臓リハビリテーションは,運動の禁忌がない限りあらゆる心疾患に適応があるということができる.

急性心筋梗塞の地域医療連携パスの実際

著者: 川本俊治

ページ範囲:P.1608 - P.1612

ポイント

★急性心筋梗塞地域医療連携パスは,4疾患5事業の地域医療計画の中核であり,急性期病院とかかりつけ医が分担して,心筋梗塞の二次予防を行うための共通ツールである.

★地域医療連携パスは,患者それぞれの冠リスクを明らかにして治療目標値を明示したもので,患者自身の治療参加による効果もあり,治療成績の向上が期待される.

虚血性心疾患患者への生活指導:禁煙の勧め

著者: 高橋裕子

ページ範囲:P.1613 - P.1617

ポイント

★禁煙治療は薬物療法が主体となっていて,成果を上げている.

★ニコチンパッチ(ニコチネルTTS®)に加えバレニクリン(チャンピックス®)も使用が認可された.

★無料のITサポート(禁煙マラソン保険治療版)など,院外のサポートを利用し,効率よく禁煙支援を提供いただきたい.

エビデンスに基づいた二次予防のための薬物療法

虚血性心疾患予防のための脂質管理

著者: 宮崎哲朗 ,   代田浩之

ページ範囲:P.1619 - P.1622

ポイント

★動脈硬化症の発症・進展には炎症が関与している.

★スタチンにはLDLコレステロール低下作用に加え,抗炎症作用が期待される.

★フィブラートは低HDLコレステロールおよび,高中性脂肪患者において,より効果が期待される.

★スタチンを用いる積極的脂質低下療法によるプラーク退縮が認められる.

★二次予防においては,積極的脂質低下療法が推奨される.

虚血性心疾患予防のための抗血小板薬の使い方

著者: 後藤信哉

ページ範囲:P.1623 - P.1626

ポイント

★抗血小板薬の介入により,25%程度の血栓イベントの予防が期待できる.

★抗血小板薬の介入により,出血性合併症リスクは増加する.

★抗血小板薬は血栓イベント低減効果と出血合併症増加のバランスにより適応が決まる.

心筋リモデリング予防のためのACE阻害薬/ARBの使い方

著者: 香山洋介 ,   吉村道博

ページ範囲:P.1627 - P.1629

ポイント

★梗塞後リモデリングは,発症早期の梗塞巣の伸展・拡大と発症後期の非梗塞巣の代償性肥大・拡大からなる.

★リモデリングの発症,進展においてレニン-アンジオテンシン系が重要であり,その抑制がリモデリング予防に重要である.

虚血性心疾患二次予防のためのβ遮断薬の使い方

著者: 大島一太 ,   山科章

ページ範囲:P.1630 - P.1634

ポイント

★β遮断薬には徐拍・降圧効果だけでなく,交感神経活性抑制作用による心筋保護や抗酸化作用による動脈硬化の進展抑制やプラーク破綻の抑制などを介した心血管イベントの抑制があり,労作性狭心症や心筋梗塞にはよい適応である.

★冠動脈疾患における予後改善効果は,β1選択性は影響しないが,内因性交感神経活性がない薬剤や脂溶性薬剤のほうが優れている.

★心筋梗塞においては,発症12時間以内の急性期投与だけでなく,慢性期投与の有効性も示されている.

臨床に役立つ最近のトピックス

再生医療,遺伝子医療の現状と展望

著者: 竹原有史 ,   高橋知三郎 ,   松原弘明

ページ範囲:P.1636 - P.1639

ポイント

★重症虚血性心疾患には,主に冠動脈バイパス術と細胞治療の併用が試みられている.

★自己心筋内心筋前駆・幹細胞の体外培養が可能となり,臨床応用が始まっている.

血管内画像検査の進歩と展望

著者: 辻岡洋人 ,   谷本貴志 ,   赤阪隆史

ページ範囲:P.1640 - P.1644

ポイント

★動脈硬化の進展過程において,急性冠症候群の発症を予測・予防することは非常に重要な課題である.

★急性冠症候群の責任病変となりうるプラークは,一般的に脆弱性プラーク(vulnerable plaque)と呼ばれるが,その診断にあたってはプラークの大きさなど量的診断のみならず,プラークの組織性状や線維性被膜の厚さなどを含めた質的診断が重要である.

★血管内画像検査の進歩により,冠動脈プラークの微細な構造の観察が生体内で可能となった.

微小血管狭心症

著者: 安田聡 ,   下川宏明

ページ範囲:P.1645 - P.1647

ポイント

★冠動脈には有意狭窄が明らかではないにもかかわらず,狭心症状を呈する患者(微小血管狭心症)は,男性よりは女性,特に閉経後に多い.

★冠循環における乳酸産生は,心筋虚血の最も鋭敏なマーカーであり,微小血管狭心症の診断において重要である.

★女性の微小血管狭心症の予後は必ずしも良好とはいえない.

座談会

虚血性心疾患診療における内科医と循環器専門医の連携

著者: 前村浩二 ,   伊苅裕二 ,   水野健彦 ,   假屋太郎

ページ範囲:P.1648 - P.1660

虚血性心疾患の検査法,治療法は進歩していますが,初診医の対応が遅れたために再灌流療法の時期を逃す例がまだみられます.また,CCUでの救命率は向上していますが,病院に到着するまでの死亡が依然として多く,発症後すぐに専門医のいる病院に搬送するネットワークの構築や,一般内科医や市民が救命処置できるような啓発活動が重要です.

本座談会では,一般内科医と専門医の連携の重要性について,特に心筋梗塞への初期対応,心筋梗塞後の二次予防を中心に,教育研修システムの話題にも触れながら,インターベンション専門医,開業医,専門研修医のそれぞれの立場からお話しいただきました.

REVIEW & PREVIEW

睡眠呼吸障害とメタボリック症候群の関係

著者: 陳和夫

ページ範囲:P.1680 - P.1683

最近の動向

 睡眠呼吸障害(sleep disordered breathing)中,閉塞型睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea:OSA)が最も多くみられます.中等・重症のOSA患者では有意に高血圧,脳卒中,心血管障害が多いことが明らかになっていますが,メタボリック症候群(metabolic syndrome:MetS)の予防・治療も脳心血管障害発症の予防を目標としています.このようにOSAもMetSも予防・治療することによって脳心血管障害の発症を低下させる可能性が考えられます.MetSの診断基準には種々ありますが,基盤としては肥満(特に腹部肥満)があり,高血圧,高血糖,高コレステロール血症,高中性脂肪血症の複数保持が基準となっています.OSAの発症にも肥満が最も大きな要因であり,両病態の脳心血管障害の多発は両病態の関連が注目される元になっています.

連載 手を見て気づく内科疾患・21

神経線維腫,神経線維腫症1型,レックリングハウゼン病

著者: 松村正巳

ページ範囲:P.1521 - P.1521

患 者:48歳,女性

病 歴:上行大動脈瘤,大動脈弁閉鎖不全の手術目的にて入院となった.

身体所見:両手に径0.5~2.0cmの柔らかく,圧痛のない腫瘤が多発している(図1).背部にも同様の腫瘤と,扁平,褐色の色素斑(カフェ・オ・レ斑)を認める(図2).

目でみるトレーニング

著者: 佐藤一也 ,   渡辺浩志 ,   宮良高維

ページ範囲:P.1666 - P.1672

研修おたく海を渡る・57

口が滑ってしまったときは?

著者: 白井敬祐

ページ範囲:P.1673 - P.1673

 思わず言うべきでないことを口走ってしまったとき,あるいは,相手の表情に自分が期待したのと違う反応を見たとき,あなたならどうしますか?

 今回は,ワークショップで教わったコミュニケーションのコツについてまとめてみたいと思います.

アレルギー膠原病科×呼吸器内科合同カンファレンス・6

関節リウマチ患者の胸水―自己免疫は膠原病から?呼吸器疾患から? それとも?

著者: 岡田正人 ,   仁多寅彦

ページ範囲:P.1674 - P.1677

後期研修医(アレルギー膠原病科) 今回は,関節リウマチに胸水を合併した患者さんですが,胸水の診断に関して意見が分かれた症例です.

 20年前から関節リウマチに罹患している67歳の女性です.当院に紹介受診となった3年前からは,サラゾスルファピリジンにメトトレキサートを追加し低疾患活動性(DAS28 2.9)のコントロールでした.しかし,お茶の先生で足首が痛いと正座ができないので困るとのことで,1年半前からインフリキシマブを開始され,その後は寛解状態を保たれておりました.今回の入院8週間前に左冠動脈前下行枝の急性心筋梗塞で循環器内科に入院しステントを留置されています.入院4週間前に38.3℃の発熱,咽頭痛,左胸部に“チクチク感”があり外来を受診されましたが,胸部X線,心電図検査では前回退院時と変化なく,上気道炎の診断でアセトアミノフェンを処方され解熱し症状もいったんは改善しています.しかし,入院1週間前に再度発熱37.8℃,左胸部のチクチク感,軽度の咳嗽が出現したため外来を受診なさり,胸部X線にて胸水貯留を認め入院となっています.

今日の処方と明日の医学・4

【ドラッグラグ】とは?

著者: 丸山浩 ,   日本製薬医学会

ページ範囲:P.1678 - P.1679

医薬品は,変革の時代を迎えています.国際共同治験による新薬開発が多くなる一方で,医師主導の治験や臨床研究などによるエビデンスの構築が可能となりました.他方,薬害問題の解析から日々の副作用報告にも薬剤疫学的な考察と安全対策への迅速な反映が求められています.そこで,この連載では医薬品の開発や安全対策を医学的な観点から解説し,日常診療とどのように結びついているのかをわかりやすくご紹介します.

外来診療に差をつけるコミュニケーションスキル・12

救急外来でこそ求められるコミュニケーションスキル

著者: 関義元

ページ範囲:P.1684 - P.1687

若手の総合内科医にとって,面接がきわめて基礎的な力であると気づくのは,定時の外来を担当するようになってからではないでしょうか.限られた時間とリソースの中で,効率よく,診療の質を担保して,患者との関係を上手に築いていくことができないと,外来日はかなり悲惨な結果となります.食事もままならない,夕方遅くまで終わらない,病棟ナースから嫌な顔をされる…….こうならないように,コミュニケーションスキルを鍛えませんか.

本連載は『コミュニケーションスキルトレーニング――患者満足度向上と効果的な診療のために』(医学書院,2007)を執筆した私たちの仲間が,テキストでは十分に紹介できなかったことも含めて,誰でもが修得できるテクニックや,回避できるピットフォールをご紹介します.ご期待ください.

The M&M reports 見逃し症例に学ぶ内科ERの鉄則・13

62歳男性 主訴 呼吸困難

著者: 長谷川耕平 ,   岩田充永

ページ範囲:P.1688 - P.1693

救急レジデントH:

 高血圧と冠動脈疾患の既往をもつ62歳男性が,蜂に刺された後の顔面腫脹,呼吸困難感で救急外来搬送となりました.

 趣味の庭いじり中にスズメバチに刺されたとのこと.以前にも「重症アレルギー」になったことがあり,すぐに救急車を要請.数分後には,唇と舌の腫脹,咽頭閉塞感,呼吸困難および掻痒感を伴う全身の皮疹が出現したとのことでした.

書評

―永井良三 監修 杉山裕章,今井 靖 執筆―個人授業 心臓ペースメーカー―適応判断から手術・術後の管理まで

著者: 山下武志

ページ範囲:P.1583 - P.1583

 「心臓ペースメーカー」という言葉はそれ自体が人を遠ざけてしまう傾向があるのではないだろうか?ペースメーカー適応患者の担当医となった研修医の頃,まったく理解できないことの連続,挙げ句の果て教授回診で頭が真っ白になった記憶が評者には残っている.当時1980年代後半,ペースメーカーのことを勉強するための書物は英語のテキストに限られ,さらにその本を開いたとたんに脳が拒絶してしまう「マニアもの」だった.

 20年あまり経ち,ようやくどんな読者でも受け入れてくれるペースメーカーの良書が上梓されたことを大変喜ばしく思う.著者の一人は杉山裕章先生,まだ30歳台前半の新進気鋭の若手である.彼は内科研修後,(財)心臓血管研究所付属病院でレジデントを3年間修める中で,不整脈,心臓電気生理学,不整脈デバイスを自らの専門に決めたという経緯があり,評者はその著しい成長ぶりを熟知しているつもりである.

―川久保 清 著―運動負荷心電図 第2版―その方法と読み方

著者: 井上博

ページ範囲:P.1635 - P.1635

 畏友 川久保清君の運動負荷心電図のテキストが改訂された.著者は運動負荷心電図を専門とし,また一般市民を対象としたメディカルチェックにも長らく携わってきた.その経験を基にまとめられたものが本書である.

 初版は2000年6月に上梓された.当時,そして現在も,運動負荷心電図に関する教科書で本書ほど実践的な内容を備えたものを評者は知らない.単著であるため,内容・記述が統一されていて,遺漏がない.多くの読者を得たとみえ増刷されること4回に及んでいる.初版は本文148頁のモノクロ印刷であったが,第2版では本文が163頁に増え2色印刷となった.初版で多くみられたSIDE MEMOの大部分が,第2版では本文として記載されており,2色化とあいまって読みやすくなった.初版より約10年が経過し,この間の進歩や新たなガイドライン,文献が追加されている.

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編集室より

著者:

ページ範囲:P.1704 - P.1704

●東京大学名誉教授の多田富雄先生が4月に逝去されました.ご冥福をお祈り致します.学生時代,免疫学に魅かれた友人に強く薦められたのが,多田先生のご著書『免疫の意味論』(青土社)でした.「自己・非自己の認識システム」から生命現象をとらえ,そのお考えをまとめられた本でしたが,当時,免疫学を学ぶ機会がなかったこともあり,内容が理解できず,読み終えることができませんでした.

●この仕事に就いて,多田先生のご論文やご講演に接する機会には残念ながら恵まれませんでした.脳梗塞で体が不自由になられ,リハビリに取り組みながら執筆活動を続けられていたことはご存じの方も多いかと思います.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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