文献詳細
書評
―喜舎場朝和・遠藤和郎 監修 谷口智宏 執筆―感染症ケースファイル―ここまで活かせる グラム染色・血液培養 フリーアクセス
著者: 藤本卓司1
所属機関: 1市立堺病院・総合内科部
ページ範囲:P.240 - P.240
文献概要
すべての症例が問題形式になっており,見開き2ページが問題に,3ページ目以降が解説にあてられている.問題文の右ページには検体のグラム染色写真が示されていて,読者は病歴,身体所見,初期検査のデータ,そしてグラム染色像を見ながら,「さあどうしよう?」と検査や治療の方針を考える,という仕様になっている.抗菌薬を始めるべきなのか,もし開始するならどの薬剤を選ぶのか,という判断にとどまらず,投与中の抗菌薬は効いているのか,続けてよいのか,変更すべきなのかなど,グラム染色の情報を基に考えを進めてゆく手順が丁寧に解説されている.そこでは感染症診療の基本事項や思考過程が症例ごとに省略されることなく何度も述べられていて,読者は症例をこなしながら繰り返して頭に叩き込むことができる.谷口先生の工夫を強く感じるのは抗菌薬の解説である.一つ一つの薬剤が症例に散りばめられて登場する.本をすべて読み終わってみると,いつの間にか抗菌薬もすべて勉強し終わっているという巧みな構成となっている.
掲載誌情報