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雑誌目次

雑誌文献

medicina5巻11号

1968年11月発行

雑誌目次

100万人の病気

慢性気管支炎—その概念と診断

著者: 西本幸男

ページ範囲:P.1286 - P.1299

 今日,世界各国の学者は,国際的に通用するものとして‘Fletcherの基準’によって慢性気管支炎を診断しようとする傾向にある.そこで,問診法・喀痰所見・X線所見など,Fletcherの基準による診断のさいの問題点を中心に述べたい.

座談会

慢性気管支炎の治療

著者: 本間日臣 ,   熊谷謙二 ,   長岡滋 ,   梅田博道

ページ範囲:P.1300 - P.1308

 慢性気管支炎の治療については,疾病そのものを根治せしめることはむずかしく,増悪を防ぐということがまずその目標となる.化学療法・除痰の方法など具体的な治療法を中心に.

Leading Article

これからの非結核性慢性呼吸器疾患

著者: 宝来善次

ページ範囲:P.1283 - P.1285

 この8月には厚生省の計画した第4回めの結核実態調査がすでに終了し,その結果が待たれている.要医療結核患者がどの程度にまで減少しているかに多くの人が期待をかけている.結核性呼吸器疾患の減少に伴って非結核性呼吸器疾患が医療の対象として私どもの前に増加してきた.すでにその傾向は各所で現われ研究が進められている.北本らの「呼吸器病学」の著書は多くの呼吸器疾患の存在とその特徴を教えている.ここでは日常の臨床にとくに必要なものにしぼってこれからの非感染性慢性呼吸器疾患についての筆者の見解を述べたい.まず第1に慢性気管支炎が取りあげられ,慢性肺炎も問題となってくる.ついで器質的変化を持つ肺気腫,肺線維症が注目される.また,やっかいである呼吸器悪性腫瘍には十分な関心がはらわれている.さらに気管支喘息も注意がひかれている.

診断のポイント

慢性肝炎—肝機能検査のすすめ方

著者: 安部井徹

ページ範囲:P.1311 - P.1312

慢性肝炎診断の出発点
 急性肝炎がなかなか治らない.黄疸がとれない.SGOT,GPTが正常にならない.肝腫がとれない.脾腫がある.全身倦怠感がある.食欲が進まない.また一度治ったようにみえて,黄疸を繰返したり,GPTがわるくなったりする.あるいは,いつ発病したかわからないが,肝腫があり,クモ状血管腫や手掌紅斑があって,肝機能もわるい.このようなときに,われわれは一応,慢性肝炎を疑うわけである.
 しかし,このような患者が,まだ急性期にあるのか,慢性に活動しているのか.または,肝小葉の改築,門脈域の線維化が進んで,肝硬変になっているのかは,肝生検をやってみないとわからないのであって,発病からの期間などを目標にしても,ほんとうのことを知ることはできない.

全身のかゆみ

著者: 伊崎正勝

ページ範囲:P.1313 - P.1315

かゆみの発生部位
 かゆみは,湿疹あるいは蕁麻疹のときに見られるように,皮疹の随伴症として自覚されるのが普通であるが,ときにはなんらの原発性皮疹の発生なしに起きることがある.後者の場合のように,原発性の皮疹を欠いて"かゆみ"のみを訴える病状を皮膚?痒症といい,これには全身ないしは広い範囲にわたって汎発する場合と,陰部・肛門部のような部位に限局して発生する場合とがある.本欄で与えられた課題は"全身のかゆみ"であるので,ここに,皮膚?痒症とくにその汎発性のものを中心として,記すこととする.

内科医が見のがしやすい脳腫瘍

著者: 喜多村孝一

ページ範囲:P.1316 - P.1318

 脳腫瘍のなかには早期から局所神経症状を現わし比較的初期に診断できるものもあるが,一般には早期に診断することは容易でない.なかには,かなり大きくなるまで見のがされやすいものがあるのは事実である.

治療のポイント

胃切除後愁訴の対策

著者: 本田利男

ページ範囲:P.1320 - P.1321

 最近,外科治療の進歩により手術後の障害も減少の傾向にあるが,手術例数の多い消化管ことに胃切除後における愁訴は比較的よくみうけられるもので,医師にとっても,患者にとっても不快な後遺症でもある,特に術直後に発生する合併症には多くの注意がはらわれるが,比較的おそく発生する合併症はやや等閑にされやすい傾向がある.ここでは胃切除後のダンピング症候と消化管手術後の下痢について,症状および治療の対策を述べる.

高血圧とタバコ

著者: 藤垣元

ページ範囲:P.1322 - P.1323

 高血圧患者にタバコが悪いということは自明の理であるように思える.ほとんどの医師は節煙または禁煙をすすめており,患者のほうもタバコが悪いということは理屈抜きに承知しているようである(実際に禁煙するか否かは別問題として).ではその根拠となるデータはどうかというと,予期に反してなかなか一定の成績は得られていないようである.

新しい抗生物質—抗菌性抗生物質を中心に

著者: 大久保滉

ページ範囲:P.1324 - P.1325

 抗生物質の新しいものを紹介するようにとの編集者からの注文であるが,ここでは,本邦ですでに市販されているもの,現在検討が終っていないもの,および抗癌性抗生物質を省き,すでに日本化学療法学会で一応の検討を終り,臨床応用の価値ありとの判断が下され,近く市販が予想される抗菌性抗生物質に限ることとする.

めまい

著者: 祖父江逸郎

ページ範囲:P.1326 - P.1327

 めまいは日常臨床でよくみかける症状であるが,その治療は実際上,なかなかむずかしく,めまいをおこす病態とともに,心理的な影響も多分にあらわれるので,よりよい医師・患者関係の形成が是非必要であり,その取扱いにはさまざまなテクニークを要する.めまいの内容を明らかにし,背景疾患をよく見きわめたうえで,総合的に治療を進めるべきである.

EDITORIAL

若年者高血圧

著者: 浅野誠一

ページ範囲:P.1309 - P.1309

 いわゆる成人病予防の検査が若年者にも広げて行なわれるようになって,種々の成人病とみなされる疾患が若年者にもかなりの頻度で発見されるようになった.若年者の高血圧もその1つである.
 若年者の高血圧は多くは無自覚であるとともに,一般の高血圧患者に行なう検査を行なっても脳・心・腎などの病変は少ないために軽症とみなされやすい.しかし高年者と異なって長い将来をもつ若年者高血圧は決して軽視できない病態であって,高年者の高血圧とは診療態度を区別して臨床にあたることが必要と思う.

室内塵とダニの抗原性の共通性

著者: 宮本昭正

ページ範囲:P.1310 - P.1310

 気管支喘息やアレルギー性鼻炎の病因的抗原として室内塵が最も重視されているが,室内塵は動・植物の繊維,食物残渣,カビ類,細菌類など種々雑多なものの混合物であって,それらのうち何が最も重要であるか不明であった.そして,今までにもいろいろな学者が検討を加えたが,満足すべき結論は得られなかった.最近,われわれの検索の結果,室内塵には,集めた家屋や場所のいかんにかかわらず1g中,数百から2000匹を越えるダニ(大きさは約100μ)が含まれていることが明らかになった.もちろん,その数は死骸や生棲中のものなど,形をなしているすべてのものをも含めた数である.
 われわれはダニが室内塵中の重要な抗原性物質なのではなかろうかと推定し,純培養に成功したダニの一種コナヒョウヒダニ(Dermatophagoides farinae)の抽出液の倍々稀釈を用いて皮内反応を行ない,陽性をきたした最大稀釈液を閾値として,その閾値と,室内塵抽出液での閾値とを比較してみたところ,きわめて高い相関を示した.また,室内塵抽出液の吸入誘発試験で陽性を.示した喘息患者にダニの抽出液を用いて吸入誘発試験を行なってみたところ全例陽性であった.

くすりの効きめ・11

われ幻の薬を見たり—2.血液脳関門

著者: 鈴木哲哉

ページ範囲:P.1328 - P.1330

 われわれが目下考察の対象としている薬について考えても,それが生理膜を透過して各臓器に達するまでの経過はきわめて複雑である.それらの詳細についてはいろいろの文献もあるし,私自身もこのことについてそうとう詳しく解説した書物を最近出した.出版社に対する思惑もあるのでできるかぎりたくさんの方に読んでいただきたいと願っている1)

心電図講座 ブロックのいろいろ・5

一過性右脚ブロック

著者: 吉村正蔵 ,   宮本進

ページ範囲:P.1339 - P.1342

 今回は右脚ブロックの補足として一過性右脚ブロックについて述べます.
 脚ブロックは永続的なものです.しかしなかに比較的まれですが,一過性脚ブロック(Transient bundle branch block)があります.この一過性脚ブロックは1913年Lewisが32歳のリウマチ性大動脈弁障害の患者に熱発3日後一過性右脚クブロックを認め報告したのが最初です.その後,HerrmanおよびAshman(1931)が10例,Comeau(1938(71例,最近ScherlisおよびLee(1963)8例など報告があります.本邦では北村教授らのUnstable lncomplete Right Bndle Branch Blockと題する6例(1957)の報告があります.私たちの教室でも9例(1958)の報告を行ないました.これらの研究ではじめ考えられていたほどまれでないことがわかってきました.事実,日常注意しておりますと,ときどき遭遇するブロックです.つぎに最近経験した例を中心に考えていきたいと思います.

カラーグラフ

乳児先天梅毒—その典型的な皮膚所見

著者: 寺嶋誠一 ,   斎藤恭一

ページ範囲:P.1274 - P.1275

 乳児先天梅毒は,戦後ペニシリン療法の普及により顕症梅毒の著減とともにほとんどみることができなかった.ところが近年,世界的に再び顕症梅毒の増加が問題にされ,わが国では1961年ごろより増加の傾向がみられる.したがって今後先天梅毒の増加が大いに心配されている.しかしながら現今の若い医師の大半は乳児先天梅毒の症例を経験していない.また過去の症例に比べて,最近の症例は臨床像が少しく異なり,皮膚粘膜の症状が少なくなり,主として,鼻炎とParrot氏仮性麻痺であるといわれている.いずれにせよ,乳児期に原因不明の諸症状があった場合に,先天梅毒を疑いワ氏反応,特に定量的検査を怠ってはならない.乳児先天梅毒は,早期診断,早期治療によって治癒可能だからである.治療はペニシリン(体重1 kgあたり50万単位を全量として10-15日間経口投与,または体重1 kgあたり30万単位を10-15日間に筋注)を主とし,エリスロマイシン,テトラサイクリン,最近は合成セファロスポリンCも用いられている.皮膚症状と類白血病性血液反応を主症状とし,骨変化のみられなかった2カ月男児例を経験したので以下に図示する.なお本症例の母親は妊娠中に治療は受けていなかった.

グラフ レントゲンの読み方・1

心臓にも呼吸器にも異常のみられる胸の写真

著者: 玉木正男

ページ範囲:P.1277 - P.1279

 胸の写真をみて,心臓にも呼吸器(胸膜・肺臓)にも病的所見を同時にみいだす例は少なくない.その場合,両者の原因が全く無関係なケースも,単一の原因が両者に病変をきたしているケース(たとえば腹部腫瘍からの転移,膠原病,結核による心膜病変と肺病変)もないではないが,一方が一次的で他方がそれに基づく二次的病変であるケースが多い,そのうち肺病変に基づく心病変としては原発性肺癌の心膜腔侵襲があり,"肺性心"もよく知られているが,もっと頻度の多いのは心臓あるいは循環器病変に基づく胸膜・肺臓の病変である.このいわゆる"cardiac lung"は一般病院では呼吸器の結核,腫瘍などよりも高頻度にみられるかと思う.問題はそれが呼吸器の炎症病変などと誤診される可能性,またそれが循環器患者における心不全あるいは重症度を判断する根拠としての重要性であろう.

Coronary Care Unit(CCU)—東京女子医大附属日本心臓血圧研究所狭心症センター

ページ範囲:P.1280 - P.1282

 心筋硬塞の死亡率は高く,特にその早期に死亡する例が多い.早期に適切な治療が行なわれるかどうかがその予後を決定する
 CCUとはこのような心期硬塞に対する特殊な治療施設をいうが,東京女子医大の狭心症センターは,わが国におけるCCUの草分けである.1967年8月に開設され,以来1年間に二百数十名の患者を収容,成果が注目されている.ここにその紹介とともに,1年の経過と問題点を探ってみた.

ルポルタージュ

CCUを考える—東京女子医大心研CCUを見学して

著者: 川上武

ページ範囲:P.1335 - P.1338

 成人病・老人病患者診療における臨床医の悩み
 第一線の臨床医の診療のなかで,成人病・老人病(慢性疾患)の占める比率は最近急速に上昇している.まだ一般には感染症が中心の急性疾患の治療と慢性疾患の診療・管理が半々くらいのところが多いようであるが,私たちの経験では,すこし慢性疾患に力をいれると,こちらが主力になってしまうのが実情である.
 成人病・老人病の診療に重点をおくようになると,外来であるかぎりは疾病管理に重点が移らざるをえない.そして企業のいわゆる健康管理を目標とした医務室にはみられない成果をあげることができる.これは第一線の臨床医の今後の生きていく方向を示していると思う.しかし,この過程で技術的にも医療機構的にも1つの難関に遭遇する.自分が疾病管理している患者の急変である.成人病・老人病患者と主治医との関係をみると,その疾病の性格よりして,急変時に患者がかならずしも地域的に診療圏内にいるとはかぎらない.これは急性疾患とはひどくちがうところである.成人病・老人病患者は遠くから診療を受けにくる患者も多く,自分の診療圏内でも日常は旅行したり仕事でかなり離れた勤務先に行っているのがふつうである.しかも急変は一般には,現在の技術水準では予測が困難であることが多いこの場合に,主治医がその急変にどう対処するかは重大問題である.私も10日ほどまえに,自分のみていた冠不全の患者が勤務先で会議中に急変(全身にしびれ感,胸内苦悶)があり往診依頼されたが,都内といっても遠く,こちらも診療時間中であったために窮地にたたされたことがある.幸いにも,その近くの医療機関に知りあいがあったのでさっそく連絡をとり,心筋硬塞の疑いがあるからというので外来診療中なのを無理して往診を頼み,救急入院させ,幸いにしてことなきを得た経験をもっている.

器械の使いかた

酸素吸入の新しい意義とやり方

著者: 渡部美種

ページ範囲:P.1343 - P.1345

 酸素療法の目的は,高濃度の酸素を与え,種々の原因で起こっている酸素不足症を治療することにある.酸素不足の原因は多岐にわたっているが,本稿の目的は酸素療法にあるので,ここでは省略して,臨床的にどんな症状が起こったら,酸素療法の適応になるかをまず述べよう.

ファースト・エイド

肝性昏睡

著者: 村上精次

ページ範囲:P.1346 - P.1347

他の昏睡と肝性昏睡の鑑別方法
 肝性昏睡患者に遭遇したさいに,まずなすべきことは,他の昏睡との鑑別であろう.一般に肝性昏睡は激症肝炎あるいは重症肝硬変の末期および精神症状を反復する特殊型にみられるが,激症肝炎にみられる場合はその他の症状から鑑別は比較的容易である.後2者の場合には,それ以前の病歴が明らかな場合は別として,ときに鑑別の困難なことがある.飲酒後に肝性昏睡が続発し,酩酊と切迫昏睡とが混同され見すごされる場合もあり,また切迫昏睡時に見当識の失調,すなわち所きらわず放尿・脱糞したり,時間の意識が失われたり,器具の用法をまちがえたりするようなことから,他の精神異常と混同され,精神科病棟に入院させられていることもけっしてまれなことではない.これらの時期に比較的確実に,また早急に他の昏睡と鑑別する方法としては,BSP試験あるいはICG試験(インドシアニングリーン)があげられる.
 BSP試験においては,ほぼ1時間以内に,ICG試験においては30分以内にその結果を入手することが可能であるから,これらの試験はその疑いがあるさいはぜひ行なうべきものと考えられる.採血にヘパリンなどの抗凝固剤を使用すれば,いっそう早期に結果を入手することが可能である.

他科との話合い

精神面に問題をもった妊婦

著者: 伊藤光雄 ,   富永一

ページ範囲:P.1348 - P.1353

 英国では,妊婦(25-35歳)700-1000人につき1人,精神面に問題があり,日本でも,ほぼ同じ割合だといわれる.それほど妊婦は,妊娠から産後に至るまで,精神的な障害を起こしやすい位置におかれている.

病歴のとりかた

中枢神経疾患

著者: 横山巌

ページ範囲:P.1354 - P.1357

神経学的検査は病巣の位置診断に,病歴は疾患の性質と原因の診断に役だつ
 中枢神経疾患の特徴として,神経学的な局所症候は病変の性質にかかわらず,同一部位に生じた病変は常に同一の神経学的症候を呈することがあげられる.すなわち,脳あるいは脊髄内のある一定の場所に生じた病変は,それが出血であっても,血栓,塞栓,腫瘍,膿瘍であっても,神経学的症候は同一であり,その症候は脳脊髄内の部位によって規定されているわけである.
 この病巣の位置診断は精細な神経学的検査法によって可能となるわけであるが,病巣の性質や原因に関しては,現症の検査は時間的な追求がなされないかぎりは,なんらの情報をも提供してくれない.

臨床家の免疫学

補体

著者: 西岡久寿弥

ページ範囲:P.1358 - P.1362

 1899年にはじめて補体の存在が知られて以来,最近数年間の補体研究の進歩はめざましく,いまや補体学という新分野が展開されようとしている.ここでは,補体研究の現状を概説
し,生体内の免疫病変解析へのてがかりを見いだしたい.

胃X線写真の写しかた・読みかた・3

腹臥位二重造影法

著者: 熊倉賢二

ページ範囲:P.1363 - P.1365

 腹臥二重造影法は,仰臥位二重造影法では現わせない前壁の微細病変をX線診断するために開発されたものですが,むしろ専門家の検査法で,下手に行なうと後の検査がメチャクチヤになってしまいます.

症例 全身性疾患と腎・3

腎と痛風

著者: 木下康民

ページ範囲:P.1366 - P.1370

痛風の病期分類
 痛風(Gicht,Gout,Arthritis urica)は核酸代謝障害によって起こる疾患であるが,近年,日本においても非常に各階層に増加してきた.
 痛風にはいろいろの分類があるが,Gutman1)は放射性同位元素を用いて原発性痛風と二次性痛風を区別し,前者は遺伝性の代謝障害で,purin合成の亢進が前面にあり,後者は遺伝性代謝障害のないもので,たとえば白血病の際のようにNucleoproteideの合成と分解の亢進に基づくものであるとしている.腎不全の場合にはほとんど全例に高尿酸血症がみられるが,しかし関節炎を起こすことはまれである.私どもの経験では,今日まで,腎不全数十例中,痛風発作を起こしたものはわずか1例にすぎない.また病期分類としてHench2)は①Akute rezidivierende Gichtarthritis,②Chronische Gichtarthritisに分けており,氏によると急性発作時には血中,尿中の尿酸濃度は平行しない.

内科疾患と皮膚・10

魚のうろこ状皮膚(魚鱗癬)

著者: 西山茂夫

ページ範囲:P.1371 - P.1373

魚のうろこ状の皮膚(魚鱗癬症)の定義と分類
 皮膚が乾燥して,ひび割れができ,その表面に魚のうろこのような鱗屑が固く付着している状態を魚鱗癬症(Ichthyosis)という.魚鱗癬症と皮膚乾燥症(Xerosis)(図1)との違いは,前者が夏には比較的良く,冬には増悪するという多少の季節的変動があるとはいえ,1年中存在していることである.つまり魚鱗癬症ではなんらかの先天的・遺伝的な要因が,皮膚症状の発現に重要であるということが考えられる.
 魚鱗癬症はかつて臨床形態学的に,尋常性魚鱗癬,先天性魚鱗癬,魚鱗癬様紅皮症,豪猪皮状魚鱗癬などに分けられていた.近年遺伝学的な研究が進んで,たとえば尋常性魚鱗癬といわれていたものにも,遺伝的には2つの異なった形式があることがわかり,魚鱗癬症を表1のように分類することが提案され,広く用いられている.

Medicina CPC・第4回

著名な腹部膨満に黄疸を伴った症例—出題

ページ範囲:P.1271 - P.1271

下記の症例を診断してください
症例 69歳 男 歯科医師

著名な腹部膨満に黄疸を伴った症例—討議

著者: 田崎義昭 ,   五十嵐正男 ,   本間日臣 ,   小出紀 ,   大貫寿衛

ページ範囲:P.1376 - P.1380

 大貫 この症例については,主として五十嵐先生にお話していただきたいと思います.

検査データどう読みどうする?

薬剤感受性検査—直接法と間接法の比較

著者: 小酒井望

ページ範囲:P.1272 - P.1272

ディスク法における直接法と間接法
 直接法は検査材料を平板培地に塗り広げ,その上に感受性ディスクを置き,1夜培養して,翌日結果を判定する方法で,間接法は,1度分離培養した菌から菌液を作り,それを平板培地に塗り広げ,感受性ディスクを置いて検査する方法である一直接法では,ふつう検査材料をとってから24時間以内に結果がわかるのに対して,間接法では分離培養に要する時間が加わるから,2日以上かかる.つまり早く結果がわかるのが直接法の特徴である.しかしいっも直接法が行なえるとはかぎらない.直接法が行なえる場合は,
 1)材料中に菌が多数存在する場合(ふつう,塗抹検査で陽性の場合)

統計

死亡診断書に記載された本態性良性高血圧症の死因(1)

著者: 菅沼達治

ページ範囲:P.1319 - P.1319

 先生がたがお書きになった死亡診断書をもとにして作られた死因統計は,国民の保健対策の資料となることはもちろん,医学の研究にもおおいに有用なものであることは言をまちません.さらにその正確性については,世界においても有数であることが認められています.しかし,近年増加しつつある高血圧症死亡の20%が,(本態性)良性高血圧症によって占められており,この病名は1つの独立した臨床病名ではありますが,これのみで死亡に至るとは考えがたいものであります.
 そこで年間死亡の1/3にあたる1212例の良性高血圧症について,死亡診断書を書かれた先生がたに,合併症や後続症を中心として照会を行なった結果,1108例の回答を得ることができました(回収率.91.9%).

全国教室めぐり

—日本の肝臓学の発展のために—新大・市田内科

著者: 田代成元

ページ範囲:P.1331 - P.1331

 市田内科教室は,昭和42年4月新設開講され,2年めを迎えたばかりの若々しい教室であります.市田文弘教授が開講にあたり,新医局員への第一声が日本の肝臓学を新潟でリードしようじゃないかであります.その希望と意気にあふれたことばが,そのまま教室のモットーとなっております.当教室新設の目的も,内科学の進歩と細分化に伴って,旧来の内科講座制から脱皮した専門分野を明確にうち出した講座制への確立にありました.既設の2講座が血液・内分泌・循環器・腎臓・呼吸器・感染症と分野が明確でしたので,当教室は肝臓・消化器・代謝学の3部門を受けもっています.

講演より

第3回東京=ニューヨーク・カウンティ医師会医学会議(東京・8月15-18日)から—大気汚染防止の法律と行政

著者: 橋本道夫

ページ範囲:P.1381 - P.1381

ばい煙等規制法の成立
 日本における大気汚染防止の行政は明治のはじめに
警察行政によるボイラーの取り締まりにより手がけられた.医学界の先輩である後藤新平は明治20年代にすでに都市の大気汚染についての警告を発し,都市保健対策に取り組むいとぐちをきった.
 一方,鉱山の煙害は大きな社会問題となり,政府は明治の中期より法規制を実施したが,産業公害としての大気汚染については,微温的な対策ではあるが工場法の一部として取り扱われていた.大気汚染は市民生活に深く根ざした問題であり,戦後,法令の規制を始めたのは昭和24年の都条例である.このとき国は鉱山の煙害のみを規制し,都の努力にはなんら役だつことはしていなかった,昭和30年厚生省は生活環境汚染防止法案の成立を試みたが強い産業界や各省の反対により成功しなかった.昭和37年ばい煙等規制法が成立し厚生・通産両省の共管により施行された.この法律はスス,粉塵,亜硫酸ガス,無水硫酸による汚染の防止を目的とした.

臨床メモ

小児の咳

著者: 巷野悟郎

ページ範囲:P.1330 - P.1330

 咳が続くと,まず感冒や気管支炎を考えがちであるが,このような咳もあるということを知っておくとむだな治療をつづけないですむことがある.

治療経験から

思春期ノイローゼの治験

著者: 小島信一

ページ範囲:P.1370 - P.1370

 症例 女子高校3年生,主訴:睡眠障害,焦躁感.初診2月28日.1)家族歴—両親,弟の4人暮らしで,家内工業を経営する中流家庭の子女.生活に心配はないが,最近仕事の関係上引っ越したため,以前書斎を個室として所有していたが,弟と2人,共同の部屋に起居しなければならなくなった由.2)現病歴2月中旬より毎夜天然色の夢を見続け,しばらくまどろむ程度の断続睡眠しか得られず,ために頭痛,焦躁感,食思高度不振,るいそうなどの随伴症状をきたしたという.
 3)初診時所見—摘記すれば尿所見,血算,胃液検査により,腎盂炎,過酸性胃炎,貧血を認めた.その他,眼瞼振戦,腱反射亢進,軽度の肝機能障害などの病像を得た.よってただちに従来どおり医療を開始したが,3月20日になっても主訴が好転しないので,催眠治療を実施することとした.

今月の表紙

急性骨髄性白血病の白血病細胞(2)

著者: 日野志郎

ページ範囲:P.1318 - P.1318

 第2の群に属するこの4例は,ペルオキシダーゼ反応が陰性という共通点をもっている.臨床経過のうえからみると,ふつうのAMLとは少し違ったところがあり,それぞれひとくせあるものであった.
 アメリカではときどき幹細胞白血病ということばを使っている.Dameshek & Gunzがいうようにリンパ芽球と幹細胞はペルオキシダーゼ陰性なら,これらの細胞がリンパ芽球でないとすると幹細胞だということになる.しかし定義のうえから幹細胞というものはあるにしても,形態学的にはつかまっていない(Wintrobe)し,Dameshekらのいう幹細胞が多潜能をもっているとの証明もないから,幹細胞とよぶにはうしろめたさを感ずる.

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略語の解説

著者: 阿部正和

ページ範囲:P.1269 - P.1269

ERG
 electoretinogram:網膜電図 網膜の活動電位を描写したもの.その発現機序については不明の点が多い.A,b,cおよびdの4つの波が区別され,それらの発生部位について微小電極による研究が盛んに行なわれている.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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60巻12号(2023年11月発行)

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60巻11号(2023年10月発行)

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59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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