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雑誌目次

雑誌文献

medicina5巻2号

1968年02月発行

雑誌目次

100万人の病気

虚血性心疾患

著者: 鷹津正

ページ範囲:P.180 - P.189

 臨床的に狭心症,心筋硬塞などとして表われる虚血性心疾患は,すでに一般臨床家の取り扱う心疾患の大部分を占めるほど増大している。診断・治療の最新の知識を。

座談会

心臓病の手術—適応・成績・予後

著者: 榊原仟 ,   太田怜 ,   大国真彦 ,   森杉昌彦 ,   和田敬

ページ範囲:P.190 - P.201

 心臓外科の進歩に伴い,最近では心臓病手術の成功率も相当高いが,内科の側からいえば,患者の一生の問題であるだけに,どの程度のものを外科に送るべきか,予後は本当に大丈夫か,など悩み多いところである。心臓外科の権威に聞く。

Leading Article

がん集団検診の問題点

著者: 山形敞一

ページ範囲:P.177 - P.179

 胃がんの早期発見のために集団検診の必要なことは現在では常識となつているが,それでもまだ問題とされるべきことが少なくはない。これらの問題点を考えるために,まずわれわれの実施している宮城県の胃集検方式,いわゆる宮城方式は,図1〜2に示したとおりである。
 第1の問題点は県対がん協会と県衛生部,市町村,職域との事前うちあわせと啓蒙であるが,これは事務的な領域であるから,ここではふれないことにする。

診断のポイント

腹部膨満を訴える患者

著者: 三浦洋

ページ範囲:P.204 - P.205

 腹部膨満を訴える患者のうちには,消化管穿孔や,急性イレウスなど緊急手術を要するものから,腹部内臓の良性または悪性腫瘍のように正しい診断にもとづき,手術により初めて根治しうるもの,また胃腸アトニー症のごとく単に機能的な障害に起因するもので,多少診断が遅れても生命に関する問題の起こらないものまであり,これほど千差万別のものは少ないと考えられる。
 このように腹部膨満という症状は程度の差こそあれ,腹部内臓疾患ほとんどすべてに広く現われるものであつて,この意味からいえば,そのような症状を訴える患者の診断のポイントということになれば,腹部内臓疾患をどのようにうまく鑑別するかということにあると考える。ここでは読者の大部分が臨床医家であると考えるので,実際的な見地に立つてごく臨床的なことがらについて私の診断の進めかたを述べることにする。

血清カリウムの高いとき

著者: 河合忠

ページ範囲:P.206 - P.207

採血時溶血・採血後長時間放置は絶対禁忌
 血清カリウム(K)濃度が高い場合,まず考えなければならないこととして,「検体のとり扱いが正しくおこなわれたか」である。
 体内には成人男子で約200g(または3000〜4000mEq)のKが存在するが,そのうち約90%は細胞内にあり,わずかに0.4%が血漿中に存在する。血液中でも赤血球内のK濃度は平均157mEq/Lで血漿中のK濃度(3.5〜5.4mEq/L)の約30倍も含まれている。したがつて,採血時に少しでも溶血が起こると赤血球内のKが血清中に大量に放出されるため,血清Kを測定する場合とくに溶血のおこらぬよう注意する必要がある。

最近の腸チフス

著者: 山上茂

ページ範囲:P.208 - P.209

はじめに
 近年伝染病院に腸チフスの診断で入院してくる患者を注意してみていると,発病早期に入院してくる患者では腸チフスでないものがわりあい多く,10病日前後で入院してくる患者に真の腸チフス患者が多い。また熱性疾患にはすぐ抗生物質やステロイドホルモンなどがたやすく使用されることが多く,どうしても腸チフスの臨床症状が変貌を示すようになる。

治療のポイント

呼吸器疾患とタバコ—あるheavy smokerと医師の記録から

著者: 三上理一郎

ページ範囲:P.210 - P.211

 呼吸器疾患とタバコの問題は,英国では内科医師会(1962),米国では公衆衛生局(1964)によつて「喫煙と健康」という報告のなかで,詳しく論ぜられ,すでに対策が実施されている段階である。私は呼吸器クリニークでの経験から,巻煙草の喫煙を慢性気管支炎・慢性肺気腫発病の一つの大きな原因として以前から強調してきた。ここに,禁煙に成功した慢性肺気腫患者の記録をかえりみながら,禁煙治療の実際をつづつてみたい。

甲状腺腫

ページ範囲:P.212 - P.213

高血圧性脳症

著者: 後藤文男

ページ範囲:P.214 - P.215

高血圧性脳症とは
 高血圧性脳症の治療を行なうには,まず患者が本当に高血圧性脳症であるかどうかを確かめる必要がある。とかく高血圧性脳症という言葉がルーズに使われやすく,高血圧症の患者になにか一過性の神経症状があると,すぐ高血圧性脳症と診断してしまう傾向がある。医学の進歩とともに,従来,漠然と高血圧性脳症といつていたものの中からいろいろな疾患が分離独立し,現在ではきわめて限られた条件を備えたもののみが高血圧性脳症といわれている。
 Fishbergは高血圧性脳症には二つの型があり,第1型は,一過性の神経症状の発作を起こすもので,必ずしも著明な血圧上昇がない。第2型はいちじるしい高血圧とともに,痙攣,髄圧上昇がありこれらは脳浮腫によるものとした。しかし,現在ではFishbergのいう第1型は一過性脳虚血発作あるいは脳血管不全としてまつたく別の疾患と考えられており,第2型のみが高血圧性脳症として取扱われる。

非ステロイド性抗炎症剤

著者: 水島裕

ページ範囲:P.216 - P.217

 非ステロイド性の抗炎症剤のなかには,最近開発が進み,もつとも注目をあつめているいわゆる非ステロイド剤(鎮痛消炎剤,速効性抗炎症剤)のほかに,消炎酵素剤,金製剤,抗ヒスタミン剤などある。しかし,ここでは,狭義の非ステロイド剤のみにつき解説を加えることにする。

EDITORIAL

臨床医学に対する最近の心臓生理学の応用

著者: 佐野豊美

ページ範囲:P.202 - P.202

 最近の心臓生理学の発達はまことにめざましく,臨床心臓病学の長足の進歩もこれによるところが大きい。紙面にかぎりがあるので,話を電気生理学関係にしぼつても,片鱗すらつくしえない。
 臨床における心臓電気生理学といえば,まず心電図が頭にうかぶ。その理論が真の科学らしい様相を示してきたのは実は最近のことである。従来も心臓内の興奮波伝播過程により心電図の棘波の説明がなされてはいたが,単に棘波の形より伝播過程が想像されていたにすぎない。したがつてどのように説明すれば矛盾少なくまとまるかによつてその説の価値が定まつた。最近多極導子による心室内誘導でその伝播過程が直接に示されて初めて,立証された伝播にもとづいて説明されるようになつたのである。心起電力と体表電位との関係を論ずる誘導理論もBurgerの理論が出現してから一変した。いままでと異なり,心起電力の坐は体中心になくてもよく,人体は無限均一導体と考えなくともよく,真実に近い複雑なかたちが比較的簡単なかたちで議論できるようになり,数多の業績も現われ,それにもとづくベクトル心電図誘導法も多く現われた。

胃の集団検診後のフォローアップ

著者: 脇田南洋

ページ範囲:P.203 - P.203

 東京都におけるがんの診療は,主として都立病院をはじめ,国立がんセンター,大学その他の公的医療機関において行なわれているが,これらの病院においても需要に応じきれず,相当の待機患者があり,今後さらに増強が必要の状態である。一方行政ベースとしては,国の方針にもとづき,死亡率の特に高い胃がんを第一義的にとりあげ,昭和41年11月からとりあえず検診車2台によりPRを兼ねて胃集検を開始,精密検診ならびに治療は上記治療施設に依頼する方法をとつた。41年度の成績は,間接一次検診5,219名,要精検者数957名,要精検率18.8%,精検受診数573名,精検受診率60%であり,精検依頼方式の全国平均値40%台に比べるとよい成績である。一方自己機関でスクリーニングから精検まで一貫して行なつている場合の精検実施率70〜80%に比べると多少低いが,初年度としてはやむをえないであろう。発見された胃がんは,精検受診者に対し1.2%,7名で,このうち3名がいわゆる早期がんであり,ポリープは同1%,胃潰瘍は同10%,十二指腸潰瘍は同6.2%,異常なしは同29%であつた。治療施設は前述のごとくそれぞれ日常外来者の検査で手いつぱいの状態であり,行政検診からの要精検者が新規に割り込む余地は零に近く,かえつて精検待機患者を増大させ,治療機関本来の機能を麻痺させる結果となり,フォローアップの依頼など望むべくもない。

ファースト・エイド

急激な下血

著者: 根本泰昌

ページ範囲:P.218 - P.220

 突如として大量の下血,すなわちメレナとしてのタール便や血性便としてのトマトケチャップ状便などの排泄を訴える患者には,つぎの3点に留意して処置すべきである。
 1.一般状態(貧血,ショック)

病歴のとりかた・2

消化器疾患

著者: 岡部治弥

ページ範囲:P.221 - P.224

はじめに
 すべての疾患において病歴の重要性に変わりはないが,特に消化管の愁訴をもつ患者については注意深い慎重な問診によつて得られる病歴が診断上もつとも重要で,理学的所見からはしばしば,異常がみつからない。消化管の愁訴は器質的病変の有無にかかわらず機能異常に発するものが大部分であり,理学的検査を行なう前に,すでに陰性所見が予想されることも多く,さらに他臓器の疾患に伴う二次的な機能障害であることも少なくなく,そのためにも消化器症状のみに偏しない完全な病歴聴取がきわめて重要となる。

講座 不整脈の心電図・2

房室伝導障害

著者: 五十嵐正男

ページ範囲:P.243 - P.247

 房室伝導障害—私どもは簡単にA-Vブロックと言つていますが—は心房から心室への伝導に異常のあることを意味しますが,実際上は刺激が洞結節を出て心房に入つてから心室のパーキンジェ線維末梢に達するまでの伝導経過に異常のある状態を言います。心電図ではP波の始まる少し前からQRSの始まりまで,つまりP-R時間がこの伝導の時期に相当しますので,A-Vブロックはここの異常として現われてきます。障害が軽い時には伝導に時間がかかるだけですが,高度になると刺激伝導がそこで止まつてしまい,それより下方には伝わらなくなります。病変は多くは房室結節かHis束にありますが,時には心房内部に伝導異常があつたり,両側の田原脚が同時に侵されたために,障害が出てくることもあります。
 房室伝導障害は多く.の原因でおきてきます。リウマチ熱やジフテリヤなどの急性感染症,急性冠不全や急性心筋硬塞症が刺激伝導系の一部を侵したとき(ことに後壁心筋硬塞),ジギタリス過剰,サルコイドージスをはじめとする各種の腫瘍・新生物が心室中隔まで及んだ時,心筋変性が心室中隔を侵した時などにおきてきます。

グラフ

乳児の便(カラー)

著者: 巷野悟郎

ページ範囲:P.166 - P.167

 乳児の便を観察して,それが異常のものかあるいは生理的のものかを診断するためには,便の性質のほかに,乳児のきげんや食欲の良し悪し,体重が順調に増加しているか,体質ことに滲出性体質ではないか,栄養法は母乳か人工か,混合か,あるいは離乳食をはじめているか,そのほかふだんと変わつた症状がないかなどを知る必要がある.便の性状だけにこだわると,むだな治療を続けることがある.極端ないいかたをすれば,きげんや食欲がよくて,体重が順調に増加していれば,便を気にすることはない.

甲状腺シンチグラムのよみかた

著者: 伊藤国彦

ページ範囲:P.169 - P.172

 甲状腺シンチグラムの臨床的応用でもつとも価値があるのは,甲状腺腫瘍の良性,悪性の鑑別診断である。甲状腺に発生した腫瘍が腺腫かがんかの鑑別は,経験をつめば大多数の症例は触診のみで容易である。しかしがんでは早期症例,腺腫で癒着の強い不正な腫瘤では診断を誤まる症例が少なくない。補助診断法としての甲状腺シンチグラムの価値はこのような症例に意義がある。しかし陰影欠損部の性状を中心にする甲状腺シンチグラムにより,触診上の疑問点をただちに是正される場合はむしろ少ない。すなわち触診でも甲状腺シンチグラム診断でも,鑑別の困難な症例は同様な症例である。しかし甲状腺疾患の経験の少ない臨床家にとつては,きわめて有用であるし,また甲状腺シンチグラムの判読も,熟練することにより微妙な診断をくだしえて触診上の疑問点を解決することができる。
 甲状腺腫瘍のシンチグラムは西川の分類を用いている。陰性,肥大,陽性の3型に大別し,陰性像を,1)片側全葉欠損,2)境界鮮明欠損,3)浸蝕性欠損,4)菲薄影を伴う欠損,5)欠損を思わせる菲薄影の5型に分け,肥大像を,1)境界鮮明な欠損,2)菲薄影,3)菲薄影を伴う欠損像の3型に分類している。

内科疾患と皮膚—Acanthosis nigricans

著者: 西山茂夫

ページ範囲:P.173 - P.174

器械の使いかた

乳幼児の血圧測定

著者: 高尾篤良

ページ範囲:P.248 - P.250

 年長小児の血圧測定は,成人のそれとほとんど変わりはないが,小児科医はもちろん,内科や外科の臨床医でも,新生児や乳幼児の血圧をどのようにして測つたらよいかと,疑問をもたれる方々もあるので,われわれが日常の臨床で行なつている血圧の測りかたを紹介する。

くすりの効きめ・2

降圧剤—血圧を下げるという作用

著者: 鈴木哲哉

ページ範囲:P.251 - P.253

降圧剤にさきをこされた高血圧の原因究明
 いまから約20年前,まだ宇宙ロケットが一部の学者たちの夢にすぎなかつたころ,高血圧の専門家たちがその病因の追究に色めきだつていた。当時もつとも有力視されていた起因物質は交感神経系の化学伝達体であるカテコールアミン類(アドレナリン,ノルアドレナリンなど)と,今世紀の始まる2年前にすでに報告されたレニン酵素とであつたが,実験医学,生理学,循環器などの雑誌は毎号この報告で賑わい,学者たちは自らの手による解決の日も近いと思つていたのである。ところが地球から放つた宇宙ロケットが月に軟着陸してその表面で3メートルも飛び上がつたというこんにち,ほとんどの学者たちが高血圧の原因を究明することに興味を失つてしまつている。高血圧の原因の解明より一足おさきに降圧剤がほとんど完全なほどに完成してしまつたからである。(最近ある本で,血圧は上がるべくして上がつているのだからこれをむりに下げるという考えは誤りだというような説を読んで驚いたのだが,生体には変化に適応する能力があるから,動脈硬化そのほかいくつかの点を注意すれば,血圧は下がるものなら下げるべきである。)

臨床家の血液学

鉄と貧血

著者: 高橋隆一

ページ範囲:P.254 - P.257

 UIBC,TIBC,sideroblastの変化は,貧血に伴う鉄代謝異常を臨床的に知るのに非常に都合がよい。これらとの関係を中心に各種の貧血における鉄代謝異常の機序と臨床的意義を解説する。

胃間接フィルムの読み・2

胃の曲り角

著者: 高橋淳 ,   小林康彦

ページ範囲:P.265 - P.267

 銀座4丁目の角を知つていれば,東京をある程度語れるように,胃角は,胃のmain streetの角で,その変化を読むことは,胃壁の変化に通じることである。

他科との話合い

妊娠とくすり

著者: 馬場一雄 ,   松岡松男 ,   広瀬正義

ページ範囲:P.258 - P.264

妊婦にくすりを投与する際の不安--奇型はできないか,妊婦の全身機能に影響はないか,早,流,死産のおそれはないか--に答えて

症例 全身性疾患と骨・2

神経疾患と骨その2—Charcot関節症・異所性化骨など

著者: 佐々木智也

ページ範囲:P.268 - P.272

 ルーチンの検査としてX線撮影の重要性をあらためて説くまでもないが,その手技について考えてみると,特別の造影をしないで単純に撮影するのを原則とするのは心・肺の検査である胸部撮影のほかには骨系統のみである。したがつて,骨のX線検査はごく簡単に実施でき,しかも多くの情報を提供してくれる内科医にとつてきわめて便利でしかも欠くべからざる手技といえる。しかし内科臨床において骨のX線検査は意外にわずかしか行なわれない。その理由はきわめて明確で,内科医が骨X線像の読影になれていないためである。ここに前回の例につづき実例を示し,骨のX線像に親しんでいただき,重要な診断のいとぐちが示されることもある点を理解していただきたい。

Kartagener症候群の一例

著者: 陶棣土 ,   陶易王 ,   佐々木治夫

ページ範囲:P.273 - P.277

 1933年,Kartagener1)が内臓反転症に副鼻腔炎および気管支拡張症がよく合併すると指摘して以来,このTriasはKartagener症候群とよばれている。私どもは最近,長野県南佐久郡を中心とする全中小学生14,842名の心疾患集団検診2)で,3例の内臓反転症を発見し,さらにその1名に副鼻腔炎,気管支拡張症,その他の合併症があることがわかり,いわゆる,Kartagener症候群と考えたので,その大要を報告したい。

内科疾患と皮膚・1

Acanthosis nigricans

著者: 西山茂夫

ページ範囲:P.280 - P.282

われわれが皮膚に何か変化のある患者を見る場合,それが皮膚だけの病気であるか,または内科的疾患と関係のある皮膚病変(Dermadrom)であるかを,まず考える必要がある。内臓疾患に伴う皮膚病変を認識することは,ただちに診断の役に立つこともあり,または診断の"みちしるべ"に過ぎないこともあるが,重要なことである.はじめに
代表的なDesmadromとしてAcanthosisnigricansについて述べる。(21〜22頁グラフ欄参照)

臨床研究者の生きかた・1

胃X線診断の論理—二重造影法の開発まで

著者: 白壁彦夫 ,   市川平三郎 ,   川上武

ページ範囲:P.283 - P.287

 現在,二重造影法が早期胃がん発見に占める位置はいうまでもないことだが,その開発の過程は,そのまま臨床研究者の生きかたの一つのモデルとして,また臨床研究のありかたを考えるうえで示唆多いものである。

統計

糖尿病の患者と死者・2

著者: 菅沼達治

ページ範囲:P.163 - P.163

 前号では糖尿病の罹患率,有病率,死亡率についてふれましたが,つぎに年齢別死亡率と医療機関を利用する患者について述べてみましよう。
 全年齢でみた女の死亡率は,男をやや上まわつていますが,これは年齢別にみた場合に人口の多い50歳未満の年齢層で女の死亡率が高いためであり,50歳以上の年齢層ではいずれも男のほうが高率であります。特に80歳以上では女よりも56%も高くなつています。また,男では年齢の高くなるほど死亡率も上昇しますが,女では65〜79歳に山をつくつています。つぎに10年前の昭和30年の死亡率を100とした40年の指数をみますと,男女ともほぼ同じ傾向で,女は50〜64歳では158,65〜79歳では235,80歳以上では285と年齢が高くなるほど増加率も高くなつています。

検査データどう読みどうする?

尿中17-OHCSの排泄異常

著者: 中野裕

ページ範囲:P.164 - P.164

17-OHCSとは
C17の位置にOH基をもつたcortico-steroidの総称で,尿中に排泄される17-OHCSには生物活性のあるcortisol(compound F),cortisone(compound E)のほか,それらの前物質,代謝物が含まれ,C17,C20,C21の側鎖の構造から4群に分けられる。I群(21-hydroxy 17:20 ketol)にはcompound F,E,S,tetrahydro F,tetrahydro E,tetrahydro S,allo-tetrahydro Fなどが含まれ,phenylhydrazineと特異呈色反応を示し,Porter-Silber chromogenとよばれている。II群(21-hydroxy 17:20 glycol)にはcortol,cortolone,III群(21-deoxy 17:20 glycol)にはpregllanetriol,11-keto-pregnanetriol,IV群(21-deoxy 17:20 ketol)には17α-hydroxyprogesterone,17α-hydroxypregnenoloneなどが含まれている。これらの17-OHCSはC17位の側鎖の酸化(NaBiO3など)により17-KSに転化する性質をもち,これを利用して一括測定される1)2)。この方法で測定される17-OHCSは一般に17-ketogenic steroid(17-KGS),総17-OHCSあるいは単に17-OHCSとよばれている。ただ本邦,米国では17-OHCSをPorter-Silber chromogenの意味に用いることがあり注意を要する。

付表

ページ範囲:P.220 - P.220

 12頁の本文とあわせてお読みください。

全国教室めぐり

消化器と血液を研究の二つの柱に—北海道大学第三内科

ページ範囲:P.225 - P.225

 昨年の4月,前任教授の高杉年雄先生が定年退官されたあとを受け,白石忠雄助教授が教授に昇任,内科学第三講座をひきつがれました。
 北大第三内科は昭和23年4月,高杉名誉教授が新たに創設されたもので,白石現教授はそのときから助教授として苦労をともにされ,教室の発展につくしてこられました。したがつて,白石先生が教室をつがれることを同門一同心からこいねがつておりました。それだけに,これが実現した喜びはたとえようもなく,教授決定の当日は教室あげて感激にひたつたものであります。

ずいひつ

身体の知恵

著者: 時実利彦

ページ範囲:P.228 - P.229

ホメオスタシスという身体の知恵
 "The Wisdom of the Body"—身体の知恵—アメリカの生理学者W. B. Cannonが,かれのライフワークをまとめて,1935年に出版したモノグラフの題目である。
 かれは,動物や人間に強烈な刺激(ストレス)が加わると,自律神経やホルモンのはたらきによつて,身体のなかの状態(内部環境)をその刺激に対抗して,できるだけ恒常にたもつようなしくみがちやんとそなわつているという。つまり,恒常性維持(ホメオスタシス)のしくみという"身体の知恵"によつて,身体の健全な営みが理性や知性の助けをかりないでも行なわれているというのである。気温が変わつても,私たちの体温は一定にたもたれているし,食物がどんなに違つていても,血液の成分は一定しているし,心臓や肺や胃や腸など,状況に応じてそれぞれ合理的にはたらいている。

これからの開業医

開業医の現状と未来像

著者: 上田篤次郎

ページ範囲:P.230 - P.231

 開業医が3人寄れば健保の愚痴をこぼし,金がなければ生活できないし,生活できるくらい金がはいるようになれば時間がなく,体力もつづかなくなるというようなところにおちつく。
 医療制度も医育制度も,これではしかたがないと医師以外の人たちも考えるようになつたが,現に開業医であるわれわれこそ改革の先頭をきる責務があろう。

上田先生のご一文を読んで

「改革の先頭をきる」とは・・・・・

著者: 安食正夫

ページ範囲:P.232 - P.232

それにしても医師は階層上位者
 感想を書けというので,思うまま,述べてみようと,筆をとりました。
 「軍医の職を失い……生活の手段として開業医になつた」とありますが,いささか,わざとらしいニヒルさが感ぜられます。私もまる2年軍隊生活を経験しましたが,戦争も末期のころよく戦友と話したものです。"軍医殿"はいいなあ…,おれたちどうなるんだろう……。降伏後はシベリア抑留などという流言蜚語がとんだものですが,そういうときも,そうなつても軍医ばかりは特別待遇だろう,とかなんとか,おおいに羨んだものです。

今月の表紙

チェディアック・東の異常症・2

著者: 日野志郎

ページ範囲:P.264 - P.264

 チェディアック・東の異常症は,臨床症状を参考にして血液像で診断できるが,さらにこれを裏づけるのは骨髄像である。
 骨髄で特有なのは封入体をもつた大型細胞で,多くの学者はこれを骨髄芽球と記している。しかしUndritzは単芽球と考えた。骨髄芽球様のものから単球に似たのまで移行があるように思われる。剖検所見で,細網細胞性組織球性反応が強いことを考えると,細網細胞(組織球)ないし単球系と判断すべきものではないだろうか。

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略語の解説・2

著者: 阿部正和

ページ範囲:P.161 - P.161

ACTH
 adrenocorticotrophic hormone下垂体前葉が分泌する副腎皮質刺激ホルモンで,化学的には蛋白質。分子量約4,500といわれる。trophicが正しいか,あるいはtropicとすべきかは興味ある問題だが,成書には両者が使われていてどちらが正しいのか判定の資料がない。trophicとはnourishing,つまり栄養を与えるという意味であり,tropicとは向きを変えるという意味のようである。このようなわけで,どちらかといえば,trophic hormoneという方がよかろうと考えられる。

国際疾病分類(ICD)の第8回修正について

著者: 上田フサ

ページ範囲:P.226 - P.227

ICDとは--その歴史
 ICD(International Classification of Diseases)とは,WHOで規定した疾病分類で,その加盟国はこれにより疾病や死因に関する統計を報告する義務を負わせられている。
 このICDは,今世紀の初め(1900年)フランス政府の提唱によつて第1回修正国際死因分類会議が開かれ,第1回修正国際死因分類(通称Bertillon分類)が人口動態統計の死因統計分類として採用されたのに始まる。

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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