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治療のポイント
妊娠と糖尿病
著者: 後藤由夫1
所属機関: 1東北大山形内科
ページ範囲:P.364 - P.365
文献購入ページに移動妊婦ではしばしば糖尿がみられるが,その98%は血糖の上昇を伴わない,腎性糖尿である。これはステロイドホルモンの分泌増加によつて細尿管におけるグルコースの再吸収が低下するためである。残りのおよそ1〜2%のものが血糖の上昇を伴う糖尿病状態になつている。この高血糖を伴う糖尿妊婦のなかには無症状の軽症糖尿病の婦人が妊娠したものも含まれているが,妊娠を契機にして糖尿病が新たに発生する場合もある。後者が妊娠糖尿病といわれるものである。妊娠糖尿病は一般に軽症で特別の治療を要しないことが多いといわれている。筆者は4例経験しているが,このうち3例は分娩後耐糖曲線は正常になつた。しかしながら1例では分娩後も糖尿病状態は軽快せずむしろ増悪し,インスリンを使用した。
このようなことからいままで糖尿病の既往歴のない婦人が妊娠して,糖尿病状態であることがわかつたときには,食後200mg%以下の場合には食餌を制限してそのまま経過を観察し,食後の血糖が異常に高くなりかつ尿糖排泄も1日15g以上のような場合には食餌制限のほかに少量のインスリンを用うべきである(経口剤使用を避ける理由およびインスリン使用時の注意は後述)。
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