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雑誌目次

雑誌文献

medicina5巻4号

1968年04月発行

雑誌目次

100万人の病気

おとなの頭痛

著者: 平山恵造

ページ範囲:P.448 - P.452

 "頭痛"はきわめてありふれた症状でありながら,その原因は複雑で,診断もかならずしも容易ではない。ここでは,むしろ症候学的な観点から頭痛を分類して診断上のポイントを解説した。

小児の頭痛

著者: 福山幸夫

ページ範囲:P.453 - P.457

 小児科学の教科書で代表的な9種の外国書を見てみると,頭痛についての記載は,9種類合わせてわずか1⅟4ページしかない。またそのなかの6種類の教科書は,物件索引のなかに頭痛の項目が見当たらないという状態である。

座談会

頭痛をめぐつて

著者: 喜多村孝一 ,   福山幸夫 ,   椿忠雄 ,   船橋知也 ,   加瀬正夫

ページ範囲:P.458 - P.467

 "頭痛"を持病のように訴える患者はきわめて多いが,まず診断をきちんとつけることが先決問題である。種々の頭痛の背景とその考え方を中心に。

Leading Article

精神病と内科医の役割

著者: 佐藤壱三

ページ範囲:P.445 - P.447

科学以前の精神病者への偏見
 昨年4月施行された,自動車の運転免許を受ける場合,精神病などではないという診断書を添付しなければならないという,道路交通法に関する定めは,精神科医の反対と,また広い世論の非難のなかで,わずか1年のいのちもたもてず,今年の2月かぎりで廃止されてしまつた。
 一見科学的な装いで登場したこの交通事故防止のための規則が,実はまつたく非科学的で意昧のない措置であつたことが,その後の事故の事実のなかで明らかにされたことがもちろんあずかつて力あつたのであろうが,この問題は,ただ単に38億円という莫大な金額を無意味な診断書のために浪費した以外に,いくつかの爪跡を私たち医師の世界に残したように思われる。

診断のポイント

悪性腫瘍による閉塞性黄疸の日常鑑別診断

著者: 大島誠一

ページ範囲:P.470 - P.472

 現在,閉塞性黄疸は,肝外胆道系になんらの閉塞性機転を認めずに,著明な胆汁うつ滞像を示す,いわゆる"intrahepatic cholestasis"と,肝外胆道系の機械的閉塞ないし狭窄にもとづく,外科的黄疸に分類されるが,この閉塞性黄疸の鑑別は,多忙な第一線の臨床医にとって,きわめて困難なものの一つである。しかも,これら黄疸の初期の患者に接する機会は,大病院医師よりも,私ども第一線病院の医師に,はるかに多い。そして本疾患の性質上,私どもは患者の予後と将来に対して重大な責任を負つていることを考え,閉塞性黄疸—ことに悪性腫瘍にもとづく黄疸に特徴的と思われる,二,三のポイントを,日常の検査成績と臨床症状から考えてみた。

最小血圧の高いとき

著者: 戸嶋裕徳

ページ範囲:P.473 - P.474

 最小血圧,つまり血圧測定中に聴こえる血管音が消失する第5音が,90mmHgをこえるとき最小血圧が高いと考える。ただし,第4音と第5音の差が10mmHgあるときには第4音(血管音が急に小さくなる点)をもつて判断する。
 同じく血圧が高いという表現がなされるにしそも,最高血圧だけが高くて最小血圧が高くないもの(収縮期性高血圧),最高血圧はたとえ高くなくても最小血圧が高いもの(拡張期性高血圧)では,その意味することはまつたく異なつている。前者は主として大きな動脈壁の弾性とか心拍出量に関係し,後者は細小動脈の末梢抵抗の増加による。

若い婦人の貧血

著者: 河北靖夫

ページ範囲:P.475 - P.477

若い婦人に特にみられる貧血
 婦人は月経,妊娠,分娩,授乳などによつて,鉄を失うことが多いので,男性に比べて一般に鉄欠乏をきたしやすい。ことに若い婦人には,古くから思春期女子の萎黄病Chlorosisとして注目されているものを含めて,本態性低色素性貧血とよばれる鉄欠乏性貧血がよくみられる(図)。また本貧血に比べると,はるかに少ないが,妊娠性巨赤芽球性貧血も,その発生頻度をみると,若い婦人に多い(表)。

治療のポイント

慢性胃炎の積極的療法

著者: 伊藤薫二

ページ範囲:P.478 - P.479

慢性胃炎の臨床的概念
 慢性的胃症状をもつ患者のレ線検査および内視鏡検査で胃炎所見が認められたもの1,000例と,所見の認められないもの4,000例を比較検討した結果,この両群間に自覚症状,胃酸度ともに有意の差は認められない。
 また,胃炎群の経過追求においても,自覚症状と胃炎所見との間になんらの相関性も認められない。自覚的に無症状となり健康感で生活している例について,内視鏡検査を実施してみると胃炎所見は以前と同様のものが多数認められる。

気管支拡張症

著者: 杉山浩太郎

ページ範囲:P.480 - P.481

 気管支拡張症(以下気拡症)は種々なPath-ogenesisに由来する一つのSymptomen Komplexと考えてもよいであろう。したがつて主として炎症産物の排除と感染の制圧に向けられる内科的治療はほぼ共通であるが,外科的治療法となるとPathogenesisへの十分な顧慮のもとに取捨されなければならないと考える。

妊娠と慢性腎炎

著者: 樋口順三

ページ範囲:P.482 - P.484

 わが子を抱きたいとせつに希望する腎炎患者に妊娠を許すべきか否かの判断は,臨床家がつねに頭を悩ます問題である。著者は慶大内科に入院した糸球体腎炎患者の10年間の予後調査から45例の出産例の経過を追求し,慢性腎炎患者でも無事に出産し,しかも腎炎の悪化をみないという事実を知つたので,その症例を中心に妊娠と慢性腎炎の関係について述べたい。

EDITORIAL

クモ膜下出血の問題点

著者: 黒岩義五郎

ページ範囲:P.468 - P.468

 クモ膜下出血は,脳卒中の約10%を占めるが,臨床的に1)壮年に起こり,2)急激に死亡することが多く,3)再発も多く,4)また外科的に動脈瘤の手術の可能性があることなどから重要なものである。
 本症では脳幹部を圧迫して発病後20分くらいで死亡することもあり,心死と誤まられることもある。これに対し脳内の出血では重症例でも20〜30分以内に死亡することはまれである。

慢性胃炎

著者: 三好秋馬

ページ範囲:P.469 - P.469

 胃は摂取された食物,嗜好品,さらにはいろいろの薬物を一度停留する使命をもつかさどり,それらによつて障害を受ける可能性がある。ある胃粘膜の変化に対して生理的胃炎(physiologic gastritis)という記載もある。この生理的胃炎をこえた障害が急性,慢性胃炎と組織学的に考えられるが,暴飲,暴食,抗リウマチ剤,化学療法剤,抗生物質,抗がん剤などの長期服用によつて惹起されるであろうことは容易に首肯される。これらは外因性胃炎といわれる。
 また,胃は強い酸を分泌する器官である。しかしながらmucous barrierによつて強酸からは生理的に守られている。いま,胃に前述の侵襲が加わればbarrierは破られ,胃粘膜は酸によつて障害される。このような外因性胃炎,自己の酸による胃炎はたとえその攻撃がくりかえし加えられたとしても,組織学的には表層の急性炎症であろうと思われる。

講座 不整脈の心電図・4

心房細動および粗動

著者: 五十嵐正男

ページ範囲:P.501 - P.505

 図1Aでは心房収縮であるP波につづいて心室収縮のQRS-T波が現われ,これがくりかえされています。これは正常の洞性調律でありますが同図BになりますとP波はみられず,その代わりに基線の不規則な揺れがあり,QRSの出現もまつたく不規則になつています。これが心房細動で,心房には基線の揺れ-f波-に相当して小さい局所的な収縮が各所に起こつているだけで,心房の全体としての収縮はなく,収縮期直前の心房収縮による血液の流入はありません。しかし頻脈でさえなければこの不整脈の心臓の血行動態に与える影響はそれほど大きいものではなく,その意味では重症な,危険な不整脈ではないのですが,期外収縮についで多い不整脈で,しかもジギタリスによる治療がされないと一般に心拍が速くなり,心不全に移行しますので,その意味で十分に理解されていなければならないものです。
心房細動の原因
 すべての心臓病は心房細動の原因になりうると考えられますが,つぎの四つは特に重要です。i)僧帽弁疾患,ii)冠状動脈疾患,iii)甲状腺機能充進症,iv)心房細動があること以外には心臓にまつたく異常の認められないもの。

痛み

鎮痛剤—開発過程と効果

著者: 清原迪夫

ページ範囲:P.521 - P.524

理想の鎮痛剤は?
 患者をして,医師のもとに走らしめるのは,病気そのものというよりは,痛みである。たとえば咳,不眠,息ぎれなどの症候では,しばらくの間ようすをみたり忍んだりしているが,激しい痛みに襲われると,即刻治療をもとめてくる。これは痛みが耐えがたいものであり,一刻も早くしずめてほしい本能的な願望が,こうして痛みのある状態から逃がれさせようとするのである。激しい頭痛や坐骨神経痛では,さつそく医療をもとめてくるのに比べて,乳がん早期の婦人の場合,はじめ小さなしこりが触れたときには医師を訪ねない。その理由をたずねると,そのとき苦痛ではなかつたからであるという。
 このように痛みを対症的にもしずめるということは,医師の当面した第一の問題である。この点からみると古来一貫してもつとも重要な医療品は鎮痛剤であつたし,歴史的にみても,阿片がキリスト以前から唯一の鎮痛剤であつて頻用されてきたことも肯ける。

くすりの効きめ・4

降圧利尿剤その2—Na再吸収阻害性利尿剤の種類と効きかた

著者: 鈴木哲哉

ページ範囲:P.535 - P.538

 Na再吸収阻害性利尿剤をK喪失型と,K貯溜型に分類して考えると便利である。K喪失性利尿剤はさらにH喪失性と重炭酸イオン喪失性と,そしてその中間型とに分類される(表1)。

医師法改正を考える

医師法一部改正の問題点

著者: 懸田克躬

ページ範囲:P.485 - P.488

 今回の"医師法一部改正"の中心は卒業後の臨床研修をどのように行なうかということであるが,これはまた世に多くの論議をよんでいるところでもあるので,ここですこし問題点を整理しておくことも必要であろう。

医師法改正の経過

著者: 大谷藤郎

ページ範囲:P.489 - P.492

1.インターン制度の創設
 昭和17年に,国民医療法が制定された。そして,それに伴つて国民医療法施行令が定められ,そのなかで医師の免許資格は学校卒業者(当時は大学医学部のほかに医学専門学校)についても1年以上の診療の修練を経ることを要件とすることとなつた。これが法制的にみてわが国の実地修練の始まりであつた。しかし,実態は当時の戦時下の医師不足の要請から,各地に医学専門学校または附属医学専門部が相次いで設置され,また,医学教育年限についても短縮が行なわれるという状況であり,修練実施の時日のいたらないままに昭和20年の大戦の終結をむかえた。
 終戦をむかえると戦後の混乱のなかで,医師資質の向上をはかるため二つの新しい措置がとられた。すなわち,昭和21年8月国民医療法施行令の一部改正によつて,(1)学校を卒業した後「1年以上の診療および公衆衛生に関する実地修練」を行なうこと,(2)その後に国家試験を受けなければならないことの二つが定められた。

医育制度のゆくえ

著者: 高橋晄正 ,   大谷藤郎 ,   青柳精一 ,   大熊由起子 ,   村松博雄

ページ範囲:P.493 - P.497

 「医師法改正」は3月29日衆議院で修正可決した。本座談会は可決前に行なわれたものであるが,法案の趣旨と,それをめぐつての考えかたを深め,さぐることは,今後にとつて,なお非常にたいせつなことであろう。

医師法改正と無給医局員

著者: 青柳精一

ページ範囲:P.488 - P.488

 現行のインターン制度に代わる,新しい臨床研修制度をめざす医師法の一部改正案(登録医法案)が,さる29日の衆議院で修正可決されたことによつて,今度は無給医局員の処遇が,大きな課題となるにちがいない。
 事実,法案の衆院通過にあたつて"政府は無給医局員の解消に努力すること"が,付帯決議のなかの1項目に加えられたからである。これがきつかけとなつて無給医局員の定員(有給)化の運動が活発になることと思われる。文部省では,42年度から3カ年計画で,2,97人を定員化する計画をたて,初年度分として647人をのぞいた1,750人分につき,1時間157円の副手手当を要求した。これに対し,大蔵省は,「国の業務に協力した」という名目で診療協力謝金の半年分,1億円を認められた。この結果,週3日以上,一定の日に臨床研究を行なうため診療にたずさわる者に対しては,今年の1月5日から1人1日あたり600円が支給されている。

—読者の手紙から—医局の現状に思う

ページ範囲:P.492 - P.492

 国家試験後ほとんどすべての者がもつとトレーニングを受けたいと思つて大学病院の医局に籍をおきます。他に教育機関がないからです。そして,専門医としての訓練が始まるはずなのです。
 だがここに問題があります。新入医局員は訓練を受け,さらに技術を高めたいと思つているのに対して,医局の主任教授や,上級医局員は「自分たちの」あるいは「自分個人の」研究のアシスタントがはいつてきたと考えている傾向があります。そして,それに役だつように教育をする傾向があります。すなわち,本来事務職員がするような雑事だとか,インスタントな手ほどきくらいで,すぐ実験などの下働きに役だつようなことしか教育しません。システミックなトレーニングはだれもしてくれません。いちばんかんじんな教授でさえ医局員に指導するのは回診時のわずかな時間だけです。それも教授が患者をみていませんので,ときどき医局員が教授に教えてやつている珍妙な風景もあります。期待と希望にあふれてはいつてきた新入局員は数カ月ならずして深い絶望におそわれるのです。大学院学生となると,もつと絶望は深いのです。文科系の大学院学生は,世間の常識どおり,一定の教室できちんとした時間に教授から講義を受けたり演習したりしています。しかし,医学の大学院ではこのようなカリキュラムが確立され実行されているのを聞いたことがありません。まつたく名目だけです。

グラフ

顔に蝶型の紅斑を生ずる疾患

著者: 西山茂夫

ページ範囲:P.436 - P.437

 顔の蝶型の紅斑,つまり鼻を中心とした左右対称性の頬の紅斑の臨床的意義は,つぎのように要約される。すなわち,第一に日光光線に対する異常な反応として,光線過敏性を有する疾患(ないし個体)に生ずる。第二に皮膚分節性の投影として,いろいろな全身性疾患の部分現象ないしは内臓病変に対する反応として生ずる.蝶型の紅斑が夏だけの変化であるか,または全身疾患と関係があるかどうかを見分けることがまず第一にたいせつである。次に病歴および全身所見を参考にして診断を決定する。

Cardiopulmonary Resuscitation—手技および蘇生に必要な器具

著者: 森岡亨 ,   下地恒毅

ページ範囲:P.439 - P.444

 急激な病状の変化により臨床的死(呼吸および機能的循環停止)におちいつた患者は放置すれば,4〜6分で脳皮質の不可逆性損傷を受けるとされている。不測の事故に対し,正しいCardiopulmonary Resuscitationの実際を身につけておくことが不可欠である。(本文82頁ファーストエイドをあわせてお読みください)

器械の使いかた

自記血圧計

著者: 橋本達

ページ範囲:P.506 - P.507

 私に与えられたテーマは「自記血圧計の使いかた」ということだが,浅学非才で自記血圧計というものが,現在幾種類市販されているのか知らないので,私の使用した経験のある器械について紹介したいと思う。

ファースト・エイド

Cardiopulmonary Resuscitation

著者: 森岡亨 ,   下地恒毅

ページ範囲:P.508 - P.509

Cardiopulmonary Resuscitationの重要性
 急激な病状の変化により臨床的死(呼吸および機能的循環停止)におちいつた患者は,放置すれば,4〜6分で脳皮質の不可逆性損傷を受けるとされているので,その前に迅速な処置によつて生物学的死より回避させねばならない。最近,I.C.U.(Intensive Care Unit)あるいはC.C.U.(Coro-nary Care Unit)設置の機運がたかまり,ここにおける蘇生法の重要性が再認識されつつある。しかし,C.C.U.のなかならずとも,不測の事故に対し,近年麻酔学領域に導入されてきた適切な方法を,寸刻を争つて実行すれば,心筋硬塞等でも従来考えていたよりはるかに救命の可能性は高い。医療に従事する者は,不測の死に遭遇する機会が多いだけに正しいCardiopulmonary Resuscitationの実際を身につけておくことが不可欠である。

臨床家の生理学

体温調節のメカニズム

著者: 高木健太郎

ページ範囲:P.512 - P.520

 内分泌と体温との関係も非常にたいせつであり,ことに最近はホルモン分泌は従来考えられていたよりも潜時が短いといわれる。また馴応の問題も切り離せないが,今回は神経性の調節にとどめた。

胃間接フィルムの読み・4

胃体上部の早期胃癌

著者: 高橋淳 ,   渡辺亨

ページ範囲:P.525 - P.527

 胃の診断での難所は胃体上部である。壁が厚く,動きも乏しく,ほとんどが肋骨弓内に隠れているからだ。特に,この付近の早期胃がんは,直接レ線でもむずかしい。まして間接ではこれを意識し過ぎると読めなくなるくらいだ。

症例 全身性疾患と骨・4

内分泌疾患と骨その2—代謝異常の表現としての骨粗鬆症

著者: 吉川靖三

ページ範囲:P.528 - P.534

症例1 Cushing症候群による脊椎圧迫骨折の症例
 F. T.,39歳 家婦
 家族歴 同胞6名および10歳,12歳の2人の子どもすべて健康である。

内科疾患と皮膚・3

顔に蝶型の紅斑を生ずる疾患

著者: 西山茂夫

ページ範囲:P.540 - P.543

紅斑とは
 紅斑(Erythem)とは,皮膚の末梢血管の拡張と充血によつて生ずる可逆的なあかい斑をいう。したがつて皮膚に炎症があれば,多少とも紅斑が存在する。たいらな紅斑は浸潤性炎症を,浮腫性に盛り上がつた紅斑は浸出性炎症を示し,丘疹状の紅斑は増殖性炎症を現わすことが多い。浸出性炎症の激しいときには紅斑の上に水庖をつくることがある。これに対して,血管の非可逆的な拡張によるあかい斑は,血管拡張(Teleangiektasie)として,紅斑と区別する(たとえば血管腫,Vascular spider,紙幣状皮膚など)。
 顔の蝶型の紅斑,つまり鼻を中心とした左右対称性の頬の紅斑の臨床的意義は,つぎのように要約される。すなわち,1)日光光線に対する異常な反応として,光線過敏性を有するいろいろな疾患で生ずる(ペラグラ,Hartnup症候群,光線皮膚症,Bloom症候群など)。2)皮膚分節性の投影として,いろいろな全身性疾患の部分現象として生ずる(エリテマトーデス,猩紅熱,血管運動性の不安定な人の一過性の潮紅―たとえば本態性高血圧症,赤血球過多症,カルチノイド症候群,糖尿病―など)。

統計

国民の健康状態(2)

著者: 菅沼達治

ページ範囲:P.433 - P.433

 前号につづいて生活総合調査のうちから,国民の健康に対する意識と総合判定との関係についてふれてみましよう。健康に対する意識は,15歳以上の全員に「近ごろ,あなたのからだのぐあい(健康状態)は,いかがですか」という質問のはいつた調査票を配布し,これを三つの程度に分けて回答を得たものです。
 この結果は「よい」と答えたものが全体の32.6%,「ふつう」が56.1%であり,自分の健康に問題意識をもたないものが9割におよんでいますが,残りの11.3%は「よくない」と答えています。この健康に対する意識と,客観的な健康状態ともいえる総合判定との関係を図示しました。当然のことですが,意識と総合判定とは平行した結果をみせています。しかし,意識と総合判定との合致していないもの,特に「悪い」,「非常に悪い」という総合判定のものが,自分では「よい」と思つているもののうち9.6%,「ふつう」のうち14.0%もいるということは,国民の保健上重要な問題と思われます。このような事実は年齢が進むほどいちじるしくなり,前記の割合を65歳以上についてみますと,「よい」のうちでは30%をこし,「ふつう」のうちでは40%に及んでいます。

検査データどう読みどうする?

尿塩化第二鉄反応陽性

著者: 大浦敏明

ページ範囲:P.434 - P.434

フェニルケトン尿症診断のための塩化鉄反応
 尿の塩化鉄反応は,古くからGerhardt試験とよばれてアセト酷酸の検出に用いられた。陽性の場合は褐赤色または暗赤色を呈する。しかしここで問題にする塩化鉄反応は,Folling反応ともよばれ,フェニルケトン尿症患者尿中に出現するフェニル焦性ブドウ酸検出を目的とするものである。検査法には試験管法と試験紙法(PhenistixまたはPhenitip)とがあり,いずれもフェニル焦性ブドウ酸の量に応じて緑色を呈する。

ずいひつ

阿古屋の琴責

著者: 時実利彦

ページ範囲:P.498 - P.499

判官重忠の知恵
 文楽の出しものに「壇浦兜軍記・阿古屋の琴責」というのがある。芝居でもしばしば演じられていて,阿古屋に扮する中村歌右衛門さんが名演技をみせている。
 話の筋はこうである。悪源太の平景清が,ひそかに平家再興をはかつていたところ,運悪く発覚して投獄された。ところが,うまく脱獄して行方をくらましてしまつたのである。

話題

VB12の代謝などトピックスを討論—第5回日本臨床代謝学会総会から

著者: 中沢恒幸

ページ範囲:P.500 - P.500

 第5回日本臨床代謝学会は2月2〜3日名大山田弘三会長のもとに開催された。ご承知のごとく本学会は病的な代謝過程のなかからトピックスを選びシンポジウム形式で発表討論され,加えて基礎医学者を初め理学,薬学の人々も多数参加しているユニークな会である。今回は以下の4題のテーマがとりあげられたのでその印象を簡単に記してみる。

今月の表紙

骨髄芽球(2)

著者: 日野志郎

ページ範囲:P.472 - P.472

 慢性骨髄性白血病のとき血液にみられる幼若細胞は,急性症のときとはちがつてかなり統一のとれたものであり,症例による差はあまりないような印象を受けていた。ところが写真にとつて並べてみると,やはり症例による差は多少あるようである。それがほんとうに症例による差であるのか,標本の固定・染色の条件による差であるのかは,にわかに決めがたい。
 今回は,慢性骨髄性白血病の58歳の男の血液標本から選んでみた。

臨床メモ

簡易な血清カルシウムの測定

著者: 飯田喜俊

ページ範囲:P.477 - P.477

 血清カルシウムの測定はナトリウム,カリウムに比べてそれほどひんぱんに行なわれるものではないが,それでもしばしば必要となつてくる。たとえば内科疾患において,低Ca血症を示すものとしては腎不全,ネフローゼ,副甲状腺機能低下症,骨軟化症,脂肪性下痢症,膵臓炎,高Ca血症を示すものでは副甲状腺機能亢進症,サルコイドーシス,多発性骨髄腫などがあつて,診断の確定ないし治療にたいせつなものである。しかし,これまではその測定法が比較的めんどうなため,どちらかというとないがしろにされてきた。EDTAを用いて行なう簡易測定法もいわれてきたが,そのさい用いる指示薬があまり鋭敏でなく,正確に測定できないため,簡易測定法として十分といえるものではなかつた。
 ところが,近年登場したHydroxy NaphtholBlueを用いて行なう方法は簡易性はもちろんのこと,正確性においても非常にすぐれている。現在まで,主として工業分析用に用いられてきたが,特別の器具を必要とせず,わずか2〜3分でだれでも測定できるものである。私もこれを用いて多数の血清,尿中のCaを測定し,従来の方法とその測定値を比べたり,いろいろ測定にさいしての妨害因子の有無について検討したが,正確性においても従来の方法と比べまつたく遜色なく,簡易という点でははるかにすぐれていると結論することができた。

女性の腰痛

著者: 足立春雄

ページ範囲:P.484 - P.484

 Millerは腰痛の80〜90%は腰椎と骨盤内臓器に直接または間接に関係があるといい,一部の反論もあるが,WardやBullardは女性の腰痛の85%は産婦人科疾患にもとづくと述べているように腰痛は女性の宿命的な主訴の一つである。このことは脊椎や骨盤の構造上のちがいのほか,骨盤内の神経支配・血管ならびに淋巴系・支持組織などが男性に比較して複雑であり,しかも月経や妊娠・分娩・産褥など大きな影響を与える生理的現象が加わるためである。女性の腰痛の頻度は報告者によつてまちまちで,本邦でも安井は外来患者の4〜5%,筆者らは6.6%,自見らは15.8%,馬島は21.8%と報告している。腰痛だけを主訴するかどうかによつてもこの数字はちがつてくる。いま仮に腰痛を原因別で大きく分類してみると,筆者の得た成績は表のごとくになる。これらを年齢別にみると20〜30代がもつとも多数で40歳代がこれに次ぐ。このことは一般にこれら年齢層の患者が多いためでもあるが,この時期には腰痛の原因として月経や妊娠・産褥に直接関係するものが多くあげられており,骨盤内癒着などに基因するものが比較的多数であることからも,単に患者数の問題としてわりきることはできないようである。40歳代ではこれらの原因よりもむしろ腫瘍を原因とするものが多い。女性の腰痛を産婦人科の領域だけで考えると,腫瘍やがん浸潤などで直接的な圧迫によつて惹起されることはむしろまれなことで,多くは内分泌環境,慢性炎症,腫瘍,労働などにもとつく骨盤内充血に起因するものである。したがつて明らかに圧迫症状である場合はべつとして,女性の腰痛はまず骨盤内の循環障害を考え,性ホルモンその他でこれをのぞくよう努めるのが,第一の治療方針であろう。
 患者の年齢と性別に注意を しかし私はまず頻度の点から年齢と性別とに注意する。40歳以上では心筋硬塞をも含めて冠不全症候群を考えるが,若い女性で上記の症状をもつて外来受診するものの多くは,neuroticで,トランキライザーの投与でよく軽快する。この時の訴えは喉頭や胸部に軽い痛みまたは圧迫感と狭窄感で嚥下障害があり食道の痙攣を思わせる。この場合,心電図などをとつて狭心発作と診断すると,かえつて症状を悪化させてしまう。

胸がつまる,胸がしめつけられる感じとは

著者: 渡辺良孝

ページ範囲:P.524 - P.524

 上記のような症状を主訴とした患者を診察するにあたつて,まず第一に考えるのは狭心発作か,心筋硬塞か,異型狭心症を疑うのが定石であろう。

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略語の解説 4

著者: 阿部正和

ページ範囲:P.431 - P.431

ATPS
 ambient temperature and pressure,saturated with water vapor:気体は気圧,温度,あるいは共存する水蒸気により容積を変える。したがつてガス分析によつて得られた成績は,その測定時の条件を参考にして比較検討しなければならない。
 ATPSとは,測定時の室温,測定時の大気圧で,水蒸気で飽和された状態のことで,採取して得た呼気を測定して得たそのままの値が示される条件のことである。この条件のものを標準状態(STPD,standard temperature,standard pressure,dry),つまり0℃,1気圧で水蒸気を含まない状態に換算して示す必要のある場合がある。たとえば,O2摂取量,CO2排出量のごときはSTPDで表現する約束になつている。また,肺気量,換気量などはBTPS(body temperature,ambient pressure,saturated with water vapor),つまり体温37℃,測定時の大気圧,水蒸気で飽和された状態で表現することになつている。

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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60巻1号(2023年1月発行)

特集 10年前の常識は非常識!?—イマドキ消化器診療にアップデート

59巻13号(2022年12月発行)

特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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