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文献詳細

雑誌文献

medicina5巻7号

1968年07月発行

EDITORIAL

日本人の貧血

著者: 河北靖夫1

所属機関: 1熊大内科

ページ範囲:P.826 - P.826

文献概要

 日本人には,鉄欠乏性貧血は多い.そのうちでも,もっとも多いのは本態性萎黄貧血(本態性低色素性貧血,本態性鉄欠乏性貧血)で,男より女に多い.鉤虫貧血は,近年,減少したが,農村にはなお少なくない.また,筆者らが調査した女性農業従事者のなかには,自覚症状はなく,鉤虫症も消化管出血もないのに,軽度の貧血がみられ,血清鉄が正常に比し低値を示したものが少なくない.また貧血はないのに,血清鉄の低下が認められるものさえある.本態性萎黄貧血も,貧血がある程度進んではじめて自覚症状を覚えるもので,かなりの貧血がありながら,服薬することなく過ごしている者も少なくないものと思われる.これらの鉄欠乏性貧血ないし鉄欠乏状態は,鉄剤投与あるいはさらに駆虫によって容易に治癒ないし改善可能なもので,この方面の対策は強力に推進さるべきであろう.鉄欠乏性貧血を伴うBanti症候群もまれな疾患ではなく,その病因ないし病態生理については,なお検討さるべき点が少なくない.
 本態性再生不良性貧血は,欧米に比べて日本には多いもので,いまなおその成因は明らかでない.また治療法にかなりの進歩はみられたものの,つねに確実に卓効を奏するという治療法はない.本貧血に関する諸問題は,ぜひ日本の学者によって解決さるべきものであろう.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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