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文献詳細

雑誌文献

medicina5巻8号

1968年08月発行

文献概要

EDITORIAL

癌ウイルス説と臨床の結びつき

著者: 波多野基一1

所属機関: 1金沢大癌研ウイルス部

ページ範囲:P.951 - P.951

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 人の悪性腫瘍の病因をウイルスに求めて行なわれた研究の試みは,今日までけっして少なしとはしない.しかし,かつてRobert Kochが結核菌を人の結核病の病因と断定するのに要請されたのを契機に唱えた,Koch's postulates(regelmässige Nachweiß,ausschlieslicher Isolierung,Rein Kulture und Animal Experimentの3条件)が人癌ウイルス説にも依然として生きていると考えるならば,現在までのそれらの多くは,まだ不十分といわざるをえない.
 ただ間接的傍証としては,たとえばBryan Fink,Dmochowskiらを中心とした人造血臓器腫瘍における電顕的"virus like particle"の存在の証明,および螢光抗体法によるそれらのマウス白血病ウイルス(特にRauscherウイルス)との免疫学的相関が知られている.これらのなかでも,1962年Burkittにより臨床的に見いだされたいわゆるBurkittlymphoma(central Africa lymphoma)には現在同様に電顕的にヘルペス型ウイルスが認められ,分離も報告されている.しかも,これと同一と思われるウイルスは,正常人白血球培養細胞にも見いだされ,かつ同様の白血病がアメリカ大陸にもその後見いだされるに至り,この現在同定未了のウイルスこそ人白血病ないしBurkitt腫瘍に共通の病因ウイルスと疑せられている.わが国においても,最近,伊藤らにより類似ウィルスが人白血病白血球培養上清より分離され,人胎児培養細胞は形態学的に"transform"(癌化)したと報告している.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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