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雑誌目次

雑誌文献

medicina5巻9号

1968年09月発行

雑誌目次

1OO万人の病気

腎炎の新しいみかた

著者: 大野丞二

ページ範囲:P.1049 - P.1057

 糸球体腎炎の発症機序,臨床像,病理像については,過去130年間の研究の集積をもってしてもなお未解決の問題を残している.しかし,最近の免疫化学のめざましい進歩や螢光抗体法をはじめとする新しい研究手段の開発は,その解明を大きく進めつつある.糸球体腎炎を臨床家はいかに理解すべきか,電顕学的,免疫組織学的見地から最も新しいみかたを解説する.

座談会

腎炎の新しいみかた—慢性化のメカニズムとその運命

著者: 竹内正 ,   木下康民 ,   柴田整一 ,   浅野誠一

ページ範囲:P.1058 - P.1067

 急性腎炎が慢性化の経過をたどる例は少なくないが,腎炎慢性化にという因子が関与しているのか,どのようなメカニズムで進行していくのかは,治療の方法とも関連して腎炎をめぐる最も重要な問題である.これらの話題を中心に,治療の考え方までを話し合っていただいた.

Leading Article

日本内科学会認定内科専門医制度の発足に寄せて

著者: 楠井賢造

ページ範囲:P.1045 - P.1048

 日本内科学会では,昭和43年4月1日の第65回定期総会の議決・承認を経て,多年懸案となっていた内科専門医制度をいよいよ本年10月から発足する運びとなった.このときにあたり,ふりかえってこの間における本会理事・評議員,特にその中からかわるがわる選出された本制度に関する委員ならびに本制度審議会委員各位がこの制度を立案し,制定するに至るまでに示した態度や努力のいかに厳粛で,激烈きわまるものであったかをここでもう一度認識しなおす要がある.それと同時に,将来この制度がわが国の医学界ならびに医療体系環境の中ですくすくと育ち,やがて所期の実績を収めうるかどうかは,むしろ今後における日本内科学会の理事・評議員ならびに一般会員各位がこの制度をいかに深く理解し,その運営にあたってどこまで熱意をもって撓まざる精進・努力をつづけうるか否かにかかっていることを強調しておかなければならない.
 なお,この制度は,日本内科学会が自主的に立案し,厳格な自己批判と検討を加えた後に制定されたものではあるが,将来その運営上,より改善すべき個所が指摘されれば,さらに検討して一部改正も可能である点,法的に制度化されたものとは著しく趣きを異にするところで,むしろ当事者にとっては幸いというべきである.

臨床研修を行なう病院

ページ範囲:P.1094 - P.1094

日本内科学会"内科専門医"教育病院

ページ範囲:P.1095 - P.1095

診断のポイント

血尿をみたときに

著者: 稲田俊雄

ページ範囲:P.1070 - P.1072

 "おしっこに血が混じっていた"という患者はその驚きのために,割合に早く医者を訪れるようである.つまり血尿を初発症状とした場合には,発症から初診までの時期は比較的短いともいえる.しかしその訪れ先が問題なのである.おそらく開業医としての専門的泌尿器科医の少ないこともあろうが,約2/3は内科医その他に,残り1/3が泌尿器科医を訪問するというのが現況である.そして泌尿器科医を訪れるほうの患者は,どちらかといえば疝痛発作,あるいは排尿痛,頻尿などの膀胱症状を伴っており,このような症状のない,いわゆる無症候性血尿といわれる発症をしたほうは,そのすべてとはいわないが内科医を訪問する.ところが本当に重要な病気が隠されていることの多いのは後者であり,いろいろ症状を随伴する血尿はだいたい,たいしたことはないといってよい.それではたいへんなほうを引き受ける内科医の方がたが,この血尿をどのように処理し,得た情報をどのように解釈すれば,まちがいのない診断ができ,正しい治療方針がたてられるかということを簡単に述べる.

黄疸のない肝炎

著者: 名尾良憲

ページ範囲:P.1073 - P.1074

黄疽の診断と検査
 一般に,肝炎のようにびまん性に肝細胞がおかされる疾患では,黄疸がつよく現われ,肝癌とか肝膿瘍のような限局性の肝病変では,黄疸の発現頻度が少ないものである.すなわち,肝炎には黄疸がつきものと考えられ,黄疸が現われることによって患者は医師を訪れ,医師はまた黄疸を根拠として,肝炎の診断を下すという手順が長く行なわれてきた.このように,肝機能検査法が発達しなかった時代には,黄疸のない肝炎の診断はほとんど不可能であったといっても過言ではない.
 最近では,肝機能検査のみならず,肝生検が発展・進歩をとげ,黄疸のない肝炎の診断が確定されるようになった.しかしその反面,肝腫大,尿ウロビリノーゲン反応陽性のみで安易に肝炎という病名をつける医家も少なくなく,むしろ乱用されているきらいがある.

粟粒結核

著者: 鈴木弘造

ページ範囲:P.1075 - P.1076

病理発生学的にみると
 粟粒結核症は周知のように結核菌の血行性播種によって惹起される疾病であり,成人の罹患率は低いといわれているが,青年期,壮年期においても時に遭遇する機会のある疾患である.臨床的に本症の大多数を占める急性型は,著明な発熱を中心とする臨床症状を呈するとともに,特異な胸部X線像を示すものであり,その診断は容易なものと考えられがちであるが,多忙な実地医家にとっては,胸部X線検査を怠った場合には本症をほかの急性感染症と誤診したり,あるいは早期にその診断を確定することが困難な場合のあることが想像される.

治療のポイント

胃疾患とタバコ

著者: 柚木一雄

ページ範囲:P.1078 - P.1079

 食後の一服に満腹感を覚えたり,胃疾患にかかるとタバコがまずくなったり,また,喫煙の中止により食欲増進,体重増加などのしばしばみられることは,日常よく経験されている.タバコが人間の生理機能に影響し,消化器系にも何らかの悪影響を及ぼしていることは想像される.呼吸器系,循環器系に対するタバコの害毒は種々の面から強調され,すでに確定しているかの感がある.胃疾患に対しては,その有害面を積極的に抽出し,禁煙の明確な理由を見出すことはむずかしいように思われる.しかしながら,タバコの胃腸機能に対する薬理作用を解析してゆくならば,胃疾患に対しタバコが有害か無害かということも,おのずから明らかになってくるであろう.
 タバコは,酒とともに,人類の2大嗜好品である.すべての嗜好品について言えるように,その少量は生理機能を刺激して好都合な面もあるが,大量は生理機能を阻害し,害毒面が表面に出るようになってくる.少量刺激の場合の諸種の効果と考えられるものの中には,多分に心理的なものが含まれているようである.これを嗜好品自体の効用と誤まられていることも多い.

新しい不整脈のくすり

著者: 高崎浩

ページ範囲:P.1080 - P.1081

 われわれは日常の診療において,脈が不整である患者によく遭遇するが,これらの患者は自覚症を訴えることもあれば,またまったく無自覚であることもある.しかし,治療する立場から考えると,生理的と思われるものもあれば,重篤な心臓障害によると思われるものもあり不整脈治療には慎重でなければならない.
 しかし,不整脈は1つの症候であるから,原因の明らかなものに対しては原因的に治療をし,原因不明のものに対しては対症的な治療を講ずることはいうまでもない.すなわち,期外収縮とか,発作性頻脈症とか,心房細動とか,心ブロックとかの時にみる不整脈は循環障害の原因ともなり,また心不全を招いて生命の危険をきたすこともあるので,治療の対象となることはいうまでもないが,単なる自覚症にとどまるものにしても治療の対象となりうるものがある.したがって,従来から種々の薬剤がそれぞれの場合に応じて用いられてきたのであるが,その中でもキニジンとかプロカインアマイドとかについては,かなり報告があるので,今回は2,3の新しい治療薬に限定して述べてみることにしよう.すなわち,ローウォルフィア・アルカロイドの1つであるAjmaline製剤(Ajmaline,Gilurytmal)とか,交感神経β受容体の興奮剤であるIsoproterenol(Protanol)およびAlotecとか,交感神経β受容体遮断剤であるPro-pranolol(Inderal)およびIproveratril(Vasolan)とかが今回述べる対象である.

痛風

著者: 赤岡家雄

ページ範囲:P.1082 - P.1083

病型と病期
 痛風の病型には,次のような病態生理学的分類がされている.
 1)過剰生産型痛風

妊娠と頻脈

著者: 塩田登志也

ページ範囲:P.1084 - P.1085

 妊産婦に頻脈を診たならば,まずいかなる種類の頻脈であるかを決定する要がある.
 このことはベッドサイドにおいても症状や脈拍数や不整脈の有無などで相当のところまで鑑別がつくが,決定するには心電図をとらなければならない.これらの詳細については成書にゆずる.

EDITORIAL

全身性疾患と腎臓

著者: 浅野誠一

ページ範囲:P.1068 - P.1068

 全身性疾患が起これば,どの臓器でもその影響を受けて形態的にも機能的にも変化を示すのは当然である.腎はその構造的の特殊性と体液homeostasis維持の機能と不要物質の排泄口である点から,全身性疾患の際にも,他の臓器と異なった態度をとったり,影響を受けたりする.
 循環面において,腎は平常,心送血量の20-25%の大量の血液が分配されているので,循環が不全となると,すみやかに腎機能も不全に陥りやすいことになる.心不全の際にうっ血腎と称せられる病態になるが,うっ血とともに腎血流量は心送血量減少よりもひどい程度に減少し,いわゆるうっ血性心不全の症候群の成立に重要な役割を果たしている.また大きな外傷,火傷,手術,脱水,激症の感染などで起こる末梢性循環不全のときにも,血圧低下,循環血量の著減にともなって腎血流が著しく減少するために,糸球体濾過も尿細管の選択的再吸収もはなはだしく障害されて,たちまち尿生成不能,無尿に陥る.このような急性腎不全は他の臓器にはみられない病態で,十分な腎血流量と一定の血圧のもとに作業する腎は,体の中で最も高圧のもとに作業する臓器であることの宿命である.

コンピュータによる診断

著者: 木村栄一

ページ範囲:P.1069 - P.1069

 コンピュータによる診断が話題になっているが,これに対する医学者の態度に2とおりある.第1は,"コンピュータはすばらしい性能を有するから,われわれの能力を越えた診断能力を発揮するであろう"と期待している人びとであり,他は"診断は頭脳のなかの微妙な働きによって行なわれるが,かかる微妙な働きは機械をもってまねすることができない"として,否定的な考えをもつ人びとである.
 コンピュータの性能を考えると,その両者とも妥当な考えとはいいがたい.コンピュータの特色はすばらしい計算速度や膨大な記憶能力にある.しかし,いかなる計算を行なうべきか,あるいは何を記憶せしむべきかということを,人間が教えてやらなければ,コンピュータはなんにもできない.

アイソトープの診断応用の現状と今後

著者: 鳥塚莞爾

ページ範囲:P.1106 - P.1110

 最近の核医学の進歩はめざましいものがある,なかでも,RI(放射性同位元素)の利用は,今後の研究・開発によって医学の分野に大きく貢献することが予想される.その現状と今後の課題は…….

重金属中毒への医学的アプローチ

著者: 近藤東郎

ページ範囲:P.1112 - P.1115

 重金属中毒は,最近重大な社会問題となっているが,在来の症例中心主義の臨床医学的考察のみでは予防も解決もとうてい不可能である.その医学的アプローチの基礎には社会生態学への配慮も必要である.

カラーグラフ

TPHAテスト—梅毒病原体を抗原とした血球凝集反応

著者: 富沢孝之

ページ範囲:P.1036 - P.1040

 ワッセルマン反応(カルジオライピン抗原を使用)は,いろいろな問題が指摘され,梅毒の血清学的診断法には,病原体を用いる反応が望まれている.従来からある病原Treponema Pallidum(TP)を抗原とした反応は,術式が複雑でルーチンの検査までには,至っていない.比較的手技の簡単な赤血球凝集反応(HA)を本梅毒血清反応に導入し,種々改良を加えたのち,実用化することができた1,3)
 術式を簡単に述べると,固定した血球の表面に梅毒病原トレポネーマ分画を吸着させたものを抗原として,検査血清(あらかじめ,この中にある余分なものを,たとえば非病原トレポネーマなどに対する抗体を除いたのち)中に存在する本抗体を血球凝集像の形で検出する.

グラフ

CO2 Angiography—炭酸ガス注入による心嚢液貯溜の鑑別診断

著者: 五十嵐正男 ,   野辺地篤郎

ページ範囲:P.1041 - P.1044

 心嚢に液がたまっていると考えられる場合,それがどれくらいの量であるかを知るためには心嚢穿刺をして液体を吸引し,そのあとに同量の空気を入れれば,写真のうえで心嚢のなかの状態を明らかにすることができる.
 心嚢穿刺は心嚢液が多ければ危険は少ないが,液が少ないか,まったくないときには心筋穿刺になってしまうがあり,しかも心筋炎や心筋変性があって,心筋が脆く,薄くなっているときには致命的な出血性タンポナーデをひき起こす危険も伴う.したがって穿刺をするまえに心嚢液の有無について診断することはぜひ必要である.このために従来多くの検査法が述べられてきたが,十分満足できるものはなかった.しかし1957年に炭酸ガスによる心臓造影術が発表されて以来,きわめて容易に,危険なしに正確な所見が得られるので,たちまち米国を中心に普及されてきた.現在われわれの病院で行なわれている方法と装置をここに紹介する.

胃X線写真の写しかた・読みかた・1

基本的な心がまえ

著者: 熊倉賢二

ページ範囲:P.1125 - P.1127

 最近では,早期胃癌の診断は専門家の手から一般臨床家の手に移ったといわれ,X線検査の普及もめざましいものがあるが,実際にX線検査を始めてみると,意外によい写真はとれないし,早期癌も見つからないという悩みにぶつかるであろう.今月から6回にわたり,X線写真の写しかた・読みかたのコツを解説する.

症例 全身性疾患と腎・1

糖尿病と腎

著者: 木下康民

ページ範囲:P.1128 - P.1132

 近年,腎に関する種々の検査法の進歩に伴って,各種疾患時における腎病変の形成が注目されてきた.特に,腎病変の合併によって患者の運命が決定される疾患すらあることに,十分留意しなければならない.そこでこのような疾患の中で,腎生検の機会の少なくない,かつ自験例をもった疾患について記述したい.

片麻痺発作を反復した1例

著者: 楠井賢造 ,   竹中徹

ページ範囲:P.1133 - P.1137

 脳血管障害の中で,脳の巣症状の発作を反復するが,短時間で消槌し,後に何ら機能障害も残さず完全に回復するという1つの症候群はすでに前世紀Bruntonにより注目され,脳血管攣縮なる概念が導入された.この概念は上述の臨床症状を説明するには好都合であり,長い間一般に受け入れられてきたが,その確証に欠けるため,現在では否定的な意見も多く,むしろ動脈硬化に由来するものと考えられ,さらに脳硬塞に移行することが知られている.
 最近,著者らは内頸動脈の狭窄に,赤血球増加および高コレステロール血症を伴った1例を2年数カ月にわたり追跡観察し,興味ある所見を得たので報告するとともに若干の考察を加えてみた.

病歴のとりかた

アレルギー性疾患

著者: 宮本昭正

ページ範囲:P.1120 - P.1124

 アレルギー性疾患のうち,一般診療で特に重要と考えられる気管支喘息,アレルギー性鼻炎および蕁麻疹について,初診時の病歴のとりかたにつき説明してみる.
 初診時の病歴は,1)将来のために記録して保存する,2)診断の手助けとする,3)病因の推定または確定に役だてるなどの目的を有する.したがって,病歴の聴取にあたってはその目的に合致するように心がけねばならない.特にアレルギー性疾患では,他の疾患より以上に,病歴が診断や病因の決定に役だつので,病歴の聴取と記載は特に重要である.

くすりの効きめ・9

β受容体遮断剤(3)

著者: 鈴木哲哉

ページ範囲:P.1086 - P.1088

β遮断薬の構造
 図1にβ受容体の遮断薬を新旧とりまぜて並べてみたのだが,このうちアゴニストであるイソプロテレノールはべつとして,実際発売されているのはプロプラノロール(インデラール・住友)ただ1つである.もっとも別枠にしたイプロベラトリール(ワソラン・エーザイ)もβ遮断作用をもつといわれているが,構造式がほかのものとかけ離れているから,ここでは割愛することにしよう.
 D. C. I. はイソプロテレノールと構造が酷似していることがおわかりと思う.もともとイソプロテレノールの拮抗剤としてつくられたものだが,β受容体に対してはときに抑制するが,ときにこれを刺激する.つまりβアンタゴニストである一方,βアゴニストでもあるために動物実験にはさかんに使われたが,ついに人の治療薬として使われることはなかった.

内科疾患と皮膚・8

レイノー症状

著者: 西山茂夫

ページ範囲:P.1089 - P.1091

レイノー症状とは
 末梢の循環障害のうち,動脈の器質的な狭窄ないし閉塞は,脈拍の減弱ないし消失を示し,小動脈の機能的な,間歓性の攣縮は死指として現われる.ただし正常人でも,解剖学的に足背動脈の脈拍を触れないことが3%程度にある.さらに間歇性のびっこ,指趾の壊疽も動脈性の障害を示す.もし循環血量の減少が長く続いていると,皮膚に栄養障害性の変化が現われ,皮膚は乾燥してうすくなり,落屑,萎縮をきたす.
 またもし静脈の領域における障害が加わるならば,罹患四肢に浮腫がみられるようになる.四肢末端の血管の機能的障害による代表的な病像の1つにレイノー症状があるが,血管の機能的変化と器質的変化を,臨床的に厳密に区別することのむずかしい場合が多い.レイノー症状の診断には,したがって次のような臨床症状に重きをおいて,血管の変化が機能的か器質的かということに,こだわらないほうがよい.

心電図講座・ブロックのいろいろ・3

第2度および第3度房室ブロック

著者: 吉村正蔵 ,   宮本進

ページ範囲:P.1101 - P.1105

Mobitz II型ブロックの例
 前回は不完全房室ブロック(第2度房室ブロック)のWenckebach型(Mobitz I型)ブロックまで述べました.今回はMobitz II型から述べることにします.
 Wenckebach型がPR間隔がしだいに延長して心室収縮の脱落を伴うのに対して,Mobitz II型はPR間隔が延長しないでいきなり心室収縮が脱落する型のブロックです.1つおきに心室収縮が脱落する場合を2:1ブロック,3つめごとに脱落する場合を3:2ブロックとよび,4:3,5:4ブロックなどがあります.

Medicina CPC・第2回

ショック,腹痛から腎不全で死亡した症例—出題

ページ範囲:P.1033 - P.1033

下記の症例を診断してください

ショック、腹痛から賢不全で死亡した症例—討議

著者: 三上理一郎 ,   大貫寿衛 ,   日野原重明 ,   前原義二 ,   小沢啓邦 ,   太田怜

ページ範囲:P.1138 - P.1145

胸痛発作はなかった
 太田(司会) この症例は三上先生に主としてディスカカッサーになっていただきたいんですけれども,今までの病歴の中でなにかお聞きになりたいことございますでしょうか.
 三上 既往に慢性気管支炎をわずらっていますが,喫煙歴はいかがですか.

検査データどう読みどうする?

末梢血中における異形細胞の出現

著者: 天木一太

ページ範囲:P.1034 - P.1034

 幼若白血球 異形細胞を広い意味にとって,通常は血中に出現しない幼若細胞を含めると,表のようになる.幼若白血球の出現はなんといっても白血病のときにいちじるしい.急性白血病のときには,異形性の明らかな,いちじるしく幼若な1種類の細胞が増加するし,慢性白血病の場合には,むしろ通常の白血球の数が高度に増加し,比較的少数の幼若白血球が出現する,いずれも診断は比較的容易で,ここでは詳しくはふれないことにする.
 ときには白血球数増加も,核左方移動もないのに,骨髄球が1個出現することがあり,これを検査や鏡検上の誤りではないかと考える人がある.しかし正常人でも白血球層buffy coatを鏡検してみると,少数の骨髄球は検出されるものであるから,血液像に出現するのはそれほど病的でない場合でもみられる.まれに,やや小型の骨髄巨核球もみられることがある.

統計

白血病の死亡(1)

著者: 菅沼達治

ページ範囲:P.1077 - P.1077

 白血病に関する全国的規模の疾病統計は,昭和33年に実施した第一次悪性新生物実態調査(9月・10月中に全国の一般病院を退院した患者について行ないました)がありますが,これにはあまり詳細な観察はみられず,また毎年実施している"患者調査"でも,白血病として単独に集計されておりません.さらに現在種々の化学療法が試みられ,その生存期間の延長がみられておりますが,なお致命率のきわめて高い疾患でもあり,また内科的治療のみが行なわれるものでもありますので,人口動態統計によって,白血病死亡の現状を記してみたいと思います.
 白血病の死亡は,男では癌全体の3.0%で第6位,女では2.9%で第8位であります.昭和42年の死者は3,288であり,人口10万対男3.6,女2.9となっています.図に示しましたように毎年規則的に増加して,15年前の2倍に達しました.これは粗死亡率でありますが,胃癌などと死者の年齢分布が違うため,前号に記しました訂正死亡率による観察は,かならずしも必要ありません.最近における増加は男女が平行しており,かつては女を100とした死亡率性比は150前後でありましたが,昭和32年を境として130前後に安定しています.

全国教室めぐり

臨床・研究・教育の均衡保持をモットーに—北大・真下内科

著者: 武部和夫

ページ範囲:P.1093 - P.1093

 真下教授が当科に着任されて早くも5年の年月がたちましたが,その間に大学の医局のありかた,内科医の将来のありかたなどにつき先生のお考えを着々と実行されつつあります.大学の医局のありかたについては臨床・研究・教育を3大原則とし,これらを均等に行なうことをモットーにされています.先生が着任される以前には研究グループとして8グループ,すなわち循環器,肝・胆疾患,アレルギー,血液,化学療法,糖尿病,甲状腺,下垂体副腎のグループがありましたが,臨床的には内科全般にわたる研究が必要であるとのお考えのもとに,腎臓グループ,さらにこの8月からは胃腸疾患に関するグループができました.これも先生の内科の将来のありかたを熟慮されてのことからと推定されます.またundergraduate courseの教育についても非常に関心をもたれ,種々の雑誌に学生教育のビジョンをお書きになっておられます.

話題

一般臨床家に参考となる"薬物療法における老年者特異性"の講演—第10回日本老年医学会総会から

著者: 並木正義

ページ範囲:P.1118 - P.1118

今後に残された課題—加齢の機序
 老年医学というのは,人間の生理的加齢(年をとること aging)と,加齢に伴う疾患を観察・研究する学問である.単に老年期の人びとを対象とし,年をとった結果のみを観察するのではなく,年をとるという現象自体の解明がだいじであり,老年医学の本来の目的は,むしろここにあるといえるが,この加齢の機序については,吉川教授も特別講演で,2,3の新知見を混ぜながら述べておられたが,結局はなお不明というほかなく,今後に残された大きな課題であろう.
 老年者においては疾患の発病のしかた,症状,経過,治療上の問題などにおいて,若年者と違った老年者としての特異性があることについては,多くの医者が経験的に知っている.今回のシンポジウムは,これをおもな分野の疾患において,あらためてひき出し,まとめてみようというのがねらいであった.その結果は期待どおりであり,各疾患の診断,経過の観察,治療および患者の取り扱いにおいて,老年者は老年者としての慎重な注意と配慮が必要であることを再認識させられた,

痛感されたCCUの必要性—第10回老年医学会総会から

著者: 土肥豊

ページ範囲:P.1119 - P.1119

会長講演と3題の特別講演
 まず会長講演では,脱コレステロール剤として蛋白同化ステロイドを長期投与する場合,BSP,SGOT上昇などの副作用を避けるため,利胆剤の併用が考慮される点につき述べられた.
 吉川教授は加齢の機序に関する新しい学説すなわち遊離基説,自己免疫説に言及され,脳老化の指標であるlipofuscin生成が前者で,老人斑などは後者で説明しうるといわれ,また今後の課題として老人の健康管理の普及,安全な検査法の開発およびCCU(後述)などの救急処置の普及を強調された.勝木教授は薬物療法に関して,老人では薬効以前に強い副作用がときとしてみられること(ジギタリスなど),異常な薬効の増強(眠剤・精神安定剤・降圧剤・麻薬・内用糖尿病治療剤)または低下について注意をうながされ,山田教授は老年者での甲状腺・膵・副腎などの内分泌機能の低下および肝グリコーゲン生成のさいのインシュリン感受性の低下について講演された(以上特別講演).

今月の表紙

溶血性貧血患者の骨髄中の芽球(2)

著者: 日野志郎

ページ範囲:P.1105 - P.1105

 前号に示したのと同じ患者の骨髄標本から,少し変わった形の芽球をひろってみたのがこれである.前回は,前骨髄球を指標にして骨髄芽球を求めたのであるが,今度は赤芽球のほうへ類推をおよぼしてみよう.形のうえだけからはなんともいいにくいのだが,病気の性質上赤芽球系の若いものが増えている可能性が大きく,現実にもはっきりそういえる細胞が増えているので,つぎのような解釈が成立つであろう.
 図1の中央から左下寄りにある細胞質の塩基好性が強いのは前赤芽球であろう.左上隅に部分的にみえるのは前骨髄球だが,これだけではちょっと判断しにくい.問題になるのは右上の細胞で,前赤芽球よりもまえの段階のものではなかろうか.核構造は骨髄芽球のようでもあるけれども,細胞質は赤芽球系であることを思わせる.ほかのは正赤芽球.

診療相談室

眼振のみ方,考え方

著者: 本多虔夫

ページ範囲:P.1092 - P.1092

質問 内科医が日常診療において,"めまい"の鑑別診断をするための"眼振"のみ方,考え方について解説をお願いします.日常すぐ応用できる方法という線で…… (岩手・小野 寺生)

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略語の解説

著者: 阿部正和

ページ範囲:P.1031 - P.1031

DBI
 phenformine:フェネチール・ビグアナイド 経口的な抗糖尿病薬の一種である.グアニジン誘導体で若年性糖尿病に有効である.ただ胃腸障害などの副作用を起こしやすいので,その使用が制限されている傾向がある.最近は,副作用を軽減したビグアナイド系のジメチール・ビグアナイド(metformine)あるいはブチール・ビグアナイド(buformine)のほうが広く利用されている.使いかたとしては単味で使用されることもあるが,SU剤(スルフォニール尿素剤)との併用療法がしばしば行なわれている.

ハイマンスとヘンリイ・デール卿—ノーベル生理学・医学賞受賞者の死

著者: 高橋功

ページ範囲:P.1098 - P.1100

 最近,2人のノーベル生理学・医学賞受賞者の訃が報ぜられた.7月18日に亡くなったベルギーのCorneille Heymansと7月23日に永眠したイギリスのSir Henry Hallet Daleである.76歳と93歳の長命だったから,天寿を全うしたというべきであろうが,かけがえのない人物だったし学績が大きかっただけに一層その死が惜しまれる.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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60巻13号(2023年12月発行)

特集 一般医家のための—DOAC時代の心房細動診療

60巻12号(2023年11月発行)

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60巻11号(2023年10月発行)

増大号特集 患者さんの質問にどう答えますか?—言葉の意味を読み解きハートに響く返答集

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特集 ミミッカー症例からいかに学ぶか

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60巻5号(2023年4月発行)

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59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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