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連載 実は日本生まれの発見・10
インターロイキン6
著者: 田中敏郎1 熊ノ郷淳2
所属機関: 1大阪大学大学院医学系研究科抗体医薬臨床応用学寄附講座 2大阪大学大学院医学系研究科呼吸器・免疫アレルギー内科学講座
ページ範囲:P.1705 - P.1705
文献購入ページに移動IL-6は,抗体産生細胞への分化,CD4陽性免疫調節T細胞の分化,肝細胞からの急性期蛋白の産生誘導,血球系細胞の分化のみならず,さまざまな細胞の分化や活性化を調節する.感染や外傷など生体にストレスが生じた際に,IL-6は速やかに産生され,ストレスの排除に働く.しかし,心臓粘液腫やCastleman病の病態解析や,IL-6遺伝子導入や疾患動物モデルを用いる検討により,何らかの原因によるIL-6の持続的な産生がさまざまな免疫,炎症性疾患の発症,進展にかかわることが明らかとなった.そのため,IL-6そのものを治療薬として用いるのではなく,IL-6を標的とするIL-6阻害薬の開発が進められ,中外製薬と大阪大学との産学連携により,マウス抗体をヒト化した抗IL-6受容体抗体トシリズマブ(商品名アクテムラ)が作製された.国内外での臨床試験において,トシリズマブは既存治療にて中~高活動性を有する関節リウマチに優れた有効性を示し,現在100カ国以上において,治療薬として承認されている.この功績により,岸本,平野は,スウェーデン王立科学アカデミーから「10年後には車椅子が必要なリウマチ患者さんがいなくなる」と高い評価を受け,2009年に,リウマチ学分野のノーベル賞といわれるクラフォード賞を受賞している.現在本邦での適応症は,①既存治療で効果不十分な関節リウマチ・多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎,②Castleman病に伴う諸症状および検査所見の改善・全身型若年性特発性関節炎であり,用法・用量は,それぞれ,①1回8 mg/kgを4週間隔で点滴静注,②1回8 mg/kgを2週間隔で点滴静注し,症状により1週間まで投与間隔の短縮可能となっている.トシリズマブ加療中においては,CRPなどの炎症所見や発熱,倦怠感などの全身症状がマスクされるので,感染症の合併を疑う際には,注意深い診療を要する.
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