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特集 内科診療にガイドラインを生かす 総論
診療ガイドラインの正しい理解
著者: 中山健夫1
所属機関: 1京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野
ページ範囲:P.8 - P.11
文献購入ページに移動EBMと診療ガイドライン
EBMとは?
1991年に誕生した根拠に基づく医療(evidence-based medicine:EBM)は,質の高い医療を求める社会的な意識の高まりとともに,さまざまな分野で普及した.EBMは「臨床家の勘や経験ではなく科学的根拠(エビデンス)を重視して行う医療」といわれる場合があるが,本来のEBMは,臨床研究によるエビデンス,医療者の専門性・経験,患者の価値観,そして患者の臨床的状況・環境の4要素を統合し,よりよい患者ケアに向けた意思決定を行うものである1).エビデンスを提供する研究として,人間集団を対象とする疫学研究(臨床試験を含む)が重視される.その本来の意味は必ずしも理解されておらず,「エビデンス=EBM」という混同が現在でも散見される.大規模な臨床試験の知見によって「EBM」が確立し,すべての臨床現場の判断が自動的に決まるわけではない.EBMのパイオニアであるHaynesらが述べる“Evidence does not make decisions, people do”という言葉は,日本におけるEBMのあり方を再考するうえで傾聴に値する.
EBMとは?
1991年に誕生した根拠に基づく医療(evidence-based medicine:EBM)は,質の高い医療を求める社会的な意識の高まりとともに,さまざまな分野で普及した.EBMは「臨床家の勘や経験ではなく科学的根拠(エビデンス)を重視して行う医療」といわれる場合があるが,本来のEBMは,臨床研究によるエビデンス,医療者の専門性・経験,患者の価値観,そして患者の臨床的状況・環境の4要素を統合し,よりよい患者ケアに向けた意思決定を行うものである1).エビデンスを提供する研究として,人間集団を対象とする疫学研究(臨床試験を含む)が重視される.その本来の意味は必ずしも理解されておらず,「エビデンス=EBM」という混同が現在でも散見される.大規模な臨床試験の知見によって「EBM」が確立し,すべての臨床現場の判断が自動的に決まるわけではない.EBMのパイオニアであるHaynesらが述べる“Evidence does not make decisions, people do”という言葉は,日本におけるEBMのあり方を再考するうえで傾聴に値する.
参考文献
1)Straus SE, et al:How to Practice and Teach EBM, 4th ed, Churchill Livingston, 2011
2)Institute of Medicine:Clinical practice guidelines we can trust. Washington DC, National Academy Press, 2011
3)Haynes RB, et al:Physicians' and patients' choices in evidence based practice. BMJ 324:1350, 2002
4)Kirigaya D, et al:Management and treatment of osteoporosis in patients receiving long-term glucocorticoid treatment;Current status of adherence to clinical guidelines and related factors. Inter Med 22:2793-2800, 2011
5)Cabana MD, et al:Why don't physicians follow clinical practice guidelines? A framework for improvement. JAMA 282:1458-1465, 1999
6)Nakayama T, et al:Confusion about the concept of clinical practice guidelines in Japan;On the way to a social consensus. Int J Qual Health Care 15:359-360, 2003
7)Eddy DM:Clinical decision making;From theory to parctice. Designing a practice policy. Standards, guidelines, and options. JAMA 263:3077, 3081, 3084, 1990
8)Higashi T, et al:Opinions of Japanese rheumatology physicians regarding clinical practice guidelines. Int J Qual Health Care 22:78-85, 2010
9)Hurwitz B:Legal and political considerations of clinical practice guidelines. BMJ 318:661-664, 1999
10)中山健夫:医療における診療ガイドライン:背景・現状・今後の展望.賠償科学38:6-14, 2012
11)稲葉一人:診療ガイドラインと法・第一研究:医療過誤事件数と取り上げられた判決数に関する研究.厚生労働科学「今後のEBM普及促進に向けた診療ガイドラインの役割と可能性に関する研究」(代表研究者・中山健夫)2010年度報告書,pp 39-41, 2010
12)中山健夫:EBMの普及と医療リテラシー:情報と医師患者コミュニケーション.日内会誌101:3600-3606, 2012
掲載誌情報