文献詳細
文献概要
特集 内科診療にガイドラインを生かす 呼吸器疾患
肺癌
著者: 林秀敏12 中川和彦1
所属機関: 1近畿大学医学部内科学講座腫瘍内科部門 2岸和田市民病院腫瘍内科
ページ範囲:P.109 - P.112
文献購入ページに移動肺癌の診断・治療に関するガイドラインは国内外で複数発行されており,日本では日本肺癌学会による『EBMの手法による肺癌診療ガイドライン』が2003年より発行されている.2011年からはできる限り最新のエビデンスを実地臨床に反映するために毎年アップデートされており,アップデートされた内容が日本肺癌学会のホームページ上にて無料で公開されている.利用対象としては,専門医,一般医のどちらにも対応している.stage,年齢,PS(performance status),癌遺伝子プロファイルなどの患者背景に基づいた樹形図が基本となっており,実臨床において実際の患者さんに合った標準治療について知ることができるように配慮されている.ガイドライン委員は外科・内科・放射線治療科・病理医を中心に構成される.内容に関しては,その表題に「EBMの手法による」とあるように,基本的にはシステマティックに抽出された研究結果(主に学術誌において報告されたものであるが,重要なものに関しては学会報告も含む)を基本として委員会により議論されて決定される.エビデンスレベルに沿って推奨度が決定され,項目ごとにMindsの基準に則った推奨グレードが示されている.2012年度からは推奨グレードの決定に際しては,エビデンスのみでなく実際の臨床状況に十分配慮する必要があることから,医療資源,保険制度などの適応性や有益性にかかわる害やコストについても議論されている.また,教科書に記載されている内容や国際的にも多くのガイドラインで推奨され,実地医療で常識的に行われているものは推奨すべきものとして記載されている(表1).
海外からは,米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology:ASCO)や欧州腫瘍学会(European Society of Medical Oncology:ESMO)などの学会が作成したガイドラインが作成されているほかに,全米で代表的な21の癌センターで結成されたガイドライン策定組織であるNCCN(National Comprehensive Cancer Network)が作成したNCCNガイドラインが有名である.こちらも年に1回以上の改訂が行われており,日本肺癌学会により監訳された日本語版がインターネット上で閲覧可能である.ASCOやESMOのガイドラインがエビデンスを重視した内容に対して,NCCNガイドラインは主に実地臨床に即した内容であり,世界中で幅広く使用されている.
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