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文献詳細

雑誌文献

medicina50巻11号

2013年11月発行

文献概要

特集 内科診療にガイドラインを生かす 呼吸器疾患

在宅呼吸ケア

著者: 服部久弥子1 木田厚瑞1

所属機関: 1日本医科大学呼吸器内科学

ページ範囲:P.146 - P.151

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はじめに

 慢性呼吸器疾患の安定期の治療は,在宅で行い外来通院を原則とすることはほかの慢性疾患と同様である.COPD(慢性閉塞性肺疾患)はその典型でありエビデンスが多く,ほかの慢性呼吸器疾患における在宅ケアに応用できる点がきわめて多い.ここで言う在宅呼吸ケアとは,COPDで言えば主に中等度以上の重症の場合に相当し,大多数は高齢患者であることが特徴である.在宅呼吸ケアの目標は,①病態の経年的悪化を避け息切れをはじめ自覚症状をできるだけ改善し,日常の活動性を高める,②経過中に生ずる急性増悪による予定外受診,入院を避ける,③虚血性心疾患など,ほかの慢性疾患の併存が病態を悪化させる可能性を常に念頭に置く,④在宅の生活ではQOLを保ち,医療費負担が最小限になるように治療計画を組む,ことである.在宅呼吸ケアの質を高めるためには呼吸器専門医だけでは不十分で,治療全体を広くカバーできるかかりつけ医を置き,ADLが低下した症例では訪問看護などを入れたチーム医療体制を組むことが原則である.

 最重症例の在宅呼吸ケアに含まれる治療項目では在宅酸素療法(home oxygen therapy:HOT,long-term oxygen therapy:LTOT),在宅人工呼吸療法がある.これらはハイテク機器を在宅で使うという特徴があり,医師の処方で開始されその指示のもと機器業者が介入するという問題点がある.機器の使用のみで治療効果が得られるという例は少なく,禁煙,吸入薬などの薬物療法,栄養指導,運動療法,呼吸理学療法に加え日常的生活や社会的活動が十分に行われるよう継続的に指導管理をしていかなければならない.これらは包括的呼吸ケアと呼ばれているがその概念は包括的呼吸リハビリテーションに一致するものである.ここでの注意点は,①症例ごとに医学面だけでなく介護力など社会的な面からのアセスメント能力が高いこと,②チーム医療を進めるための基本的なコンセプトが一致していること,③これを推し進めるためにはかかわる医療スタッフのスキルアップが必要なことである.図1は包括的呼吸リハビリテーション1)の概念図であり,図2は最大範囲のチーム医療を示したものである.これを基本として症例ごとにきめ細かい対応を組んでいく.

参考文献

1)木田厚瑞:包括的呼吸リハビリテーション―チーム医療のためのマニュアル,メディカルレビュー社,1998
2)Ries AL, et al:Pulmonary Rehabilitation:Joint ACCP/AACVPR Evidence-Based Clinical Practice Guidelines. Chest 131:4S-42S, 2007
3)Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease(GOLD):Global strategy for the diagnosis, management, and prevention of chronic obstructive pulmonary disease revised 2011. Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease, Inc, 2011
4)日本呼吸ケア・リハビリテーション学会 呼吸リハビリテーション委員会ワーキンググループ,他:呼吸リハビリテーションマニュアル―運動療法―第2版,照林社,2012
5)日本呼吸ケア・リハビリテーション学会 呼吸リハビリテーション委員会ワーキンググループ,他:呼吸リハビリテーションマニュアル―患者教育の考え方と実践―,照林社,2007
6)日本呼吸器学会肺生理専門委員会 在宅呼吸ケア白書ワーキンググループ:在宅呼吸ケア白書 2010,日本呼吸器学会,2010

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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