文献詳細
文献概要
特集 内科診療にガイドラインを生かす 呼吸器疾患
睡眠呼吸障害
著者: 赤柴恒人1
所属機関: 1日本大学医学部睡眠学・呼吸器内科学分野
ページ範囲:P.152 - P.157
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睡眠呼吸障害(sleep disordered breathing:SDB)の領域において世界をリードしているのは米国睡眠学会(American Academy of Sleep Medicine:AASM)であるが,いわゆるガイドラインと銘打ったものは発表されておらず,診断と治療のスタンダードという意味合いの報告が1999年にSleep誌に発表されている1).したがって,そこには現在ではガイドラインに必須である推薦度やエビデンスレベルなどは記載されていない.そして,SDBのなかで個々に必要な事項についてAASMとしてのコンセンサスをガイドラインとして,年を追って機関誌であるSleep誌に発表している.例えば,hypopneaの定義および評価についてのガイドライン2)や簡易型の睡眠モニターについてのガイドライン3)などが発表されている.したがって,SDBに関する個々の事項について何か知りたいときにはSleep誌を検索すればよい.SDBは睡眠だけでなく呼吸障害を伴うため,米国胸部学会(American Thorocic Society:ATS)やAmerican College of Chest Physician(ACCP)と共同のガイドラインも数多く発表されている.他国のガイドラインでは英国(スコットランド)4),カナダ5)から発表されている.特にカナダのガイドラインは2006年に第1版が発表され2011年に第2版が公表されており最新のガイドラインである.コンパクトにまとめられており,質問―回答形式で構成されており実際の診療に有用である.
わが国のガイドライン6)はSDBの代表的疾患である閉塞型睡眠時無呼吸症候群(obstructive sleep apnea syndrome:OSAS)に限って作られており,2005年に睡眠呼吸障害研究会から出版されている.このガイドラインが作られたのには理由があり,それは,2003年に起こった山陽新幹線運転士の居眠り事件である.この運転士が重症のOSASであったことが報道され,大きな社会的現象となった.そのため,この疾患を医学的,社会的に認知させ早期診断,早期治療を促すためにガイドライン作成が急がれた経緯がある.したがって,現在のようにエビデンスレベルうんぬんの形式をとっていない.睡眠呼吸障害研究会は1988年に第1回研究会が開催され,そのメンバーはSASをはじめとする睡眠と呼吸障害との関連に興味をもった呼吸器内科医,循環器医,耳鼻科医,精神科医,神経内科医,歯科医などから構成されており学際的な研究会である.本ガイドラインは当時のレベルでのコンセンサスをまとめたものであり,ガイドラインというよりOSASの診断と治療のマニュアルという表現のほうが適切かもしれない.その内容がAASMの勧告をほぼ忠実に踏襲しているのはやむを得ないことであろう.本ガイドラインは睡眠呼吸障害研究会によって公表されたものではあるが,日本呼吸器学会,日本呼吸管理学会(現日本呼吸ケア・リハビリテーション学会),日本睡眠学会,日本気管食道科学会,日本口腔・咽頭科学会などのわが国の主要な学会が後援している.
睡眠呼吸障害(sleep disordered breathing:SDB)の領域において世界をリードしているのは米国睡眠学会(American Academy of Sleep Medicine:AASM)であるが,いわゆるガイドラインと銘打ったものは発表されておらず,診断と治療のスタンダードという意味合いの報告が1999年にSleep誌に発表されている1).したがって,そこには現在ではガイドラインに必須である推薦度やエビデンスレベルなどは記載されていない.そして,SDBのなかで個々に必要な事項についてAASMとしてのコンセンサスをガイドラインとして,年を追って機関誌であるSleep誌に発表している.例えば,hypopneaの定義および評価についてのガイドライン2)や簡易型の睡眠モニターについてのガイドライン3)などが発表されている.したがって,SDBに関する個々の事項について何か知りたいときにはSleep誌を検索すればよい.SDBは睡眠だけでなく呼吸障害を伴うため,米国胸部学会(American Thorocic Society:ATS)やAmerican College of Chest Physician(ACCP)と共同のガイドラインも数多く発表されている.他国のガイドラインでは英国(スコットランド)4),カナダ5)から発表されている.特にカナダのガイドラインは2006年に第1版が発表され2011年に第2版が公表されており最新のガイドラインである.コンパクトにまとめられており,質問―回答形式で構成されており実際の診療に有用である.
わが国のガイドライン6)はSDBの代表的疾患である閉塞型睡眠時無呼吸症候群(obstructive sleep apnea syndrome:OSAS)に限って作られており,2005年に睡眠呼吸障害研究会から出版されている.このガイドラインが作られたのには理由があり,それは,2003年に起こった山陽新幹線運転士の居眠り事件である.この運転士が重症のOSASであったことが報道され,大きな社会的現象となった.そのため,この疾患を医学的,社会的に認知させ早期診断,早期治療を促すためにガイドライン作成が急がれた経緯がある.したがって,現在のようにエビデンスレベルうんぬんの形式をとっていない.睡眠呼吸障害研究会は1988年に第1回研究会が開催され,そのメンバーはSASをはじめとする睡眠と呼吸障害との関連に興味をもった呼吸器内科医,循環器医,耳鼻科医,精神科医,神経内科医,歯科医などから構成されており学際的な研究会である.本ガイドラインは当時のレベルでのコンセンサスをまとめたものであり,ガイドラインというよりOSASの診断と治療のマニュアルという表現のほうが適切かもしれない.その内容がAASMの勧告をほぼ忠実に踏襲しているのはやむを得ないことであろう.本ガイドラインは睡眠呼吸障害研究会によって公表されたものではあるが,日本呼吸器学会,日本呼吸管理学会(現日本呼吸ケア・リハビリテーション学会),日本睡眠学会,日本気管食道科学会,日本口腔・咽頭科学会などのわが国の主要な学会が後援している.
参考文献
1)Sleep-related breathing disorders in adults:recommendation for syndrome definition and measurement techniques in clinical research. The Report of an American Academy of Sleep Medicine Task Force. Sleep 22:667-689, 1999
2)Meoli AL, et al:Hypopnea in sleep-disordered breathing in adults. Sleep 24:469-470, 2001
3)Chesson AL, et al:American Academy of Sleep Medicine. American Thoracic Society. American College of Chest Physicians. Practice parameters for use of portable monitoring devices in the investigation of suspected obstructive sleep apnea in adults. Sleep 26:907-913, 2003
4)Scottish Intercollegiate/British Thoracic Society Guideline Management of obstructive sleep apnoea/hypopnoea syndrome in adults. Guideline NO 73, 2003
5)Fleetham J, et al:Canadian Thoracic Society guideline:Diagnosis and treatment of sleep disordered breathing in adults. Can Respir J 13:387-392, 2006
6)睡眠呼吸障害研究会(編):成人の睡眠時無呼吸症候群―診断と治療のためのガイドライン,メディカルレビュー社,2005
7)Johns MW:A new method for measuring daytime sleepiness;the Epworth sleepiness scale. Sleep 14:540-545, 1991
8)Peppard PE, et al:Prospective study of the association between sleep-disordered breathing and hypertension. New Engl J Med 342:1378-1384, 2000
9)Shahar E, et al:Slep-related breathing and cardiovascular disease. Cross-sectional results of the sleep heart health study. Am J Respir Crit Care Med 163:19-25, 2001
10)Jenkinson C, et al:Comparison of therapeutic and subtherapeutic nasal continuous positive airway pressure for obstructive sleep apnoea:a randomised prospective parallel trial. Lancet 356:2100-2105, 1999
11)Pepperell JC, et al:Ambulatory blood pressure after theraputic and subtheraputic nasal continuous positive airway pressure for obstructive sleep apnoea;A radomised parallel trial. Lancet 359:204-210, 2002
12)Marin JM, et al:Long-term cardiovascular outcomes in men with obstructive sleep apnoea-hypopnoea with and without treatment with continuous positive airway pressure;An observation study. Lancet 365:1046-1053, 2005
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