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文献詳細

雑誌文献

medicina50巻5号

2013年05月発行

文献概要

REVIEW & PREVIEW

肺高血圧症診療の進歩

著者: 宮川一也1 江本憲昭12

所属機関: 1神戸大学大学院医学研究科循環器内科学分野 2神戸薬科大学臨床薬学研究室

ページ範囲:P.916 - P.918

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最近の動向

 肺高血圧症(PH)は安静時平均肺動脈圧が25mmHg以上に上昇した状態と定義され,臨床病態により5つの臨床分類グループに分類されている(表1).第1グループの肺動脈性肺高血圧症(PAH)に含まれる特発性PAH,遺伝性PAH(従来の原発性肺高血圧症;PPH)は約20年前までは有用な治療法がなく,平均生存期間2.8年と予後不良の疾患であったが,近年,新たな特異的治療薬が開発され予後の改善が得られるようになっている1).現在,特異的治療薬の適応となるのは第1グループのPAHであり,プロスタサイクリン(PGI2)製剤(エポプロステノール,ベラプロスト),エンドセリン受容体拮抗薬(ボセンタン,アンブリセンタン),ホスホジエステラーゼ5(PDE-5)阻害薬(シルデナフィル,タダラフィル)が主な治療薬となっている.

 第4グループの慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)は,血管内腔の血栓性または線維性の狭窄,完全閉塞により肺動脈圧の上昇をきたす疾患であり,PAHと同様予後不良であることが知られている.CTEPHは手術治療(肺動脈内膜摘除術)により根治し得る疾患であるが,手術適応となる症例は多くないうえ,薬物治療の効果も乏しい.近年,このような手術適応のないCTEPH症例に対する治療法として肺動脈バルーン形成術が注目されている(図1).バルーンによる狭窄血管の拡張により肺動脈圧の著明な低下が得られることが知られており2),治療法としての確立が期待されている.

参考文献

1)Benza RL, et al:An evaluation of long-term survival from time of diagnosis in pulmonary arterial hypertension from the REVEAL registry. CHEST 142:448-456, 2012
2)Mizoguchi H, et al:Refined balloon pulmonary angioplasty for inoperable patients with chronic thromboembolic pulmonary hypertension. Circ Cardiovasc Interv 5:748-755, 2012
3)Frost AE, et al:The changing picture of patients with pulmonary arterial hypertension in the United States;How REVEAL differs from historic and non-US contemporary registries. Chest 139:128-137, 2011
4)Galie N, et al:Treatment of patients with mildly symptomatic pulmonary arterial hypertension with bosentan(EARLY study);A double-blind, randomised controlled trial. Lancet 371:2093-2100, 2008
5)McLaughlin LL, et al:ACCF/AHA 2009 expert consensus document on pulmonary hypertension a report of the American College of Cardiology Foundation Task Force on Expert Concensus Documents and the American Heart Association developed in collaboration with the American College of Chest Physicians;American Thoracic Society, Inc.;and the Pulmonary Hypertension Association. J Am Coll Cardiol 53:1573-1619, 2009

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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