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文献詳細

雑誌文献

medicina50巻9号

2013年09月発行

文献概要

特集 内科医のためのクリニカル・パール2 感染症

感染症のクリニカル・パール

著者: 大曲貴夫1

所属機関: 1国立国際医療研究センター国際感染症センター

ページ範囲:P.1548 - P.1550

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院内の発熱患者につけられる「腎盂腎炎」,「誤嚥性肺炎」という診断の多くは間違っている!

 感染症医の仕事のなかに,血液培養の陽性例のチェックがある.これを見ているとさまざまな気づきがある.それは,血液培養採取時の診断名として「腎盂腎炎」,「誤嚥性肺炎」がきわめて多いことである.そしてその臨床診断は,残念ながら,多くの場合外れてしまっている.

 なぜこういうことが起こるのだろうか.発熱患者を診たときに,一見では問題がわからず,診断に困ってしまう場合がある.症状が非特異的である,身体所見で特記事項がないなどの場合に多い.このような場合に医師は本能的に何らかの診断をつけようとする.その際に用いられる診断として「腎盂腎炎」,「誤嚥性肺炎」がきわめて多い.一見症状や所見に乏しいが「発熱+尿中白血球陽性」であるので腎盂腎炎と診断する.一見症状や所見に乏しいが「高齢者であって,胸部X線写真で陰影があるように見える」から誤嚥性肺炎と診断する.このようなことが起こってしまう.診断にたどり着けないがゆえに,手近な診断である腎盂腎炎や誤嚥性肺炎に頼ってしまう.いわば認知バイアスとしてのanchoringが起こってしまうのである.

参考文献

1)Moonens F, et al:Usefulness of gram staining of blood collected from total parenteral nutrition catheter for rapid diagnosis of catheter-related sepsis. J Clin Microbiol 32:1578-1579, 1994

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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