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文献詳細

雑誌文献

medicina50巻9号

2013年09月発行

特集 内科医のためのクリニカル・パール2

血液・腫瘍

がん診療のクリニカル・パール

著者: 勝俣範之1

所属機関: 1日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科

ページ範囲:P.1560 - P.1563

文献概要

すべてのがんに,早期発見・早期治療が有効というわけではない.検診が有効ながんは一部のみ.PET検診は勧められない

 すべてのがんに,早期発見・早期治療が有効であるわけではない.がんの進行は,非常に緩徐に進行するものから,急速に進行し,あっという間に死に至るものまでさまざまである.早期発見・早期治療は理論的には良いように思われるが,緩徐に進行するがんや,急速に進行するがんには,適応することはできない.がん検診を考える場合,検診がどこまで有効かどうかを知っておく必要がある.有効性の評価をするには,発見率だけではいけない.がんの発見率が高くなったとしても,最終的にがんの死亡率まで下げることができなければ,検診を勧めるだけの意味がない.厚生労働省は,胃がん,子宮頸がん,肺がん,乳がん,大腸がんを科学的根拠に基づくがん検診として推奨している1,2)が,このうち,国際的にもランダム化比較試験,メタアナリシスでのエビデンスをもって推奨されているのは,乳がんのマンモグラフィー3),大腸がんの便潜血検査4)のみである.また,最近では,乳がんマンモグラフィー検診で,早期がんは増えたが,進行がんが減っていないことのアンバランスから,乳がん検診は過剰診断が行われているだけであり,検診の利益は少ないのではないか,ということがNew England Journal of Medicineに投稿され,乳がん検診の是非が話題になっている5)

 このように,がん検診に対するエビデンスには限りがあり,すべてのがん腫に適応できるものでもない.また,検査による過剰診断,偽陽性の問題もあり,適応は慎重であるべきである.PET(positron emission tomography)検査は,特異度が高く(約95%),近年多くのがん腫の病期診断,治療の評価として使われるようになってきたが,検診として勧めるだけのエビデンスは確立されていない.国立がん研究センターの研究で,PET検査は従来の検査に比べて,感度が低く(17.8%),従来の検査で見つかったのに,PETで見落とされていた偽陰性率が高かった(82.1%)ことを報告している6)

参考文献

1)独立行政法人国立がん研究センターがん予防・検診研究センター:有効性評価に基づくがん検診ガイドライン作成手順.http://canscreen.ncc.go.jp/guideline/matome.html, 2005
2)健発第0331058号厚生労働省健康局長通知:がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針について.http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/gan_kenshin02.pdf, 2008
3)Gotzsche PC, Nielsen M:Screening for breast cancer with mammography. Cochrane Database Syst Rev:CD001877, 2011
4)Hewitson P, et al:Cochrane systematic review of colorectal cancer screening using the fecal occult blood test (hemoccult);An update. Am J Gastroenterol 103:1541-1549, 2008
5)Bleyer A, Welch HG:Effect of three decades of screening mammography on breast-cancer incidence. N Engl J Med 367:1998-2005, 2012
6)Terauchi T, et al:Evaluation of whole-body cancer screening using 18F-2-deoxy-2-fluoro-D-glucose positron emission tomography;A preliminary report. Ann Nucl Med 22:379-385, 2008
7)日本臨床腫瘍学会(編):原発不明がん診療ガイドライン,メディカルレビュー社,2013
8)Fromm GL, et al:Papillary serous carcinoma of the peritoneum. Obstet Gynecol 75:89-95, 1990
9)Yang HL, et al:Diagnosis of bone metastases;A meta-analysis comparing(18)FDG PET, CT, MRI and bone scintigraphy. Eur Radiol 21:2604-2617, 2011
10)Glare P, et al:A systematic review of physicians' survival predictions in terminally ill cancer patients. BMJ 327:195-198, 2003
11)Morita T, et al:The Palliative Prognostic Index;A scoring system for survival prediction of terminally ill cancer patients. Support Care Cancer 7:128-133, 1999
12)Morita T, et al:Communication about the ending of anticancer treatment and transition to palliative care. Ann Oncol 15:1551-1557, 2004
13)ASCO Recommends Steps to Improve Doctor-Patient Communication about End-of-Life Cancer Care. American Society of Clinical Oncology. News Releases January 24, 2011
14)Back AL, et al:Hope for the best, and prepare for the worst. Ann Intern Med 138:439-443, 2003

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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