icon fsr

文献詳細

雑誌文献

medicina51巻2号

2014年02月発行

文献概要

連載 Step up腹痛診察・6

28歳女性,間欠的な下腹部痛と下痢

著者: 小林健二1

所属機関: 1聖路加国際病院附属クリニック聖路加メディローカス一般内科

ページ範囲:P.343 - P.347

文献購入ページに移動
[現病歴]約3カ月前より下腹部痛を自覚するようになった.腹痛は主に排便前にあり,排便により軽快した.痛みは緩徐に始まりキリキリと差し込むような性状だった.食事摂取と腹痛との因果関係は不明だが,朝食後に便意をもよおすと腹痛を自覚することが多かった.排便は1日3,4回あることが多く,多くは軟便または下痢である.血便はなかった.排便は特に午前中に多く,通勤電車を途中下車しなければならないこともしばしばある.持続する発熱,体重減少,食欲低下はなかった.痛みの程度はNumeric Rating Scale(NRS)で2/10~3/10程度だった.

患者には症状の始まる約1カ月前に,発熱,下痢,血便をきたし近医を受診した既往がある.感染性腸炎の診断で抗菌薬を投与され,症状は約1週間で軽快した.抗菌薬投与前に施行した便培養ではCampylobacter jejuniが検出された.腸炎の症状が軽快した後3週間程して下腹部痛と軟便,下痢が始まり,前回受診した医師の診察を再び受けた.Clostridium difficile(CD)感染による下痢の可能性を考慮し便の検査が行われたが,CDトキシンは陰性だった.同医から整腸剤を処方され経過をみることになった.下腹部痛と下痢の症状には波があり,比較的落ち着いている時と増悪する時があった.悪い時には週に3~4日は下痢だった.その後転職に伴い転居し,通院は中断された.市販の下痢止めなどの服用で様子を見ていたが,その後も症状が続くため心配になり受診した.

[既往歴]虫垂炎で虫垂切除 (14歳時)

[常用薬]なし

[薬剤アレルギー]なし

[社会歴]喫煙はしない.飲酒はビール350mL/日,週3回程度.

参考文献

1)Spiller R, et al:Postinfectious irritable bowel syndrome. Gastroenterology 136:1979-1988, 2009
2)Longstreth GH, et al:Functional bowel disorders. Gastroenterology 130:1480-1491, 2006
3)Halvorson HA, et al:Postinfectious irritable bowel syndrome-A meta-analysis. Am J Gastroenterol 101:1894-1899, 2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?