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雑誌目次

雑誌文献

medicina52巻11号

2015年10月発行

雑誌目次

特集 いまアレルギー外来がおもしろい—安全で効果の高い治療を使いこなす

著者: 岡田正人

ページ範囲:P.1867 - P.1867

 大学病院での研修中に「外来ほど楽しいものはない」と教授によく言われました.彼のアレルギー臨床免疫外来には診断のつかない患者がたくさん紹介されてきて,それを病歴と診察を中心に理路整然と診断していくのは見ていてもとても楽しかったですし,自分の患者一人ひとりをプレゼンして指導を受けると自分も成長するのがよくわかり,基礎研究が忙しい時期でも外来だけは楽しみにしていました.その教授がイェール大学でアレルギー科を立ち上げたのは60年以上前で,石坂公成先生がIgEを発見する前でした.彼によると,最初に抗ヒスタミン薬が発売された時,もうこれでアレルギーは解決したと専門を変える医師が沢山いたそうです.さて,いまはどうでしょうか.診断はいまだに病歴と診察の醍醐味を残しながらも,治療の進歩は著しく,眠くならない抗ヒスタミン薬,副作用の少ない1日1回点鼻ステロイド,1つの吸入薬で維持も発作時も対応できるSMART(symbicort maintenance and reliever therapy)療法に加えて,発作自体の出現率を下げる1日1回の長時間作用性β2刺激薬(LABA)まであります.目薬も抗ヒスタミン作用と肥満細胞顆粒遊離抑制作用の両方をもつもの,鼻閉にも血管収縮薬/抗ヒスタミン薬の合剤から安全な抗ロイコトリエン薬まであり,さらに,とうとう日本にも安全で根治治療である舌下減感作療法が本格的に導入されました.
 “いま,アレルギーがおもしろい”.そうです,とても安全になった効果的な治療のコツを覚えれば,一般内科に長けた先生方には患者さんが“良くなった”と実感する世界最高レベルの診療をしていただけると思います.特別な手技は全く必要なく,すぐに使える分野です.

特集の理解を深めるための21題

ページ範囲:P.1990 - P.1993

座談会

アレルギー外来を内科医が担う—最近の動向と治療のコツ

著者: 岡田正人 ,   山脇功 ,   萩野昇

ページ範囲:P.1868 - P.1875

岡田 最近,アレルギーの薬剤がかなり進歩し,安全で効果的な治療ができるようになりました.そのため,いままで以上に一般内科医の先生がアレルギー診療を担う機会は増えていると思います.そこで今回は,アレルギーの患者さんを実際に診療されている先生方にお話しをお聞きしたいと思います.

Overview

アレルギーの診かた,考えかた

著者: 岡田正人

ページ範囲:P.1876 - P.1881

ポイント
●アレルギーの診断は,まずⅠ型か非Ⅰ型かを考えて診察する.
●重症薬疹は全身症状から疑い,初期皮疹の低い重症度に惑わされないようにする.
●鼻炎の治療は鼻漏と鼻閉を分けて考える.
●慢性蕁麻疹は,アレルギーが原因のことは少なく,まずは対症療法でしっかりと症状をコントロールすることから始める.
●アナフィラキシーの初期対応(下肢挙上,アドレナリンなど)は病態を理解して覚えることで迅速な対応を心掛ける.

治療薬を使いこなす

抗ヒスタミン薬

著者: 牧野公治 ,   尹浩信

ページ範囲:P.1882 - P.1884

ポイント
●多くのアレルギー疾患では,非鎮静性の抗ヒスタミン薬,いわゆる第3世代抗ヒスタミン薬を第一選択として用いる.
●体内薬物動態や患者の年齢,生活や労働の状況,希望などを勘案して抗ヒスタミン薬を選択する.
●効果が不十分の場合は,同じ抗ヒスタミン薬を増量して投与するのがよい.

点眼薬

著者: 内尾英一

ページ範囲:P.1886 - P.1889

ポイント
●アレルギー性結膜疾患の治療薬には,抗アレルギー薬,ステロイド薬,免疫抑制薬や非ステロイド性抗炎症薬などのさまざまな点眼薬があり,病態や重症度によって使い分ける.
●ステロイド点眼薬は作用が強く,重症例では抗アレルギー点眼薬としばしば併用される.
●免疫抑制薬はT細胞を効果的に抑制する.点眼製剤はシクロスポリンとタクロリムスである.
●ステロイド点眼薬の眼局所副作用としては,眼圧上昇,感染症誘発などがあるため,定期的に眼圧を測定することが必要である.

点鼻薬

著者: 増山敬祐 ,   松岡伴和 ,   遠藤周一郎

ページ範囲:P.1890 - P.1892

ポイント
●鼻噴霧用ステロイド薬は,アレルギー性鼻炎に最も有効な薬剤である.
●花粉症では症状の軽いうちから使用し始め,連用することがポイントである.
●鼻閉が強い症例には,点鼻血管収縮薬を1〜2週間の短期間併用する.
●点鼻抗ヒスタミン薬でも眠気を起こす可能性があるので,注意が必要である.

皮膚外用薬—保湿剤とステロイド

著者: 新井達

ページ範囲:P.1893 - P.1895

ポイント
●ステロイド外用薬はその効力により5段階に分類される.
●外用薬は体の部位と皮疹の性状に合わせて処方する.
●Finger tip unitは外用指導に有用である.

吸入薬

著者: 田上あさ子 ,   町田健太朗 ,   井上博雅

ページ範囲:P.1896 - P.1899

ポイント
●吸入薬は気道に直接到達し作用するため,全身性の副作用は少ないが,気道局所の副作用には注意が必要である.
●吸入ステロイド薬(ICS)は,長期管理の第一選択薬である.
●コントロール不十分な場合,ICSを単独で増量するよりも,長時間作用性β2刺激薬(LABA)や長時間作用性抗コリン薬(LAMA)の吸入,経口ロイコトリエン受容体拮抗薬などと併用するほうが有効である.
●LABAの抗炎症作用は明らかでないため,喘息の長期管理にはLABA単独ではなくICSと併用することが必須である.
●吸入薬は吸入手技が不十分であると十分な効果を発揮しないため,繰り返し吸入方法を確認し指導することが重要である.

ロイコトリエン受容体拮抗薬

著者: 嶺崎祥平 ,   永田真

ページ範囲:P.1900 - P.1903

ポイント
●ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)は気管支喘息,アレルギー性鼻炎の両疾患に臨床効果を示す.
●喘息管理のガイドラインでは,LTRAは基本的に吸入ステロイドの補助薬として推奨される治療薬の1つである.鼻炎合併喘息や,アスピリン喘息では特に有用性が高い.
●アレルギー性鼻炎では特に鼻閉型に高い効果を示す.

全身性ステロイド

著者: 横地律子 ,   萩野昇

ページ範囲:P.1904 - P.1908

ポイント
●ステロイドの全身投与でアレルギー性疾患の「慢性期」を抑制することは,多くの場合で治療副反応が利益を上回る.急性期には試みられることが多いが,良質なエビデンスは僅少である.
●アトピー性皮膚炎など,いくつかの疾患では短期使用で劇的な改善がみられるが,減量・中止とともに重篤な悪化が起きることもあり,ステロイド全身投与そのものは推奨されない.
●局所投与(吸入薬,軟膏など)への切り替え,抗アレルギー薬の併用などにより,早期中止を試みる.

舌下免疫療法

著者: 後藤穣

ページ範囲:P.1909 - P.1911

ポイント
●薬物療法は対症療法であるが,アレルゲン免疫療法は根治的な治療法である.
●12歳以上のスギ花粉症に対して舌下免疫療法が実用化された.
●舌下免疫療法は簡便で安全な治療法であるが,副反応の発現に注意する.
●有効性を高めるために治療アドヒアランスの維持が重要である.

妊娠・授乳とアレルギー疾患治療薬

著者: 後藤美賀子

ページ範囲:P.1912 - P.1915

ポイント
●妊娠初期に薬剤投与を行う場合は,疫学研究で催奇形性が否定的な薬を用いる.
●気管支喘息患者が妊娠を希望した場合,病状の安定を優先し必要な薬は継続する.
●アレルギー性鼻炎・結膜炎の妊婦では,抗原回避を原則とし,局所投与薬を適宜用いる.

アレルギー診療における東洋医学

著者: 津田篤太郎

ページ範囲:P.1916 - P.1918

ポイント
●抗原回避が困難で,薬物療法が効果不十分あるいは拒否される場合に,漢方治療が検討される.
●アトピーは炎症軽減とバリア機能回復という2つの目標に,それぞれ異なった生薬を配する.
●鼻炎では小(ショウ)青(セイ)竜(リュウ)湯(トウ)が代表的処方であるが,含有する麻黄の副作用に留意する.
●気管支喘息では,心因性の要素が関与する咳嗽に漢方薬がしばしば用いられる.

この病態をどう診断していくか,危ない疾患を見逃さないために

好酸球増加

著者: 陶山恭博

ページ範囲:P.1921 - P.1927

ポイント
●末梢血中の好酸球の絶対数を確認する.
●まず薬剤性や感染症など二次性の疾患,臓器障害の有無から検索をする.
●原因が不明で全身状態が重篤な場合は1カ月を待たずに早期より遺伝子検査や骨髄検査を行う.

遷延性咳嗽

著者: 藤村政樹

ページ範囲:P.1928 - P.1931

ポイント
●3週間以上持続する咳嗽を遷延性咳嗽と定義する.
●その原因疾患は,慢性咳嗽の原因疾患と大差はない.慢性咳嗽と同様に,咳喘息,アトピー咳嗽,副鼻腔気管支症候群が多い.
●慢性咳嗽に比較して,治療的に診断ができない場合が多い.

痒み

著者: 室田浩之

ページ範囲:P.1932 - P.1934

ポイント
●皮膚疾患に由来する痒みと,皮膚疾患を伴わない痒み(皮膚瘙痒症)がある.
●痒みはさまざまな起痒因子および末梢/中枢神経の増感などによって生じる.
●皮膚瘙痒症は背景因子や全身疾患の関与を念頭に置き,診療にあたる.

アレルギーcommon diseaseの診断・治療・生活指導

食物アレルギーの外来診療

著者: 栗原和幸

ページ範囲:P.1936 - P.1940

ポイント
●発症機序に関して「経皮感作」と「経口免疫寛容」を踏まえたパラダイムシフトが進行中である.
●基本的な対応は,正しい診断に基づく最小限の除去食と誤食時の対応の指導である.
●正しい診断のために経口負荷試験が推奨されている.
●明らかな症状を誘発しないものは,検査結果が陽性でも食べてよい(食べるほうがよい).
●食べて治療する経口免疫療法が試みられている.

薬物アレルギーの診断と治療

著者: 池澤善郎

ページ範囲:P.1941 - P.1947

ポイント
●投薬中か投薬後数日以内に生じた発疹は薬疹を疑い,その臨床病型(発疹型)を推定する.
●投与薬物と発疹の出方・経過の時間的関連および薬物アレルギー歴を調査する.
●発疹の悪化拡大の進行が速く,粘膜疹や発熱などの全身症状を伴う例は重症例が多い.
●発疹の形・分布などが,推定原因薬剤による薬疹の報告例に合致するかを検討する.
●被疑薬の中止とその改善効果の観察を行う.改善傾向がない場合,重症例が多いため注意する.
●重症薬疹のSJS,TEN,DIHS,AGEPが疑われる場合,対応できる医療機関に紹介する.
●PTやDLSTなどの原因薬剤同定検査を実施し,その結果を記載した薬疹カードを発行する.

アナフィラキシーの診断と治療

著者: 林寛之

ページ範囲:P.1948 - P.1952

ポイント
●アナフィラキシーを疑ったら,第一選択薬はアドレナリンの筋注である.
●ショックを伴う場合は,生理食塩水またはリンゲル液を大量投与する.
●予防薬としてアドレナリン自己注射(エピペン®)の適応を知る.

接触皮膚炎の診断と治療

著者: 佐野晶代 ,   松永佳世子

ページ範囲:P.1955 - P.1958

ポイント
●アレルギー性接触皮膚炎の原因物質と抗原の診断には,パッチテストが有用である.
●2012年度の本邦におけるジャパニーズスタンダードシリーズの陽性率では硫酸ニッケルが最も高かった.
●接触皮膚炎の治療では,原因となる接触物質を確定し除去することが重要である.
●治療に用いるステロイド外用薬により,接触皮膚炎を生じることもある.

蕁麻疹の診断と治療

著者: 猪又直子

ページ範囲:P.1960 - P.1964

ポイント
●痒みを伴う浮腫性紅斑や膨疹が出没し,1つの皮疹が24時間以内に跡形なく消退することが確認できれば,蕁麻疹と診断できる.
●蕁麻疹の原因や誘因は多様であり,適正な検査や治療を行うために,病型の絞り込みが大切になる.
●病型別の頻度では,特発性が70%と圧倒的に多く,次いで,機械性やコリン性(約7%)が続く.Ⅰ型アレルギーによる蕁麻疹は,約5%と一般の想定より少ない.
●蕁麻疹全般の治療として,鎮静性の低い第2世代抗ヒスタミン薬が第一選択薬となる.

職業性アレルギーの診断と治療

著者: 土橋邦生

ページ範囲:P.1966 - P.1969

ポイント
●アレルギー疾患診療では,職業性要因を必ず疑い問診する.
●長期休暇で症状が改善し,就業日に悪化する点が問診のキーポイントである.
●治療は,原因物質回避を優先し,同時に各疾患の十分な標準薬物治療を行う.
●職場のサーベイランス,労働者の教育が重要である.

アレルギー性結膜疾患の生活指導と薬物治療

著者: 高村悦子

ページ範囲:P.1970 - P.1973

ポイント
●効果と安全性の点から,アレルギー性結膜炎の治療の第一選択は,抗アレルギー点眼薬である.
●スギ花粉症では,抗アレルギー点眼薬による初期療法で,花粉飛散期の眼症状が軽減する.
●花粉飛散ピーク時,抗アレルギー点眼薬だけでは症状が治まらない時には,ステロイド点眼薬を併用する.
●ステロイド点眼薬には,眼圧上昇という副作用があるため,使用中には眼圧チェックが必要である.
●スギ花粉症のセルフケアとして,外出時の眼鏡装用,人工涙液による洗眼を勧める.

アレルギー性鼻炎の生活指導と薬物治療

著者: 大木幹文

ページ範囲:P.1974 - P.1978

ポイント
●アレルギー性鼻炎の生活管理ではまず抗原の回避を行う.
●症状を軽減するためには,鼻粘膜の過敏性を減弱するように指導する.
●体質改善には免疫療法を考慮する.
●薬物選択の際は,患者個々の病型・重症度を把握したうえで行う.

アトピー性皮膚炎の生活指導と薬物治療

著者: 正田哲雄 ,   大矢幸弘

ページ範囲:P.1979 - P.1983

ポイント
●アトピー性皮膚炎は,痒みを伴う特徴的な皮疹が慢性的に持続する皮膚のアレルギー疾患である.
●日常の外来で頻繁に遭遇する疾患であるが,患者が適切な情報提供や治療を受けていないことも多い.
●主観的な評価(痒みやQOL),皮疹の客観的な評価(皮膚所見やバイオマーカー)を組み合わせて重症度や病勢を把握する.
●治療の3本柱は,①悪化因子の除去,②毎日のスキンケア,③適切な薬物療法である.
●正しいスキンケア方法,そして,改善した後も治療を継続することの意義を患者に伝え,実行してもらうことが重要である.

喘息の生活指導と薬物療法

著者: 宮川武彦

ページ範囲:P.1984 - P.1988

ポイント
●喘息の病態は好酸球を中心とした気道の慢性炎症である.
●喘息治療においては,緻密な生活指導が求められる.
●喘息治療の中心的薬剤は吸入ステロイド薬(配合剤を含む)である.
●各吸入ステロイド薬(配合剤を含む)にはそれぞれ特性があり,それらの特性を生かした使い分けが求められる.
●吸入ステロイド薬(配合剤を含む)は,適切なデバイスを使い,適切な用量を,正しい吸入方法で,定期的に使用するのがポイントである.

連載 異常所見を探せ! 救急CT読影講座・10

個人差を念頭に

著者: 石田尚利

ページ範囲:P.1861 - P.1861

50代の男性.起床時に心窩部から背部に刺すような痛みを自覚.徐々に増強してきたため,救急外来を受診.問診で前日に大量に飲酒したことが判明.苦悶様の表情で,触診上は心窩部に圧痛あり.血液検査にてWBC 10,500/μL,AMY 256 U/L(基準値42〜158),CRP 2.05 mg/dL.担当医は急性膵炎を疑い,腹部造影CTを施行.

いま知りたい 肺高血圧症・1【新連載】

肺高血圧症の成因・病態

著者: 木岡秀隆 ,   瀧原圭子

ページ範囲:P.1994 - P.1998

 肺高血圧症(pulmonary hypertension:PH)はさまざまな病態に関連して肺動脈圧の上昇をきたす疾患の総称であり,右心カテーテル検査により評価される安静時平均肺動脈圧25 mmHg以上と定義される1).最新の肺高血圧症分類を表1に示すが2),病因・病態に基づき5つに分類されている.本稿では,第1群肺高血圧症,すなわち肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension:PAH)を中心にその成因と病態について,最新の知見を含め解説する.
 かつてPAHは有効な治療法も少なく,進行すれば右心不全3)をきたすきわめて予後不良の疾患であった.しかし2000年に責任遺伝子が同定されて以降,急速にPAHの発症および進展の分子メカニズムの解明が進み,同時に有効な治療法が相次いで開発されることとなった.循環器内科学において,最も急速に治療が進歩した領域の1つであり,理解をUpdateしておく必要がある.

Choosing Wisely Japan その検査・治療,本当に必要ですか?・1【新連載】

ケース:90代男性,認知症の進行・食欲低下

著者: 徳田安春

ページ範囲:P.1999 - P.2000

 Choosing Wiselyとは,診断や治療内容の選択において,エビデンスに基づいて,医師と患者の対話を促し,患者にとって有害な過剰検査や過剰診療を減らすように呼びかける活動である.2011年に米国がChoosing Wiselyをキックオフし,その後カナダなど欧米諸国に急速に広まっている.現在,各国の臨床医学系の学会が,それぞれ必要性を考慮すべき検査や治療に関して5つのリスト(List of Five)を挙げ,広く公開している.
 2015年5月にロンドンで開催されたChoosing Wisely International Round Tableに筆者も参加してきた(図1).米国『Consumer Reports』誌の代表者も参加し,患者側代表の参加も急速に拡大している.アジアからは韓国(Ahn教授,Korea University)と日本(筆者)の2カ国が参加した.

総合診療のプラクティス 患者の声に耳を傾ける・15

診断が難しい時こそ徹底討論による分析的推論を用いる

著者: 八幡晋輔 ,   見坂恒明

ページ範囲:P.2002 - P.2005

 診断への最も重要なプロセスは,病歴と身体診察所見,そこから拾い上げられた問題の描写〔problem representation:問題志向システム(POS)では問題リストに相当〕を基に立てられた仮説,そして鑑別診断を挙げることから成り立っています.したがって,鑑別診断を系統立てて考え,正しく診断するためには,注意深い病歴聴取および見落としのない正確な身体診察から得られた情報と,その解釈が必須となります.
 病歴は,患者に最初に認められた症状と,それに続いて起こった出来事によって構成されます.正確な診断に必要な情報の60〜80%は病歴聴取から得られるという事実が広く受け入れられています1,2)

魁!! 診断塾・19

賢い妻には情がある!?の巻

著者: 佐田竜一 ,   綿貫聡 ,   志水太郎 ,   石金正裕 ,   忽那賢志

ページ範囲:P.2006 - P.2011

ADLは全介助で,会話可能,デイサービス利用中の80歳女性.数年前から慢性的な下痢があった.来院前日,日中は普段通りだったが,17時に37.5℃の微熱を認めた.その後,来院当日には11時に38.0℃まで上昇し,SpO2は91%に低下した.往診医にてセフトリアキソン2 gを投与されたが解熱しないため,救急外来を受診した.
既往歴 14年前:胃癌にて胃全摘,9年前:前壁中隔心筋梗塞,右中大脳動脈梗塞,2年前:左中大脳動脈梗塞,PTEG(percutaneous trans-esophageal gastro-tubing)留置.そのほか心房細動・糖尿病・高血圧・脂質異常症・甲状腺機能低下症にて外来通院中.

診断力を上げる 循環器Physical Examinationのコツ・7

Ⅱ音の聴きかた—脚ブロック,肺高血圧症の診断に役立つ

著者: 山崎直仁

ページ範囲:P.2012 - P.2018

Ⅱ音で何がわかるか?
 Ⅱ音分裂の異常を聴きとることが,脚ブロック,心房中隔欠損症の診断の契機となる.Ⅱ音の肺動脈成分亢進があれば,肺高血圧症の存在が強く疑われる.

目でみるトレーニング

問題781・782・783

著者: 田中育太 ,   飯田康 ,   大熊裕介

ページ範囲:P.2020 - P.2025

あたらしいリウマチ・膠原病診療の話・7

リウマチ性疾患の緊急事態

著者: 萩野昇

ページ範囲:P.2026 - P.2031

 リウマチ科医が「数秒〜分の単位」で意思決定しなければならないシチュエーションは,頻繁ではない.あるとすれば,心血管疾患など,併存する病態による「急変」の時だろうか.リウマチ科医が院内を走ってベッドサイドに駆けつけることはそれほど多くない.
 一方で,「数時間の単位」で意思決定を要することは非常に多い.時間単位での微調整を繰り返すことによって,院内を「走らなくても済むように」するのがリウマチ・膠原病診療であるといえる.

西方見聞録・22

MAR

著者: 山口典宏

ページ範囲:P.2032 - P.2033

 「来月のローテはどこ?」
 「MARだよ.最悪だろ?」

REVIEW & PREVIEW

機能性ディスペプシア

著者: 三輪洋人

ページ範囲:P.2040 - P.2043

何がわかっているか
機能性ディスペプシアとは
 ディスペプシアとは,「胃が痛い」「胃がもたれる」など上腹部を中心とする症状を指す.このディスペプシア症状を有する人は非常に多く,日本人の約1割が日常的にディスペプシア症状を有しているとされる.しかし,その原因として器質的疾患が認められることは少なく,ディスペプシア患者の1割にも満たないことが報告されている.つまり,症状の原因は胃癌や潰瘍などの器質的疾患ではないことが圧倒的に多い.
 このように,内視鏡検査などによっても明らかな器質的疾患がみられないのにディスペプシア症状を訴える疾患を機能性ディスペプシア(functional dyspepsia:FD)と呼ぶ.これまでFD患者は慢性胃炎と診断されて治療されることが多かったが,本来なら慢性胃炎は胃粘膜の組織学的炎症を指すものであるため,症状の有無とは切り離して考えるべきものである.すなわち,組織学的胃炎があるからといって症状があるわけではなく,逆に症状があるからといって組織学的胃炎があるわけではない.したがって,組織学的胃炎のない有症状患者はFDとして治療すべきである.

書評

—小泉俊三 監訳—テイラー 10分間鑑別診断マニュアル 第3版—原著:Taylor's Differential Diagnosis Manual;Symptoms and Signs in the Time-Limited Encounter, 3rd ed

著者: 鈴木富雄

ページ範囲:P.1889 - P.1889

 外来診療のマニュアルとして評判の高い本書の第3版がこの度翻訳され,手元に届いた.
 第1章「10分間診断の基本原理」の部分は,初版から記述された内容とのことであるが,この基本原理は最新版でも残され,ある意味本書のなかで最も重要な章となっている.「診察中ずっと診断のきっかけとなる鍵を探し続けよう」,「まず最もありふれたことを考えよう」,「利用可能な援助はすべて使おう」,「問題の心理社会的側面を考慮しよう」,「助けが必要なときには助けを呼ぼう」,「連続的に進化する診断という枠組みのなかで考えよう」.テイラー先生は平易な語り口で基本原理を問いかけてくるが,その内容は日夜外来診療に従事する私たち医師にとって極めて有益で多くの示唆に富み,診療に対して不安を抱いている研修医のみならず,20年選手のベテラン勢にとっても,間違いなく心に響くメッセージとなっている.この最初の数ページにわたる基本原理の章に目を通すだけでも,明日から診察室に入る心持が違ってくる.

—倉原 優 著—呼吸器診療 ここが「分かれ道」

著者: 中島啓

ページ範囲:P.1908 - P.1908

 日常診療は常に悩みの連続である.呼吸器診療だけでなく,多くの診療科で共通することかもしれないが,医学においては,確立されたエビデンスが存在しない領域も多々ある.呼吸器内科専門医であっても,臨床のなかでは,「分かれ道」に立たされることは少なくない.呼吸器診療における「分かれ道」に遭遇した臨床医は,自分の臨床経験,教科書・文献データに基づき,悩みながらも「目の前の患者の幸福につながる」と信じる決断をしていくことになる.
 本書『呼吸器診療「ここが分かれ道」』は,呼吸器内科医から総合診療医まで,呼吸器診療に携わるものなら誰もがもつような設問に対して,著者の経験,現時点での最新文献に基づく答えと思考過程を,わかりやすく示してくれている.著者のブログ「呼吸器内科医」(http://pulmonary.exblog.jp/)は質の高い文献情報が豊富で,呼吸器内科医なら誰もが知る人気ブログとなっているが,本書籍も最新文献と臨床情報を読者に提供する期待通りの内容である.

—佐藤健太 著—「型」が身につくカルテの書き方

著者: 長谷川仁志

ページ範囲:P.1919 - P.1919

 医学教育の国際認証時代に入り,基礎医学・臨床医学および医療行動科学が十分に統合された医学生への教育の提供と,それによる基本的診療能力のパフォーマンスレベルでの質保証が必須となってきた.診療参加型実習(クリニカル・クラークシップ)の充実が強く求められている日本で,しっかりと熟考されたカルテ記載能力の修得は,まさに医学教育の集大成となる目標の一つである.しかし,現時点で,カルテ記載教育は必ずしも充実しておらず,学生・研修医と各科指導医の双方における日本の課題となっている.私は,1年次からカルテ記載について学習することが,基礎医学,臨床医学および医療行動科学を十分に統合して学ぶべき医学生の目標設定となり,医学学習のモチベーションにつながると考えた.そして,数年前から担当している1年次通年の医療面接・臨床推論学習に,模擬患者による医療面接OSCEとともに,カルテ記載を取り入れてきた経緯もあり,本テキストを楽しみに読ませていただいた.
 本書は前半で,カルテ記載の「基本の型」として,あらゆる診療科の基本となるべきSOAP(S:Subjective data,O:Objective data,A:Assessment,P:Plan)に沿った詳細なポイントを,良い例,悪い例を比較して提示しながら解説している.特に,「S・O以上に書くべき内容や,記載形式が曖昧で,医師によって書き方の違いが大きい」とされ,書き方や指導に悩む医師が多いAについても,実際の場面やS・Oと関連付けて説明する工夫により,わかりやすく記載されている.後半では,「応用の型」として,実際の臨床現場における「入院時記録」から「経過記録」「退院時要約」「初診外来」「継続外来」までのみならず,「訪問診療」「救急外来」「集中治療」にわたる各セッティング場面におけるカルテ記載のポイントを説明している.その際,初めのところで「診察・カルテ記載に使える時間」「事前情報・問題リストの量」「患者の重症度」「患者の関心」「多職種の関心」などの医療行動科学の重要な視点から成る「各セッティングの特徴一覧」を表で記載し,その後の各セッティングのページで,それぞれの詳細を実際のカルテ例,図表,Q & A,まとめ,column等を豊富に使って解説している.さらに,最後の「おまけの型」では,「病棟患者管理シート」「診療情報提供書」にまで言及している.

information

第5回日本リハビリテーション栄養研究会学術集会

ページ範囲:P.1911 - P.1911

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バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.2048 - P.2049

購読申し込み書

ページ範囲:P.2050 - P.2050

次号予告

ページ範囲:P.2051 - P.2051

奥付

ページ範囲:P.2052 - P.2052

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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60巻13号(2023年12月発行)

特集 一般医家のための—DOAC時代の心房細動診療

60巻12号(2023年11月発行)

特集 内科医が遭遇する皮膚疾患フロントライン—「皮疹」は現場で起きている!

60巻11号(2023年10月発行)

増大号特集 患者さんの質問にどう答えますか?—言葉の意味を読み解きハートに響く返答集

60巻10号(2023年9月発行)

特集 ミミッカー症例からいかに学ぶか

60巻9号(2023年8月発行)

特集 症例から読み解く—高齢者診療ステップアップ

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60巻6号(2023年5月発行)

特集 Common diseaseの処方箋ファイル—臨床経過から学ぶ20症例

60巻5号(2023年4月発行)

特集 臨床医からみたPOCT

60巻4号(2023年4月発行)

増刊号 探求!マイナーエマージェンシー

60巻3号(2023年3月発行)

特集 令和の脳卒中ディベート10番勝負—脳卒中治療ガイドライン2021とその先を識る

60巻2号(2023年2月発行)

特集 慢性疾患診療のお悩みポイントまとめました—高血圧からヘルスメンテナンスまで

60巻1号(2023年1月発行)

特集 10年前の常識は非常識!?—イマドキ消化器診療にアップデート

59巻13号(2022年12月発行)

特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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