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増刊号 これだけは知っておきたい検査のポイント 第9集 血液生化学検査など 炎症マーカー,感染マーカー
カルプロテクチン
著者: 佐藤宏和1 穂苅量太1
所属機関: 1防衛医科大学校病院消化器内科
ページ範囲:P.172 - P.173
文献購入ページに移動カルプロテクチンは好中球や単球,マクロファージから放出されるS100A8(別名calgranulin A, myeloid-related protein 8:MRP8)とS100A9(別名calgranulin B, myeloid-related protein 14:MRP14)という2つの蛋白質の複合体である.カルプロテクチンは炎症下では上皮細胞において誘導されることが知られており,便中カルプロテクチンは消化管障害の新たなマーカーとして注目されている.近年,潰瘍性大腸炎やCrohn病といった炎症性腸疾患と過敏性腸症候群の鑑別に対する有用性が報告されている.さらにこれらの炎症性腸疾患における再燃や治療効果などの判定に対する有用性についても検討されており,特に大腸に病変の主座を有する潰瘍性大腸炎の活動性の評価に有用であるとの報告がある.
便中カルプロテクチンはenzyme-linked immunosorbent assay(ELISA)法で測定されるが,2014年11月1日現在国内では保険適用となっておらず,ELISAが可能な施設であれば検査キットを購入して測定することができるが,通常は検査会社に依頼して測定する必要がある.非侵襲的に検体を採取できることに加え,糞便中のカルプロテクチンは室温で7日間安定であり検体の取り扱いが簡便であることも利点の1つである.
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