増刊号 これだけは知っておきたい検査のポイント 第9集
薬物関連検査 薬物感受性遺伝子検査,薬剤リンパ球刺激試験
Helicobacter pylori除菌関連遺伝子検査—pylori菌クラリスロマイシン耐性遺伝子検査,チトクロームP450(CYP)2C19遺伝子検査
著者:
中谷中1
所属機関:
1三重大学医学部附属病院オーダーメイド医療部
ページ範囲:P.318 - P.320
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検査の概要
◆pylori菌クラリスロマイシン耐性検査
Helicobacter pylori菌(以下,pylori菌)のクラリスロマイシン耐性は,その作用標的であるpylori菌23S rRNA遺伝子のdomain Vにおける変異に由来する.最も多くみられる変異は,2063番目のアデニン(A)のグアニン(G)への変異,そのほかに2064番目のAがGへ変異した株も認められている.これらの変異があると,クラリスロマイシン耐性であることがわかる.
◆CYP2C19遺伝子多型検査
pylori菌療法は,プロトンポンプ阻害薬とアモキシシリンとクラリスロマイシンを用いることになっている.これらの薬剤血中濃度が除菌の成功に関わっていると考えられている.なかでも,プロトンポンプ阻害薬の血中濃度は,その代謝酵素であるCYP2C19の活性に依存すると考えられている.CYP2C19の酵素活性は,CYP2C19遺伝子多型と強い相関があり,遺伝子多型検査が,薬剤の効果予測に有用であることが知られている1).CYP2C19には8種類のアレル(*1〜8)が報告されている.*1は正常の代謝活性を示し,そのほかの*2〜8は代謝能がないと考えられている.1,002人の日本人を対象としたわれわれの検討では,日本人では*4〜8は認められず,アレル*1,*2,*3は図1のような頻度で認められた.