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増刊号 これだけは知っておきたい検査のポイント 第9集 輸血・移植関連検査
抗グロブリン試験(Coombs試験)
著者: 宮崎孔1 佐藤進一郎1 池田久實1
所属機関: 1日本赤十字社北海道ブロック血液センター
ページ範囲:P.456 - P.458
文献購入ページに移動他人同士の血液を混ぜると血液が凝集することによりLandsteinerはABO血液型を発見し,その原因が血清中の凝集素(抗体)であることを見い出した.一方,Rh血液型に対する抗体の一部では赤血球に結合しても凝集を起こさないことが知られており,この抗体は不完全抗体と呼ばれた.その実態はIgG抗体であり,血清中に自然に存在する抗A,抗BなどのIgM抗体よりも小さい分子であるため赤血球を架橋できず凝集が起こらない.しかし,CoombsらはIgG抗体が結合した赤血球を抗グロブリン血清を用いて架橋することにより凝集が認められることを報告した(図1).これにより多くの血液型が発見され,輸血検査では最も重要な検査法となっている.また,抗IgGと抗補体(C3)を混合した多特異性抗グロブリン試薬により検出感度は向上した.
抗グロブリン試験には直接抗グロブリン試験(direct antigloburin test:DAT)と,間接抗グロブリン試験(indirect antigloburin test:IAT)の2種類がある.DATは主に溶血所見がある患者の診断に用いられており,IATは輸血時の交差適合試験や不規則抗体(抗A・抗B以外の赤血球抗体)の検査に利用される.特にIATは37℃で抗原抗体反応を行うため臨床的意義の高いIgG抗体を検出するのに適しており,不規則抗体検出の必須検査となっている1).また,RhD血液型検査にも利用されweak Dの鑑別にも役立っている.現在では検査法に改良が加えられ,ポリエチレングリコール(PEG)や低イオン強度塩類溶液(LISS)のような反応増強剤を添加して検査時間の短縮や検出感度の向上が図られている.さらに試験管内での凝集反応ではなく,抗IgGを結合させたゲルを用いてIgG感作血球を分別するカラム凝集法やマイクロプレートのウェルに赤血球膜を固相し,被験血清中のIgG抗体を結合させて抗IgG感作血球で検出する固相凝集法が開発されている(図2).これらの方法によって熟練した検査技師に頼らない客観的な判定が可能になり,検査の自動化も可能となった2).
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