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雑誌目次

雑誌文献

medicina52巻6号

2015年05月発行

雑誌目次

特集 感染症診療 それ,ホント?

著者: 松永直久

ページ範囲:P.817 - P.817

 「熱があれば抗生物質を直ちに投与するというような,安易な方法で診療が行われてきた感も否めない」
 約20年前,『medicina』1996年1月号巻頭言で北原光夫先生が書かれたものである.この特集のなかでは,「発熱症例をみた時点で最も重要なことは,現病歴と身体所見の丁寧な把握である」こと,そして,感染臓器の存在を探索し,血液・尿などの培養検査を提出することも勧められている.

特集の理解を深めるための33題

ページ範囲:P.966 - P.970

座談会

常識と非常識から感染症診療の基本を振り返る

著者: 松永直久 ,   岸田直樹 ,   遠井敬大 ,   佐藤高央

ページ範囲:P.818 - P.826

松永 一昔前,感染症診療は体温,CRP,白血球の値をみて,とりあえず抗菌薬を処方というのが,ある意味“常識”でした.しかし,ここ10年ほどで,身体全体を意識しながら,どこ(感染臓器)で何(原因菌)が悪さをしているのかを考える,感染症診療の基本とも言える考え方が広まってきました.そこで本日は,感染症の日常診療における“常識”と“非常識”を浮き彫りにしていきたいと思います.

総論編

体温とCRPだけに注目してはいけないってホント?—感染症診療の基本について

著者: 松永直久

ページ範囲:P.828 - P.834

ポイント
●発熱とCRPにとらわれすぎない.
●診断・治療・経過観察において「2つの軸」を意識する.
●「理屈」を追う.時間軸で追う.

治療期間は疾患によってある程度決まっているってホント?

著者: 柳秀高

ページ範囲:P.835 - P.837

ポイント
●感染臓器,起因菌,患者の背景/病態生理が決まれば,抗菌薬の種類のみならず,治療期間もある程度決まってくる.
●炎症反応が低下したから,あるいはしばらく治療した後の培養検査が陰性となっているから治療期間終了,というやり方はしない.
●治療期間は長すぎるのも短かすぎるのも避ける.
●市中/院内肺炎では短期治療について考慮する.
●黄色ブドウ球菌菌血症での短かすぎる治療期間は,再発や合併症の増加につながるので注意が必要である.

抗菌薬投与中に「熱が持続」あるいは「再度発熱」した場合には,別の抗菌薬に変えればいいってホント?

著者: 法月正太郎

ページ範囲:P.838 - P.841

ポイント
●抗菌薬を変えるという結論を安易に出さない.
●患者の臨床経過を十分に吟味し,検討したうえで判断する.
●医療関連感染の不明熱(FUO)でチェックすべき項目は必ず確認する.

外来編

39℃の発熱でも抗微生物薬が不要のことがあるってホント?

著者: 岸田直樹

ページ範囲:P.842 - P.844

ポイント
●高熱をきたしうる疾患の丁寧な鑑別を患者に説明できるようになる.
●患者の重症度(重症化のリスク)を判断できるようになる.
●熱源がはっきりしない状態での抗微生物薬開始による弊害も説明できるようになる.
●良好な医師患者関係の下,「待つ」という選択肢をもてるようになる.

外来で1週間以上発熱が続く患者の診かたにコツがあるってホント?

著者: 野口善令

ページ範囲:P.845 - P.848

ポイント
●一見原因不明に思える発熱でも,初期評価が重要である.
●発熱以外の局所の症状,所見(発熱+α)を探して見当をつける.
●風邪症候群は症状の特徴に注目して,分類して考える.
●外来で遭遇する遷延する発熱の多くは自然経過で軽快・治癒する良性疾患(self-limited disease)である.
●全身状態に問題がなければ経過観察する=「Watch&Wait」.

渡航者の発熱でも診療の基本は同じってホント?

著者: 忽那賢志

ページ範囲:P.850 - P.853

ポイント
●輸入感染症診療も,一般感染症診療の基本と大きくは変わらない.
●輸入感染症診療では問診,特に渡航地・潜伏期・曝露歴の聴取が重要である.
●輸入感染症ではフォーカスのはっきりしない発熱を呈する疾患が多い.
●輸入感染症では,まずはマラリアを除外することが重要である.

肝炎や咽頭炎でも性感染症のことがあるってホント?

著者: 村松崇

ページ範囲:P.854 - P.856

ポイント
●B型肝炎やA型肝炎などのウイルス性肝炎は性感染症でもある.
●咽頭炎の原因として淋菌,クラミジア,梅毒,HIVも想起すべきである.
●性感染症を診断したらHIV感染症を合併している可能性も考える.

診療所でもグラム染色ができるってホント?

著者: 本康宗信

ページ範囲:P.858 - P.860

ポイント
●診療所でのグラム染色のセットアップは比較的容易であるが,手技や判定には,経験を要する.
●グラム染色には迅速性があるが,起因菌同定,治療のためには培養,感受性検査も行う必要がある.
●グラム染色を生かしてtargeted therapyを行うことが望ましい.

診療所でも血液培養ができるってホント?

著者: 遠井敬大

ページ範囲:P.861 - P.863

ポイント
●診療所セッティングでも,抗菌薬を使用する場合,血液培養を含め必要な培養は必ず採取する.
●時間的・環境的に医師が血液培養を実施するのが困難な場合は,スタッフとコミュニケーションを十分に取り,お互いに役割を分担し実施可能な環境作りを行う.

感染性腸炎でも抗菌薬を処方しなくていいことがあるってホント?

著者: 倉井華子

ページ範囲:P.864 - P.866

ポイント
●下痢患者のうち,細菌性腸炎が占める頻度は10%未満である.
●自然軽快例が多く,細菌性腸炎であっても免疫正常者には抗菌薬は不要である.
●基礎疾患がある患者で,細菌性腸炎を疑う場合には抗菌薬を用いる.

腸管出血性大腸菌感染症(血清型O157など)に抗菌薬は危険ってホント?

著者: 大路剛

ページ範囲:P.868 - P.871

ポイント
●アウトブレイクの経験から,腸管出血性大腸菌(EHEC)感染症において,溶血性尿毒素症症候群(HUS)発症のリスクがないと考えられる抗菌薬は,ホスホマイシンを含め存在しない.
●下血を伴う感染性腸炎疑いの患者では,常にEHECによる感染性腸炎の可能性を考え,抗菌薬投与は慎重であるべきである.

調理師から病原性大腸菌の除菌を頼まれたけど,抗菌薬を投与しなければいけないってホント?

著者: 中村朗

ページ範囲:P.872 - P.875

ポイント
●コレラ,腸チフス,パラチフス,細菌性赤痢,腸管出血性大腸菌では無症状でも就業制限があり,就業再開には保菌していないことの証明が必要である.
●上記5菌種に関しては,病原体を保有していないことを定められた方法で確認し,陰性が確認された場合には所轄の健康福祉センター(保健所)に報告する.
●抗菌薬での除菌には議論があるが,直接食品を扱う場合には抗菌薬投与を推奨する意見もあり,菌種と現場の状況で判断する.

フルオロキノロン系薬の投与には慎重にならなければいけないってホント?

著者: 森岡慎一郎

ページ範囲:P.876 - P.878

ポイント
●フルオロキノロン系抗菌薬は抗結核作用を有し,単剤治療により結核症の診断が遅れるだけでなく,結核菌の耐性獲得が問題となっている.
●フルオロキノロン系抗菌薬の耐性問題は,腸内細菌や緑膿菌,黄色ブドウ球菌などで認められ,耐性獲得は同抗菌薬の使用量や使用期間と関連している.
●抗菌薬の処方においては,文献レベルでのエビデンスや医学的知識に加え,患者とのコミュニケーションも大切である.

外来で経口マクロライド系薬を使う機会は限られているってホント?

著者: 杤谷健太郎

ページ範囲:P.879 - P.881

ポイント
●ほとんどの急性気管支炎で,マクロライドを含めた抗菌薬治療は不要である.
●市中肺炎をマクロライド単剤で治療するべきではない.
●非定型肺炎,性器クラミジア感染,Helicobacter pylori除菌,非結核性抗酸菌,百日咳はマクロライドの良い適応である.

外来で経口第3世代セファロスポリン系薬を使う機会は限られているってホント?

著者: 彦根麻由 ,   相野田祐介

ページ範囲:P.882 - P.885

ポイント
●経口抗菌薬が必要な感染症と,使う抗菌薬は非常に限られている.抗菌薬を「念のため」処方してはいけない.
●第3世代セファロスポリン系のバイオアベイラビリティはどれも50%に満たない.
●ピボキシル基を有する第3世代セファロスポリン系には重篤な副作用が報告されている.

外来に毎日来てもらってセフトリアキソンを投与することがあるってホント?

著者: 馳亮太

ページ範囲:P.887 - P.891

ポイント
●1日1回投与のセフトリアキソンを利用して,外来静注抗菌薬治療(OPAT)が行える.
●セフトリアキソンが広域抗菌薬であることを認識し,不必要な場面での使用は避ける.
●適切な症例選択のために「なぜセフトリアキソン?」「いつまで続ける?」の2項目を常に考える.
●治療開始前には,培養検査を必ず提出する.
●OPAT実施時には患者の生活状況,通院手段にも配慮が必要.

インフルエンザ患者には,すべて抗インフルエンザ薬が必要ってホント?

著者: 畠山修司

ページ範囲:P.892 - P.895

ポイント
●季節性インフルエンザに対する抗ウイルス薬の適応は,適切な臨床判断が重要である.
●病態,治療の目的,患者背景,重症度などを総合的に判断する.
●高リスク者や重症例には,抗インフルエンザ薬による適切なマネジメントが望まれる.

入院編

感染症のフォーカスがはっきりしない場合でも,診断を絞っていく方法があるってホント?

著者: 藤田崇宏

ページ範囲:P.896 - P.899

ポイント
●まずはフォーカスが不明な状態にあると認識するところから,フォーカスを絞るステップが始まる.
●ルーチンでは診察を飛ばしがちな部位に存在する感染症,CTなど画像検査でのみ発見できる深部に位置する臓器の感染症,血管内感染症をまず検索する.
●局在化しにくい感染症は病原体診断が難しいものが多いので,まずは病歴聴取で曝露歴,渡航歴,免疫不全などを明らかにして,狙いを定めて検査を行う.
●フォーカスが不明なうちは極力抗菌薬の投与を避けるが,暫定的な診断に基づいて投与している場合は,ひとまず治療期間を完遂する方法もある.

感染症(肺炎,尿路感染症,蜂窩織炎など)で入院する患者には,血液培養を提出する必要があるってホント?

著者: 根本隆章

ページ範囲:P.901 - P.903

ポイント
●市中肺炎では,ICU入院,空洞形成,白血球減少,アルコール多飲,重症慢性肝疾患,無脾症,尿中肺炎球菌抗原陽性,胸水貯留の症例において,血液培養採取が推奨される.
●単純性腎盂腎炎では,診断不明確例,免疫不全,血行性に尿路感染を生じている症例において,血液培養採取が推奨される.
●①全身状態不良,広範囲の皮膚病変,併存疾患といった合併症がある蜂窩織炎,②特殊な状況での外傷による蜂窩織炎,③反復性・遷延性蜂窩織炎では,血液培養採取が推奨される.
●感染症で入院する場合は,原則として血液培養を2セット採取する.

繰り返す蜂窩織炎を伴う菌血症で,Helicobacter cinaediという菌が検出されるってホント?

著者: 荒岡秀樹

ページ範囲:P.904 - P.906

ポイント
Helicobacter cinaediH. cinaedi)感染症は,ほぼ全例において血液培養から本菌が検出されることにより認知される.
H. cinaedi感染症は多彩な臨床像を呈するが,蜂窩織炎には特に注意することが勧められる.
H. cinaedi感染症は再発することがしばしばある.
H. cinaedi感染症に対する適切な治療薬と治療期間はまだ確立されていない.

菌血症がきっかけで悪性腫瘍が見つかることがあるってホント?

著者: 見坂恒明

ページ範囲:P.908 - P.909

ポイント
●菌血症がきっかけで悪性腫瘍が見つかることがある.
Streptococcus gallolyticusS. bovis)菌血症はそのsubspeciesにかかわらず,高率に大腸癌を合併する.
●G群連鎖球菌菌血症は,高率に悪性腫瘍を合併する.

肺炎を疑う患者では,痰のグラム染色・培養を提出する必要があるってホント?

著者: 矢野勇大 ,   八重樫牧人

ページ範囲:P.910 - P.913

ポイント
●肺炎を疑ったら,可能な限り良質な喀痰の塗抹・培養検査を提出するべきである.
●喀痰の質の評価には,Miller and Jones分類,Geckler and Gremillion分類がある.
●グラム染色の評価とともに,必ず培養結果と併せた解釈が重要である.

喀痰抗酸菌塗抹検査で1回陰性でも,排菌している肺結核が見つかることがあるってホント?

著者: 竹田宏

ページ範囲:P.914 - P.917

ポイント
●結核診断時の喀痰抗酸菌塗抹・培養検査は,日を違えて連続3日間(3連痰)実施する.
●喀痰抗酸菌塗抹検査法では,直接塗抹法より感度・精度の高い集菌法が推奨されている.
●喀痰抗酸菌塗抹検査の陽性率は,患者の病態(排菌量)と採取された痰の品質・性状に依存し,1〜3回と検査回数を重ねることにより,累積陽性率は確率的に増加する.
●画像的に結核を否定できない症例では,塗抹陰性でも安易に否定せず,胃液・気管支鏡下採取検体などの検査を検討する.
●結核診断の遅れは,個々の患者転帰のみならず,社会・公衆衛生に影響を及ぼすことを認識する必要がある.

ドレナージできている胆道感染症では,菌血症事例でも5日間の抗菌薬投与で十分ってホント?

著者: 横江正道

ページ範囲:P.918 - P.921

ポイント
●急性胆道感染症における菌血症の原因となる微生物の大半は,グラム陰性菌である.
●急性胆管炎・胆囊炎のガイドラインには重症度判定基準があり,重症度に応じた治療が必要である.
●急性胆管炎・胆囊炎の最適な治療期間については,十分なエビデンスがない.
●血液培養を適切なタイミングで採取しておくことが,治療戦略を考えるうえで重要である.

グラム陽性球菌菌血症の場合,陰性確認の血液培養が必要ってホント?

著者: 関谷紀貴

ページ範囲:P.923 - P.925

ポイント
●グラム陽性球菌菌血症において,基本的には陰性確認の血液培養採取が勧められる.
●ただし,ルーチンの血液培養再検は避けて,患者ごとの丁寧なアセスメントに基づいて判断する.
●陰性確認の必要性は,感染性心内膜炎のリスク評価,治療期間の決定,治療方針の見直しの観点から考える.

de-escalationの時にMICの低い抗菌薬が良いわけではないってホント?

著者: 有馬丈洋

ページ範囲:P.926 - P.930

ポイント
●最小発育阻止濃度(MIC)の判定は菌種と抗菌薬の1対1対応であるため,MICの縦読みはせず,まずは「S」(感受性),「I」(中間),「R」(耐性)の判定を参考にする.
●治療効果判定において米国臨床検査標準委員会(CLSI)の判定基準を用いている場合,米国での標準的な抗菌薬使用量で治療しているかを確認する必要がある.
●起因菌が判明した後,抗菌薬の変更を行う際には,感染臓器/部位を考慮し,そのMICが信頼できるかどうかを確認する必要がある
●de-escalationを行う際には,エビデンスの豊富なβ-ラクタム薬を中心に,狭域な抗菌薬に変更する.

大腸菌菌血症でも比較的狭域なアンピシリンで治療できる場合があるってホント?

著者: 吉藤歩

ページ範囲:P.932 - P.935

ポイント
●大腸菌菌血症は尿路系の感染(腎盂腎炎)や胆道系の感染(胆管炎や胆囊炎),bacterial translocationによる感染,カテーテル感染が原因で起こることが多い.
●アンピシリンとはグラム陰性桿菌の治療が可能となるようにと開発されたペニシリン系薬剤で,細菌の細胞壁合成を阻害し,殺菌的に作用する.
●大腸菌において,アンピシリンが感性である割合は55.6%(サーベイランス結果)であり,susceptibleであれば,治療可能である.
●大腸菌がアンピシリンに耐性となるのはβ-ラクタマーゼ産生が原因である.

Enterobacter属の難治性感染症で,第3世代セファロスポリン系薬が効かなくなることがあるってホント?

著者: 原田壮平

ページ範囲:P.936 - P.939

ポイント
Enterobacter属菌は染色体上にAmpCというβ-ラクタマーゼの遺伝子をもつ.
●AmpC高産生の変異株の影響により,第3世代セファロスポリンへの耐性化が治療中に生じうる.
●第4世代セファロスポリンはAmpCに分解されにくく,安全に使用できる治療薬と考えられる.
●重症例,難治例では第4世代セファロスポリンが例外的に効きづらい状況を想定してカルバペネムも選択肢となる.

ESBL産生大腸菌による尿路感染症でカルバペネム系以外も治療の選択肢になることがあるってホント?

著者: 山口征啓

ページ範囲:P.940 - P.942

ポイント
●ESBL産生菌感染症の標準治療薬はカルバペネム系抗菌薬である.
●しかし耐性菌増加の観点から,カルバペネム以外での治療が模索されている.
●大腸菌の尿路感染症という状況であれば,ピペラシリン・タゾバクタム,セフメタゾール,フロモキセフ,ホスホマイシンなどで治療できることがある.

入院時に培養を提出せずにカルバペネム系薬などの広域抗菌薬を始めてしまった場合でも,de-escalationできるってホント?

著者: 小林勇仁 ,   中村造

ページ範囲:P.944 - P.946

ポイント
●培養提出がなく起因菌が不明の場合も,さまざまな情報から起因菌を想定し,「ある程度の」de-escalationを行うことは可能である.
●状況によっては抗菌薬開始後でも,培養の再提出で起因菌を同定できることがある.
●各感染症における適切な治療効果判定を意識してフォローアップを行う.

バンコマイシンの初期投与設計や血中濃度に基づく投与量の調節にはコツがあるってホント?

著者: 添田博

ページ範囲:P.947 - P.951

ポイント
●バンコマイシンの初期投与設計には,負荷投与量と維持投与量を決定するというプロセスがある.
●負荷投与の適否は,複雑性感染症の有無や腎機能低下などを考慮して決定する.
●維持投与量は腎機能に応じたノモグラムを利用するか,「維持投与量=24×CLcr」といった簡便な式を利用することも可能.
●血中濃度測定に基づく投与量の調節は,定常状態であれば,投与量と血中濃度は比例計算にて算出することが可能.

血管内留置カテーテル関連菌血症の症例で,カテーテルを抜去して抗菌薬を投与しても,菌血症が持続することがあるってホント?

著者: 松永直久

ページ範囲:P.952 - P.954

ポイント
●血管内留置カテーテル関連菌血症(CRBSI)の治療はカテーテル抜去を基本に,原因微生物を標的とした抗菌薬投与を行う.
●血管留置カテーテルを抜去しても菌血症が続く場合には,①血管内感染症,②点滴に関する問題の2軸で考える.
●陰性確認の血液培養を1回もしくは2回採るべきかについては意見が分かれる.

感染症のために予定手術を延期した患者が手術を受けられるまでの期間に目安があるってホント?

著者: 矢口義久 ,   福島亮治

ページ範囲:P.956 - P.957

ポイント
●緊急を要さない予定手術患者が感染症を併発した場合,感染症の治療が優先される.
●手術は感染症状の消失後,全身状態や免疫能の回復を待って行うことが望ましい.
●エビデンスについては,小児の上気道感染に関するもの以外は少ない.

感染症があっても悪性疾患の化学療法を始めなければならないケースがあるってホント?

著者: 馬渡桃子

ページ範囲:P.958 - P.960

ポイント
●感染症の治療をしている間に化学療法のタイミングを逃すことにならないか留意する.
●感染症,悪性腫瘍,宿主の免疫状態の3点からアセスメントを行う.
●抗腫瘍剤投与によって宿主の免疫状態が時期により異なることに留意する.
●最善の治療を行うには他科・他職種と連携しながら迅速な判断が必要である.

中心静脈ポート感染を,ポートを抜去せずに治療できるってホント?

著者: 冲中敬二

ページ範囲:P.961 - P.965

ポイント
●ポート関連血流感染症治療の原則は,ポート抜去である.
●非複雑性ポート感染の場合には温存(抗菌薬ロック療法)も考慮できるが,起炎菌の種類にもよる.
●抗菌薬ロック療法の最適的な抗菌薬使用方法,治療期間は不明である.
●抗菌薬ロック療法を行う場合には播種性病変や合併症の有無に注意しつつ,細心の注意を払って経過観察を行うこと.

連載 異常所見を探せ! 救急CT読影講座・5

胸だけでなく足も見よう

著者: 石田尚利

ページ範囲:P.811 - P.811

ニューヨークから帰国した50代男性.帰宅中の電車内で胸痛と冷汗を認めた.さらに呼吸苦も出現し,救急外来を受診.呼吸数22/分,脈拍110/分,血圧130/85mmHg,SpO2 91%(室内気).肺血栓塞栓症を疑ったが,夜間帯でD-dimerは検査できない.既往歴に喘息(最終発作は2年前)があり,ヨード造影剤投与をためらったが,インフォームド・コンセント後に造影CTを施行.

研修医に贈る 小児を診る心得・11

ナラティブを読む

著者: 加藤英治

ページ範囲:P.978 - P.979

 午後6時半に救急センターに発熱した3歳児を抱えた母親が来院しました.通園している保育園はインフルエンザが流行中で,午後4時半頃に39℃に発熱したと保育園から連絡があったので,職場から慌てて子どもを迎えに行き受診しました.

Step up腹痛診察・21

24歳女性,右下腹部痛

著者: 酒見智子 ,   小林健二

ページ範囲:P.980 - P.983

[現病歴]昼食後に突然右下腹部痛が出現し,その後歩くと響くような痛みが治まらないため内科外来受診となった.会社の同僚に付き添われ,支えられながら来院した.右下腹部を手で押さえ,痛みで涙ぐむ様子がみられた.受診時の疼痛はNumeric Rating Scale(NRS)で8〜9/10だった.食事後の発症であったが,吐気嘔吐,下痢症状はなかった.発熱,不正出血,血尿はなかった.
[既往歴]花粉症.
[常用薬]なし.
[薬剤アレルギー]なし.
[社会歴]飲酒:機会飲酒,喫煙:なし.

総合診療のプラクティス 患者の声に耳を傾ける・10

「患者の訴える部位」を丁寧に診察する

著者: 隈部綾子 ,   見坂恒明

ページ範囲:P.984 - P.985

 患者が医療面接で訴える部位が,必ずしも医学的に正確な部位とは限りません.「胃が痛い」と言って臍周囲を指す患者もいれば,下腹部を指す患者もいます.また,「足」といっても,医学的な部位としては大腿,下腿,足趾などさまざまです.したがって,医療面接では痛い部位・つらい部位をより具体的に述べてもらう,あるいは実際にその箇所を指してもらい,医学的部位を確認しながら診察することが重要です.
 今回は「のどが痛い」という主訴で近医を受診し,診断に至らず当科を受診した症例を紹介します.

診断力を上げる 循環器Physical Examinationのコツ・2

頸動脈の診かた—大動脈弁狭窄症では頸動脈の触診で遅脈,小脈を触れる

著者: 山崎直仁

ページ範囲:P.986 - P.991

頸動脈診察で何がわかるか
 頸動脈の触診により,左室の収縮性,左室からの前方拍出量に関しての情報が得られる.また,頸動脈の触診は,大動脈弁狭窄症(AS),大動脈弁逆流症(AR),閉塞性肥大型心筋症(HOCM)の存在を疑うきっかけになる.ASとHOCMは心雑音だけからは鑑別に悩むことがあるが,頸動脈の触診所見には大きな違いがあり,両者の鑑別に有用である.また,頸動脈の聴診で頸動脈雑音bruitを聴取すれば,頸動脈狭窄を疑うきっかけになる.

魁!! 診断塾・14

焦らぬことが一番である!の巻

著者: 佐田竜一 ,   綿貫聡 ,   志水太郎 ,   石金正裕 ,   忽那賢志

ページ範囲:P.992 - P.997

生来健康でADL自立の40歳男性.入院11日前,雪かき時に転倒し,左橈骨遠位端を骨折.腫脹が強く,手術は延期となっていた.入院当日,回転性眩暈,悪心・嘔吐を主訴に来院し,小脳梗塞の診断で入院.その後,症状は改善傾向.
入院3日目(骨折後14日目)の未明に,臍周囲に軽度の間欠的な腹痛が出現し,同日深夜に症状が増悪したため,当番医がコールされた.
既往歴:高血圧(未治療)以外に特記事項なし.
生活歴:1日20本×22年の喫煙者,飲酒歴なし.1週間前にマグロのたたきを食べた以外には明らかな生物摂取歴なし.
家族歴:母が小脳梗塞の既往あり.
ROS(+):臍周囲の間欠痛,悪心,便秘.
ROS(-):頭痛,気道症状,嘔吐,下痢,血便,排尿症状,関節痛,皮疹.

目でみるトレーニング

著者: 尾﨑青芽 ,   田中育太 ,   曲渕裕樹

ページ範囲:P.998 - P.1003

西方見聞録・17

Stress out

著者: 山口典宏

ページ範囲:P.1004 - P.1005

 「俺,もう疲れちゃったよ」「私,もう限界」
 同僚や後輩の研修医から非常によく聞くフレーズです.米国では研修医の1週間あたりの勤務時間は80時間まで,1年目研修医の連続勤務時間は16時間までという規制があります.これだけを聞くと,「それくらいで“疲れた”と言われても…」と,日本の医者なら誰しもが思いそうです.しかし,昨年末にはニューヨークの異なる大学病院で,立て続けに研修医の自殺が起きました.研修医の燃え尽きを防ぐのは,深刻な命題なのです.

あたらしいリウマチ・膠原病診療の話・2

関節症状へのアプローチ—「レントゲンは正常」問題,あるいは「湿布と痛み止め出しときます」問題からの脱却

著者: 萩野昇

ページ範囲:P.1006 - P.1010

 「関節炎の患者が入ってきたら,裏口から逃げ出したくなる」
 “When a patient with arthritis walks in the front door, I feel like leaving out the back door.”─サー・ウィリアム・オスラー

REVIEW & PREVIEW

PSA検診の是非を問う

著者: 高野利実

ページ範囲:P.1011 - P.1015

最近の動向
 腫瘍マーカーとは,広義には腫瘍組織や血清中の蛋白や遺伝子などで,悪性腫瘍の存在・種類・性質・治療効果・予後などの情報と相関する指標のことである.わが国では,「腫瘍特異的な蛋白の血中濃度」という狭義で使われることが多い.
 腫瘍マーカーの活用法として,下記のようなものがある.

書評

—細川直登 編—“実践的”抗菌薬の選び方・使い方

著者: 林寛之

ページ範囲:P.857 - P.857

 「アメリカでは,アメリカでは」と連呼する留学帰りの医者は,ややもすると『出羽の神』とやゆされて煙たがられることがある.日本とアメリカの医療との大きな違いの一つに抗菌薬の使い方が挙げられる.今でこそ感染症の良書が散見されるが,以前はどうしても日本の感染症教育が遅れていたため,現場に立ち続けた年配の医者は,製薬会社や薬剤添付文書を頼りに独学し,抗菌薬の知識が自分でも系統立って整理がついておらず,弱点を突かれるようで『出羽の神』を煙たく思ったものだ.またアメリカと同様に高用量(本書では「標準使用量」としている)を使用すれば,保険適用外で削られたりもするので,そんな知識は役に立たないと現場では思われた.
 でももう大丈夫.本書は,日本で保険診療をする上でどう戦っていけばいいかをきちんと解説してくれる.保険適用範囲内であくまでも戦いたい医者,保険適用を超えて使用したい医者,双方が納得いく医療を本書で見つけることができる.決して『出羽の神』ではなく,日本で医療をしていく上でどう落としどころを見つけながらやっていけばいいのかがわかる点は,実地医家にとって本書は大きな福音となるだろう.

information

A Full-day Narrative Medicine Workshop in Tokyo〜リタ・シャロン教授を迎えて〜ナラティブ・メディスン実践ワークショップのご案内

ページ範囲:P.834 - P.834

日時●2015年6月21日(日) 10:00〜17:00
会場●聖路加国際大学301教室(逐次通訳)

第38回「JALC母乳育児支援学習会in神戸」のご案内

ページ範囲:P.913 - P.913

日時●2015年6月20日(土) 10:00〜18:00,6月21日(日) 8:45〜15:15
会場●神戸国際展示場2号館コンベンションホール
神戸市中央区港島中町6-11-1(http://kobe-cc.jp/tenji/2_1.html)

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バックナンバーのご案内

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次号予告

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奥付

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基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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バックナンバー

60巻13号(2023年12月発行)

特集 一般医家のための—DOAC時代の心房細動診療

60巻12号(2023年11月発行)

特集 内科医が遭遇する皮膚疾患フロントライン—「皮疹」は現場で起きている!

60巻11号(2023年10月発行)

増大号特集 患者さんの質問にどう答えますか?—言葉の意味を読み解きハートに響く返答集

60巻10号(2023年9月発行)

特集 ミミッカー症例からいかに学ぶか

60巻9号(2023年8月発行)

特集 症例から読み解く—高齢者診療ステップアップ

60巻8号(2023年7月発行)

特集 浮腫と脱水—Q&Aで学ぶジェネラリストのための体液量異常診療

60巻7号(2023年6月発行)

特集 整形外科プライマリ・ケア—内科医が知りたい整形外科疾患のすべて

60巻6号(2023年5月発行)

特集 Common diseaseの処方箋ファイル—臨床経過から学ぶ20症例

60巻5号(2023年4月発行)

特集 臨床医からみたPOCT

60巻4号(2023年4月発行)

増刊号 探求!マイナーエマージェンシー

60巻3号(2023年3月発行)

特集 令和の脳卒中ディベート10番勝負—脳卒中治療ガイドライン2021とその先を識る

60巻2号(2023年2月発行)

特集 慢性疾患診療のお悩みポイントまとめました—高血圧からヘルスメンテナンスまで

60巻1号(2023年1月発行)

特集 10年前の常識は非常識!?—イマドキ消化器診療にアップデート

59巻13号(2022年12月発行)

特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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