文献詳細
連載 西方見聞録・18
文献概要
“彼”との出会い
11年前の春,医学生だった私は3カ月の臨床実習のためにボストンにやってきて,自分の英語がまったく通じないことに戦々恐々としていました.そしてマサチューセッツ総合病院血液腫瘍内科での実習が始まり,「同じ外国人だからうまくいくかもな」と血液腫瘍内科の教授が紹介してくれた指導医が,Siddhartha Mukherjee(シッダールタ・ムカジー)というインド系の臨床フェローでした.
彼はインドで生まれ,大学以降は英国と米国で教育を受けましたが,かなり訛りのある英語を話していたので,他の医師から聞き返されたり,彼が聞き返したりすることは日常茶飯事でした.昼のカンファレンスでのケータリングはフェローが持ち回りで用意するのですが,彼が担当の時はいつもカレーで,周りからは聞こえるような声で「またカレーかよ!」と文句を言われていました.もっとも,私にとっては米が食べられる貴重な機会で,広い意味でのアジア文化を彼と共有していました.
11年前の春,医学生だった私は3カ月の臨床実習のためにボストンにやってきて,自分の英語がまったく通じないことに戦々恐々としていました.そしてマサチューセッツ総合病院血液腫瘍内科での実習が始まり,「同じ外国人だからうまくいくかもな」と血液腫瘍内科の教授が紹介してくれた指導医が,Siddhartha Mukherjee(シッダールタ・ムカジー)というインド系の臨床フェローでした.
彼はインドで生まれ,大学以降は英国と米国で教育を受けましたが,かなり訛りのある英語を話していたので,他の医師から聞き返されたり,彼が聞き返したりすることは日常茶飯事でした.昼のカンファレンスでのケータリングはフェローが持ち回りで用意するのですが,彼が担当の時はいつもカレーで,周りからは聞こえるような声で「またカレーかよ!」と文句を言われていました.もっとも,私にとっては米が食べられる貴重な機会で,広い意味でのアジア文化を彼と共有していました.
参考文献
1)シッダールタ・ムカジー(著),田中 文(訳):病の皇帝「がん」に挑む─人類4000年の苦闘,早川書房,2013
掲載誌情報