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雑誌目次

雑誌文献

medicina53巻13号

2016年12月発行

雑誌目次

特集 内分泌疾患を診きわめる

著者: 田上哲也

ページ範囲:P.2071 - P.2071

 “内分泌は難しい?” できたら避けて通りたいというのが本音かもしれない.しかし,昨今の生活習慣病に関する多くの診療ガイドラインでは,まず続発性・内分泌性の疾患を否定してから治療に進まなければならないことになっている.少なくともスクリーニングアウトの方法は知っておく必要があるのだ.「とりあえず薬を出しておこう」,はなから「専門医に任せよう」と言ってはいられない.もちろん,対症療法と鑑別診断が同時進行であっても構わない.しかし,まず疑わないことには,たとえ専門医といえども,正しい診断はできない.
 “内分泌は面白い!” 海堂尊氏の小説に「不定愁訴外来」という診察室が出てくる.そこを訪れる患者の一部は内分泌疾患が原因かもしれない.ホルモン異常による疾患には不定愁訴と一蹴されがちな症状も少なくないが,必ずヒントとなる特徴的な症候が潜んでいる.それを手掛かりに鑑別を進め,確定診断に至ったとき,医師だけでなく患者・家族にとっても感激はひとしおである.

特集の理解を深めるための30題

ページ範囲:P.2231 - P.2235

座談会

内分泌疾患診療のコツ

著者: 田上哲也 ,   菅原明 ,   方波見卓行 ,   廣嶋佳歩

ページ範囲:P.2072 - P.2080

内分泌疾患は難しいか?
田上 内分泌を専門としない方にとって,「内分泌疾患は何やら難しい学問」という,漠然とした忌避感があるかもしれません.例えば消化器内科なら「お腹が痛い」と言われて受診されたら,「それでは胃カメラをしましょう」「腹部エコーをしましょう」という流れから目で見える結果が得られます.
 しかし,内分泌内科にかかる患者さんの症状は,「何となく体が重い」「だるい」と,どの臓器・組織が悪いのかがわかりにくい.自律神経かホルモンかを考えて測ったホルモン値が,これまた「異常なのか,正常範囲なのか」もわかりにくい.こういうところが難しいと思われる原因かもしれません.
 本日は代表的な内分泌臓器である下垂体と副腎について,専門家からご意見を伺いたいと思います.さて,内分泌疾患は難しいでしょうか.

Overview

ホルモン作用からみた症候

著者: 田上哲也

ページ範囲:P.2082 - P.2085

 内分泌疾患は「ホルモン作用の異常に基づく疾患」と言い換えることができる.ホルモン作用の異常とは,作用が“亢進”しているか,“低下”しているかということである.作用亢進は,過敏状態による場合もごく稀にはあるが,ほとんどは血中ホルモンの“過剰”による.
 一方,作用低下は,血中ホルモンの減少によるだけでなく,ホルモン抵抗性によっても引き起こされる.抵抗性とは「ホルモンが十分あるにもかかわらず何らかの理由でそれが効かない状態」を指す.例えば,メタボリックシンドロームは内臓脂肪の蓄積によるインスリン抵抗性が元凶となっていることはご存じの通りである.すなわち,糖尿病の表現型である高血糖の主たる原因は,インスリンというほぼ唯一と言ってよい血糖値降下作用をもつホルモンの作用の低下に基づくが,膵ラ氏島からのインスリン分泌が低下(“欠乏”)しているのか(1型糖尿病),インスリン“抵抗”性に基づいているのか(2型糖尿病),ということである.言うまでもなく,インスリン分泌の“過剰”は「低血糖」を引き起こす.

下垂体疾患 ホルモン過剰症 【下垂体前葉機能亢進症】

Cushing病と異所性ACTH産生腫瘍

著者: 小笠原辰樹 ,   田上哲也 ,   島津章

ページ範囲:P.2086 - P.2090

ポイント
●Cushing病と異所性ACTH産生腫瘍はACTH依存性Cushing症候群に分類され,コルチゾール過剰によりさまざまな症候を引き起こす.
●Cushing症候群であることを症候および検査所見から確定した後,内分泌学的検査(8 mgデキサメタゾン抑制試験,CRH試験),下垂体画像検査(MRI),選択的静脈洞血サンプリングにて両者を鑑別する.
●治療の第一選択は両者ともに手術であるが,完治が得られない場合は,放射線治療,内科的治療を組み合わせた集学的治療が必要である.

先端巨大症

著者: 髙橋裕

ページ範囲:P.2091 - P.2094

ポイント
●先端巨大症は,GH産生下垂体腺腫によって引き起こされるGHとIGF-Ⅰの過剰により,特徴的な顔貌や身体所見および合併症,予後の悪化をきたす疾患である.
●特徴的な顔貌を見逃さず疑えば,診断は比較的容易である.
●高血圧,糖尿病,発汗過多,月経異常,睡眠時無呼吸症候群,咬合不全などの複数の症状があるときには積極的に疑う.
●治療には,経蝶形骨洞的下垂体腫瘍摘出術,薬物療法,放射線療法がある.

プロラクチノーマ

著者: 小野昌美 ,   三木伸泰

ページ範囲:P.2095 - P.2099

ポイント
●プロラクチノーマは下垂体ホルモン産生腫瘍の最多疾患であり,約50%を占める.
●生殖年齢層の若年女性に好発し,深刻な性腺機能低下症や不妊症をきたす.
●診断には,腫瘍の同定と腫瘍サイズに見合う持続的高PRL血症の証明が必須である.
●第一義的治療は薬物療法で,第一選択薬は有効性と安全性に優れたカベルゴリンである.
●カベルゴリン治療は,高PRL血症と性腺機能低下症を回復させ,同時に腫瘍も消滅しうる.

TSH産生腫瘍

著者: 吉原愛

ページ範囲:P.2101 - P.2105

ポイント
●甲状腺機能亢進症状は比較的軽度であり,ホルモン高値にかかわらずTSH抑制が認められない患者では鑑別の必要がある.
●マクロ腺腫では視神経圧迫による視野障害や下垂体機能低下症を発症することがある.
●下垂体MRI検査は必須である.ミクロ腺腫の場合は甲状腺不応症との鑑別が必要であり,負荷試験や遺伝子検査が有用である.
●下垂体腫瘍摘出術が第一選択であるが,腫瘍残存や再発の危険性は高い.

【下垂体後葉機能亢進症】

抗利尿ホルモン不適切分泌症候群(SIADH)

著者: 西山充

ページ範囲:P.2107 - P.2110

ポイント
●SIADHは,低浸透圧血症にもかかわらずAVP分泌が持続し,水分貯留による希釈性低Na血症をきたす病態である.
●細胞外液量が正常の低Na血症をきたし,低Na血症をきたす他疾患との鑑別が必要である.
●治療では,原疾患への対処,および水分制限,塩分投与による低Na血症の補正を行う.

ホルモン欠乏症 【下垂体前葉機能低下症】

下垂体ホルモン単独欠損症

著者: 江口真美 ,   長谷川奉延

ページ範囲:P.2111 - P.2116

ポイント
●GH単独欠損症は小児期に低身長をきたすのみならず,成人期に心血管系疾患のリスクも増大させる.
●ゴナドトロピン単独欠損症の治療の目的は,二次性徴の発現・成熟と妊孕性の獲得である.しかし,治療法は確立されていない.
●すべての下垂体ホルモン単独欠損症の治療原則は生涯にわたるホルモン補充である.

汎下垂体(前葉)機能低下症—Sheehan症候群を含む

著者: 菅原明

ページ範囲:P.2117 - P.2120

ポイント
●低血糖や低Na血症の患者を見つけた場合は,積極的に汎下垂体機能低下症を疑う.
●慢性的に経過するが,ACTH分泌低下を有する場合はストレス・侵襲により症状が急激に悪化する場合がある.
●Sheehan症候群は,分娩直後のみならず分娩後長い期間を経てから発症する場合もある.
●原因が腫瘍による圧迫か下垂体前葉炎かにより,低下するホルモン(の頻度・順番)が異なる.
●二次性の甲状腺機能低下症と副腎皮質機能低下症を併発した場合は,必ず副腎皮質ステロイド薬の補充から開始する.

リンパ球性下垂体炎

著者: 片上秀喜

ページ範囲:P.2122 - P.2128

ポイント
●リンパ球性下垂体炎は病理学的診断名で,原発性の細胞浸潤の生じる部位により,前葉炎,漏斗下垂体神経葉炎(後葉炎),ならびに汎下垂体炎に分類定義される.
●典型的には前葉炎は周産期の女性に好発する.最近は,免疫チェックポイント阻害薬の使用後に前葉炎(IRH)が高頻度で発症することも知られており,使用前より下垂体ホルモンや甲状腺ホルモンを予め測定しておく.
●経過中に,下垂体─視床下部の腫大,前葉機能低下症や中枢性尿崩症をきたし,後年,ACTH単独欠損症,特発性中枢性尿崩症やempty sellaに移行することもある.
●治療法は確立されていないが,症状が強い際には薬理量のステロイドを投与する.改善しない場合や急速な腫瘤増大をきたす場合には,生検をかねて下垂体手術を行う.

【下垂体後葉機能低下症】

中枢性尿崩症

著者: 橡谷昌佳 ,   萩原大輔 ,   有馬寛

ページ範囲:P.2130 - P.2133

ポイント
●中枢性尿崩症は抗利尿ホルモンであるAVPの産生・分泌の障害により発症する.
●腎性尿崩症と心因性多飲症との鑑別が重要である.
●デスモプレシン治療においては水中毒に注意が必要である.

ホルモン抵抗症

下垂体前葉ホルモン不応症

著者: 杉澤千穂 ,   鳴海覚志 ,   長谷川奉延

ページ範囲:P.2134 - P.2137

ポイント
●下垂体前葉ホルモン不応症は,下垂体前葉ホルモン受容体の機能障害により下垂体前葉ホルモンが正常に作用しなくなった状態の総称である.その原因は各受容体遺伝子の両アレル性機能喪失型変異である.
●下垂体前葉ホルモン不応症の1つであるTSH不応症は,先天性甲状腺機能低下症をきたす.
●下垂体前葉ホルモン不応症の治療として,効果器が産生するホルモンを補充する.

甲状腺疾患 ホルモン過剰症:甲状腺中毒症 【原発性甲状腺機能亢進症】

Basedow病

著者: 牧野真樹 ,   鈴木敦詞

ページ範囲:P.2138 - P.2141

ポイント
●高齢者ではあまり明確な症状を示さないことも多い.
●薬物療法,放射線療法,手術療法,それぞれの治療の長所と短所を理解する.
●甲状腺クリーゼは早期診断・早期治療が重要である.
●甲状腺クリーゼの治療には,大量抗甲状腺薬,無機ヨード,副腎皮質ステロイド,β遮断薬,大量輸液,アセトアミノフェンなどを用いる.

Plummer病

著者: 向笠浩司

ページ範囲:P.2142 - P.2144

ポイント
●Plummer病は,甲状腺ホルモンを自律性分泌する腫瘤により甲状腺機能亢進症を呈する.
●TSH受容体抗体が陰性であり,シンチグラフィで局所性の放射性ヨウ素の取り込みを認める.
●治療法には,手術療法,経皮的アルコール注入療法(PEIT),ラジオ波焼灼術,アイソトープ治療がある.

潜在性甲状腺機能亢進症

著者: 笠木寛治

ページ範囲:P.2146 - P.2149

ポイント
●潜在性甲状腺機能中毒症には内因性と外因性がある.外因性の主な原因としては甲状腺ホルモン薬投与があり,不必要な過剰投与は避けるべきである.
●潜在性甲状腺機能亢進症では血中遊離甲状腺ホルモン濃度は正常でも,個人の組織レベルで“thyrotoxic”であり,心房細動や骨粗鬆症の発生率が増加する.
●潜在性甲状腺機能亢進症の代表的疾患として,Basedow病,AFTN,MNGなどが挙げられるが,わが国ではBasedow病が圧倒的に多い.
●Basedow病による潜在性甲状腺機能亢進症では甲状腺機能は不安定であるが,顕性亢進症に移行する危険性がそれほど高いわけではない.
●TSH濃度が0.1μIU/mL以下のGrade2のほうが,0.1μIU/mL〜基準値下限であるGrade1より,心房細動の発生率が高く,骨密度が低く,顕性甲状腺機能亢進症を発症しやすい.

【破壊性甲状腺中毒症】

無痛性甲状腺炎

著者: 井手茜

ページ範囲:P.2151 - P.2154

ポイント
●無痛性甲状腺炎は比較的短期間に甲状腺機能が変化する.
●患者の甲状腺機能は回復し,治療の必要がないことが多い.
●無痛性甲状腺炎の甲状腺中毒期に抗甲状腺薬は必要ない.
●出産後3カ月までに発症することがある.

亜急性甲状腺炎

著者: 石原隆

ページ範囲:P.2155 - P.2161

ポイント
●亜急性甲状腺炎は一過性の破壊性甲状腺中毒症を呈する.
●有痛性の結節を触知し,超音波検査では低エコー域を認め,99mTcO4- 甲状腺摂取率は低値である.
●未治療で改善する例からステロイド治療を要する例まで,個人差が大きいが必ず治癒する.

ホルモン欠乏症 【原発性甲状腺機能低下症】

慢性甲状腺炎(橋本病)

著者: 白石美絵乃 ,   大野洋介 ,   田中祐司

ページ範囲:P.2163 - P.2168

ポイント
●橋本病は甲状腺に慢性炎症をきたし,びまん性甲状腺腫や抗甲状腺自己抗体がみられ,経過中に40%程度が甲状腺機能低下症に至る.
●甲状腺機能低下症のみならず,無痛性甲状腺炎,産後甲状腺炎などの濾胞破壊性変化により甲状腺機能に変動をきたしやすい.
●甲状腺機能低下症では症状や,総コレステロール・CK高値を参考にするが,異常を認めない場合もある.
●甲状腺機能に異常が出現しなければ基本的に治療の必要はないが,妊娠女性,妊娠希望女性においては甲状腺機能の密な監視とコントロールが必要である.

先天性甲状腺機能低下症

著者: 菱沼昭

ページ範囲:P.2169 - P.2172

ポイント
●先天性甲状腺機能低下症は中枢性と原発性に分類され,原発性はさらに甲状腺形成障害と甲状腺ホルモン合成障害に分類される.
●新生児マススクリーニングで発見された先天性甲状腺機能低下症は,速やかにホルモン補充療法を開始する.病型診断は脳発達の完成した3歳以降に施行する.
●甲状腺ホルモン合成障害患者は,幼児期以降の甲状腺腫で発見されることがある.成人期の甲状腺腫の縮小はあまり望めないが,ホルモン補充療法はすべきである.
●原因遺伝子の種類によっては甲状腺外の徴候もあるので,遺伝子診断が望まれる.

潜在性甲状腺機能低下症

著者: 志村浩己

ページ範囲:P.2173 - P.2176

ポイント
●潜在性甲状腺機能低下症は,血中TSHが高値であるが,血中FT4が基準範囲にとどまる病態である.
●潜在性甲状腺機能低下症は無症候のことが多いが,脂質異常症,心不全,動脈硬化性疾患のリスク要因になりうる.
●潜在性甲状腺機能低下症に対する甲状腺ホルモン補充療法は,原因の鑑別診断を行うとともに,経過観察による高TSH血症の持続性および合併症やリスクを確認したうえで行う.一般的にはTSHが10 μIU/mL以上の場合に治療の適応となる.
●潜在性甲状腺機能低下症による妊孕性の低下や流早産のリスクが指摘されており,妊娠を望む女性や妊婦ではより軽症からの治療が推奨されている.

ホルモン抵抗症

甲状腺ホルモン不応症

著者: 田上哲也

ページ範囲:P.2178 - P.2183

ポイント
●甲状腺ホルモン不応症(RTH)とは,甲状腺ホルモン受容体(またはそれ以降の機序)の異常により甲状腺ホルモン作用が発揮されない疾患である.
●検査上SITSHを示すRTHβおよびnonTR-RTHと,示さないRTHαに大別される.
●臨床的に,RTHβとnonTR-RTHは下垂体型または全身型,RTHαは末梢型の不応症を呈する.

副甲状腺疾患 ホルモン過剰症

原発性副甲状腺機能亢進症

著者: 福本誠二

ページ範囲:P.2184 - P.2186

ポイント
●原発性副甲状腺機能亢進症は,過剰なPTH作用による高Ca血症が主に問題となる疾患である.
●大部分の本症患者は,高Ca血症と高PTH血症により診断される.
●本症治療の第一選択は手術である.手術不能例などに対しては,Ca感知受容体作動薬が使用可能となった.

悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症

著者: 田井宣之 ,   岡崎亮

ページ範囲:P.2188 - P.2191

ポイント
●悪性腫瘍に伴う高Ca血症(MAH)は,入院患者での高Ca血症の原因で最も頻度が高い.
●MAHの症状は多彩かつ非特異的である.見逃さないためにはルーチンに血清Ca値をチェックすることが望ましい.
●高Ca血症性クリーゼの治療の基本は,脱水に対する補液とビスホスホネート製剤,抗RANKL抗体などの骨吸収抑制薬投与である.

ホルモン欠乏症

副甲状腺機能低下症

著者: 竹内靖博

ページ範囲:P.2192 - P.2198

ポイント
●しびれ症状に遭遇したら,テタニーそして低Ca血症を想起する.
●副甲状腺機能低下症の成人患者の治療では,原則としてCa製剤は併用しない.
●偽性副甲状腺機能低下症を疑う場合は,ビタミンD欠乏症を確実に除外する.

副腎疾患 ホルモン過剰症 【副腎皮質機能亢進症】

副腎性Cushing症候群

著者: 尾関良則 ,   柴田洋孝

ページ範囲:P.2199 - P.2202

ポイント
●副腎性Cushing症候群は,副腎からコルチゾールが慢性的に自律性過剰分泌されることによってもたらされる病態である.
●血中コルチゾールの過剰に伴い多彩な臨床症状を呈し,糖尿病,高血圧症などの代謝異常を認める症例が多い.
●病型分類では副腎腺腫によるものが最も多く,その他に副腎癌や両側性大結節性副腎皮質過形成(BMAH)などがある.
●近年Cushing徴候を伴わないが副腎腫瘍からのコルチゾール自律性分泌を認めるsubclinical Cushing症候群と診断される症例が多く,手術適応となる症例もみられる.

原発性アルドステロン症—特発性アルドステロン症を含む

著者: 馬越洋宜 ,   田上哲也

ページ範囲:P.2203 - P.2207

ポイント
●スクリーニング検査は,原発性アルドステロン症の高リスク例に優先して行う.
●1種類以上の機能確認検査の陽性をもって,原発性アルドステロン症と診断する.
●副腎静脈サンプリングは実施経験の豊富な施設で行う.
●患者が手術を希望しない場合の病型診断は不要である.

【副腎髄質機能亢進症】

褐色細胞腫・傍神経節細胞腫

著者: 田辺晶代

ページ範囲:P.2208 - P.2211

ポイント
●典型例では,発作性の高血圧,頭痛,動悸などの症状を呈するが,明確な発作症状を呈さない非典型例(持続性高血圧)も多い.
●副腎や後腹膜の偶発腫瘍として発見されることがある.
●約10〜30%が悪性例であるが,生化学的・病理学的に悪性の診断がきわめて困難である.
●スクリーニング検査として,随時尿中メタネフリン分画(尿中クレアチニン補正値)を測定する.
●症状を呈する腫瘍はほとんどが径3cm以上である.

ホルモン欠乏症 【副腎機能低下症】

副腎皮質機能低下症—Addison病を含む

著者: 柳瀬敏彦 ,   野見山崇 ,   田邉真紀人

ページ範囲:P.2212 - P.2215

ポイント
●慢性副腎皮質機能低下症は慢性的なコルチゾール欠乏により起こり,副腎病変による原発性と,視床下部〜下垂体病変による続発性に分類される.
●原発性はAddison病とも呼ばれ,成因は結核と自己免疫機序(特発性副腎萎縮)が大部分を占める.
●続発性は,視床下部や下垂体における腫瘍性病変や炎症性病変が主な成因となるが,ステロイド離脱時にも起こりうる.
●治療は糖質コルチコイド補充が基本で,ストレス時には通常量の数倍の服用を指導し,副腎クリーゼの発症に注意を払う.

内分泌性○○病(症)の見つけ方

内分泌性高血圧

著者: 立木美香 ,   成瀬光栄

ページ範囲:P.2216 - P.2218

ポイント
●内分泌性高血圧症では特徴的な身体所見を認める疾患(Cushing症候群,甲状腺機能亢進症,先端巨大症など)があり,患者を注意深く診察しその所見に気づくことにより,早期診断につながる.
●若年性,治療抵抗性,低K血症合併,耐糖能障害合併の高血圧症では,内分泌性高血圧症を念頭に置き診療する.

内分泌性糖尿病

著者: 吉本貴宣 ,   小川佳宏

ページ範囲:P.2219 - P.2222

ポイント
●糖尿病の背景となる内分泌疾患を適切に診断・治療することで,糖代謝異常の改善を含めたトータルの心血管リスク因子管理が可能となる.
●Cushing症候群と先端巨大症は,特徴的な症候・身体所見を見逃さないことが重要である.
●副腎偶発腫を伴う糖尿病患者では,副腎皮質・髄質系の内分泌スクリーニング検査を施行する.

内分泌性骨粗鬆症

著者: 小林(垣田)真以子 ,   田上哲也

ページ範囲:P.2223 - P.2225

ポイント
●続発性骨粗鬆症のなかでも,内分泌疾患に伴う骨粗鬆症は最も頻度が高い.
●内分泌性骨粗鬆症では,原疾患の治療そのものが骨粗鬆症の治療につながることが多い.
●日常臨床で明らかな内分泌性骨粗鬆症を見逃さないように,骨粗鬆症を診たらまずは疑うことが大切である.

内分泌偶発腫の取り扱い

内分泌偶発腫(インシデンタローマ)の取り扱い—下垂体,甲状腺,副腎

著者: 田上哲也

ページ範囲:P.2226 - P.2230

ポイント
●下垂体偶発腫の頻度は剖検で約10%である.大きさと機能性の有無が重要である.
●甲状腺偶発腫の頻度は超音波検査で17〜28%である.悪性かどうかが問題となる.
●副腎偶発腫の頻度はCTで1〜10%である.「悪性か,機能性か」が診断のポイントである.

連載 Webで読影! 画像診断トレーニング・9

CTで判明する不明熱の原因

著者: 石田尚利

ページ範囲:P.2065 - P.2066

次の3症例について,どのような病態が推定できますか? また,診断は何でしょうか?
症例1 60代女性.3週間前より易疲労感があり,夜間に38℃台の発熱を認めていた.仰臥位で腹部の張りを感じ,近医を受診.触診にて腹部正中に腫瘤が疑われた.炎症反応は陰性.精査のため,腹部CTを施行.
症例2 70代女性.1カ月前より37℃台の発熱を認めた.抗菌薬などが処方されるも改善なく,頭痛や体重減少も出現した.WBC 9,000/μL,CRP 5.16mg/dL.血液培養は陰性,心エコーで異常なし.腹部CTを施行(胸部CTは異常なし).
症例3 50代男性.数カ月前より腰背部痛を認めていたが,市販の消炎鎮痛薬を服用し通院は拒んでいた.発熱も認められ,しばしば38℃以上となるため家族に連れられて受診.WBC 5,100/μL,CRP 6.57mg/dL.腹部CTを施行.

いま知りたい 胃炎の診かた・2

H. pylori感染を考慮した胃炎分類—シドニー分類から京都分類まで

著者: 鎌田智有 ,   高尾俊弘 ,   春間賢

ページ範囲:P.2242 - P.2245

H. pylori感染が原因となる疾患
 H. pylori菌が胃粘膜に感染すると,好中球浸潤を伴う慢性の活動性胃炎が起こり,長期経過にて萎縮性胃炎,腸上皮化生へと誘導される.この組織学的胃炎をベースに,胃癌,消化性潰瘍などの上部消化管疾患や,特発性血小板減少性紫斑病などの消化管以外の疾患が発生する.2009年に日本ヘリコバクター学会から『H. pylori感染の診断と治療のガイドライン2009改訂版』が発表され,2013年には「H. pylori感染胃炎」に対する除菌治療が新たに保険収載された.これらは今後の胃癌予防を図るうえで非常に重要な意味をもち,2016年の第22回日本ヘリコバクター学会において上記ガイドライン2016改訂版が報告された.
 除菌治療を行う際には胃癌の除外のほか,胃炎の診断が必要となるため,さまざまな内視鏡所見からH. pylori感染の有無を診断すること,その内視鏡所見から胃癌の発生リスクを評価することが重要になる.そのためにも理解しやすい簡便な分類で,内視鏡所見からH. pylori感染動態を診断できる胃炎分類の作成が急務であった.

あたらしいリウマチ・膠原病診療の話・16

プライマリ・ケアで診る膠原病②—血管炎,全身性硬化症,Sjögren症候群

著者: 萩野昇

ページ範囲:P.2246 - P.2252

血管炎
 血管炎は,血管を主座とした慢性炎症による全身性炎症や,血管の途絶・破綻による症状を特徴とする疾患群である.
 罹患血管の太さによって,「大型血管炎」「中型血管炎」「小型血管炎」の大きく3種類に分類される(表1)*1.これは,罹患する血管の太さによってどのような臨床症状が前景に立つかが決定されることからも,臨床的に有用な分類であると言える.

目でみるトレーニング

問題823・824・825

著者: 児玉隆秀 ,   岩崎靖 ,   嶋田雅俊

ページ範囲:P.2253 - P.2258

Inpatient Clinical Reasoning 米国Hospitalistの事件簿・5

「感染か非感染か,それが問題だ!」

著者: 石山貴章

ページ範囲:P.2260 - P.2263

「ホントに術後感染なのか…? こんなに元気なのに…」
 患者はケロっとしており,重症感はまるでない.私のなかにある感染症による発熱のイメージに,まるでそぐわないものだった….

診断力を上げる 循環器Physical Examinationのコツ・21

収縮性心膜炎(CP),心タンポナーデの診かた

著者: 山崎直仁

ページ範囲:P.2264 - P.2270

症例
70代女性.無職.
病歴 以前から永続性心房細動があり,近医でワルファリンが投与されていた.約1年前から両下腿の浮腫が出現するようになり利尿薬が開始されたが,浮腫は増悪し,胸腹水の出現も認めるようになった.収縮性心膜炎が疑われ,手術目的に入院となった.

SCOPE

免疫チェックポイント阻害薬のインパクト

著者: 大木遼佑 ,   三浦裕司 ,   高野利実

ページ範囲:P.2271 - P.2279

本稿のポイント
・これまで研究されてきた「がん免疫療法」のなかで初めて,免疫チェックポイント阻害薬が明確にがん患者の生存期間を延長することが報告され,世界にインパクトを与えた.
・欧米諸国,本邦でも同剤の研究が進められており,適応が広がってきている.
・効果予測因子は現時点でわかっておらず,適正使用のためにはバイオマーカーの確立が急務である.
・自己免疫疾患に類似した特徴的な有害事象があり,マネジメントには注意を要する.
・きわめて期待される薬剤ではあるが,薬価が高額であり,経済的な問題を含め今後の研究課題はまだ多い.

書評

—水口 雅,市橋 光,崎山 弘 総編集—今日の小児治療指針 第16版

著者: 原寿郎

ページ範囲:P.2145 - P.2145

 小児科診療の第一線では,重症度・種類が多様な小児疾患に対応しなければならない.本書は小児科医が遭遇する疾患ごとに,その領域の第一線のエキスパートが,最新の治療法を具体的かつ実践的に,重要疾患の「治療のポイント」「専門医へのコンサルト」「患児・家族説明のポイント」「看護・コメディカルへの指導」などの情報を盛り込みながら解説してある.また,救急医療の項では,症候別・疾患別に鑑別法とともに治療法が記載してある.
 検査や疼痛緩和のための鎮静法,治療手技や小児診療に必要な知識も漏れなく盛り込まれている.腎・泌尿器疾患,生殖器疾患,精神疾患,心身医学的問題,思春期医療,骨・関節疾患,皮膚疾患,眼疾患,耳鼻咽喉・気管の疾患,小児歯科・口腔外科疾患など,特に他診療科と協力が必要な疾患では,必要に応じ「専門医へのコンサルト」という項目で明確に解説してある.そして付録や資料では小児薬剤投与法,脳死判定と脳死下臓器提供,標準値,予防接種スケジュールなど小児科診療に必要な情報が添付されている.

—安部正敏 著—ジェネラリストのための—これだけは押さえておきたい皮膚疾患

著者: 砂長則明

ページ範囲:P.2259 - P.2259

 近年,専門分野に偏らず,全体的な視点から診療ができるジェネラリストのニーズが高まっている.皮膚の視診は,ジェネラリストにとって多くの情報をもたらしてくれるので,診断確定までのプロセスにおいて重要なウェイトを占める.また,皮膚病変は診察の際に必ず目に入るので,皮膚疾患の診断方法は,ジェネラリストに限らずすべての医師にとって,押さえておかなければならない重要なポイントである.
 この本を読んだとき,“とにかくわかりやすい”と思ったのが第一印象である.通常の写真だけでなく,拡大写真やイラストが並べて提示されており,ビジュアルに訴える解説書となっている.また,“そういえば,これ見たことあるけど,何だろう?”と思うような皮膚疾患や,専門医への速やかな紹介が必要なケースなどがうまくまとめられている.ページの上には,頻度と緊急度が,1〜5つまでの星の数で示されており,実用的である.診断プロセスについても,“患者から聴取すべきことは?”“この症例をどう解釈する?”“検査は?”“鑑別診断は?”“治療は?”と,問い掛け方式で項目ごとに簡潔に記されており,短時間でポイントがつかめるように構成されている.さらに,患者への説明方法や,皮膚科専門医へのコンサルトのこつが触れられているのもうれしい.末尾には,「TIPS!」として,全体のまとめが箇条書きで示され締めくくられている.一つの皮膚疾患に対して,解説が見開き2ページにまとめられているので,ページを開けばすぐに調べることができる.つまり,“これだけは押さえておきたい皮膚疾患”が,実にコンパクトにまとまっているのである!

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ページ範囲:P.2110 - P.2110

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「medicina」第53巻 総目次

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基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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