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雑誌目次

雑誌文献

medicina53巻3号

2016年03月発行

雑誌目次

特集 内科医がになう骨粗鬆症—診療と生活指導の最新情報

著者: 鈴木敦詞

ページ範囲:P.403 - P.403

 超高齢社会の進展とともに,筋骨格系の健康を保つことが要介護・要支援を予防するうえで重要になってきました.骨粗鬆症は,かつては単なる老化現象と考えられてもいましたが,現在では臨床的骨折というイベントを引き起こす基礎疾患であるととらえられています.約1,200万人といわれる骨粗鬆症患者に対して,日常臨床の現場で何を考え,何をしなければならないのか? 特に他に慢性疾患を有する場合に,治療の優先順位や疾患の相互作用をどのように評価するのかは,臨床医として常に考えなければならない問題です.そのため,本特集では,続発性骨粗鬆症(疾患関連骨粗鬆症)にも重点を置き,複合疾患に対処する内科医の先生方のお役に立てるように企画を考えました.
 2015年に骨粗鬆症予防と治療のガイドラインが改訂されました.その中で,診断と治療について,21世紀に大きな進歩があり,骨折予防治療が現実のものとなったことが確認されました.一方,健診率の低さに代表される一次骨折予防の難しさ,また骨折後でも施設間を移動する間にいつの間にか治療から脱落してしまう二次骨折予防の効率の悪さが問題となっています.そのため,最近では,骨粗鬆症リエゾンサービスのような,診療支援の仕組みも開始され,より効率的かつ効果的な慢性疾患管理への指向性が強まってきています.診療支援を具体化するためには,チーム医療の中で多職種の専門性を発揮していただかなければなりません.多忙をきわめる臨床の現場で,効率的かつ効果的に患者指導を行うための記事もお願いしました.

特集の理解を深めるための26題

ページ範囲:P.531 - P.534

座談会

折れない骨をつくるための骨粗鬆症治療と生活指導

著者: 鈴木敦詞 ,   石橋英明 ,   藤田博暁 ,   塚原典子

ページ範囲:P.404 - P.413

鈴木 20世紀末に「骨折を引き起こす骨脆弱性を骨粗鬆症と呼ぶ」とする疾病概念が確立しました.超高齢社会の進行により骨粗鬆症患者は増加の一途をたどり,積極的な骨折予防と骨折後の生活管理が急務となっています.本日は,骨粗鬆症を日常診療の中でどのように扱っていくかについて議論してまいります.

骨粗鬆症の現状と未来

骨粗鬆症の疫学

著者: 吉村典子

ページ範囲:P.414 - P.417

ポイント
●地域住民を対象とした住民コホート調査から,腰椎か大腿骨頸部のいずれかで骨粗鬆症と判断されたものの数は約1,280万人と推定された.
●同コホートの3年間の追跡結果から,WHO基準による骨粗鬆症の発生率は,腰椎では0.76%/年,大腿骨頸部では1.8%/年と推定された.
●骨粗鬆症の危険因子として血清25-hydroxyvitamin Dに着目したところ,その高値は,将来の骨粗鬆症の発生リスク(大腿骨頸部)を有意に低減した.

わが国の脆弱性骨折の現状と発生率の変化

著者: 萩野浩

ページ範囲:P.418 - P.421

ポイント
●高齢者の骨粗鬆症性骨折では脊椎椎体骨折,大腿骨近位部骨折の患者数が多い.
●欧米では近年,大腿骨近位部骨折の発生率が経年的に低下傾向にあることが指摘されているのに対して,わが国をはじめとするアジアでは上昇が観察されている.
●これに対して欧米あるいは豪州では,近年,発生率は増加しておらず,一部の地域では減少に転じている.

高齢者の健康とサルコペニア・フレイル

著者: 小川純人

ページ範囲:P.422 - P.425

ポイント
●超高齢社会を迎えるわが国において,骨粗鬆症・骨折予防やサルコペニア・フレイル予防に向けた取り組みなど,早期から対策が重要である.
●サルコペニアおよびフレイルは,転倒・骨折リスクや要介護リスクを増加させるだけでなくADLやQOL,生命予後にも大きな影響を及ぼす.
●近年,骨と骨格筋の相互連関,骨粗鬆症とサルコペニア・フレイルとの関連性が次第に明らかになりつつある.

骨粗鬆症検診の問題点と地域での取り組み

著者: 中藤真一

ページ範囲:P.426 - P.428

ポイント
●要介護の原因としての骨折・転倒はその割合を増しているが,骨粗鬆症の薬物治療率は25%程度である.
●骨粗鬆症検診の問題点として,低い実施率と受診率,骨密度中心の判定,5年の検診間隔などがある.
●骨粗鬆症検診を他の検診と併せて行うことによって,実施率と受診率,治療開始率の向上が期待できる.
●骨折リスクを多角的に評価する方法として,FRAX®やロコモーションチェック(ロコチェック)がある.

医療経済からみた骨粗鬆症治療

著者: 森脇健介

ページ範囲:P.430 - P.433

ポイント
●医療費膨張の問題に際して,骨粗鬆症の疾病対策に費用対効果の視点を組み入れることが重要となっている.
●欧米諸国を中心に,骨粗鬆症治療の医療経済評価の事例集積が進んでおり,費用対効果のエビデンスが臨床上・医療政策上の意思決定に活用されている.
●骨粗鬆症領域では,臨床研究をもとに数理モデルを活用したシミュレーション分析が主流である.
●日本の分析は限定的であるが,今後のデータの蓄積に応じて,多様な介入方法について,さまざまな患者条件のもとで費用対効果の評価を行うことが望まれる.

骨粗鬆症の診断とリスク評価

骨粗鬆症の診断基準とガイドライン

著者: 細井孝之

ページ範囲:P.434 - P.438

ポイント
●骨粗鬆症の診断は,骨粗鬆症性骨折の有無と種類,骨密度の評価,鑑別診断・除外診断に基づく.
●骨折を起こしていない状態での骨強度の臨床的指標として,骨密度の値が最も有用であり,初発骨折の予防には骨密度測定が欠かせない.
●骨粗鬆症による椎体骨折や大腿骨近位部骨折の既往をもつ患者は,鑑別診断・除外診断のうえで原発性骨粗鬆症と診断する.
●他の骨粗鬆症性骨折を既往としてもつ場合には,骨密度測定結果を合わせて診断する.
●骨粗鬆症と診断された場合に加えて,「骨量減少」レベルでの骨密度であっても大腿骨近位部骨折の家族歴やFRAX®の値を勘案して薬物治療を検討する.

骨粗鬆症のリスク評価

著者: 藤原佐枝子

ページ範囲:P.440 - P.443

ポイント
●骨粗鬆症のリスク評価のために,問診で骨折歴を聴取することは必須である.
●骨粗鬆症のリスクは,家族歴あり,閉経後,加齢,低体重,不動などで高くなる.
●骨粗鬆症リスクを評価する簡便な方法として,年齢と体重を使ったツールがある.
●FRAX®は,骨密度と危険因子を使って,無治療の人の骨折リスク評価に役立つ.

転倒リスク評価と骨粗鬆症

著者: 原田敦

ページ範囲:P.444 - P.446

ポイント
●転倒リスク評価を骨粗鬆症診療に取り入れることは骨折リスクの低減に繋がる.
●転倒リスク指標がその評価に有用である.
●転倒の既往は強い予測能を持つ,簡便な指標である.

骨粗鬆症の画像診断

著者: 伊東昌子

ページ範囲:P.447 - P.451

ポイント
●X線撮影による椎体骨折の評価には,QM法とSQ法があり,後者はその利点により汎用されている.
●非外傷性椎体骨折の存在は,骨粗鬆症の診断および骨折リスク評価,また治療効果判定に重要な所見である.
●DXAによる腰椎(前後方向)と大腿骨近位部(頸部・total hip)計測は,骨密度測定方法・部位の標準である.
●QCT・HR-pQCTは,in vivo三次元ジオメトリー・微細構造の情報を提供する.

骨代謝マーカー

著者: 三浦雅一 ,   佐藤友紀

ページ範囲:P.452 - P.456

ポイント
●骨代謝マーカー測定は,①治療の必要性に対する患者の理解を高めたい場合,②薬物治療を予定している場合,③治療薬の適切な選択に役立てたい場合,④骨粗鬆症の病態を評価する場合などに有用となる.
●骨代謝マーカーの反応は,治療薬(薬剤)の作用機序により異なるため,さらなる研究が重要である.
●骨粗鬆症診療において,骨代謝マーカーを用いることで服薬アドヒアランス向上が期待され,治療が有効である患者の治療からの脱落を回避できる利点を有している.

続発性骨粗鬆症

続発性骨粗鬆症を引き起こす内科疾患

著者: 井上大輔

ページ範囲:P.458 - P.461

ポイント
●多くの内科疾患が骨粗鬆症のリスクとなる.
●男性骨粗鬆症では,約半数が続発性の原因疾患を有する.
●慢性閉塞性肺疾患(COPD)は,男性続発性骨粗鬆症の原因疾患の筆頭である.
●胃切除後骨粗鬆症は,近年,予後が改善した胃癌術後患者に多くみられる.
●炎症性腸疾患(IBD)や原発性胆汁性肝硬変(PBC)では,グルココルチコイド過剰やビタミンD欠乏だけでは説明できない骨粗鬆症の合併がみられる.

生活習慣病関連骨粗鬆症

著者: 山本昌弘

ページ範囲:P.462 - P.464

ポイント
●糖尿病および高血圧症は,メタ解析により,骨折リスクの増加が示された続発性骨粗鬆症の基礎疾患である.
●チアゾリジンは,骨密度が低下し,女性において骨折リスクの増加がある.
●降圧薬の骨折リスクは,薬剤によって異なるが,骨折リスクに影響しないか,抑制的に作用すると思われる.
●スタチンは,ビスホスホネートの作用点の上流に存在するHMG-CoA還元酵素を阻害し,骨折リスクを低下する.

CKD-MBDと骨粗鬆症

著者: 濱野高行

ページ範囲:P.465 - P.469

ポイント
●骨粗鬆症の多くがCKD(chronic kidney disease;慢性腎臓病)である.CKD自体が骨折リスクで,薬剤治療によるNNT(number needed to treat;治療必要数)が小さいため真に治療を考慮すべき集団である.
●クレアチニンは腎機能の指標であるが,筋肉量でも規定されるので,筋肉量の少ない患者では,シスタチンCで腎機能を評価したほうがよい.
●CKD-MBD(mineral and bone disorder;骨ミネラル代謝異常)による骨代謝異常の種類は多岐にわたるが,保存期では線維性骨炎をはじめとする高回転骨が主体で,皮質骨が特に脆弱化する.
●CKDではまずPTH(parathyroid hormone;副甲状腺ホルモン)を計測し,一般的な骨粗鬆症薬を使いはじめる前に,PTHを活性型ビタミンDなどで管理する.特に骨吸収抑制薬はPTHをさらに上昇させるからである.
●CKDでは,腎機能に影響されない骨代謝マーカーを使うべきである.骨形成マーカーではBAP(骨型アルカリホスファターゼ)やPINP(Ⅰ型プロコラーゲン-N-プロペプチド),骨吸収マーカーではTRACP-5b(酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ)である.
●CKDでは,SERM(選択的エストロゲン受容体作動薬)やビタミンDの投与量を減らすべきであるし,デノスマブの副作用の低Ca血症は重篤である.またCcr(クレアチニンクリアランス)が30mL/分未満ではビスホスホネートの使用に慎重になるべきである.

ステロイド性骨粗鬆症

著者: 古谷武文

ページ範囲:P.470 - P.473

ポイント
●ステロイド性骨粗鬆症のガイドラインが10年ぶりに改訂された.
●新ガイドラインは,比較的簡便に薬物治療群と経過観察群を判定できる.
●新ガイドラインは,日本独自の骨折リスク評価法を採用している.
●新ガイドラインは,骨密度測定が必須でないため,クリニックなどでも利用しやすい.

薬剤性骨粗鬆症

著者: 早川伸樹

ページ範囲:P.474 - P.478

ポイント
●種々の治療薬が骨代謝へ負の影響を与える.長期間の服用を要する場合,薬剤選択と骨折予防に十分注意する必要がある.
●乳癌または前立腺癌に対する内分泌療法は骨密度を有意に低下させ,乳癌に対するアロマターゼ阻害薬は骨折リスクを上げる.
●いくつかの生活習慣病治療薬が骨代謝に負の影響を与える.チアゾリジン薬,ループ利尿薬,プロトンポンブ阻害薬などがある.
●選択的セロトニン再取り込み阻害薬や抗けいれん薬も骨代謝へ負の影響を及ぼす.

移植後骨粗鬆症

著者: 四馬田恵 ,   吉野寧維 ,   鈴木敦詞

ページ範囲:P.479 - P.481

ポイント
●臓器移植後はステロイド薬ならびに免疫抑制薬により骨折リスクが高まる.
●腎移植後には移植前からの骨ミネラル代謝異常が骨折リスクに影響する.
●移植後の長期予後改善に伴い,慢性疾患合併リスクへの配慮が必要となってきている.

骨粗鬆症の生活指導

骨粗鬆症の栄養管理

著者: 上西一弘

ページ範囲:P.484 - P.487

ポイント
●骨粗鬆症の栄養管理の基本は,食事摂取基準に基づき,適切なエネルギー,栄養素摂取を目指すことである.
●さらに,カルシウム,ビタミンD,ビタミンKなど骨の健康にかかわる栄養素の摂取を心がけることが重要である.
●骨質の視点から,ビタミンB群やビタミンCの摂取も勧められる.
●多くの種類の食品を摂取することで,バランスの良い食事となる.

骨粗鬆症の運動指導

著者: 石橋英明

ページ範囲:P.488 - P.491

ポイント
●運動は,骨密度増加効果と転倒予防効果で骨折予防効果が期待できる.
●筋力やバランスを改善する多因子運動介入は転倒予防効果がある.
●背筋運動は,背筋筋力の強化とともに椎体骨折の予防効果がある.
●ロコモーショントレーニングは転倒予防効果が期待できる.

若年者の健康管理—骨粗鬆症一次予防の観点から

著者: 清水弘之

ページ範囲:P.492 - P.495

ポイント
●将来の骨折防止の介入点の1つとして思春期における最大骨量を高く獲得しておく.
●骨量の規定因子は体格,母親の骨量(遺伝率は40〜80%),初経後年数で,内的因子以外では運動習慣に大きく依存する.
●母乳栄養の勧め,日光浴が避けられるようになり,母乳栄養児のビタミンD欠乏によるくる病の報告が散見される.
●低骨量の親子は有意にBMIが低く,体重は軽く,骨粗鬆症の家族歴が多く,運動量の少ない特徴を有する.
●骨量獲得に対する介入は17歳までに行い,ハイインパクトスポーツが有効で,家庭内での運動の励行が重要である.

骨粗鬆症の薬物治療

骨粗鬆症薬物治療の考え方

著者: 竹内靖博

ページ範囲:P.496 - P.499

ポイント
●骨粗鬆症の治療薬は,骨吸収抑制作用を有するものと骨形成促進作用を有するものに分類される.
●骨粗鬆症性骨折の一次予防を目的とするか,二次予防を目的とするかを考慮して治療薬を選択する.
●開発中の骨粗鬆症治療薬としてカテプシンK阻害薬や抗スクレロスチン抗体などがある.

ビスホスホネート薬

著者: 目貫邦隆 ,   酒井昭典

ページ範囲:P.500 - P.502

ポイント
●ビスホスホネート(BP)薬は,現在の骨粗鬆症治療の第一選択薬に位置する薬剤で,骨折予防や骨密度増加効果に関して高いエビデンスをもつ.
●BP薬の長期投与では,顎骨壊死や非定型大腿骨骨折の発生に注意が必要である.
●副作用のリスクを十分に上回る骨折抑制効果のある薬剤であり,投与期間や前駆症状などに注意し,適切に投与することが重要である.

選択的エストロジェン受容体修飾薬(SERM)

著者: 寺内公一

ページ範囲:P.504 - P.508

ポイント
●SERMには椎体骨折抑制,ハイリスク群における非椎体骨折抑制などの効能がある.
●SERMにはさらに,心血管疾患や乳癌の発症をも抑制する効果がある.
●骨密度増加や骨代謝マーカーの変化は相対的に小さい.
●骨代謝回転を過度に抑制しないために,長期にわたる服薬が可能である.
●閉経後,比較的早期の投与に適する薬剤と考えられる.

抗RANKL抗体

著者: 粕川雄司 ,   宮腰尚久

ページ範囲:P.510 - P.513

ポイント
●抗RANKL抗体製剤(デノスマブ)は,6カ月に1回皮下注射する骨吸収抑制剤である.
●投与後1カ月から骨吸収が抑制され,投与継続により骨吸収は抑制されるが,投与中止によりすみやかに骨吸収が回復する.
●2年以上の投与で,腰椎,大腿骨近位部,大腿骨頸部,橈骨遠位1/3部の骨密度は有意に増加する.
●2年から3年の投与で,脊椎骨折・大腿骨近位部骨折などの骨粗鬆症による脆弱性骨折の発生率を抑制する.
●低カルシウム血症を生じることがあり,投与時の血清補正カルシウム値の確認と,必要に応じてカルシウムとビタミンDの補充が重要である.

ビタミンDとそのアナログ,ビタミンK

著者: 遠藤逸朗

ページ範囲:P.514 - P.517

ポイント
●複数の臨床検討成績から,ビタミンD投与は椎体骨折抑制効果や転倒予防効果を示すことが明らかとなっている.
●新規活性型ビタミンD3製剤であるエルデカルシトールの骨に対するエビデンスが蓄積されつつある.
●わが国においては,ビタミンD不足症が高頻度に存在することが示されている.
●ビタミンK2製剤投与は,少数例における検討で腰椎骨密度の上昇と臨床椎体骨折の抑制効果が報告されている.

テリパラチド

著者: 岡田洋右

ページ範囲:P.518 - P.520

ポイント
●PTH注射製剤は,骨粗鬆症治療薬のなかで唯一の骨形成促進薬である.
●PTH注射製剤は,連日注射投与と週1回注射投与の2種類がある.
●PTHの投与期間は最大で,連日注射製剤は24カ月,週1回注射製剤は18カ月までである.
●ほかの骨粗鬆症治療薬での骨折例や高齢の多発骨折例などの高リスク患者が投与対象症例である.

骨粗鬆症リエゾンサービスと骨粗鬆症学会認定医制度

骨粗鬆症リエゾンサービスと再骨折予防

著者: 池田聡

ページ範囲:P.522 - P.525

ポイント
●骨粗鬆症リエゾンサービスの目的は,骨粗鬆症治療の「治療率」と「治療継続率」の向上である.
●そのためには「地域・社会」,「病院」,「診療所」の連携を通じた地域での骨粗鬆症ネットワークの構築が重要である.
●骨粗鬆症リエゾンサービスは骨折の一次・二次予防を目標にしている.
●高齢者を扱う内科医にとって,(再)骨折予防としての骨粗鬆症の評価と治療は決して無視できない.

一般内科医のはたす役割と骨粗鬆症学会認定医制度

著者: 今西康雄

ページ範囲:P.526 - P.529

ポイント
●高齢化に伴い,日常臨床において骨粗鬆症の診療頻度が増加している.特に生活習慣病において骨折リスクが増大することを考慮すると,一般内科医の骨粗鬆症診療における役割は重要である.
●2015年より日本骨粗鬆症学会認定医制度が発足し,学会としても骨粗鬆症診療のレベルアップを図ることとなった.

連載 異常所見を探せ! 救急CT読影講座・15

見逃せない“溜まり”

著者: 石田尚利

ページ範囲:P.397 - P.397

40代の男性.受診2週間前から37℃前半の微熱があり,1週間前から38℃台の発熱を認めるようになった.受診日午前より右腹痛と倦怠感が出現し,救急外来を受診.既往歴なし.血液検査所見はWBC 10,800/μL,CRP 8.11mg/dL,ALP 518mg/dL,γ-GT 77mg/dL.腹部超音波検査で肝腫瘤を認め,精査目的にて腹部単純・造影CTを施行.

診断力を上げる 循環器Physical Examinationのコツ・12

連続性雑音の聴きかた—連続性雑音はⅡ音をまたぐ

著者: 山崎直仁

ページ範囲:P.541 - P.547

 連続性雑音は,収縮期から拡張期にかけて,Ⅱ音を越えて連続的に聴取される雑音と定義される.雑音がⅡ音をまたぎさえすれば連続性雑音であり,必ずしも収縮期─拡張期を通じて途絶えることなく聴こえ続ける必要はない.英語でいうと,連続性雑音は“Murmurs that never end”ではなく,“Murmurs that go beyond the second heart sound”ということになる.
 連続性雑音は図1に示すように①狭義の連続性雑音と②収縮期横断性雑音の2種類に分けられる1).①狭義の連続性雑音は収縮期─拡張期を通じて連続的に聴こえ,高圧─低圧シャントが存在するときに聴取される.②収縮期横断性雑音(transsystolic murmur)は収縮期を横断しⅡ音をまたぐが,拡張期後半には雑音は消失している.このタイプの雑音は血管に高度の狭窄病変があるときに聴取される.

魁!! 診断塾・24

黒鯛は我々の領域!?の巻

著者: 佐田竜一 ,   綿貫聡 ,   志水太郎 ,   石金正裕 ,   忽那賢志

ページ範囲:P.549 - P.555

石金:ふぅ…この連載もいよいよ最終回だな…寂しくなるぜ.
忽那:石金ごときが,いったい何を卒業した気になってやがる! オレたちの臨床の研鑽は一生続くんだかんよ…!

目でみるトレーニング

問題796・797・798

著者: 畑中崇志 ,   窪田哲也 ,   柳川洋一

ページ範囲:P.556 - P.561

Choosing Wisely Japan その検査・治療,本当に必要ですか?・6

ケース:77歳女性,巨細胞性血管炎疑いでの検査

著者: 徳田安春

ページ範囲:P.563 - P.565

 Choosing Wiselyは,エビデンスに基づいた診断や治療の選択ができるように,医師・患者の対話を促し,有害事象につながるリスクの高い過剰診療や価値の低い検査を減らそうという世界的キャンペーン活動である.
 具体的な活動として,各国の臨床医学系学会は推奨リストを挙げている.今回はCanadian Association of Emergency Physicians(CAEP)の推奨を表1に示す.
 では,今回のケースをみてみよう.

あたらしいリウマチ・膠原病診療の話・10

免疫抑制薬の使い方①—Life-savingでSteroid-saving

著者: 萩野昇

ページ範囲:P.566 - P.568

はじめに
 1958年の報告では,多発血管炎性肉芽腫症(旧:ウェゲナー肉芽腫症)の生存期間中央値は5カ月であった.その約10年後,ステロイドが使用された26症例についての文献的検討では,中央値は12.5カ月に延長していたものの,原因不明の致死的疾患であることには変わりはなかった*1
 しかしその後,FauciとWolffが1973年にステロイドとシクロホスファミドの併用によって14名中12名の患者で「寛解」を達成したと報告し,1992年にはGary Hoffmanらが75%の「完全寛解」を報告した*2
 このように,免疫抑制薬の使用が難治性リウマチ性疾患において生命を救う(Life-saving)働きをすることは,一部の疾患において証明されている.
 現時点で,多くのリウマチ性疾患は「治癒」しない.そこで,リウマチ性疾患の治療の目標は,なるべく早期に疾患活動性をゼロに持ち込み(寛解導入),疾患活動性がゼロの状態をなるべく長期に・薬剤副作用を最小限にして維持する(寛解維持)こととなる.
 かつて本邦では免疫抑制薬全般にリウマチ性疾患治療のための保険適用がなかったこともあり,寛解導入も寛解維持もステロイドによって行われていた.そのため,さまざまなステロイドパルス療法や長期ステロイド内服に伴う副作用を最小限にする工夫が考案され,場合によっては「疾患を抑えこむために多少の薬剤副反応は『許容』する」という考え方で治療方針が決定されてきた*3
 しかし,現在のリウマチ性疾患治療は,患者の「生命」だけではなく「生活」を守るステージに入ってきており,許容される薬剤副反応の幅は限りなく小さくなっている.そして,ステロイドは可能な限り減量し,可能な限り中止するのが一番の副作用対策である.Life-savingな寛解導入療法の後には,寛解状態を維持しつつ,ステロイドの減量・中止(Steroid-saving)を行うために,比較的副作用の少ない免疫抑制薬を併用するのが現在の考え方の主流である*4
 本稿では,プライマリ・ケアの場で遭遇する機会の多い,主要な経口免疫抑制薬について述べる.ミコフェノール酸モフェチル,シクロホスファミドはいずれもリウマチ性疾患の治療に重要な薬であるが,プライマリ・ケアの場で開始・継続することは稀と思われるので,疾患各論のところでとりあげる.また,リウマチ性疾患に対して使用される各種生物学的製剤には,間違いなく「免疫抑制作用」があるが,これも関節リウマチその他の疾患各論において言及する.

書評

—IDATENセミナーテキスト編集委員会 編—市中感染症診療の考え方と進め方第2集—IDATEN感染症セミナー実況中継

著者: 清田雅智

ページ範囲:P.439 - P.439

 大野博司先生(洛和会音羽病院感染症科)は,研修医時代に筆者が指導医として実際に接した勤勉なる先生である.2年次の2002年に抗菌薬の適正使用をめざし,自ら講師になり感染症の院内勉強会を自分で計画立案した.さらには院外でも夏と冬にその勉強会を自主開催し,それが後にIDATEN感染症セミナーとなり,現在も続いている.彼はその準備のために深夜まで資料作りに励んでいたことを間近で見ていたが,その企画力とバイタリティーには深く感銘を受けた(研修医ですよ!).筆者はこの感染症の勉強会資料を「贈り物」として受け取っていたが,その内容はさらに発展し2006年,医学書院より『感染症入門レクチャーノーツ』として上梓された.
 その彼の発案でIDATEN感染症セミナーを2007年1月に飯塚病院で行いたい旨の連絡があった.二つ返事で了承し,筆者は幹事として全国80名の医師と学生さんのお世話をさせていただき,今でもIDATENの活動を陰ながら見続けている.その当時の参加者リストは今でも持っているが,現在色々な分野で活躍をされているのに気付き,この活動がもたらした効果を今さらながらに驚いている.この飯塚開催のスライドも手元にあるが,IDATENが伝えてきた教育のコンテンツのレベルは,2005年メイヨー・クリニック感染症科に留学時のモーニングレクチャーとさほど遜色がないことに気付いていた.この教育内容を活字化した前書が2009年に上梓され,筆者は当然のように購読したが,セミナーを受講できない人に対する重要なテキストになっているという感想を持っていた.

—宮城征四郎/藤田次郎 編著—研修医・指導医のための呼吸器疾患診断Clinical Pearls

著者: 山中克郎

ページ範囲:P.482 - P.482

 最新の医学知識を披露し疾患について語る指導医の姿は男っぷりをあげるのだが,なかでも私が最も心を打たれるのは,ベッドサイドで研修医を教育する姿である.指導医の,病態生理を考えた的確な診察,患者を思いやる優しい振る舞いを見るときほどグッとくる瞬間はない.この本を熟読し,そんな男前の指導医に変身するのはいかがだろうか.
 宮城征四郎先生の執筆による「第1章 指導ならびに学びの姿勢」では,研修医の心得や良き指導医となるための12カ条が紹介されている.回診中に挿入するミニレクチャーの実例もあり,指導医にとっては研修医に悟られずにこっそり読みたい部分である.

—谷口俊文 訳—医師として知らなければ恥ずかしい50の臨床研究—(原著:50 Studies Every Doctor Should Know─The Key Studies that Form the Foundation of Evidence Based Medicine, Revised Edition)

著者: 喜瀬守人

ページ範囲:P.509 - P.509

 EBM(evidence-based medicine)の5ステップである疑問の定式化・情報収集・批判的吟味・患者への情報提供・振り返りのうち,批判的吟味はとりわけ難易度の高い「関門」です.それ故に,批判的吟味の労力を減らしてアクセスしやすい情報を提供する試みは複数行われています.2次文献であるUpToDate®やDynaMed®は代表格ですし,Journal Watch Online®のように新着論文から興味深いものを選んで要約してくれるサービスもあります.それでも,幅広い分野のマイルストーンとなる重要論文を網羅した本書のような構成というのはあまり目にしません.重要な医学論文についてまとめて知りたい初学者,ジェネラリストにとって特に有用な一冊です.
 例えばUKPDS(15章)は,論文発表から十数年が経過した現在でも,頑健robustなエビデンスとしてわれわれの糖尿病診療を下支えしています.CAST試験(8章)は,心筋梗塞後の不整脈を予防するための薬物治療が,実は患者予後を改善しないという結果になり,真のアウトカムの重要性を図らずも示しました.その他にも,われわれの日常診療に変化をもたらした重要な研究が多く掲載されています.

—松村理司 監修 酒見英太 編 京都GIMカンファレンス 執筆—診断力強化トレーニング2—What's your diagnosis?

著者: 徳田安春

ページ範囲:P.569 - P.569

 この本は1998年から現在もなお継続して開催されている京都GIMカンファレンスのなかから珠玉のケースを収集した第2弾である.今年200回記念を迎えた京都GIMカンファレンスは毎回100人以上もの医師が参加し,立見が出るほどの人気を博しているという.難解なレアケースが多く,ほとんどの医学生や初期研修医には太刀打ちすることは至難であり,後期研修医以上の中堅やベテラン医師あたりがターゲット読者層であろう.
 ケースは全て実際の症例.病歴や身体所見がリアル情報として提示される.この本のケースのうち,全ての疾患を診断したことがある医師は世界広しといえども皆無であろう.そう断言できる理由は,この本のなかに「ティアニー先生も初めて」のケースが掲載されていることや,世界で2例目のケースなども収載されているからだ.

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基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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バックナンバー

60巻13号(2023年12月発行)

特集 一般医家のための—DOAC時代の心房細動診療

60巻12号(2023年11月発行)

特集 内科医が遭遇する皮膚疾患フロントライン—「皮疹」は現場で起きている!

60巻11号(2023年10月発行)

増大号特集 患者さんの質問にどう答えますか?—言葉の意味を読み解きハートに響く返答集

60巻10号(2023年9月発行)

特集 ミミッカー症例からいかに学ぶか

60巻9号(2023年8月発行)

特集 症例から読み解く—高齢者診療ステップアップ

60巻8号(2023年7月発行)

特集 浮腫と脱水—Q&Aで学ぶジェネラリストのための体液量異常診療

60巻7号(2023年6月発行)

特集 整形外科プライマリ・ケア—内科医が知りたい整形外科疾患のすべて

60巻6号(2023年5月発行)

特集 Common diseaseの処方箋ファイル—臨床経過から学ぶ20症例

60巻5号(2023年4月発行)

特集 臨床医からみたPOCT

60巻4号(2023年4月発行)

増刊号 探求!マイナーエマージェンシー

60巻3号(2023年3月発行)

特集 令和の脳卒中ディベート10番勝負—脳卒中治療ガイドライン2021とその先を識る

60巻2号(2023年2月発行)

特集 慢性疾患診療のお悩みポイントまとめました—高血圧からヘルスメンテナンスまで

60巻1号(2023年1月発行)

特集 10年前の常識は非常識!?—イマドキ消化器診療にアップデート

59巻13号(2022年12月発行)

特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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