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文献詳細

雑誌文献

medicina53巻7号

2016年06月発行

文献概要

特集 抗菌薬の考え方,使い方—ホントのところを聞いてみました 中枢神経系感染症

クリプトコッカスによる髄膜炎

著者: 小川吉彦1

所属機関: 1奈良県立医科大学感染症センター

ページ範囲:P.988 - P.990

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Question 1
アムホテリシンBもフルシトシンも使ったことがありません.使い方(溶解方法や投与時間なども)や副作用などの注意点とその対処について,ホントのところを教えてください.
 クリプトコッカス髄膜炎の治療としては,わが国の『深在性真菌症の診断・治療ガイドライン2014』では,「アムホテリシンBリポソーム製剤(L-AMB:アムビゾーム®)2.5〜6mg/kg 24時間ごとを4週間+フルシトシン(5-FC:アンコチル® 500mg錠)25mg/kg 6時間ごとの2週間」が寛解導入療法としての第一選択となっています1).アムホテリシンBは従来より使用されてきた非常に殺菌作用の強いポリエン系の抗真菌薬でしたが,腎上皮細胞への細胞毒性のために,腎障害がほとんど必発という状態でした.そこで新たに登場したのがアムビゾーム®です.このリポソーム化によって,真菌に選択的に作用できるようになり,腎障害という副作用の頻度を減らすことができるようになっております.それでもアムビゾーム®でも一定の割合で腎機能障害が起こることが知られております.実際に国内での発売前第Ⅱ相臨床試験結果でも7.6%の腎および尿路障害を認めたと報告されておりますが,急性腎不全に至った症例は118症例のうち1症例のみでした.実際に使用してみて問題になるのは,低K血症をはじめとした電解質異常と,悪心・嘔吐といった消化器症状です.併用する5-FCも高率に消化器症状を認めるほか,髄膜炎のtriasの1つである嘔吐が副作用で認められるというのが使い勝手を難しくしているところかと思います.そのために,やはり治療的腰椎穿刺(髄圧を25cmH2未満にする)を行い,少しでも原疾患による髄膜刺激症状を軽減させることは,副作用のモニターにも有用ではないでしょうか.実際に治療的腰椎穿刺を早期に行うことは,予後の改善にもつながることが近年報告されており2),ぜひとも診断時の髄液採取のみならず,診断後に髄圧を減らす目的での穿刺を行っておくべきでしょう.また推奨量の幅が1日2.5〜6mg/kgと非常に広いのも使い手の頭を悩ませるところです.筆者は日本人的にだいたいその中間の4mg/kgで使用する機会が多いように思いますが,高価な薬なので,無駄がないように使用するのも大切かと思います.
 溶解の方法ですが,これがなんとも煩雑で覚えられない! 注意点がいくつもあります.そのため,筆者はこれを使用する病棟に添付文書上の調整法が記載されたものをラミネート加工して下敷きにして置いていました.その注意点が下の4つ.

参考文献

1)深在性真菌症のガイドライン作成委員会:深在性真菌症の診断・治療ガイドライン2014,協和企画,2014
2)Rolfes MA, et al:The effect of therapeutic lumber punctures on acute mortality from cryptococcal meningitis. Clin Infect Dis, 59:1607-1614, 2014
3)Day JN, et al:Combination antifungal therapy for cryptococcus meningitis. N Engl J Med 368:1291-1302, 2013
4)van Duin D, et al:Effects of voriconazole on Cryptococcus neoformans. Antimicrob Agents Chemother 48:2014-2020, 2004

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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