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文献詳細

雑誌文献

medicina53巻7号

2016年06月発行

文献概要

特集 抗菌薬の考え方,使い方—ホントのところを聞いてみました その他

周術期の抗菌薬

著者: 川村英樹1

所属機関: 1鹿児島大学病院医療環境安全部感染制御部門

ページ範囲:P.1041 - P.1043

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Question 1
術前の抗菌薬は,どのタイミングで開始し,どのタイミングで終了すればよいのでしょうか? ホントのところを教えてください.
 手術部位感染症(surgical site infection:SSI)は,主に皮膚切開による皮膚常在菌や,消化管など手術臓器の常在細菌叢による手術野の汚染によって発症します.したがって,SSI発症リスクを下げるためには手術野の細菌を減らすことが重要であり,SSI対策の1つとして術後感染予防抗菌薬(antimicrobial prophylaxis:AMP)の投与が挙げられます.AMPは術中汚染菌によって選択する必要があります(表1)1)
 AMPの投与にあたっては,手術が始まる時点で,十分な殺菌作用を示す抗菌薬の血中濃度,組織中濃度が必要です.腹部手術や人工関節手術などの清潔・準清潔手術の前向き研究において,皮膚切開2時間前から直前の間にAMPが投与された群と比較し,皮膚切開2時間以上前に投与した群,皮膚切開3時間以上後に投与された群で有意に感染率が高かったとされ2),汚染されるタイミングに合わせたAMP投与が必要と考えられます.

参考文献

1)日本化学療法学会・日本外科感染症学会:術後感染症予防抗菌薬ガイドライン作成委員会:術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン,ドラフト版,2015
2)Classen DC, et al:The timing of prophylactic administration of antibiotics and the risk of surgical-wound infection. N Engl J Med 326:281-286, 1992
3)Zanetti G, et al:Intraoperative redosing of cefazolin and risk for surgical site infection in cardiac surgery. Emerg Infect Dis 7:828-831, 2001
4)Harbarth S, et al:Prolonged antibiotic prophylaxis after cardiovascular surgery and its effect on surgical site infections and antimicrobial resistance. Circulation 101:2916-2921, 2000
5)Healthcare Infection Control Practices Advisory Committee(HICPAC):Draft guideline for the prevention of surgical site infection, 2014

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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