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特集 抗菌薬の考え方,使い方—ホントのところを聞いてみました その他
アミノグリコシド系薬
著者: 太田啓介1 岡秀昭2
所属機関: 1横浜市立みなと赤十字病院救命救急センター 2JCHO東京高輪病院感染症・総合内科
ページ範囲:P.1044 - P.1046
文献購入ページに移動アミノグリコシドってあまり使ったことがないのですが,先日血液培養からCRE(カルバペネム耐性腸内細菌)が検出されてアミノグリコシドだけが感受性でした.アミノグリコシドにはアミカシンやゲンタマイシン,トブラマイシンなどがありますが,それぞれどのように違うのでしょうか? どれかに効いて,どれかは効かない,ということがあり得るのでしょうか?
アミノグリコシド系抗菌薬の特徴の1つとして,緑膿菌を含む多くの好気性グラム陰性桿菌にスペクトラムを有していることです.一方で,嫌気性菌や連鎖球菌に対しては無効であるため注意が必要です.アミノグリコシド系にはGM(ゲンタマイシン),AMK(アミカシン),TOB(トブラマイシン)などいくつかの種類があります.それぞれのスペクトラムに大きな違いはありませんが,微妙な違いを理解し使い分けることが肝要です.
実際の使い方として,耐性緑膿菌やextended spectrumβlactamase(ESBLs),AmpC産生菌にも感受性があれば効果が期待できるので,薬剤耐性が疑われる段階でのグラム陰性桿菌の経験的治療に用いることがあります.しかし後述するように毒性が強いこと,髄液や肺など臓器移行性が不良であること,一般的な菌血症においては,アミノグリコシド系のβラクタム薬との併用は,βラクタム単剤との診療効果では予後の改善は証明されておらず,むしろ腎障害が増えるとされていることなどから,たいていはβラクタム薬など他剤との併用で使用したとしても,感受性が判明し次第,アミノグリコシド系の中止や他剤への変更が理想的です.つまり,外せない重症感染症において2剤併用しておいて,共倒れする確率を下げる目的でアミノグリコシド系を併用します.また酸性環境下では活性が落ちるため膿瘍病変には一般的には使用できません.単剤での使用は治療実績からペスト,野兎病などの特殊感染症を除くと一般感染症では尿路感染症に限られます.またアレルギー交差がないためβラクタムアレルギーの際に,グラム陰性菌への治療に使用することができます.
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