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雑誌目次

雑誌文献

medicina53巻8号

2016年07月発行

雑誌目次

特集 胸部画像診断—症状や身体所見からのアプローチ

著者: 芦澤和人

ページ範囲:P.1115 - P.1115

 全身のあらゆる臓器の疾患において,画像診断は必須の検査法である.一般外来診療において病歴聴取や診察によって呼吸器疾患や循環器疾患が疑われる場合,通常第一に行うべき画像検査は,胸部単純X線撮影である.胸部画像診断の第一段階であり,適切な診断・治療につなげるためにも,その正確な読影,異常影の解釈がきわめて重要である.この段階での見落とし,誤診は,患者の早期治療の機会を逸し,引いては患者の予後に影響を及ぼしかねない.胸部単純X線写真で異常影が指摘可能な場合,肺水腫や市中肺炎のように胸部単純X線写真で画像検査が完結し治療が開始される場合もあるが,その他の疾患においては引き続き胸部CTが施行される.多くの場合,胸部CT検査で画像診断は終了するが,必要に応じて,MRI検査やFDG-PET/CTに代表される核医学検査が追加される.また,胸部単純X線写真で異常影が指摘できない場合でも,例えば免疫不全患者の日和見感染疑いのように,臨床的に病変の存在が強く疑われる場合は,時期を逸することなく胸部CTが施行されることが望ましい.
 国内には,胸部単純X線写真や胸部CTに関する素晴らしい教科書が存在するが,その多くは,疾患別や画像パターン別に記載されている.本特集では,一般内科の研修医・勤務医・開業医の方々の実臨床を想定し,これまでと異なった観点から画像所見を記載した.すなわち,患者の呼吸器症状や他臓器の症状・身体所見・病態,あるいは患者背景に注目して,commonな疾患や稀だが臨床的に重要な疾患を取り上げて症例を呈示し,行うべき画像検査,画像所見の特徴,診断のポイントに関してコンパクトに要点をまとめることを心がけた.昨今のMDCTやMRI,FDG-PET/CTなどの画像機器の進歩には目覚ましいものがあるが,特にCT検査は短時間で施行できるようになったため,その適応を考慮することなく安易に行われている現状がある.また,若い医師において胸部単純X線写真の読影が疎かにされている傾向があることも否めない.本特集で胸部単純X線写真の役割を再考していただき,読者の実臨床において役立つことを切に願うばかりである.

座談会

胸部単純X線写真の役割を再考する

著者: 芦澤和人 ,   栗原泰之 ,   岸一馬

ページ範囲:P.1116 - P.1122

芦澤 本日の座談会のテーマは「胸部単純X線写真の役割を再考する」とさせていただきました.胸部単純X線写真は,簡便,安価,そして受診者の被ばくが少ないというメリットがありますが,一方では客観性に欠けるということもあり,昨今では,容易に撮影可能なCTが胸部画像診断の大きな位置を占めてきています.
 そのなかで,果たして胸部単純X線写真はもう不必要なのか,また,必要であればどのような状況で重要であるかなどについて,放射線科医である栗原先生と呼吸器内科医である岸先生をお招きし,いま一度その役割を再考していきたいと思います.

画像検査法の基本—正常像・正常変異から読影のチェックポイントまで

知っておきたい胸部単純X線写真の基本

著者: 髙橋雅士

ページ範囲:P.1124 - P.1132

ポイント
●胸部単純X線写真の読影では正常を正常であると診断するスキルが必要であり,そのための解剖の知識が必須である.
●気道,血管,肺葉裂,縦隔など胸部の臓器は非対称性であり,その非対称性を認識して読影することが重要である.
●読影医自ら読影の順番を決め,常にそれを踏襲することがsystematic readingの基本である.
●隠れた肺野を意識して読影することが偽陰性をなくすために重要である.

知っておきたい胸部CTの基本

著者: 森谷浩史 ,   箱崎元晴

ページ範囲:P.1134 - P.1142

ポイント
●CT機器の能力と撮影方法が画像に影響する.
●読影にはCTに描出される肺既存構造(気道系・脈管系・胸膜胸壁など)の理解が必要である.
●既存構造に対する病変の態度を読み取ることが胸部CT読影の基本である.

知っておきたい胸部MRIの基本

著者: 藪内英剛 ,   川波哲 ,   本田浩

ページ範囲:P.1144 - P.1149

ポイント
●MRIは胸部単純X線写真とCTの形態診断に付加する情報が得られる場合があり,適応疾患,代表的な撮像法,典型的所見を知っておく必要がある.
●MRI検査の禁忌あるいは慎重に行うべき患者として,①ペースメーカー・人工除細動器・人工内耳の埋め込み術後(禁忌),②閉所恐怖症,③妊婦と胎児(安全性が確認されていない),④体内や体表に強磁性体の金属のある患者,が挙げられる.
●ガドリニウム造影剤を投与すべきでない患者として,①高度腎機能低下患者(eGFR<30mL/分/1.73m2),②ガドリニウム造影剤に対するアレルギーの既往,③気管支喘息,④妊婦,が挙げられる.

知っておきたいFDG-PETの基本

著者: 原眞咲

ページ範囲:P.1150 - P.1155

ポイント
●肺癌および縦隔悪性腫瘍診断に対するFDG-PETの最も重要な役割は,脳を除く遠隔転移の評価である.
●原発巣の良悪性鑑別診断は偽陽性,偽陰性の存在により,保険適用から除外された.
●リンパ節転移診断では,炎症・肉芽腫に対して偽陽性,低集積腫瘍・微小転移では偽陰性が生ずる.
●高血糖状態では病変に対する集積が低下するため,検査時の血糖コントロールが重要である.

呼吸器症状からみた胸部画像診断 発熱

各症状をきたす疾患の一覧(表) 発熱

著者: 芦澤和人

ページ範囲:P.1156 - P.1156

 「発熱」は,感染性肺疾患だけでなく,種々のカテゴリーの肺疾患や縦隔,胸膜の病変でも認められる.感染性では,患者の免疫状態や生活環境などによって,市中肺炎,院内肺炎,医療・介護関連肺炎(多くは高齢者の誤嚥性肺炎)に分けて診療を進めていく必要がある.また,頻度は高くないが,肺門型肺癌による閉塞性肺炎や肺分画症に炎症を繰り返す症例があり,市中肺炎と区別すべきである.発熱がみられる肺疾患の多くは浸潤影を呈するので,臨床所見を加味して総合的に判断する必要がある.特に,アレルギー性の慢性好酸球性肺炎や,間質性肺炎に分類される特発性器質化肺炎は,画像所見が市中肺炎(特に細菌性肺炎)に類似するので,常に鑑別診断に挙げることが重要である.

肺門型肺癌(閉塞性肺炎),市中肺炎(細菌性肺炎,肺膿瘍),インフルエンザウイルス肺炎,敗血症性塞栓症

著者: 芦澤和人

ページ範囲:P.1157 - P.1160

症例 60代男性.高熱,喀痰.

日和見感染症(侵襲性肺アスペルギルス症,ニューモシスチス肺炎,サイトメガロウイルス肺炎),粟粒結核

著者: 中山博史 ,   内匠浩二 ,   袴田裕人

ページ範囲:P.1161 - P.1164

症例 60代男性.微熱.成人still病に対してプレドニゾロン,タクロリムス,メトトレキサートにて加療中.

急性間質性肺炎,特発性器質化肺炎,薬剤性肺障害,肺分画症

著者: 阿南圭祐 ,   一門和哉

ページ範囲:P.1165 - P.1168

症例 50代男性.生来健康で基礎疾患を有さない.発熱と,10日間程度で進行してきた乾性咳嗽・呼吸困難を主訴に来院.

乾性咳嗽

各症状をきたす疾患の一覧(表) 乾性咳嗽

著者: 芦澤和人

ページ範囲:P.1170 - P.1170

 「乾性咳嗽」をきたす疾患は下表のようにある程度限られており,比較的特徴的な画像所見を呈する疾患も少なくない.本稿では,感染性としてマイコプラズマ肺炎とウイルス性肺炎,さらにアレルギー性の過敏性肺炎,間質性肺炎を取り上げた.各疾患の特徴的な画像所見を把握する必要がある.

マイコプラズマ肺炎,非定型肺炎,過敏性肺炎,特発性肺線維症/通常型間質性肺炎,非特異性間質性肺炎

著者: 江畑智広 ,   藤本公則

ページ範囲:P.1171 - P.1175

症例 10代女性.主訴は発熱,乾性咳嗽.白血球数の増多なし,CRP 0.75mg/dL(正常<0.20).

湿性咳嗽・喀痰

各症状をきたす疾患の一覧(表) 湿性咳嗽・喀痰

著者: 芦澤和人

ページ範囲:P.1176 - P.1176

 「湿性咳嗽・喀痰」は呼吸器疾患で最も高頻度にみられる症状であり,非特異的である.下表のように湿性咳嗽・喀痰をきたす疾患はきわめて多岐にわたる.したがって,他の症状や臨床所見と併せて診断を進めなければならない.本稿では,鑑別診断上最も重要な肺結核症を取り上げた.また,頻度は低いが,肺炎様の画像所見を呈する浸潤性粘液腺癌と気管支胸腔瘻を伴う膿胸にも言及した.ここで提示した疾患以外にも重要なものが多数あり,各章で提示している典型的な画像所見を習得することが重要である.

浸潤性粘液腺癌,二次結核症,結核性肺炎,気管支胸膜瘻

著者: 小林健

ページ範囲:P.1177 - P.1180

症例 60代男性.発熱と湿性咳嗽があり近医受診した.抗菌薬にて解熱したが湿性咳嗽や画像所見の改善を認めなかった.

血痰・喀血

各症状をきたす疾患の一覧(表) 血痰・喀血

著者: 芦澤和人

ページ範囲:P.1182 - P.1182

 「血痰・喀血」をきたす疾患は多岐にわたるが,限局性病変からの出血と,びまん性肺胞出血(diffuse alveolar hemorrhage:DAH)に分類される.前者では,肺門型肺癌と気管支拡張症が重要であり本章で取り上げた.肺門型肺癌では,2次性変化としての閉塞性無気肺でその存在を疑うことができる.さらに頻度は低いが,菌球型アスペルギルス症と肺吸虫症の症例も提示にした.後者のDAHの頻度は高くないが,血痰・喀血の患者でびまん性の陰影がみられた場合には鑑別に挙げたい.胸部単純X線写真で異常所見を指摘可能な疾患も多く,あらゆる可能性を念頭に読影に当たる必要がある.

肺門型肺癌(閉塞性無気肺),菌球型アスペルギルス症,肺吸虫症,気管支拡張症

著者: 丸山雄一郎

ページ範囲:P.1183 - P.1186

症例 70代男性.微熱,咳嗽でかかりつけ医受診.CRP 6.7mg/dL,WBC 7,300/μL.肺炎疑いで紹介.

呼吸困難

各症状をきたす疾患の一覧(表) 呼吸困難

著者: 芦澤和人

ページ範囲:P.1188 - P.1188

 「呼吸困難」をきたす疾患は下表に示したようにきわめて多岐にわたり,肺病変以外に血管性病変や縦隔,胸膜病変などあらゆる呼吸器疾患の可能性がある.本稿では,肺血管性病変と,癌性リンパ管症,高齢者で増加している誤嚥性肺炎,小児期の肺炎や移植後の合併症として重要な閉塞性細気管支炎を取り上げた.その他にも重要な疾患が多数あり,他の章で提示している典型的画像所見を習得することが望まれる.

癌性リンパ管症,誤嚥性肺炎,閉塞性細気管支炎

著者: 小野修一

ページ範囲:P.1189 - P.1191

症例 50代女性.乾性咳嗽,呼吸困難.

慢性血栓塞栓性肺高血圧症,肺水腫,急性呼吸窮迫症候群

著者: 杉浦弘明 ,   陣崎雅弘

ページ範囲:P.1192 - P.1194

症例 60代男性.緩徐に進行する呼吸困難.2年ほど前から両側下腿浮腫を認め,呼吸困難感を自覚.徐々に呼吸困難が増悪.

喘息・喘鳴

各症状をきたす疾患の一覧(表) 喘息・喘鳴

著者: 芦澤和人

ページ範囲:P.1196 - P.1196

 「喘息・喘鳴」をきたす疾患は下表のようにかなり限られている.実臨床では,喘鳴があり気管支喘息と臨床的に診断されている患者のなかに,その他の気道性疾患や中枢気道の腫瘍性病変,あるいはアレルギー性疾患が含まれていることがある.すべての喘鳴患者が気管支喘息ではないことを念頭に置く必要がある.胸部単純X線写真の読影においては,常に気管・主気管支をチェックする習慣を身につけたい.

気管・気管支腫瘍,気管支壁内転移,気管支結核

著者: 三浦幸子

ページ範囲:P.1197 - P.1199

症例 60代男性.健康診断での胸部CTで異常指摘.

慢性好酸球性肺炎,アレルギー性気管支肺アスペルギルス症,好酸球性多発血管炎性肉芽腫症

著者: 氏田万寿夫

ページ範囲:P.1200 - P.1202

症例 60代女性.2週間前から咳嗽,1週間前より39℃台の発熱と呼吸困難を認め,近医より肺炎の診断で紹介受診した.既往歴はアレルギー性鼻炎.

胸痛

各症状をきたす疾患の一覧(表) 胸痛

著者: 芦澤和人

ページ範囲:P.1204 - P.1204

 「胸痛」は心臓疾患以外では,肺血管性や縦隔,胸膜病変でみられることが多い.胸部単純X線写真では,気胸や胸水,胸膜肥厚,また縦隔気腫を見落とさないように注意して読影する必要がある.気胸では,骨肉腫の肺転移やリンパ脈管筋腫症などの肺病変に伴う続発性気胸の可能性もある.肺血栓塞栓症や大動脈解離などの重篤な疾患が強く疑われる場合は,胸部単純X線写真で異常が指摘できなくても,積極的にCTを施行すべきである.

急性肺血栓塞栓症,縦隔気腫,降下性縦隔炎,大動脈解離(偽腔閉塞型)

著者: 叶内哲

ページ範囲:P.1205 - P.1208

症例 40代女性.1カ月前から下肢痛,排尿後の突然の胸痛と呼吸困難を訴えている.D-ダイマー6.20μg/mLと高値(正常は0.5未満).

膿胸,気胸,胸膜中皮腫,癌性胸膜炎

著者: 加藤勝也

ページ範囲:P.1209 - P.1212

症例 60代男性.陳旧性結核の既往あり.胸部異常影を指摘される.

無症状

各症状をきたす疾患の一覧(表) 無症状

著者: 芦澤和人

ページ範囲:P.1214 - P.1214

 下表に挙げたように多数の呼吸器疾患で「症状がない」ことがある.定期健診などで施行された胸部単純X線写真で異常影を指摘される場合が多い.各疾患の臨床的な重要性もさまざまであるが,ここでは,できる限り多くの疾患を取り上げ,典型的な画像所見を提示した.ここで提示した肺野型肺癌や他の章で取り上げている肺結核症は,特に正確な診断が要求される.

肺野型肺癌,転移性肺腫瘍,MALTリンパ腫,肺良性腫瘍

著者: 楠本昌彦

ページ範囲:P.1215 - P.1218

症例 70代女性.無症状,喫煙者.健診で胸部異常影を指摘された.

器質化肺炎,肺クリプトコックス症,肺動静脈瘻,肺胞蛋白症

著者: 大城康二 ,   村山貞之 ,   椿本真穂

ページ範囲:P.1219 - P.1222

症例 60代男性.無症状,肺癌疑い.

サルコイドーシス,奇形腫,胸腺腫,胸腺・心膜囊胞

著者: 中園貴彦

ページ範囲:P.1223 - P.1226

症例 50代女性.呼吸器症状なし.飛蚊症がみられ近医眼科にてぶどう膜炎と診断された.

気管支原性囊胞,神経原性腫瘍(神経鞘腫),髄外造血,胸膜プラーク

著者: 林秀行 ,   芦澤和人

ページ範囲:P.1227 - P.1230

症例 20代女性.無症状で発見され,経過中に左胸痛,発熱出現.

他臓器の症状・身体所見・病態からみた胸部画像診断 脳神経領域

他臓器の身体所見・病態をきたす疾患の一覧(表) 脳神経領域

著者: 芦澤和人

ページ範囲:P.1232 - P.1232

 脳神経症状は,肺癌の脳転移でみられることが圧倒的に多いが,肺小細胞癌によるEaton-Lambert症候群やPancoast腫瘍によるHorner症候群も重要である.また,感染症では,レジオネラ肺炎で精神症状がみられることや,結核やクリプトコックスによる髄膜炎も忘れてはならない.
 また,頻度は高くないが,サルコイドーシスなどの全身性疾患でもみられ,神経・精神症状から肺病変を検索することが重要となる.

Horner症候群(Pancoast腫瘍),Lambert-Eaton筋無力症候群(肺小細胞癌),精神症状(レジオネラ肺炎),結核

著者: 竹中大祐 ,   足立秀治

ページ範囲:P.1233 - P.1236

症例 60代男性.右肩胸部痛,右眼瞼下垂,顔・右胸部発汗低下.

耳鼻科領域

他臓器の身体所見・病態をきたす疾患の一覧(表) 耳鼻科領域

著者: 芦澤和人

ページ範囲:P.1237 - P.1237

 胸部疾患と関連のある耳鼻科領域の身体所見・病態は下表のように限定的である.
 本稿で提示されている胸部疾患の典型的な画像所見を把握しておきたい.

副鼻腔炎(びまん性汎細気管支炎),嚥下困難(びまん性誤嚥性細気管支炎),口腔内乾燥(Sjögren症候群),鼻出血(多発血管炎性肉芽腫症)

著者: 西本優子

ページ範囲:P.1238 - P.1241

症例 60代女性.B型肝炎で消化器内科フォロー中に咳嗽が出現した.

腎臓領域

他臓器の身体所見・病態をきたす疾患の一覧(表) 腎臓領域

著者: 芦澤和人

ページ範囲:P.1242 - P.1242

 腎病変に関連する肺病変は,肺転移と肺出血,尿毒症性肺の頻度が高い.稀な疾患として,転移性石灰化とリンパ脈管筋腫症を提示した.

尿毒症(肺水腫),腎不全・透析(異所性肺石灰化),MPO-ANCA関連血管炎(間質性肺炎),腎血管筋脂肪腫(リンパ脈管筋腫症・結節性硬化症)

著者: 渡邉亮輔 ,   負門克典 ,   松枝清

ページ範囲:P.1243 - P.1246

症例 60代女性.3年前から腎不全のために透析を導入している.胸背部痛を主訴に来院.

内分泌領域

他臓器の身体所見・病態をきたす疾患の一覧(表) 内分泌領域

著者: 芦澤和人

ページ範囲:P.1247 - P.1247

 Cushing症候群や抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)などの内分泌疾患から腫瘍随伴症候群を考慮し,胸部の腫瘍性病変の検索が重要である.胸部単純X線写真で異常が指摘できない場合,CT検査まで行う必要がある.
 尿崩症患者ではサルコイドーシスなどの肉芽腫性疾患を疑って精査を行いたい.

腫瘍随伴症候群—SIADH(小細胞癌),MEN1型(胸腺カルチノイド)

著者: 遠藤正浩 ,   朝倉弘郁 ,   新槇剛

ページ範囲:P.1248 - P.1249

症例 60代女性.眩暈・嘔吐発症で,低ナトリウム血症指摘.

骨・関節領域

他臓器の身体所見・病態をきたす疾患の一覧(表) 骨・関節領域

著者: 芦澤和人

ページ範囲:P.1250 - P.1250

 胸部疾患と関連のある骨・関節の病変は,特徴的なものが少なくない.胸部病変と骨・関節病変の異常所見の組み合わせから,画像のみでほぼ診断可能な疾患が存在する.本稿では,肺癌や悪性胸膜中皮腫でみられる肥厚性骨関節症,脊椎カリエス患者にみられた粟粒結核,関節リウマチ患者にみられる間質性肺炎を取り上げた.

肥厚性骨関節症(肺癌),脊椎カリエス(粟粒結核),関節リウマチ(間質性肺炎など)

著者: 石戸谷俊太 ,   大屋明希子 ,   高橋康二

ページ範囲:P.1251 - P.1253

症例 70代男性.原因不明の腰痛,息切れ.胸部単純X線写真で右肺に腫瘤を認め肺癌,骨転移疑いとして精査.

皮膚領域

他臓器の身体所見・病態をきたす疾患の一覧(表) 皮膚領域

著者: 芦澤和人

ページ範囲:P.1254 - P.1254

 皮膚病変と関連のある胸部疾患は少なくなく,かつカフェオレ斑のように皮膚病変が診断のキーとなることも多い.日頃から,下表に挙げた疾患の画像所見を習得し,皮膚病変の有無を確認するように心がけたい.

水痘(水痘肺炎),強皮症(間質性肺炎),多発筋炎・皮膚筋炎(間質性肺炎),カフェオレ斑(神経線維腫症)

著者: 田中伸幸

ページ範囲:P.1255 - P.1258

症例 30代女性.悪性リンパ腫患者.主訴は化学療法後の発熱,呼吸困難.

患者背景からみた胸部画像診断 喫煙

肺気腫,急性好酸球性肺炎,ランゲルハンス細胞組織球症

著者: 本多修 ,   梁川雅弘 ,   秦明典

ページ範囲:P.1260 - P.1262

症例 70代男性.労作時呼吸困難.喫煙歴5〜10本/日(年数不詳).

粉塵吸入歴

石綿肺,珪肺,溶接工肺

著者: 荒川浩明

ページ範囲:P.1263 - P.1266

症例 60代男性.建築業に従事.健診の胸部単純X線写真で異常影あり.

年齢・性別

気管支閉鎖症(小児〜学童期),縦隔胚細胞腫瘍(若年男性),前駆型T細胞リンパ芽球性リンパ腫(青年期男性),縦隔大細胞型Bリンパ腫(若年者)

著者: 米山寛子 ,   坂井修二

ページ範囲:P.1267 - P.1270

症例 20代男性.健診の胸部単純X線写真で異常影を指摘.

連載 Webで読影! 画像診断トレーニング・4

緊急を要する胸部大血管疾患

著者: 石田尚利

ページ範囲:P.1109 - P.1110

次の3症例について,どのような病態が推定できますか? また,診断は何でしょうか?
症例1 30代女性.通勤途中に突然息が苦しくなり受診.胸部圧迫感を伴う.血圧115/78mmHg,脈拍167回/分,SpO2 84%(室内気).問診で2週間前の航空機搭乗が判明.血清D-dimer 2.6μg/mLと高値.胸部CTを施行した.
症例2 70代女性.朝食中に胸背部痛を自覚し受診.高血圧にて内服加療中.胆石の既往があったため,胆石発作を疑って腹部CTを撮影したところ,心囊水貯留を認めた.担当医は胸部CTを追加施行した.
症例3 80代男性.高血圧,胸部大動脈瘤で近医通院中.仕事中に意識消失,転倒し,救急要請.病院到着時,意識レベルはJCS Ⅰ-1,血圧97/60mmHg,脈拍63回/分,SpO2 95%(室内気).頭部CT(異常なし)および胸部CTを施行した.

Choosing Wisely Japan その検査・治療,本当に必要ですか?・10

ケース:50代男性,静脈血栓症の検査と治療

著者: 徳田安春

ページ範囲:P.1271 - P.1273

 Choosing Wiselyは,病気の診断や治療においてエビデンスに基づいた賢い選択ができるように,医師患者間の対話を促すための世界的キャンペーン活動である.有害事象につながるリスクの高い過剰診療や,価値が必ずしも高くない過剰検査を減らそうというものである.
 具体的な活動として,各国の臨床医学系学会は推奨リストを挙げている.今回は,2014年10月29日にCanadian Association of Gastroenterologyが発表したリストを表1に示す1)
 では,今回のケースをみてみよう.

診断力を上げる 循環器Physical Examinationのコツ・16

三尖弁逆流症(TR)患者の診かた

著者: 山崎直仁

ページ範囲:P.1274 - P.1281

症例
70代男性.無職.
病歴 30年前から心房細動があり,近医でジギタリスによる心拍数コントロールと,ワルファリンによる抗凝固療法がなされていた.10年前から下腿浮腫に対して,利尿薬の投与が開始された.下肢の浮腫,労作時の息切れが徐々に増悪してきたために,紹介入院となった.

目でみるトレーニング

問題808・809・810

著者: 中村造 ,   西山崇比古 ,   栗原宏

ページ範囲:P.1282 - P.1287

書評

—福井次矢,奈良信雄 編—内科診断学 第3版

著者: 長谷川仁志

ページ範囲:P.1169 - P.1169

 日本で「医学教育の国際認証評価時代」の動きが本格的に始まってきている2016年2月に,待望の『内科診断学 第3版』が発刊された.8年ぶりに大幅改訂された中身を見て,まさにこのテキストは医学科1年生からの臨床実習前教育から診療参加型臨床実習時,さらには生涯教育まで,すなわち初学者から指導医まで,症候・病態ベースで統合すべき日本の医学教育改革を実現化するバイブルと言えるテキストであり,内科系のみではなく,全国の全ての医学生,医学部教員,医育にかかわる機関の各科指導医の皆さんにお勧めしたい一冊であることを実感した.
 その理由としては,1)始めの「診断の考え方」(第Ⅰ章)と「診察の進め方」(第Ⅱ章)で医療面接における情報収集スキルの重要性と臨床推論のエッセンス(検査前確率,尤度比など)と信頼を確立するために必要なコミュニケーションンスキルなどについて,カラー図表が駆使されて初学者でもわかりやすくまとめられていること,2)続いての「症候・病態編」(第Ⅲ章)で,発熱,全身倦怠感,めまい,頭痛,胸痛から精神領域の救急まで,何科の医師としても実践対応が可能になるよう修得すべき約100の必須症候・病態について,患者の訴え方,医療面接,身体診察,確定診断のポイントなど臨床各分野横断的な統合教育を展開するために適した内容で,幅広く網羅されていること,3)購入者は,本文を収載した付録電子版も利用でき,いつでもどこでもネットを介して読むこともできるようになったことが挙げられる.特に,1)2)については,医師の資質・人間力を養う「プロフェッショナリズム教育効果」も高く,この観点からも有用であることを強調しておきたい.

—田島知郎 編 千野 修,田島厳吾 編集協力—ジェネラリストのための外来初療・処置ガイド

著者: 北川雄光

ページ範囲:P.1264 - P.1264

 昨今,臓器別,領域別の専門分化が高度に進み,自らの専門分野で極めて高い診療能力を持ちながらも,ジェネラリストとしての守備範囲が狭い医師が増加している.現在,新専門医制度の発足を前に,基本領域として新設される総合診療専門医の医師像,研修プログラムのあり方が議論されているところである.“真のジェネラリスト”の医師像がいかなるものか大変注目を浴びているこの時期に,本書はそれに対する一つの具体的な回答を示す形で,絶妙のタイミングで出版されたと言えよう.
 本書は,領域横断的に,基本的な手技や比較的簡素な医療機器を駆使して“手を動かし,頭を使って”初療に当たる真のジェネラリストのあるべき姿を示してくれている.精緻な画像診断や詳細な血液分析結果に頼る前に,あるいは患者に触れる前から何かを察知する能力までも研ぎ澄ますことを提唱している本書は,「当直マニュアル」などのレベルをはるかに超えた,医師としての基本的素養,哲学を伝えてくれていると言えよう.明解な図や貴重な実地臨床における写真を的確に駆使して解説し,「コツとアドバイス」に込められたエッセンスは,まさに最前線の現場でしか得られないジェネラリストたちの生の声が伝わってくる.積極的にかつ興味を持って初療に取り組む若手医師の勇気と知識,技能を後押ししてくれる本書の編者田島知郎博士(東海大名誉教授)は,米国で長く外科研修を積んだ後,日米両国で世界最高レベルのsurgical oncologistとして指導的な立場で活躍されたジェネラリストの基盤を持ったスペシャリストである.米国の医療現場の待ったなしの救急,初療で培った編者の医師としての哲学,しっかりと手を動かして初療を行うことのできるジェネラリスト育成に対する熱い思いが伝わってくる.私自身もスペシャリストとしての到達点の高さは,ジェネラリストとしての基盤の広さに立脚して決まってくると信じている.

—岡 秀昭 著—感染症プラチナマニュアル2016

著者: 徳田安春

ページ範囲:P.1289 - P.1289

「エルゴノミクス的にも正しいマニュアル」
 スマホを世に出したアップル社の故スティーブ・ジョブス氏は,スマホのサイズは縮小に向かうだろうと予言した.その予言通り,2016年に登場した最新のiPhoneの三次元構造は最小のものとなった.実は,ジョブスの予言はエルゴノミクス(人間工学)的に正しいということが証明されている.エルゴノミクスは,「人間にとっての使いやすさ」という視点から,装置や機械などのデザインを研究する学問.その目的は,疲れやストレスをなるべく感じずに人間がモノを扱えるようになること.長時間の同一動作は関節や腱,筋肉などに影響を及ぼすことがあり,モノのデザインもその影響に関係する重要な因子なのだ.エルゴノミクスの最新研究では,素早く片手で操作できて,親指でタップしても落下しないサイズのスマホが理想的としている.
 そんな中,日本の診療マニュアル界で旋風を巻き起こしているこの「プラマニュ」を使いながら,ジョブス氏の予言を思い出した.日常の感染症診療について調べたいときに,数秒以内に素早く片手で操作できて,親指でもページをめくることができる.多忙な臨床医にとってはエルゴノミクス的にもありがたいマニュアルである.

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medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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