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雑誌目次

雑誌文献

medicina54巻13号

2017年12月発行

雑誌目次

特集 骨関節内科

著者: 横川直人

ページ範囲:P.2119 - P.2119

 骨や関節に関する愁訴は,外来診療で最も多い愁訴の1つであり,外来受診理由の約2割,高齢になれば約半数を占めると言われています.欧米では,整形外科医は手術のみをする医師であるため,患者は主治医である内科医や家庭医にまず相談します.そのため,卒前や卒後の医学教育でも骨関節の診療は重視され,内科医や家庭医は,日常診療のなかで関節痛や変形性関節症,骨粗鬆症など骨関節の問題についても,高血圧や脂質異常症などの内科疾患と同じように診療します.
 日本では,整形外科医は「骨関節のプライマリ・ケア医」と考えられているので,患者は骨関節の症状があれば,まず整形外科を受診し,また整形外科医も嫌な顔をせずに診てくれます.しかし,主治医に診てもらったほうが重篤な内科疾患が早く見つかったり,無駄な検査や複数科への通院の負担が減ったり,多剤処方や副作用が防げるなど,さまざまなメリットがあります.主治医の内科医が少しアドバイスするだけで,患者のQOLが向上することは少なくありません.

特集の理解を深めるための26題

ページ範囲:P.2280 - P.2284

座談会

内科医だからできる骨と関節の診療

著者: 佐藤泰吾 ,   横川直人 ,   金子敦史

ページ範囲:P.2120 - P.2126

今回は,造語ではありますが「骨関節内科」という特集を組むことにしました.腰痛など日常臨床で毎日遭遇する骨と関節の症状に内科医がどうアプローチするかを中心に,内科医が知りたい,整形外科に聞きたいテーマを選んでいます.本座談会では,地域の中核病院で総合診療を担っている佐藤先生と,整形外科医として日々手術をされながら全身的・内科的な部分までケアされている金子先生をお招きし,自由闊達にお話しできればと思います.(横川)

骨関節内科 入門編

骨関節内科の3つのアプローチ

著者: 横川直人

ページ範囲:P.2128 - P.2131

Point
◎骨関節の診療のアプローチは,3つのアプローチ「鳥の目,虫の目,魚の目」を定式化することにより簡単かつ系統的に診療を行うことが可能である.

骨関節内科 実践編 救急的アプローチ

救急的アプローチ—重大な疾患を見抜こう

著者: 日比野将也 ,   植西憲達

ページ範囲:P.2133 - P.2139

Point
◎一見筋骨格系の疼痛と思える主訴で受診する患者のなかには,頻度は低いが見逃してはならない重大な疾患が隠れており,それらを想起できるかが鍵である.
◎重大な疾患を見逃さないためには警告症状(red flag sign)に気をつけ,リスクを評価することが重要である.
◎痛みの問診は“OPQRST”を意識して行う.

整形外科的アプローチ 【部位別】

著者: 三好雄二 ,   神山勲

ページ範囲:P.2140 - P.2146

Point
◎顎関節関連の疼痛疾患の原因の多くは,関節炎,顎関節円板障害,咀嚼筋痛障害の3つである.顎関節の動きで誘発または悪化しない顎関節領域の痛みは,顎関節症以外の他疾患の存在を考える.
◎開口制限のある顎関節円板障害を疑った場合は,顎関節症の診療経験が豊富な歯科口腔外科へ速やかに紹介すべきである.
◎保存的治療で80〜90%の咀嚼筋痛障害は改善するため,復元ができない歯科的・外科的治療(歯を削っての咬合調整など)は安易に勧めるべきではない.
◎骨吸収阻害薬使用患者の口腔内に「骨が露出」している臨床状況は,典型的な骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(ARONJ)である.
◎ARONJの予防・治療では,口腔内の清潔と常在細菌叢による感染の制御が最も重要である.

著者: 喜瀬高庸 ,   増田和浩

ページ範囲:P.2148 - P.2157

Point
◎頸部痛の遭遇頻度は高いが,プライマリ・ケアで重要な役割は「治療が急を要する(red flag)」か,「保存的に経過観察可能」かを判断することである.
◎痛みを機能解剖からイメージし,関連のある病歴と焦点を絞った身体診察(特に神経学的診察)を組み合わせることが,鑑別診断の近道である.
◎画像検査,生理学検査,ラボデータはあくまで診断の補助材料である.

著者: 喜瀬高庸 ,   増田和浩

ページ範囲:P.2158 - P.2166

Point
◎腰痛(LBP)は日常診療で非常に多く遭遇する主訴であるが,診断に至らないことが多い.
◎1〜3カ月で軽快・改善するが,約7割が1年以内に再発する.
◎LBPの評価では,まずred flagを除外する.その他の非特異的腰痛では画像検査は不要で,保存的支持療法で十分である.
◎再発時や慢性化する場合では,リスク因子を把握したうえで患者教育や生活指導をし,運動療法(腰痛体操など)の導入を検討して,生活のサポートをする.

著者: 本田奈々瀬 ,   永瀬雄一

ページ範囲:P.2168 - P.2175

Point
◎肩痛の評価では,的確な病歴聴取と解剖を理解した身体診察を行うことで,多くの疾患を推測することが可能である.
◎肩関節周囲炎や拘縮肩なのか,腱板損傷が存在するのかといった見極めが重要である.
◎肩痛の治療には,正確な診断,除痛と炎症の抑制,適切なリハビリテーションが重要である.

著者: 大西香絵 ,   伊賀徹

ページ範囲:P.2176 - P.2180

Point
◎日常診療で遭遇する肘関節痛の多くは,習慣的な運動や労働によるオーバーユーズが原因となって起こる.
◎代表的な上腕骨外側上顆炎,上腕内側上顆炎は疼痛誘発テストが各々あるが,局所の圧痛である程度診断可能である.
◎肘頭滑液包炎では,特に全身症状を伴う場合は感染の可能性を除外するため,抗菌薬投与前に滑液包への穿刺を行い培養提出する.

手首・手・指

著者: 永井佳樹 ,   辰巳徹志

ページ範囲:P.2182 - P.2186

Point
◎疼痛,可動域制限,運動障害(指の引っ掛かりなど),手・指のこわばり,腫脹,腫瘤,しびれ,知覚鈍麻,筋萎縮,筋力低下,変形などが主訴となる.
◎圧痛点の有無や場所,特有の所見や徴候があるかどうかは診断の大きな助けとなる.
◎痛みがあっても圧痛がない場合は,近位の神経疾患の可能性がある.
◎しびれや知覚鈍麻,筋萎縮,麻痺などの症状は整形外科領域だけでなく,神経内科疾患や代謝性疾患の可能性もあり,幅広く鑑別を考える.

著者: 髙增英輔 ,   永井一郎

ページ範囲:P.2188 - P.2192

Point
◎「股関節痛」が前部,側方部,後部のいずれの部位の痛みかを区別し診察する.部位によって原因の鑑別は異なる.
◎ポイントを押さえた診察で鑑別を進めよう.

著者: 喜納みちる ,   苅田達郎

ページ範囲:P.2194 - P.2197

Point
◎膝の痛みは日常診療で遭遇する機会の多い主訴であり,そのマネジメントの習得は重要である.
◎膝の解剖と頻度の高い疾患を理解し,丁寧な問診と診察によって鑑別を絞ることができる.
◎急性の単関節炎があれば,化膿性関節炎除外や結晶確認のために関節穿刺を行う.

足首・足・足趾

著者: 三好雄二 ,   笠井太郎

ページ範囲:P.2198 - P.2203

Point
◎プライマリ・ケアの一般外来で遭遇する足部痛では,生活習慣や体重増加などを背景としたメカニカルな病態が原因として最も多い.
◎腱障害(tendinopathy)における炎症病態の関与は少なく,繰り返される組織障害と組織治癒障害が主な病態であり,変性疾患と考えられてきている.
◎踵部の疼痛の原因として最も頻度が高いのは,足底腱膜炎である.
◎アキレス腱炎,後踵骨滑液包炎,アキレス腱付着部炎を区別するには,病変部位の違いを意識する.

【疾患別】

変形性関節症—変形性膝関節症を中心に

著者: 金子敦史

ページ範囲:P.2204 - P.2208

Point
◎変形性関節症は関節軟骨の変性・摩耗による軟骨組織の破壊に起因した,骨関節疾患のなかでも最も有病率が高い疾患である.
◎傷ついた軟骨組織は,コラーゲン線維の乱れが生じ,プロテオグリカンが失われ,ヒアルロン酸が低分子化し,軟骨細胞が減っていく.最終的には軟骨組織は剝脱・脱落し,軟骨下骨が露出する.
◎変形性膝関節症の治療は初期〜中期であれば保存療法,特にヒアルロン酸ナトリウムの関節内注入療法,大腿四頭筋訓練などの運動療法,進行期〜末期であれば手術療法を勧める.

骨粗鬆症

著者: 古谷武文

ページ範囲:P.2210 - P.2212

Point
◎内科医は,欧米のように積極的に骨粗鬆症の診断や治療に関わるべきである.
◎骨密度の結果がなくても,骨粗鬆症の診断や治療開始の判断ができる場合がある.
◎ステロイド性骨粗鬆症は医原病であり,内科医が管理すべき疾患である.
◎骨粗鬆症の治療は,まずカルシウムやビタミンDの摂取を促すことから始めよう.
◎骨粗鬆症の薬物療法は,それぞれの薬剤の特徴を理解してうまく使いこなそう.

脆弱性骨折・大腿骨近位部骨折—診断と治療

著者: 森尚太郎 ,   金子敦史

ページ範囲:P.2213 - P.2216

Point
◎高齢化社会が進むにつれ脆弱性骨折は増加の一途をたどり,その対応は日本医療の当面の課題である.
◎大腿骨近位部骨折の画像診断はX線やCTでは診断がつかず,MRIや骨シンチグラフィなどを要する症例もある.
◎関節リウマチによる続発性骨粗鬆症は傍関節性骨粗鬆症を特徴とし,関節周囲に脆弱性骨折を起こす.

結晶性関節炎—痛風関節炎とCPPD結晶沈着症を中心に

著者: 益田郁子

ページ範囲:P.2218 - P.2222

Point
◎結晶性関節炎は,関節内や周囲組織に沈着した結晶により誘発される関節炎である.
◎結晶の同定には補正偏光顕微鏡検査を行うが,結晶は見慣れれば通常の光学顕微鏡でも十分に観察できる.
◎結晶性関節炎の画像診断では関節エコーが有用である.
◎結晶性関節炎の背景にある合併症や原因疾患の検索・治療も重要である.

リウマチ膠原病的アプローチ

感染症と骨関節

著者: 松井和生

ページ範囲:P.2223 - P.2227

Point
◎感染性関節炎は,炎症性関節が1つでもあれば必ず考慮する.
◎急性単関節炎の患者は,そうではないとわかるまで化膿性関節炎として扱う.
◎急性多関節炎では,ウイルス性関節炎の鑑別を考慮する.

関節リウマチ

著者: 伊藤聡

ページ範囲:P.2228 - P.2231

Point
◎関節リウマチは頻度の高い関節炎であり,早期に治療介入をしない場合は関節破壊をきたす.
◎早期診断には,米国リウマチ学会/欧州リウマチ学会の分類基準を使用する.
◎疾患活動性の評価は,検査成績のみに頼らず,総合的疾患活動性指標を使用し,寛解・低疾患活動性を目指す.
◎治療の主体は抗リウマチ薬(DMARDs)であり,メトトレキサートを中心とした従来型DMARDs,生物学的製剤,JAK阻害薬を使用する.
◎必要に応じ,ステロイド,NSAIDs,弱オピオイドなども使用する.

膠原病

著者: 陶山恭博 ,   岡田正人

ページ範囲:P.2232 - P.2237

Point
◎主訴,年齢,既往歴,内服歴,アレルギー歴,身体所見,健診結果を含む検査データなど,あらゆる情報を観察し,診断の材料とする.特に膠原病関連疾患では,既往歴にキーとなる情報が潜むことがある.
◎アイコンタクトを交えて診察する際に,膠原病を示唆する所見がないかを意識して頭頸部全体に目を向けると,診断に繋がることがある.
◎リウマチ性多発筋痛症の鑑別となる膠原病関連疾患では,高齢発症関節リウマチや巨細胞性動脈炎のほか,中小血管炎(結節性多発動脈炎,顕微鏡的多発血管炎,多発血管炎性肉芽腫症)も覚えておきたい.

脊椎関節炎

著者: 岸本暢将

ページ範囲:P.2238 - P.2243

Point
◎脊椎関節炎(SpA)と関節リウマチ(RA)の違いを知る.
◎乾癬性関節炎はcommon diseaseであり,日常診療でも爪病変や付着部炎,指趾炎などに注意する.

悪性腫瘍・血液疾患と骨関節

著者: 瀬戸口京吾 ,   福井翔一

ページ範囲:P.2246 - P.2251

Point
◎傍腫瘍症候群は腫瘍の直接作用ではなく,腫瘍からの液性因子や腫瘍に対する免疫反応が介在して生じる.
◎原疾患が致死的である場合があるため,骨関節症状から腫瘍検索を行う必要があるか判断することが重要である.
◎NSAIDsやステロイドが反応する病態もあるが,反応不良の場合は傍腫瘍症候群を念頭に置くべきである.

内分泌疾患・腎疾患と骨関節

著者: 須藤航 ,   金城光代

ページ範囲:P.2252 - P.2254

Point
◎糖尿病では,多彩な骨関節症状をきたしうる.
◎筋肉痛や脱力などの筋症状では,甲状腺疾患の可能性を考慮する.
◎慢性腎臓病(CKD)患者では,ミネラル代謝異常に伴う骨病変が認められる.
◎CPPD結晶沈着症や手根管症候群(CTS)を診たら,背景に内分泌疾患がないかどうかを考慮する.

不定愁訴と骨関節

著者: 國松淳和

ページ範囲:P.2256 - P.2258

Point
◎「不定愁訴(病気がない)」と断ずる前に,今一度,器質的疾患の可能性を検討すべきである.
◎不定愁訴だと思ったら,もうやることがないと考えるのではなく,不定愁訴という1つの症候と捉え,精査をし直すくらいの気概で対応する.
◎骨関節の愁訴を訴え,不定愁訴の形を取りうる全身疾患の鑑別を把握する.
◎本当の不定愁訴には心身医学的なアプローチが中心となるが,一般医にもできることがある.

骨関節内科 治療総論

鎮痛薬(NSAIDs,他)

著者: 辻剛

ページ範囲:P.2260 - P.2263

Point
◎アセトアミノフェンはNSAIDsより頻用されるようになったが,抗炎症作用は小さい.
◎胃腸障害の少ないCOX-2阻害薬は使用しやすいが,万能ではない.
◎さまざまな薬剤が加わることで,幅広い痛みに対応が可能になることが期待される.
◎尚早な除痛や解熱による診断確定の遅延に注意する.

ステロイド

著者: 德永健一郎 ,   萩野昇

ページ範囲:P.2264 - P.2269

Point
◎ステロイドを使用する前に,「どの疾患の,どの臓器障害に対して使用するのか」を認識することが大切である.
◎少量ステロイドであっても,長期継続投与は副作用(骨粗鬆症,易感染性,糖尿病)が問題になることがあり避けるべきである.漸減や中止が難しい場合には免疫抑制薬を併用する.
◎関節炎に関しては,罹患関節へのステロイド関節注射が有用である.

抗リウマチ薬の正しい使い方

著者: 井畑淳

ページ範囲:P.2270 - P.2275

Point
◎関節リウマチ(RA)治療は「元気な人と変わらない生活を長期にわたって維持すること」を目標とすべきであり,単なる鎮痛や炎症反応の正常化をゴールにすべきではない.
◎RA治療の第一選択薬はメトトレキサート(MTX)であり,骨破壊リスクの高い患者においては積極的に使用すべきである.
◎副腎皮質ステロイドは一旦開始すると中止が困難であるため,使用する際にはリスク・ベネフィットに十分留意したうえでの限定的な使用に留めるべきである.
◎生物学的製剤はリスク・ベネフィットを勘案したうえで,アドヒアランスが高い製剤を選択すべきである.

リハビリテーション

著者: 杉井章二

ページ範囲:P.2276 - P.2279

Point
◎骨関節疾患では,集学的治療を行うために,問診時に「その症状のために,何かできなくて困っていることがありますか?」を聞く.
◎日常生活動作と社会生活を見据えたリハビリテーションが必要である.
◎関節リウマチのリハビリテーションでは,物理療法,運動療法,作業療法,装具,自助具を組み合わせて多方面からアプローチする.
◎関節リウマチは特定疾病に指定されており,40歳から介護保険を利用できる.

連載 フィジカルクラブpresents これって○○サイン!?・9

歩行困難と両下肢の痛みを訴える50代男性

著者: 平島修

ページ範囲:P.2113 - P.2114

特に既往歴のない50代男性.大酒家で,朝から飲酒することもある.2カ月ほど前から,たまに力が入らず階段を昇降しづらくなった.また,同時期より頻繁にこむら返りするようになった.約2週間前から歩行困難が悪化し,両下肢全体の痛みも出現したため,受診した.
両頰を打腱器で叩いてみると…
【動画】(時間:7秒)
http://mv.igaku-shoin.jp/medicina/5413h01
(2019年11月30日まで公開)

目でみるトレーニング

問題859・860・861

著者: 高谷健人 ,   河口謙二郎 ,   梶原祐策 ,   後藤聖司

ページ範囲:P.2286 - P.2291

心電図から身体所見を推測する・5

心電図から頭頸部の異常を推測する(頸動脈雑音,甲状腺)

著者: 栗田康生

ページ範囲:P.2292 - P.2294

 心電図には心臓以外の情報も多く含まれている.本連載第4回までの胸部,腹部などの異常所見は心臓の位置関係が心電図に変化を及ぼす可能性があったが,今回は少し離れた頭頸部の情報を探っていきたい.

Inpatient Clinical Reasoning 米国Hospitalistの事件簿・17

米国研修医時代の思い出

著者: 石山貴章

ページ範囲:P.2295 - P.2297

“You should have come back to check that patient in that situation !!”
(このレベルの重症患者なら,帰宅する前に再確認すべきだ !!)
 予想もしていなかった突然の叱責に,私はただ,呆然とするのみであった….

書評

—坂本 壮 著—ビビらず当直できる—内科救急のオキテ

著者: 徳田安春

ページ範囲:P.2167 - P.2167

 内科救急で見逃してはならない重要な15疾患についての診断と治療をとてもわかりやすく解説している.15疾患のケースをベースに,一般的な内科救急標準診療についての基本も提供してくれる.
 本書では臨床的に重要なピットフォールケースが提示されている.例えば,胸痛のない心筋梗塞.心不全の既往がある場合や,女性,高齢者,そして糖尿病などがある方では,心筋梗塞のかなりのケースで胸痛がない登場の仕方で救急室を訪れる.冷汗や吐き気,嘔吐で登場するケースもあり,急性心筋梗塞の除外のために心電図を積極的に取るべきことがわかる.

—金城光代,金城紀与史,岸田直樹 編—ジェネラリストのための内科外来マニュアル—第2版

著者: 川島篤志

ページ範囲:P.2244 - P.2244

◆外来診療の良書がパワーアップして戻ってきた
 皆さんの外来Debutは卒後何年目であっただろうか? 病院規模や担当診療科によって違うだろうが,そのときの不安な気持ちは覚えているだろうか? 日本の医療現場において,外来診療教育は明らかに遅れている.病棟診療とも救急診療とも違う能力が必要で,初診外来と継続外来でも求められるスキルに違いがある.その違いを知る3人の編者によってまとめられた良書がパワーアップして戻ってきた.
 「イントロダクション」から編者の熱い想いが伝わってくる.初診外来での「身体所見と病歴を行き来する」「患者の解釈モデルを訊く」ことはベテラン医師も納得である.継続外来における「少なくとも年に一度は次の項目を見直す」の項目は,外来の引き継ぎや紹介・逆紹介をする際にも意識すべき重要点でもあり,広く浸透を期待する.外来診療では避けて通れない「感染症診療・抗菌薬適正使用」も必読である.

—丹波嘉一郎・大中俊宏 監訳—Pallium Canada 緩和ケアポケットブック—(原著:Pallium Palliative Pocketbook, 2nd ed)

著者: 山中克郎

ページ範囲:P.2259 - P.2259

 監訳者の大中俊宏先生と諏訪中央病院で一緒に働いたことがあります.患者に優しいばかりではなく,医療スタッフや他科の医師にも誠実に対応される姿を見て,全国から講演に招聘される人気の秘密がわかりました.
 本書を手にとってまず思うのは,表紙のデザインがおしゃれです.様々な色が融合しているのはチーム医療を象徴しているそうです.緩和ケアのシンボルであるオレンジ色の風船に黄色と緑色が混じり合っているようにも見えます.本書の原型は20年前にでき,2008年にはカナダ国内の標準化された緩和ケアマニュアルとなりました.セミブラインド制の査読を用いている点がユニークです.査読者の名前は公開されていますが,誰がどのような査読のフィードバックをしたか著者には知らせないというものです.この方法により本書の信頼性を高めています.

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バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.2304 - P.2305

購読申し込み書

ページ範囲:P.2306 - P.2306

次号予告

ページ範囲:P.2307 - P.2307

奥付

ページ範囲:P.2308 - P.2308

「medicina」第54巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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59巻8号(2022年7月発行)

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56巻7号(2019年6月発行)

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56巻6号(2019年5月発行)

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56巻4号(2019年4月発行)

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56巻2号(2019年2月発行)

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56巻1号(2019年1月発行)

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55巻13号(2018年12月発行)

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55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

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55巻10号(2018年9月発行)

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55巻9号(2018年8月発行)

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55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

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55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

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55巻1号(2018年1月発行)

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