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雑誌目次

雑誌文献

medicina54巻3号

2017年03月発行

雑誌目次

特集 トリコになる不整脈—診断と治療のすべて!

著者: 副島京子

ページ範囲:P.407 - P.407

 「不整脈は難しい」と感じている医師・医学生は少なくないと思います.「心電図がわからない」「当直のときに不整脈の患者が来たらどう対応しよう?」「どんな薬を使ったらいいのか?」など不安に思う気持ちはもっともだと思います.不整脈は心臓の中の興奮伝搬により生じますが,興奮伝搬という目に見えないものを理解するは難しいことです.
 ところが近年,3次元マッピングシステムの進歩により,心臓の中の興奮伝搬や異常心筋をカラー表示することが可能になり,格段に理解が容易になりました.術前に撮影した3D CTの画像を読み込むことにより,解剖学的に正確な位置を見ながら,短時間の透視時間で診断し治療することができます.また,カテーテルアブレーションの進歩は,患者さんのメリットに加えて,医師にとっての「不整脈学の魅力」を非常に大きなものにしてくれました.診療においては,まず術前の発作時の心電図を見て,その不整脈の機序を予想します.診断の参考になる基準がたくさん知られています.そして,予想した不整脈の機序が正しいかどうかを術中に判断して確定診断を行い,根治に結びつけることが可能になりました.

特集の理解を深めるための28題

ページ範囲:P.542 - P.546

座談会

—症例を考えよう—カスタムメイドの不整脈治療

著者: 副島京子 ,   松田央郎 ,   三輪陽介 ,   勝目有美

ページ範囲:P.408 - P.418

本日は特徴のある2つの症例について皆さんと一緒に考えます.「ガイドラインや診療マニュアルからはなかなか判断が難しい」ということが,日常診療で経験されます.そのような症例を提示して,「皆でどうやって治療するか」について議論したいと思います.若い先生もおそらく困ってしまう症例かもしれません.さまざまな考え方があることをぜひ感じ取ってもらいたいと思います.(副島)

不整脈の総論

不整脈患者の問診のコツ

著者: 向井靖

ページ範囲:P.420 - P.422

Point
◎不整脈の問診(アナムネ)は正しい診断への一歩として重要である.
◎不整脈の症状は多彩で個人差が大きい.
◎各不整脈のポイントを知っておくと良い問診がとれる.

“どれが緊急”で“どれが待てるか”を判断するコツ

著者: 後藤裕美

ページ範囲:P.424 - P.427

Point
◎動悸の症状を訴える患者を診察する場合に,どのような不整脈を疑い対応するかを決めるためには,問診が重要である.
◎脳梗塞,脱水症,感染症,周術期などは不整脈が付随することがあり,原疾患の治療や全身管理を優先する.
◎失神発作の患者に遭遇したとき,病歴,心疾患の既往の有無,12誘導心電図から心原性かどうかを推測する.

—どう診断するか?—不整脈の頻度による診断ツールの使い分け

著者: 岡本陽地

ページ範囲:P.428 - P.430

Point
◎症状と心電図の不整脈所見が一致すれば診断は決まる.
◎不整脈の頻度により検査を使い分ける.
◎稀にしか起こらない不整脈は,患者も医師も長く観察する.
◎原因不明の脳梗塞においては,植込み型ループレコーダー(ILR)によるモニタリングが有用である.

どのような不整脈を専門医に紹介すべきか?

著者: 下重晋也

ページ範囲:P.431 - P.433

Point
◎確定診断にこだわらず,緊急性を判断する.次に専門的精査加療の必要性を判断する.
◎急性虚血,血行動態の破綻,心不全などの所見があれば専門医や総合病院へ紹介する.
◎致死性不整脈,根治可能な不整脈,薬物コントロール不良の場合は専門医へ紹介する.

徐脈

徐脈の見方—緊急患者とそうでない患者の見分け方

著者: 滝村由香子

ページ範囲:P.434 - P.437

Point
◎徐脈に伴う症状には,めまい,失神(一過性意識消失),易疲労感,息切れがある.
◎症状を伴う徐脈は緊急性があり,直ちに専門医へのコンサルテーションが必要である.
◎良性失神と判断できない失神では,モニター心電図で厳重に経過観察することが重要である.

徐脈の種類—SSS,AVブロック

著者: 前田真吾 ,   合屋雅彦 ,   平尾見三

ページ範囲:P.438 - P.441

Point
◎めまいや失神を伴う徐脈性不整脈に対しては,ペースメーカー植込み術が適応となる.
◎徐脈に対し,シロスタゾールが有用な場合がある.
◎徐脈頻脈症候群の場合,頻拍の停止時にのみポーズがある症例では,頻脈に対するカテーテルアブレーションによりペースメーカー植込みを回避できる場合がある.

ペースメーカー治療

著者: 河野律子

ページ範囲:P.446 - P.451

Point
◎ペースメーカー治療においては,患者の疾患・病態と現在の状態を十分に把握することが重要である.
◎ペースメーカーの基本動作を理解し,症例ごとに適した設定を選択することが必要である.
◎ペースメーカーの基本機能は,ペーシング,センシング,同期,抑制である.

コラム

緊急時の一時的ペースメーカー・体外式ペーシング

著者: 浅野拓

ページ範囲:P.442 - P.445

Point
◎体外式ペースメーカー挿入は頸静脈が安全だが,感染を考慮すると鎖骨下静脈も選択肢に入る.
◎本体の操作は,事前に習得している必要がある.

将来のデバイス

著者: 冨樫郁子

ページ範囲:P.452 - P.454

Point
◎リードレスペースメーカーは,経静脈的にカテーテルを介して右室心内膜に留置され,リードを介さず直接先端の電極から右室をペーシングする.
◎リードレスペーシングの利点は,リードやポケットに関連する問題の解消,鎖骨下静脈からの挿入が困難な症例に対する大腿静脈からの植込みである.また,デバイス感染の減少についても期待される.
◎ペーシングモードはVVIRのみであるが,将来はDDD,両心室ペーシング(CRT)が可能になると想定される.

頻脈

頻脈患者の診かた—緊急患者とそうでない患者の見分け方

著者: 寺田健

ページ範囲:P.455 - P.457

Point
◎救急搬送された患者のみが重症とは限らず,頻脈患者をみたら意識があるうちに助ける.
◎いつも通りの初期対応で血行動態を把握する.
◎初期対応は意識と脈拍の確認から始まる.
◎安定/不安定,QRS幅,規則性から頻脈性不整脈を考える.

wide vs. narrow QRS頻拍の急性期治療フロー

著者: 木村竜介

ページ範囲:P.458 - P.461

Point
◎wide QRS頻拍の場合,診断がわからなければ心室頻拍と考えて直ちに対処する.
◎wide QRS頻拍の場合,不整脈だけを見ていてはいけない.急性冠症候群や肺塞栓の除外診断,既存の器質的心疾患,基礎疾患と服薬内容の確認,血液ガス,電解質,できれば心エコーを直ちにチェックする.
◎narrow QRS頻拍はほとんどが上室性頻拍で,直ちに危険な状態になることは少ない.
◎どちらも,ショック状態であれば直ちにカウンターショックと心肺蘇生を行う.
◎どちらも再発予防が重要であり,後日不整脈専門医にコンサルトを要する.

アブレーション治療の原理

著者: 横山泰廣

ページ範囲:P.462 - P.465

Point
◎アブレーション治療のエネルギーには高周波と冷凍(クライオ)が広く用いられている.
◎高周波カテーテルアブレーションでは,電極─心筋接触面はジュール熱によって,心筋深部は伝導熱によって加熱される.
◎心筋組織の凝固壊死には50℃以上の加熱が必要である.
◎クライオアブレーションは心筋組織を-60〜-80℃近くまで冷却し冷凍壊死をもたらす.
◎クライオカテーテルではクライオマップが有用である.

【発作性上室性頻拍】

種類,機序,見分け方

著者: 貝谷和昭

ページ範囲:P.466 - P.471

Point
◎発作性上室性頻拍(PSVT)とは,突然始まり突然停止することが特徴である心房筋,洞結節および房室結節が関与する頻拍の総称である.
◎PSVTはリエントリーを機序にする頻拍がほとんどだが,一部の心房頻拍では異常自動能を機序とする.
◎頻拍時十二誘導の逆行性のP波の確認にて房室リエントリー性頻拍(AVRT)と通常型房室結節リエントリー性頻拍(common AVNRT)の鑑別ができる.
◎頻拍開始時や停止時の所見も頻拍の鑑別に参考となる.
◎ATPの反応により,PSVTの機序の鑑別やwide QRS tachycardiaにおける心室頻拍との鑑別がより正確となる.

上室性頻拍の薬物治療

著者: 五十嵐都

ページ範囲:P.473 - P.479

Point
◎発作性上室性頻拍は,カルシウム拮抗薬とATPで高率に頻拍を停止できる.
◎発作性心房細動では,Ⅰ群抗不整脈薬が発作の停止・予防に有効である.
◎持続性心房細動ではまずレートコントロールを行う.
◎上室性頻拍では非薬物療法も念頭に置き,漫然と抗不整脈薬のみ投与することは避ける.

WPW症候群

著者: 松下紀子 ,   副島京子

ページ範囲:P.480 - P.483

Point
◎WPW症候群の特徴的な心電図,WPW症候群で生じうる頻拍を理解しよう.
◎偽性心室頻拍の際には房室伝導を抑制する薬剤の投与は控える.
◎カテーテルアブレーションはWPW症候群に対する有効な治療法である.

房室結節リエントリー性頻拍

著者: 佐藤英二 ,   八木哲夫

ページ範囲:P.485 - P.488

Point
◎房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT)は上室性頻拍のなかで最も高頻度の頻拍である.
◎通常型AVNRTの心電図はQRS直後の逆行性P波に注目する.
◎逆行性P波はQRS終末部に重なり同定しにくいが,洞調律時の心電図と比較し,下壁誘導またはV1誘導のQRS終末部を注意深く比較観察すると同定できることが多い.

心房頻拍

著者: 渡邊敦之

ページ範囲:P.489 - P.493

Point
◎心房頻拍は,洞結節以外の心房内で局所興奮する上室性頻拍である.
◎基礎心疾患を有する心房頻拍は稀に血行動態が破綻することがあり,注意を要する.
◎頻拍時のP波の形態を詳細に観察することで起源が予測できる.
◎近年の3Dマッピングシステムの進歩により,カテーテルアブレーション治療により根治が期待できる.

心房粗動

著者: 渡邉昌也

ページ範囲:P.494 - P.497

Point
◎頻度が高い通常型心房粗動は「鋸歯状波」と呼ばれる特徴的な陰性粗動波を示す.
◎心房粗動の頻拍回路として三尖弁輪は重要で,通常型心房粗動は反時計方向に,非通常型心房粗動では時計方向に旋回する心房興奮を認める.
◎頻脈時は,β遮断薬や非ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬を中心に心拍数コントロールを行う.
◎予防的治療としての薬物療法は不十分なことが多く,根治的治療としてカテーテルアブレーションが積極的に行われるようになっている.

心房細動

著者: 野副純世

ページ範囲:P.498 - P.501

Point
◎心房細動は経過が長くなると左房が拡大し,持続性,永続性へと移行する.
◎より早期に治療介入することで洞調律維持や,持続性心房細動への移行阻止が望める.
◎機器や技術の進歩により,カテーテルアブレーションの有効性と安全性が向上している.
◎心房細動は心不全の原因にも結果にもなりうるため,心不全合併例では積極的な治療介入を検討する.

心房細動の抗凝固療法

著者: 平尾優子

ページ範囲:P.502 - P.505

Point
◎心房細動による心原性脳塞栓症は,重症化しやすく予後不良のため予防が重要である.
◎抗凝固療法の開始にはCHADS2スコアなどを用いた塞栓症のリスク評価が必要である.
◎腎機能の保たれている非弁膜症性心房細動における抗凝固薬は,ワルファリンよりも新規抗凝固薬のほうが望ましい.
◎新規抗凝固薬は,腎機能,年齢,体重などにより適応用量が異なる.

【心室頻拍】

心室頻拍と心室性期外収縮

著者: 徳田道史

ページ範囲:P.506 - P.508

Point
◎Holter心電図にて心室性期外収縮(PVC)の「総数」「連発の有無」「多形性」「症状との関連」を評価する.
◎薬剤抵抗性のPVCはカテーテルアブレーションの適応となる.
◎心室性不整脈の心電図波形により,発生部位の推定が可能である.

急性期治療

著者: 三輪陽介

ページ範囲:P.510 - P.513

Point
◎心室頻拍(VT)は血行動態が安定しているか,不安定かにより緊急性が異なる.
◎診察時にVT中血行動態が安定していたとしても,不安定化する可能性を考えながら対応する必要がある.
◎血行動態が不安定な場合,VTの除細動は非同期に,安定してる場合は同期下にカルディオバージョンを行う.

慢性期治療—内服薬

著者: 西山信大

ページ範囲:P.514 - P.518

Point
◎非器質的疾患に伴う心室頻拍に対しては,心電図や発症状況などの特徴をつかみ,有効な薬剤を選択する.
◎器質的疾患に伴うものに対しては,疾患に応じて虚血や心不全の治療に加え,Ⅲ群薬を中心とした抗不整脈薬を選択する.
◎アミオダロンは,甲状腺機能異常,肝障害,間質性肺炎,肺線維症などの心外性副作用に注意する.
◎ソタロールは,強いβ遮断作用,IKr遮断薬の逆頻度依存性,特に徐脈時のQT延長に伴うTdP,腎障害に注意する.
◎薬物療法には限界があり,固執することなく薬物・非薬物療法(ICD,アブレーションなど)を有効に組み合わせる治療戦略が望まれる.

カテーテルアブレーション治療

著者: 関口幸夫

ページ範囲:P.520 - P.525

Point
◎器質的心疾患に合併する心室頻拍(VT)に対し,3Dマッピングシステムを用いたカテーテルアブレーションが増加している.
◎治療前のマッピングは,アクティベーションマップとサブストレイトマップに大別される.
◎治療成功率は虚血性心疾患由来のVTのほうが,非虚血性心疾患由来のVTと比べ良好である.
◎心外膜側に頻拍基質が存在する場合には心外膜アブレーションを考慮する場合がある.

Brugada症候群の心電図と治療

著者: 北條林太郎 ,   深水誠二

ページ範囲:P.526 - P.529

Point
◎Brugada症候群はcoved型心電図を有することが必須であり,薬物負荷心電図などが施行される.なかでも高位肋間心電図は,通常の心電図計で記録が可能であり有用である.
◎Brugada症候群の心電図は日内・日差変動し,体温や食事によっても変化を受ける.
◎治療には植込み型除細動器(ICD)に加え,薬剤やカテーテルアブレーションが併用される.

ICDとは?

著者: 岡村英夫

ページ範囲:P.530 - P.536

Point
◎ICDは致死性不整脈による突然死予防の「切り札」であり,数多くのランダム化比較試験で有用性が確認されている.
◎除細動テストでは,ICDが致死性不整脈を正しく検出し,安全に停止できることを確かめる.
◎抗頻拍ペーシング(ATP)はリエントリー性の不整脈に有効であり,ショック治療を減らすため活用されたい.

コラム

AED,WCD,S-ICDなど新たな治療

著者: 田中沙綾香 ,   加藤律史

ページ範囲:P.537 - P.539

AED(図1)
 わが国では年間約8万人の心臓突然死を認めている.多くは心室細動(VF)と心室頻拍(VT)が原因であり,除細動が1分遅れるごとに,救命率は7〜10%低下すると言われている.この「除細動までの時間」を短縮する目的で,2004年7月から一般市民にも自動体外式除細動器(automated external defibrillator:AED)の使用が可能となった.現在の日本国内での稼働台数は不明だが,2014年までのAEDの累積販売数は約63万台であり,設置情報の登録や点検の実施の普及が進められている.消防庁のデータ1)では,平成26年(2014年)に心原性心肺機能停止の時点を目撃された症例は31,169件あり,このうち初期心電図波形がVT/VFの症例は25,685件と,約8割を占めていた.一般市民が目撃した症例は25,255件で,このうち心肺蘇生が実施されたのは13,679件(54.2%).さらに,一般市民によって除細動が施行されたのは1,030件(4.1%)で,この群の1カ月後の生存数は519人で約半数であった.この数字はいずれもAED導入直後と比較し徐々に増加傾向となっている.また,一般市民によって除細動を施行されなかった24,225件の1カ月後の生存数は2,563人と約1割で,除細動を施行された群と大きな差が生じている.

遠隔モニタリング

著者: 三好章仁 ,   西井伸洋

ページ範囲:P.540 - P.541

Point
◎日本でデバイス植込み患者数は30〜40万人と予測され,現在も増加傾向である.
◎遠隔モニタリングは僻地医療・在宅医療にも有用である.
◎遠隔モニタリング導入は入院頻度・死亡率を軽減しうる.

連載 Webで読影! 画像診断トレーニング・12

繋がりから診断する

著者: 石田尚利

ページ範囲:P.401 - P.402

次の3症例について,どのような病態が推定できますか? また,診断は何でしょうか?
症例1 20代女性.徐々に増強する下腹部痛を主訴に救急外来を受診.既往歴はない.妊娠反応は陰性で,消化器症状や発熱はない.下腹部に圧痛がある.腹部CTを施行した.
症例2 60代男性.昨日より右鼠径部の膨隆を認め,少し痛みがあるため受診.下腹部に力を入れるとより膨れ,触ると柔らかい.右鼠径部の外ヘルニアを疑い,腹部CTを施行した.
症例3 80代男性.腹痛と嘔吐があり,腹痛が持続性に増強したため来院.高血圧,糖尿病で加療中,心筋梗塞の既往がある.血液検査にてWBC 15,800/μL,CRP 5.8mg/dL,LDH 320U/L,CK 105U/L.腹部CTを施行した.

いま知りたい 胃炎の診かた・5

臨床現場からみた胃炎とは?

著者: 増山仁徳 ,   春間賢 ,   鎌田智有 ,   大和田進

ページ範囲:P.548 - P.551

 Helicobacter pyloriH. pylori)感染胃炎の除菌療法は2013年2月に保険適用となり,「胃炎=H. pylori感染胃炎」を意味するようになった.H. pyloriの感染診断や除菌療法を行うためには,内視鏡によるH. pyloriの感染診断が求められている1).本稿では,臨床現場において内科医や研修医が胃炎について知っておくべきポイントを「胃炎の京都分類」(表1)2)に沿って概説する.
 内視鏡で胃内を観察する際は,悪性疾患を見逃さないことはもちろんであるが,「H. pylori未感染胃粘膜」「H. pylori現感染胃粘膜」「H. pylori既感染胃粘膜(除菌後あるいは高度萎縮による菌の自然消失)」の診断,および「薬剤による胃粘膜変化」の合併の確認と「発癌のリスクを胃粘膜から判断」することが重要である.実臨床では,問診を含めた患者との会話からどのような胃炎,どのような胃粘膜の状態かを推理することから始まる.

内科医のための 耳・鼻・のどの診かた・2

頸部腫瘤

著者: 竜野真維 ,   石丸裕康 ,   高北晋一

ページ範囲:P.552 - P.555

内科医にもできる!
診療に必要な知識・スキル
症例
 24歳女性.
 3日前に咽頭痛が出現し,翌日より38℃台の発熱が持続している.両側頸部と腋窩に腫脹したリンパ圧痛を触れ,圧痛を伴う.倦怠感が非常に強く,咽頭痛と食欲不振のため飲食が進まず,ぐったりした様子で総合内科外来を受診した.

Inpatient Clinical Reasoning 米国Hospitalistの事件簿・8

anchoring

著者: 石山貴章

ページ範囲:P.556 - P.559

「TSHもかなり高いし,症状発症も薬を減量してからだし….まずはやはり,甲状腺機能低下に伴うものを疑うのが,常套かな…」
 患者の元へ向かう途中,病院の廊下を歩きながら,私はこんなふうに考えていた.この何気ない考えが,後々まで自分に影響を及ぼすとは,思いもよらず….

診断力を上げる 循環器Physical Examinationのコツ・24

不整脈患者の診かた

著者: 山崎直仁

ページ範囲:P.560 - P.566

症例
50代女性.主婦.
病歴 8年前からRaynaud現象が出現するようになった.これを契機に強皮症と診断され,膠原病内科で加療を受けていた.定期外来受診時に徐脈を指摘され,心電図を記録したところ,完全房室ブロックを認めたため,緊急入院となった.明らかな失神のエピソードはない.

目でみるトレーニング

問題832・833・834

著者: 横江正道 ,   小川栄一 ,   難波雄亮

ページ範囲:P.574 - P.581

SCOPE

関節エコー入門(前篇)—関節超音波検査の基礎知識

著者: 吉見竜介

ページ範囲:P.583 - P.589

 関節リウマチにおいて,関節破壊の進行を抑えるための早期診断・早期治療,そして厳密な疾患コントロールの重要性が強調されている.そのためには,活動性滑膜炎の有無を的確に評価することが重要である.RAを含むリウマチ性疾患において,関節超音波検査は滑膜炎などの関節病変を捉えるのに非常に有効な検査法として,近年国内で広く普及しつつある.

書評

—光藤和明 著 倉敷中央病院循環器内科 執筆協力—術者MITSUDOの押さないPCI

著者: 山下武廣

ページ範囲:P.422 - P.422

 本書は,2015年10月に急逝された光藤和明医師が書きためた原稿を,倉敷中央病院循環器内科スタッフが加筆・整頓して書籍化したPCIの大書である.光藤医師が「PCIのFinal frontier」としたCTO(chronic total occlusion),分岐部ステント術を中心に据え,加えて右冠動脈入口部,左主幹部へのステント術,さらには光藤医師がPCIの本質とした「押さないPCI」を,あえて「押してよい」場面を例示しながら詳述している.
 直面し得る陥穽を前もって予測し,リスクを可及的回避しながらいかに確実に手技を完遂するか,通常の技術書では散りばめられる「パール」が,本書では惜しげもなくオンパレードで教示されている.一語一句全てが,膨大な経験と深い洞察に基づいたパールと感じられ,ベテランインターベンショニストであっても1ページ読み進む間に何度もハッとさせられるのではないだろうか.さらにPCIのテクニック論にとどまらず,PCIを用いて医療を行うプロフェッショナルとしての人生哲学が随所に染み出ており,これぞ光藤流PCIの神髄と感じられる.

—北薗英隆 監訳—シュロスバーグ結核と非結核性抗酸菌症—Tuberculosis and Nontuberculous Mycobacterial Infections, 6th ed

著者: 清田雅智

ページ範囲:P.465 - P.465

 Mayo Clinicの感染症科に留学した際に,感染症の分野にはいろいろな成書が存在することを知った.“Mandell”は巷間認めるところであろう.この本が感染症一般を扱っているのに対し,さらに細分化した領域を扱う専門書が存在する.例えば,院内感染症であれば“Mayhall”が挙げられる.一方,抗酸菌感染症では本書が該当する.結核,非結核性抗酸菌症(nontuberculous mycobacterium:NTM)で悩むことがあるのなら,是非とも“Schlossberg”を紐解くべきである.
 結核なんてと思ってはいけない.疫学的に人口10万人あたり10人以下の発症が,結核の低蔓延国とされる.日本のデータは,WHO Global Tuberculosis Report 2016で現在17人である.1977年頃までは100人以上の高蔓延国であったので,当時までに結核に暴露された高齢者が,免疫の低下に伴い再活性化する恐れが十分あり,結核はこれからも忘れることはできない感染症である.

—金城光代・金城紀与史 監訳—メキメキ上達する—頭痛のみかた—よく遭遇する悩ましい症例から,ピットフォールが浮き彫りに!

著者: 野口善令

ページ範囲:P.509 - P.509

頭痛のシャーロックホームズになろう!
 頭痛は,頻度の高い症状である.日本の疫学調査では,一般地域住民の約40%が何らかの頭痛に悩む「頭痛持ち」といわれている.これらの人々が皆,医療機関を受診するわけではないにせよ,一般外来受診患者で頭痛を主訴とする患者は10%前後とされ,非常に多い.さらに,救急診療では,慢性頭痛以外にも急性頭痛の問題が加わる.プライマリ・ケア医,総合診療医,救急医はもとより,極専門的な分野に特化したスタイルで診療しているのでない限り,臨床医は頭痛の診療からは逃れられない.
 そんな臨床医にお勧めの本書には,症候的な特徴からどんな頭痛(診断)を疑ったらよいのかが,よく嵌まってしまうピットフォールとともに,解説されている.構成は,症例の病歴が示され,そのなかで眼をつけるべき手がかりは何かが,詳しくかつわかりやすく述べられている.第1章は,まず良性頭痛から.内容をひと言で言えば「片頭痛か,緊張型頭痛か.それが問題だ」.なんといってもこの2つの頻度が圧倒的に高いのだから.第2章:一次性(器質的原因のないもの)と二次性頭痛(器質的原因による)の区別,第3章:危険な頭痛の見逃し,と続く.

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基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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