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雑誌目次

雑誌文献

medicina54巻5号

2017年04月発行

雑誌目次

特集 —症候別 すぐ役に立つ—救急画像診断—いつ撮る? どう見る?

著者: 船曵知弘

ページ範囲:P.607 - P.607

 現代医療において,画像検査は欠かせない診断ツールの1つとなっている.なかでも救急医療においては,重症であればあるほど,全く画像検査を行わないということはない.救急医療の現場では,患者の容態は刻々と変化するため,それまでの情報(病歴や身体所見,検査所見など)からその場その場で正確な判断が求められ,処置・治療を開始しなければならない.
 画像検査を行う際には,それまでの情報から適応をどのように考えるのか,行うのであればどのようなmodality(超音波検査,単純X線検査,CT,MRIなど)を選択し,どのように検査するのか,また得られた画像からどのように解釈し,治療に結び付けるのか,などさまざまな判断が求められる.特に救急患者の訴えは,夜間休日を問わないため,画像検査の専門家である放射線科医が不在の時もある.そのような場合,担当医は上記項目において判断が求められる.質の高い医療を行うためには,これらすべてにおいて合格点が求められる.そのリスクマネジメントは重要であり,個々がトレーニングを行うことはもちろんであるが,システムとして各医療機関が考えなければならない問題である.

特集の理解を深めるための33題

ページ範囲:P.746 - P.752

座談会

救急医療における画像診断の質を向上させるために

著者: 船曵知弘 ,   志賀隆 ,   佐藤信宏

ページ範囲:P.608 - P.615

救急の現場ではX線やエコー,CTなどの画像検査は欠かせません.画像検査をするかどうかという決断も大事ですし,検査結果をきちんと判断し,解釈をすることが求められます.そのために,どのようなことに注意して自分で判断し,どこから専門医に任せたらよいか,また,担当医として求められるレベルに達するために,どのように勉強したらよいかについて先生方の経験や米国での現状も交えてお話を伺いたいと思います.(船曵)

総論—救急領域の画像検査の特徴

超音波検査の適応と限界—腹部超音波検査を中心に

著者: 太田智行

ページ範囲:P.616 - P.619

Point
◎腹部急性疾患に対する超音波検査の適応は主に,超音波検査を先行させた時,①CT検査が省略でき被曝の低減が期待できる場合,②介入までの時間短縮が期待できる場合,③CT検査が難しい低血圧またはショック時,④CT検査ができない院外,が挙げられる.
◎超音波検査においては,検査精度が臨床情報に依存すること,死角が存在することに注意する.
◎Point of care ultrasonography(POCUS)の導入により,現場での超音波検査の活用が進むことが期待される.

心臓超音波検査の適応と限界

著者: 滝村英幸

ページ範囲:P.620 - P.625

Point
◎心臓超音波検査は心疾患を疑う場合には必須の検査であり,非侵襲的かつ簡便であるが,検者の技量に左右されるため,技術の習得が必要である.
◎First echoとsecond echoに分けて検査を行う.First echoは1分以内を目標とし,必ずしもきれいな描出像と定量評価の必要性はなく,定性評価により致死的疾患を鑑別する.
◎超音波検査では描出困難であることが診断の限界であり,他のモダリティへの移行も考慮しながら迅速に行うことが必要である.

単純X線検査の適応と限界

著者: 船曵知弘

ページ範囲:P.626 - P.629

Point
◎撮影の方法により,正常像が異なるため,撮影方法による正常像を理解し,病態を考えなくてはならない.
◎腹部単純X線検査の診断は限定的であり,臨床所見に応じて超音波やCTの検査を施行するべきである.
◎四肢単純X線検査は今なお第一選択となる画像検査であり,可能な限り2方向以上で撮影して評価する.

CT検査の適応と限界

著者: 魚谷健祐

ページ範囲:P.630 - P.632

Point
◎CT撮像の高速化とともに,迅速に全身情報が得られるCTの重要性が高まっている.
◎救急の現場でCTが特に有用な疾患は,心血管疾患,急性腹症,外傷,脳卒中である.
◎CTは一般X線撮影と比べると被曝量が格段に多い.日本は世界でも群を抜いてCTの保有台数が多く,医療被曝の増加が問題となっている.
◎安易にCTをオーダーすることは避け,適切な運用を心がけなければならない.

頭部CTの撮影の仕方

著者: 山田哲久

ページ範囲:P.634 - P.637

Point
◎頭部CTを撮影する場合,まず単純撮影を行う.
◎頭部CT撮影の基本は,コンベンショナル撮影である.
◎頭部造影CTを撮影するときは造影剤を有効活用する.

体部CTの撮影の仕方

著者: 小黒草太 ,   前島克哉

ページ範囲:P.638 - P.640

Point
◎ヨード造影剤に対するアレルギーの有無を確認する.
◎大動脈解離,腸管血流障害,外傷,腸閉塞,消化管出血,肺動脈血栓塞栓症ではdynamic CTが推奨される.
◎尿管結石,総胆管結石,急性虫垂炎,憩室炎,腹腔内遊離ガスの同定のためには単純CTが有用である.
◎溢尿を疑う時は10分程度の遅延相が推奨される.

MRI検査の適応と限界

著者: 山下進

ページ範囲:P.642 - P.645

Point
◎MRI検査中はモニターや観察が困難であり,重症救急症例では検査にリスクを伴う.
◎T2強調像,FLAIR像では,脳梗塞や炎症,浮腫など,病変部が高信号領域として白く描出される.
◎救急症例で安全,迅速な検査を実施するには,診療放射線技師,放射線科医とのコミュニケーションが重要である.

救急画像診断教育のコツ

著者: 佐藤信宏

ページ範囲:P.646 - P.648

Point
◎読影だけでなく,検査の選択方法,画像検査のリスクに関する教育も必要である.
◎意図のある能動的な読影方法を教える.
◎学習者が自ら学び,指導できる環境づくりをする.
◎指導医も学習者であり,一緒に学ぶことが大切である.

各論—症状別 どのように画像検査を行うか,どう読むか?

発熱

著者: 石上雄一郎 ,   志賀隆

ページ範囲:P.650 - P.653

Point
◎熱源精査の際に胸部X線,超音波,造影CT検査が有用な場合がある.
◎American College of Radiology (ACR) Appropriateness Criteria®を参考にCT撮影の適応について検討する.
◎結核の活動性を評価するためにはCTが必要である.
◎急性巣状細菌性腎炎(acute focal bacterial nephritis:AFBN)は不明熱の原因として報告され診断が困難であるが,画像所見が鍵になる.
◎X線やCTよりも超音波検査のほうが感度の高い病態がある.
◎超音波が熱源探索において有用な場合もあるため,活用を検討したい.

ショック—point-of-care ultrasoundを用いた病態把握

著者: 亀田徹

ページ範囲:P.656 - P.658

Point
◎超音波は1台の装置で全身の評価が可能であり,ショックの病態把握,早期診断に威力を発揮する.
◎外傷初期診療で行われるFASTは,内因性疾患による出血の検索にも有用である.
◎FoCUSは主に心エコーを専門にしない医師が,問題解決型アプローチで評価項目を絞って行う手法である.
◎RUSHは領域横断的な活用法で,診断推論に基づきフレームワークとして利用するのが妥当である.

ショック+腰痛

著者: 関本康人 ,   笹嶋寛史 ,   原田裕久

ページ範囲:P.660 - P.663

Point
◎突然出現した腰痛を主訴とし,ショックバイタルを呈する症例では,破裂性腹部大動脈瘤を疑う.
◎破裂性腹部大動脈瘤の診断,およびステントグラフト内挿術(EVAR)施行の可否を判定するために,CT angiography(CTA)検査が重要である.
◎EVAR施行にあたり,CTA検査では主に①中枢ネックの評価,②アクセス血管の評価を行う.
◎ショックバイタルの場合,CTA検査を施行せずに手術室へ入室する場合がある.

腰痛+発熱

著者: 棚橋裕吉 ,   近藤浩史 ,   古井滋

ページ範囲:P.664 - P.667

Point
◎感染性脊椎炎は合併症予防のため早期診断・早期治療が重要であり,画像診断の果たす役割は大きい.適切なタイミングで画像診断を行うためには,臨床所見とリスク評価が重要である.
◎感染性脊椎炎は一般に椎体前部終板軟骨下から始まり,椎間板,隣接する他の椎体や傍椎体組織へと進展する.
◎感染性脊椎炎の画像診断で最も有用なモダリテイはMRIであり,代表的なシークエンスはT1強調像,T2強調像(脂肪抑制T2強調像),ガドリニウム造影T1強調像である.
◎感染性脊椎炎の画像診断では,CT・MRIともに矢状断像・冠状断像が必須である.熱源不明の体幹部CTなど,デフォルトで矢状断・冠状断再構成像がない場合には,積極的に再構成像を作成し評価する.
◎化膿性脊椎炎と結核性脊椎炎では治療法が大きく異なるため,その鑑別は重要である.それぞれの特徴的な画像所見を理解する必要がある.

腰痛

著者: 篠塚健

ページ範囲:P.668 - P.671

Point
◎腰痛はその原因が外因性なのか,内因性疾患に由来するものかの区別が重要である.
◎受傷機転がなく,脊椎に圧痛を認めない痛みや体動により増強しない痛みでは,内因性疾患を疑い,各種検査を実施する.
◎尿路結石症による疝痛発作は,激しい腰背部痛を伴う代表的な尿路救急疾患の1つである.
◎腎梗塞や腎動脈解離は,尿管結石症の鑑別診断として念頭に置く必要がある.

頭痛

著者: 中間楽平 ,   加藤弘毅

ページ範囲:P.672 - P.674

Point
◎「突然発症の頭痛」「いつもと違う頭痛」「神経症状のある頭痛」が認められたらCT撮影を行う.
◎くも膜下出血はCTのみでは否定できないことがあるため,病歴や所見から本症が疑われる場合は,MRIや腰椎穿刺も考慮すべきである.
◎脳ヘルニアは急変のサインであり,頭部CT所見により早期に認知する必要がある.
◎脳実質だけでなく,脳槽・脳溝などの間接所見が正常かどうかにも着目することが重要である.

片麻痺

著者: 鈴木淳一郎 ,   伊藤泰広

ページ範囲:P.675 - P.679

Point
◎片麻痺ではまず脳卒中を疑うが,低血糖やてんかん発作後麻痺などでも起こる.
◎頭部CTでは出血性病変の鑑別は容易だが,超急性期脳梗塞の場合は変化が乏しい.
◎Early CT signは,脳実質の所見と脳血管の所見があるが,rt-PA使用には前者が重要である.
◎MRIは情報量が多いが時間がかかるため,CTのみでrt-PAの適応を決めることが多い.

意識障害

著者: 宮武諭

ページ範囲:P.680 - P.683

Point
◎初期評価を行い,脳局所の原因か,全身性の原因かを推論して,頭部(脳神経領域)画像検査の必要性・優先度を判断する.
◎頭部画像検査のmodality(CTか,MRIか)の選択は,患者の症状と状態,施設の条件などから総合的に判断する.
◎一過性意識消失で失神と診断できれば,頭部画像検査の意義は乏しい.

突然の頸部痛

著者: 松浦紘一郎 ,   齋藤尚子

ページ範囲:P.684 - P.687

Point
◎突然の頸部痛にWallenberg症候群など,小脳や脳幹梗塞症状を認めた場合は,椎骨動脈解離を疑い,頭部MRI,MRAを施行する.
◎突然の頸部痛に神経根痛や対麻痺,顔面を含まない片麻痺を認めた場合は,頸椎硬膜外血腫を疑い,頸椎MRIを施行する.MRI検査が施行できない場合はCTを行い,脊柱管内を注意深く観察する.
◎突然の頸部痛に咽頭痛や嚥下痛,咽頭後壁の腫脹を伴った場合は,CT検査を施行する.咽後膿瘍を除外できたら,石灰沈着性頸長筋腱炎を疑い,骨条件や軟部条件でC2椎体前面の石灰化の有無をチェックする.

突然の胸痛

著者: 鈴木康之

ページ範囲:P.688 - P.690

Point
◎胸痛患者の初期診断では,胸痛の性状,冠危険因子の有無,既往歴,家族歴を含む病歴聴取を迅速かつ詳細に行い,虚血性心疾患の検査前確率を推定する.
◎救急現場における胸痛患者の初期診断において,心エコーが有用である.
◎虚血性心疾患の画像診断は,急性期において検査前確率が低〜中等度と推定される場合,心筋シンチグラフィや冠動脈CTによる診断が有用なことがある.

移動する胸痛・背部痛

著者: 丸橋孝昭

ページ範囲:P.691 - P.695

Point
◎①大動脈痛,②上肢血圧左右差,③縦隔拡大の3項目すべてが認められる場合,急性大動脈解離の陽性的中率は100%であるが,胸部単純X線における縦隔拡大のみでは,非特異的な所見である.
◎疼痛を自覚しない急性大動脈解離では,失神や意識障害,四肢の麻痺(片麻痺,対麻痺)などの非典型的な症状を呈する場合が多い.
◎急性大動脈解離を疑った場合のCT検査は,心電図同期下の造影2相(early phase, delay phase)での撮像を基本とする.
◎造影CTでは,偽腔の血流状態と大動脈径および偽腔径を評価し手術適応を判断する.

突然の呼吸困難

著者: 妹尾聡美

ページ範囲:P.696 - P.700

Point
◎「突然の呼吸困難」という現病歴が最も重要となる疾患は,肺血栓塞栓症である.
◎呼吸状態に比べて肺野に明らかな異常がないことは,肺血栓塞栓症を疑う重要な所見である.
◎肺動脈CT angiography(CTA)を撮影するときは,下肢CT venography(CTV)も同時に撮影する.
◎肺動脈CTAは水平断像だけでなく,冠状断像でも必ず評価をする.

増悪する呼吸困難

著者: 佐藤文恵

ページ範囲:P.701 - P.705

Point
◎急性心不全の画像所見は,心拡大,肺うっ血・肺水腫,胸水に大別される.
◎胸部単純X線写真では撮影条件を確認したうえで,各項目につき評価する.過去の画像がある場合は,必ず経時変化の有無をチェックする.
◎CTによる評価は必須でないが,肺水腫の所見などの特徴を押さえておくことは他疾患との鑑別に有用である.

突然の上腹部痛

著者: 船曵知弘

ページ範囲:P.706 - P.709

Point
◎腹部単純X線写真で腹腔内遊離ガスがないからといって,消化管穿孔は否定できない.
◎上部消化管穿孔と下部消化管穿孔とでは治療方針・予後が異なるため,確定診断が求められる.
◎画像診断の中心はCTであり,上部消化管穿孔の場合は穿孔部位まで特定できる.

右季肋部痛

著者: 八神俊明

ページ範囲:P.711 - P.713

Point
◎右季肋部痛では,まず超音波検査で胆石性疾患を検索する.次に造影CTで合併症の評価や,他部位の検索を行う.
◎画像評価では,まず胆石の有無,胆囊腫大,胆囊壁肥厚,総胆管結石と胆道拡張を探す.
◎胆石胆囊炎診断においては,造影CT動脈相での胆囊周囲肝実質の染まりも有用である.

突然の臍周囲痛

著者: 船曵知弘

ページ範囲:P.714 - P.717

Point
◎臍周囲に疼痛を訴える疾患は多いが,血管疾患は時間的猶予がない場合が多いため注意する.
◎上腸間膜動脈閉塞の有無は,CTを撮影しても容易に見落とす疾患の1つである.
◎上腸間膜動脈閉塞では,腸管血流障害も必ず確認しなければならない.

右下腹部痛

著者: 小出裕 ,   山口雅人 ,   杉本幸司

ページ範囲:P.718 - P.722

Point
◎右下腹部痛ではまず虫垂炎を鑑別する.そのためには画像検査で虫垂を正確に同定する必要がある.
◎造影CTは,単純CTで虫垂の同定ができない時や診断に悩む時に施行するとよい.施設によっては単純CTを撮らずに,最初から造影CTを施行することもある.
◎虫垂炎と回盲部憩室炎はともに回盲部に炎症を生じ,ときに鑑別に悩むが,画像診断で最も重要な点は,虫垂の同定にある.

小児の右下腹部痛

著者: 宮坂実木子

ページ範囲:P.724 - P.729

Point
◎右下腹部痛をきたす疾患は,多岐にわたるが,年齢を考慮した鑑別疾患を念頭に置く.
◎外科的治療を要する急性虫垂炎の診断に超音波検査は有用である.
◎超音波検査で診断困難または合併症,他疾患が考慮される場合はCTまたはMRIを考慮する.
◎小児に対する各画像診断検査の利点と欠点を理解する.

左下腹部痛

著者: 舩越拓

ページ範囲:P.730 - P.733

Point
◎左下腹部痛をきたす臓器を考えることにより,診断に近づける.
◎消化管のみならず,尿管・腎・副腎,卵巣・精巣などの泌尿生殖器を考えるようにする.
◎腹腔内だけでなく腹腔外臓器に起因する痛みも考えるようにする.

腹部膨満・嘔吐

著者: 昆祐理

ページ範囲:P.734 - P.737

Point
◎どのような患者にCTを撮像するかを判断するために,身体所見のほかに超音波検査も活用する.
◎疑う疾患によって撮像プロトコールを検討する.
◎疑う疾患のみならず,そのほかの緊急性の高い疾患を見落とさないようにするための読影手順を必ず取るようにする.
◎腸閉塞を見たら,CT画像からその治療方針決定と緊急度判断を行う.

吐血

著者: 上野浩一

ページ範囲:P.738 - P.741

Point
◎患者の主訴「血を吐いた」≠消化管出血であり,病歴や身体所見から種々の疾患を鑑別する.
◎急性消化管出血に対しての診断・治療の第一選択は上部消化管内視鏡検査であるが,造影CTは感度・特異度ともに高く,有用である.
◎上部消化管内視鏡検査の禁忌となる消化管穿孔や腸閉塞,大動脈瘤破裂などが原因の「吐血」に対しては,内視鏡検査よりもCTなどの画像診断を優先して施行する必要がある.

下血

著者: 佐藤智洋

ページ範囲:P.742 - P.744

Point
◎下部消化管出血における画像診断,治療の基本は大腸内視鏡検査である.
◎造影CT検査は,出血の活動性,部位,原因を推定し,治療方針の決定に有用である.
◎各診療科と協議し,症例に応じて内視鏡治療,血管内治療,外科治療を適宜選択する必要がある.

連載 フィジカルクラブpresents これって○○サイン!?・1【新連載】

繰り返す肺炎で入院中の70代男性

著者: 平島修

ページ範囲:P.601 - P.602

繰り返す肺炎で入院中の70代男性.
回診の時に「おはようございます.聴診しますので,起きてください」
と指示すると…
左側臥位になり,ベッド柵につかまりながら起き上がろうとしたため,
「ベッド柵を使わずに起きてください」
と指示すると…

いま知りたい 胃炎の診かた・6

知っておきたい特殊な胃炎

著者: 八板弘樹 ,   蔵原晃一 ,   河内修司 ,   間部克裕

ページ範囲:P.754 - P.759

 Helicobacter pyloriH. pylori)感染と萎縮性胃炎,消化性潰瘍,胃癌との関連が明らかとなり,上部消化管の診療においては,まずH. pylori関連疾患を念頭に置くべきであるが,H. pylori感染と関係のない特殊な胃疾患に遭遇し診断に苦慮することがある.
 本稿では,特殊な胃炎として胃梅毒,胃結核,collagenous gastritis,好酸球性胃炎を取り上げ,各疾患について概説する.

目でみるトレーニング

問題835・836・837

著者: 山本祐 ,   岩崎靖 ,   福田旭伸

ページ範囲:P.760 - P.765

Inpatient Clinical Reasoning 米国Hospitalistの事件簿・9

その画像診断,ホントウですか?

著者: 石山貴章

ページ範囲:P.766 - P.769

 専門医のメンタリティやアプローチの代表格の1つに,「画像重視」がある.これは「画像診断機器へのイージーアクセス」の功罪であり,決して批判的な意図はない.ただ,画像のみから診断に迫ることの危険を理解していないと,その情報に“引っ張られて”,ほかの情報を適切に評価できず,誤診につながりかねない(前回「anchoring」も参照のこと).今回はそれをあらためて教えてくれたケースである.

内科医のための 耳・鼻・のどの診かた・3

咽頭痛

著者: 明保洋之 ,   石丸裕康 ,   高北晋一

ページ範囲:P.770 - P.775

内科医にもできる!
診療に必要な知識・スキル
症例1
 33歳,特に既往のない女性.
 前日より咽頭痛の自覚あり,本日咳嗽と鼻汁も出現したため受診した.開口障害,声質の変化,息切れなどは伴わなかった.小学生の娘にも同様の症状あり,娘の小学校にも同様の症状の児童が大勢いるとのことであった.扁桃腫大はなく,咽頭は軽度発赤していた.上気道炎と診断して,咽頭痛に対してアセトアミノフェンを処方した.

SCOPE

関節エコー入門(後篇)—関節超音波検査によるリウマチ性疾患の診断

著者: 吉見竜介

ページ範囲:P.776 - P.781

 関節超音波検査は骨びらんや滑膜炎症を検出することができ,関節リウマチの診断や疾患活動性の評価に有用である.また,変形性関節症における骨棘や軟骨変化,脊椎関節炎における付着部炎所見,結晶誘発性関節症における軟骨の結晶沈着所見など,関節リウマチ以外のさまざまなリウマチ性疾患の診断にも有用である.さらに,リウマチ性多発筋痛症の新分類基準案には関節エコー所見が採用された.

書評

—今 明秀 監訳—そこが知りたい!—救急エコー 一刀両断!—[電子書籍付き]

著者: 岩田健太郎

ページ範囲:P.655 - P.655

 結論から申し上げる.ぼくは本書が大好きだ.かなり,シビレた.
 監訳者である今明秀先生から本書の書評を書くよう依頼されたときは,正直,困惑した.ぼくは超音波のプロではないし,救急のプロでもない.FASTなんてやったことがない.ぼくが沖縄県立中部病院で研修していた時は,まだこのコンセプトはなかったと思う.その後はわずかな北京時代以外は外傷患者をケアする立場になく,その診療所はFASTを行うようなセッティングではなかった.とにかく,本書を論ずるにはあまりに場違いな立場ではないか.ぼくはまるで,青山通りをひとりで歩いているかのようなアウェー感をこの依頼に感じたのである.

—坂本史衣 著—感染対策40の鉄則

著者: 吉田眞紀子

ページ範囲:P.671 - P.671

 文字通り,一字一句見逃せず無駄な言葉が一つもない,真剣勝負の感染対策の本が発刊された.「感染対策の本」は,既に多数出版されており,その中には良書も少なくない.しかし,本書は,これまでのいかなる書籍とも立ち位置がまったく異なる,まさに“Only One”の書である.
 筆者は,聖路加国際病院QIセンター感染管理室に所属し,日々現場で感染対策を実践しておられる坂本史衣さん.公衆衛生学修士(MPH),感染制御・疫学認定機構による認定(CIC)に裏打ちされる疫学と感染対策の実践者である.

—志水太郎 訳—診断推論のバックステージ—ワンランクアップのための診断推論教育11の要点—Teaching Clinical Reasoning

著者: 清田雅智

ページ範囲:P.683 - P.683

 臨床推論の能力は,医師の診断能力の高さに相関するに違いない.患者さんから①病歴を聞き②鑑別疾患を絞り③身体所見を取り④検査所見にて診断を確定するという作業は,おそらく20世紀になり行われてきたと思われる.近年,画像,採血などの検査の役割が強力になり,④>>③で診断するという傾向が強まるのも時代の流れであろう.一方,診断エラーは,患者予後を悪くする.それを防ぐには①,②の精度を上げることであろう.しかし,このトレーニングの方法論は,実際には不確実なものばかりである.それで,私はこのような方法論を学んでも深い臨床推論能力を獲得することはできないと思っていた.出会った疾患を深く学び,機会を得ては更に学ぶという反復が,深い知識と見識を生む.これには10年1万時間という歳月が必要だということを,他の職業の例からも実感している.多くの医師はこの歳月を経て,自分の医師としての能力を実感しているのではなかろうか.
 Lawrence Tierneyの一番弟子とされるGurpreet Dhaliwal医師を,臨床推論能力を持った教育者のエキスパートとして私は尊敬している.第8章を担当しているが,上記のような経験だけではエキスパートにはなれないことを語っており,彼なりの方略を示していた.私は俄然この本の見方を変えた.

information

第1回日本臨床疫学会年次学術大会—www.clinicalepi.org

ページ範囲:P.752 - P.752

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バックナンバーのご案内

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購読申し込み書

ページ範囲:P.790 - P.790

次号予告

ページ範囲:P.791 - P.791

奥付

ページ範囲:P.792 - P.792

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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