文献詳細
書評
—西原崇創 著—患者の声から理解する—心房細動診療の見方・考え方 フリーアクセス
著者: 中川義久1
所属機関: 1天理よろづ相談所病院循環器内科
ページ範囲:P.847 - P.847
文献概要
循環器内科の外来でもっともエネルギーを使うことの1つが心房細動患者への対応である.心房細動とは何かを説明することから始まる.さらに脳梗塞発症の懸念があることを伝え,抗凝固薬の必要性を説き,抗凝固療法にともなう出血性リスクについて説明し,ワルファリンと新規経口抗凝固薬(DOAC)の得失やアブレーションについても理解してもらって・・・・と多くのことを語らなければならない.ご高齢であることが多い心房細動の患者は理解できているのであろうか.中には消化不良に陥っている患者・家族もいることであろう.説明を受ける側にとって理解が不十分となるのは,説明する医師の頭の中でポイントの整理が十分になされていないことも理由の1つではないか.
日本一わかりやすく説明してくれる解説者といえば,池上彰さんの名前があがるのではないか.池上彰さんの凄さは,難しい話を,わかりやすく伝えてくれるところにある.今まで興味を持てなかったような政治や社会の難しいニュースでもわかり易い事例に例えて平易な言葉で語ってくれる.西原崇創先生が書き下ろした『患者の声から理解する心房細動診療の見方・考え方』を読ませてもらい,西原先生は医療業界の『池上彰』であるとの思いに至った.語り口は判りやすく平易でありながら,その記されている内容のレベルは非常に高い.数多くの臨床試験のデーターを掲載しながら展開されているので,心房細動について解説した類書に劣ることなく専門的知識に到達できる医学書である.池上彰さんがインタビューで,判りやすく解説する秘訣は,インプットした知識に自分なりの視点や意見を加えて,パワーアップさせたものをアウトプットできるかという問題であると語るのを聞いたことがある.西原先生は,心房細動についての知識を高いレベルでアウトプットしている.まさに池上彰さんの奥義に到達しているといえよう.
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