icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

medicina54巻9号

2017年08月発行

雑誌目次

特集 皮膚疾患が治らない!—皮膚科医が教える“次の一手”

著者: 出光俊郎

ページ範囲:P.1363 - P.1363

 「治らない」とは何か? 日常よくみる皮膚疾患の「治らない」には,さまざまなケースがある.例えば,治療が弱過ぎるために治らないことがある.初めの診断が間違っていて治らないこともあれば,治療中に別の皮膚疾患を併発していることもある.また,良くなったからと自己判断で治療を中断して悪化したときも「治らない」と患者は言う.薬局で「これはこわい軟膏です」と言われて患者が外用していなかったケースもある.そのほかにも,接触皮膚炎の原因が処方した外用薬であったり,顔面の皮疹が実は皮膚筋炎のような内科疾患の皮膚症状(デルマドローム)であったり,再発する紫斑や潰瘍が実は虐待によるものであったりすることがある.これらの可能性を見逃していれば,やはり治らない.さらに,湿布薬(ケトプロフェン)による光接触皮膚炎のように,治癒後も薬剤が皮膚に残存し,患部の光線過敏を繰り返す特殊な「治らない」ケースもある.最近ではインターネット情報が氾濫しており,間違ったスキンケアや外用方法のために治らないケースも少なくない.
 こうした「治らない」ケースに遭遇した場合には,剣術で最初の太刀を外されたときにどう体勢を立て直すかに通じるものがあり,パニックを起こすことなく,冷静に対処しなければならない.再診が初診よりも熟練を要するのは診断や治療を修正する必要に迫られるからであり,臨床医の腕と経験の見せどころである.まさに患者の「治らない」は臨床医を鍛えるのである.

特集の理解を深めるための32題

ページ範囲:P.1546 - P.1549

対談

内科医が診る皮膚疾患

著者: 出光俊郎 ,   佐々木直英

ページ範囲:P.1364 - P.1370

皮膚疾患に限らず,われわれ医師は患者さんを診察して診断し,治療すれば治るという前提で診療を行っています.診断が誤っていなければ治療により治癒する“はず”ですから,いかに正しく診断するかに重きが置かれてきたわけです.しかし実際には,「治療したけれど思うように治らない」ことは珍しくありません.そこで今回,皮膚疾患が「治らない」ときに何をどう考えるべきかということに焦点を当てた特集を企画しました.本日は地域医療の現場で皮膚疾患を日常的に診ている総合診療医の佐々木先生と,皮膚疾患を診るコツや「治らない」理由について,お話ししていきたいと思います.(出光)

総論

皮疹が治らないとき,どう考えるか?

著者: 梅林芳弘

ページ範囲:P.1372 - P.1375

Point
◎皮疹が治らない要因として,診断や治療の誤り,疾患の性質や患者側の問題が考えられる.
◎診断の問題では,例えば感染症でアレルギーと誤ったり,病原体や感受性の違いのため治らない,ということがある.
◎治療の問題は,多くは治療不十分であるが,生活指導が行き届いていないこともある.
◎疾患の問題として,もともと治りにくい病気だったり,2つの疾患が重なったりということがあり,前もっての説明が重要である.
◎患者の問題として,服薬指導を遵守していない,あるいは医療者側と認識に齟齬がある,ということが挙げられる.

よくある治らない症例のパターン

著者: 安齋眞一

ページ範囲:P.1376 - P.1380

Point
◎難治性湿疹の治療には,外用法を含めた生活指導が最も重要である.
◎趾間や足底に生じた落屑性の皮疹がすべて足白癬であるとは限らない.
◎爪白癬の治療前には,必ず爪甲内の真菌要素の存在を確認する.
◎顔面の瘙痒性皮疹に対して,安易にステロイド外用薬の長期投与はしない.

皮膚疾患と紛らわしい内科疾患の皮膚症状

著者: 山本俊幸

ページ範囲:P.1382 - P.1386

Point
◎内科疾患に伴う皮膚症状には特異疹と非特異疹とがあり,頻度の稀なものまで含めると,本稿で取り上げるものよりさらに多い.
◎すでに診断がついている患者に見られる皮膚症状もあれば,皮膚症状から内科疾患が初めて見つかる場合も少なからずある.
◎患者の主訴とは異なる皮膚症状から,その背景にある内科疾患を見つけられる場合もあり,身体所見を取る際には詳細な皮膚の観察が必要である.

紹介前にしてほしいこと,しないでほしいこと

著者: 片桐一元

ページ範囲:P.1388 - P.1392

Point
◎患者の苦痛が長く続く場合や判断に迷う場合は,早めに紹介する.
◎湿疹は身近な疾患であり,湿疹の基本と代表的疾患を理解する.
◎湿疹はステロイド外用薬が奏効しやすい疾患であり,積極的に治療してもよいが,必ず経過観察をする.
◎重症薬疹を知り,適切な時期に紹介する.
◎自身の診療科において薬疹を生じやすい薬剤と薬疹の病型を把握する.

間違いだらけの混合処方

著者: 大谷道輝

ページ範囲:P.1393 - P.1397

Point
◎皮膚外用薬の混合では,基剤特性の理解が重要である.基剤特性は「油」と「水」に分けて考え,両者は混ざらないことを考慮して組み合わせを選択する.
◎薬品名から基剤を判別することはできない.例えば,アクアチム®軟膏やザーネ®軟膏はクリームである.
◎クリームの皮膚透過性は軟膏やローションに比べ優れる.
◎軟膏とクリームを混合すると軟膏の効果は維持・亢進するが,クリームの効果が減弱する.
◎注射薬と同様に,皮膚外用薬も混合によりpHが変化し,主薬含量が低下する場合がある.

感染症

単純ヘルぺスが治らない!

著者: 長田真一

ページ範囲:P.1398 - P.1403

Point
◎初感染,免疫不全患者では,全身症状を伴い重症になることがある.
◎口囲や陰部に水疱,びらんをきたす疾患との鑑別が重要になる.
◎抗ヘルペスウイルス薬は早期投与が重要である.
◎抗ヘルペスウイルス薬は重症度により,外用・内服・点滴から最適なものを選ぶ.

帯状疱疹が治らない!

著者: 浅田秀夫

ページ範囲:P.1404 - P.1409

Point
◎治療の基本は,できるだけ早期に十分量の抗ヘルペスウイルス薬を全身投与することである.
◎帯状疱疹の治りが悪いときは,以下の可能性を考える.
 ・免疫抑制状態などで治療効果が不十分になっている.
 ・帯状疱疹に続発したほかの皮膚症状(外用薬による接触皮膚炎,二次感染,肉芽腫など)である.
 ・最初の診断が間違っている.

ウイルス性疣贅(いぼ)が治らない!

著者: 江川清文

ページ範囲:P.1410 - P.1414

Point
◎ウイルス性疣贅は俗に言う“いぼ”で,皮膚のヒト乳頭腫ウイルス(HPV)感染症である.
◎HPV型の違いにより,尋常性疣贅やミルメシア,扁平疣贅などの異なる病型がある.
◎ウイルス性疣贅は発症部位により臨床像が変わるため,診断や鑑別診断には注意を要する.
◎疣贅様の臨床像を呈する皮膚腫瘍は多い.悪性腫瘍の鑑別には特に注意を要する.
◎診断困難例や重症例,保険適用治療では難治な例は,早めに皮膚科専門医に紹介する.

尖圭コンジローマが治らない!

著者: 石地尚興

ページ範囲:P.1416 - P.1419

Point
◎尖圭コンジローマは,粘膜ローリスク型ヒトパピローマウイルス(HPV)による性感染症である.
◎子宮頸癌に関与する粘膜ハイリスク型HPVによるBowen様丘疹症との鑑別が必要である.
◎治療には外科的治療と薬物療法があり,症例に応じて適切に選択・組み合わせて治療する.

足白癬・爪白癬が治らない!

著者: 常深祐一郎

ページ範囲:P.1420 - P.1425

Point
◎白癬では確実な診断が必須である.白癬に類似する疾患は多いため,視診のみの判断は禁物である.
◎足白癬の治療では効果の高い薬剤を選ぶことと,外用指導(外用範囲,外用量,外用期間)が大切である.
◎外用抗真菌薬による治療では刺激性皮膚炎に注意する.湿疹などの合併症は先に治療しておく.
◎爪白癬の治療では,病型と重症度によって経口抗真菌薬と外用抗真菌薬を使い分ける.

口腔カンジダ症が治らない!

著者: 野口忠秀

ページ範囲:P.1426 - P.1431

Point
◎カンジダ症はその発生要因(局所的,全身的)を考える必要がある.
◎健常者(壮年者)のカンジダ症では後天性免疫不全症候群(AIDS)を疑ってみるべきである.
◎白色病変ばかりでなく,粘膜萎縮による「赤いカンジダ症」もある.
◎口腔乾燥症や義歯の管理などの対応も並行して行わなければならない.

伝染性膿痂疹(とびひ)が治らない!

著者: 加倉井真樹

ページ範囲:P.1432 - P.1437

Point
◎伝染性膿痂疹の原因菌はブドウ球菌が多く,抗菌薬の内服が基本である.
◎治りが悪いときはメチシリン耐性ブドウ球菌(MRSA)によるものと考えて,抗菌薬を変更する.
◎自宅において,「患部を洗い流す」「絆創膏を使用しない」などの生活指導も重要である.

蜂窩織炎が治らない!

著者: 小林束 ,   岩田洋平

ページ範囲:P.1439 - P.1443

Point
◎治療は抗菌薬投与だけでなく,安静,局所の冷却,下肢挙上が重要である.
◎激しい疼痛や紫斑が出現し,全身状態が急速に増悪した際には壊死性筋膜炎を疑う.
◎糖尿病を基礎疾患に有する場合は,重症化しやすいため注意を要する.

疥癬が治らない!

著者: 石井則久

ページ範囲:P.1444 - P.1448

Point
◎疥癬では指間部や手掌部の丘疹,陰囊部の結節がみられ,線状の疥癬トンネルが特徴である.
◎夜間に増強する瘙痒で,家族や友人,同室者などに同様症状がある.
◎皮膚に角化・鱗屑がたくさんある場合は角化型疥癬の鑑別が必要である.
◎皮膚科医と連携しながら診断・治療を行う.

蕁麻疹,アトピー性皮膚炎,アレルギーなど

蕁麻疹が治らない!

著者: 佐藤文子 ,   角田孝彦

ページ範囲:P.1449 - P.1453

Point
◎感染症による蕁麻疹があることを理解する.
◎抗ヒスタミン薬,ステロイドを投与しても改善しないとき,その理由を考えてみる.
◎感染症を疑う症状・検査所見があれば,それに対する治療も並行して行う.

成人アトピー性皮膚炎が治らない!

著者: 中村晃一郎

ページ範囲:P.1454 - P.1459

Point
◎治療の基本は外用療法であり,急性期にステロイドやタクロリムスを使用する.処方する外用薬は炎症を鎮静化するのに十分なランクのものを使用し,外用量も考慮する.
◎補助療法として痒みに対する内服療法も行い,さらに生活指導で止痒を目指す.
◎アドヒアランスの低下がある場合には,外用療法に関する説明を十分行う.
◎皮疹が悪化し,細菌感染症やウイルス感染症を合併する場合には専門医に相談し,適切な処方を受ける.

小児アトピー性皮膚炎が治らない!

著者: 檜垣祐子

ページ範囲:P.1460 - P.1464

Point
◎ステロイド外用療法が適切に行われているかを確認する.
◎伝染性膿痂疹,疱疹状湿疹の合併に注意する.
◎患児とケアギバー(多くは母親)の心身医学的側面に配慮する.

薬疹が治らない!

著者: 川内康弘

ページ範囲:P.1467 - P.1471

Point
◎薬疹にはアレルギー性薬疹と非アレルギー性薬疹があり,それぞれ好発薬剤,発症タイミング,好発発疹型が異なる.
◎薬疹治療の原則は被疑薬の中止であるが,重症薬疹はそれだけで治まらず,ステロイド投与などの積極的治療が必要である.
◎発熱している薬疹,粘膜症状のある薬疹,皮膚びらんを起こしている薬疹は,皮膚科専門医に紹介する.

口内炎,舌炎,口腔潰瘍が治らない!

著者: 神部芳則

ページ範囲:P.1472 - P.1476

Point
◎口内炎は,広義には口腔粘膜に生じる炎症性病変の総称であり,狭義にはアフタ性病変のことを指す.
◎アフタの明確な発症原因は現在でも不明であるが,Behçet病やCrohn病などの全身疾患に関連して発症する場合があり,再発を繰り返す.
◎アフタは通常,ステロイド含有軟膏の使用により1週間程度で改善するが,改善しない場合は生検を考慮する.
◎口腔に生じる紅斑性病変やびらん,潰瘍の多くは炎症によるものであるが,義歯や歯に関連した病変や,口腔癌の初期病変の可能性もある.

循環障害

凍瘡(しもやけ)が治らない!

著者: 新井達

ページ範囲:P.1477 - P.1481

Point
◎凍瘡は手指,足趾,耳朶に好発し,1日の気温変動が10℃以上の時に生じやすい.
◎近年は中高年の女性に多く,膠原病など,原疾患の存在に留意する必要がある.
◎治療はビタミンE内服と,へパリノイド製剤やステロイドの外用である.
◎治療抵抗例ではプロスタグランジンE1製剤内服が有効である.

下腿・足潰瘍が治らない!

著者: 宇原久

ページ範囲:P.1482 - P.1485

Point
◎潰瘍が1〜2カ月以上治る傾向を示さない場合は,まず使用中の消毒薬と外用剤を疑う.
◎潰瘍の治療はその基礎疾患の治療を優先すべきであり,外用剤をいろいろ取り替える意味はあまりない.
◎傷は乾いても水浸しでも治らないので,ドレッシングの工夫が必須である.

湿疹,皮膚炎

おむつ皮膚炎が治らない!

著者: 小西啓介

ページ範囲:P.1486 - P.1490

Point
◎おむつ皮膚炎とは,おむつ部位に紅斑,丘疹,びらんなどを生じる疾患である.
◎水分,尿や糞便などにより皮膚バリア機能が破綻することで生じた一時刺激性の皮膚炎である.
◎皮膚を清潔・乾燥状態に保ち,蒸れないようにおむつ交換を頻回に行えば,通常は自然治癒する.
◎難治例はweak〜mildクラスのステロイド軟膏を1日2回,入浴後などに外用する.
◎1週間治療しても改善しない場合は,皮膚科医に紹介すべきである.

脂漏性皮膚炎が治らない!

著者: 原田和俊

ページ範囲:P.1492 - P.1497

Point
◎脂漏性皮膚炎は,脂腺が多く分布する部位に好発する慢性の湿疹である.
◎頭部や顔面に皮疹を生ずる疾患は脂漏性皮膚炎以外にも多数ある.
◎治療に反応しない症例は,皮膚科専門医へ紹介すべきである.

乳房・陰部(陰囊)・肛門湿疹が治らない!

著者: 菊地克子

ページ範囲:P.1498 - P.1502

Point
◎乳房(乳輪,乳頭),陰部(陰囊),肛門の湿疹は,外的刺激因子(摩擦,蒸れ,排泄物,搔破など)が原因となることが多い.
◎乳輪,乳頭,陰囊,肛門は皮膚バリア機能が弱いため,易刺激性が高く,外用薬の経皮吸収も高い.
◎治療にはステロイド外用薬を用いる.潮紅や皮膚萎縮などステロイドの局所副作用の出現に注意する.
◎薬物治療だけでなく,刺激因子を避ける生活指導と,局所皮膚を清潔に保つスキンケアが重要である.

手湿疹が治らない!

著者: 谷田宗男

ページ範囲:P.1504 - P.1508

Point
◎手湿疹は日常よくみる疾患であるが,いったん発症すると慢性の経過をとることが多く,完治しにくい疾患である.
◎漫然とステロイド外用薬を処方するだけでは治癒は望めない.
◎治療に合わせて保湿によるスキンケア,手袋の着用など,予防についても指導する.

高齢者・透析患者のかゆみが治らない!

著者: 石氏陽三

ページ範囲:P.1509 - P.1512

Point
◎高齢者のかゆみの原因は乾燥,透析以外にも多彩であり,疥癬などの感染症や内臓悪性腫瘍も含まれる.
◎高齢者は多種類の薬剤を内服していることが多いため,薬疹も念頭に置くことが重要である.
◎高齢者ではステロイド外用薬の副作用が出やすいため,注意が必要である.

物理的皮膚障害

褥瘡が治らない!

著者: 田村敦志

ページ範囲:P.1514 - P.1517

Point
◎皮膚欠損部周囲に広いポケットが存在する褥瘡は治りにくい.
◎体位により創の形が変化する褥瘡も治りにくい.
◎保存的治療で改善しないポケットには,切開,デブリドマン,陰圧閉鎖療法,再建手術を考慮する.

熱傷が治らない!

著者: 八代浩

ページ範囲:P.1518 - P.1523

Point
◎熱傷では早期に重症度を判断し,熱傷深度に応じた処置を行う.
◎Ⅱ度熱傷の早期では,除痛のため水疱蓋を除去しない.
◎化学熱傷や低温熱傷は深い熱傷が多い.
◎水治療が治療期間の遷延を防ぐ.
◎特殊部位の熱傷は専門医へコンサルトする.

創傷が治らない!

著者: 池田政身

ページ範囲:P.1526 - P.1529

Point
◎急性皮膚創傷は正常創傷治癒機転により治癒する.
◎慢性皮膚創傷では何らかの原因で治癒が遷延している.
◎消毒は創傷治癒を遅延させるので,流水などによる洗浄が基本となる.
◎乾燥させると創傷治癒が遅延するので,wet dressingが基本となる.

毛包系疾患,毛髪・爪異常

痤瘡が治らない!

著者: 寺木祐一

ページ範囲:P.1530 - P.1533

Point
◎痤瘡の発症には毛包漏斗部の角化異常による面皰形成と,毛包内のP. acnesによる炎症反応が関与する.
◎炎症期の治療は面皰改善効果のあるアダパレンや過酸化ベンゾイル(BPO)の外用に,抗菌薬の外用・内服を併用する.
◎維持期では再発予防を目標とし,アダパレンやBPOを外用する.
◎痤瘡様の皮疹を呈する疾患は多く,治療に反応しない場合は,鑑別が必要である.

脱毛症が治らない!

著者: 植木理恵

ページ範囲:P.1534 - P.1538

Point
◎脱毛の原因は数多くあり,病的脱毛症を理解し鑑別する.
◎膠原病や甲状腺疾患など,内科的疾患に随伴する脱毛や薬剤性の脱毛を見逃さない.
◎円形脱毛症が治らない場合,ステロイドの全身投与は皮膚科専門医に相談する.
◎円形脱毛症は自己免疫疾患なので,育毛剤や男性型脱毛症(AGA)治療薬ではなく,抗炎症作用のある薬剤により治療する.

陥入爪,過彎曲爪(巻き爪)が治らない!

著者: 梅本尚可

ページ範囲:P.1540 - P.1545

Point
◎陥入爪は深爪で短くなった爪甲側縁先端が側爪郭を損傷し,炎症をきたす疾患である.
◎爪変形を伴わない陥入爪はガター法で治すことができる.
◎巻き爪は爪甲にかかる力学的問題により爪甲の側縁が内側に過彎曲する疾患である.
◎巻き爪は疼痛を伴う場合に治療適応となり,超弾性ワイヤー法や外科的治療を選択する.

連載 フィジカルクラブpresents これって○○サイン!?・5

1カ月前から回転性めまいを認めて来院した80代女性

著者: 平島修

ページ範囲:P.1357 - P.1358

1カ月前から回転性めまいを認めて来院した80代女性.舌を出してもらうと…

内科医のための 耳・鼻・のどの診かた・7

甲状腺腫

著者: 長野広之 ,   石丸裕康 ,   高北晋一

ページ範囲:P.1550 - P.1554

内科医にもできる!
診療に必要な知識・スキル
症例
 40歳女性.健康診断で甲状腺腫を指摘されて内科外来を受診した.特に症状はなく健康診断で指摘されて以来,自分で首を触ると腫れているなと感じている.

Inpatient Clinical Reasoning 米国Hospitalistの事件簿・13

とかくこの世は生きづらい

著者: 石山貴章

ページ範囲:P.1556 - P.1559

 40歳を過ぎると,いろいろと体に変調をきたしてくる.記憶力は減退し,何もしなければ悪化する.本を読めば目が疲れ,それに抗えば頭痛がくる.とかくこの世は生きづらい.
 今回は,4月から当科に来てくれた後期研修医が担当したケースである.いつもと同じような失敗談.人間,歳をとると成長しなくなることを,しみじみと感じ入る.しかし,まぁそれも仕方ない.

目でみるトレーニング

問題847・848・849

著者: 畠中成己 ,   梶原祐策 ,   竹本聖

ページ範囲:P.1560 - P.1565

内科医のボクらに心療ができないはずがない・4

人前で極度に緊張してしまうあがり症を緩和せよ

著者: 井出広幸 ,   宮崎仁

ページ範囲:P.1566 - P.1569

 とても優秀な研修医なのに,いつもおとなしく控えめなマツモト先生.今日は,いつになく暗い表情で,ため息をついている.定例の教育セッションのために病院を訪れたイデ院長は,そんな彼女の様子に気づいて声をかけた.

書評

—磯部光章 著—症候から診断・治療へ—循環器診療のロジックと全人的アプローチ

著者: 髙田真二

ページ範囲:P.1387 - P.1387

 筆者は医学部の卒前教育に長年関わっている.指数関数的に増加する医学知識の圧力の下で多くの試験を突破することに汲々とせざるをえない学生たちが,医学部入学当初の新鮮なモチベーションを維持しながら医師に必要な資質を修得し,プロフェッショナルへの階段を昇ってゆくのをどのように支えることができるのか,日々悩みつつ奮闘している.そんな筆者にとって非常に刺激的な一冊が現れた.
 複数の大学で何度もベストティーチャー賞やベストプロフェッサー賞に輝いた磯部光章氏(東京医科歯科大学循環器内科主任教授=発行時)の手に成る本書は,循環器病学を網羅的に扱う教科書ではない.磯部氏が医学部2年生から6年生に実施してきた講義・演習における学生との対話をそのまま再現した誌上ライブ集である.「症候や疾患を覚えるのではなく,基礎的な病態生理や理論をもとにして個々の患者の問題を論理的に把握すること」を主眼に展開されたこれらのライブは,サイエンス(医学)とアート(医療)の融合が臨床医としての資質の源泉であるという氏の哲学の実践と,そのメッセージを惜しみなく学生に伝えようとする熱い心とがあって初めて可能になった.同時に本書は,「医学教育の国際標準化」に曝されその意義が軽視される傾向にある旧来型の座学の講義でも学生の思考力を引き出すことは可能であり,紙上の患者であっても共感的に患者のナラティブにアプローチすることは可能であることを実証している.大切なのは授業の形態ではなく,教員が学生に向きあう姿勢であることを再認識させられる.

—向山政志,平田純生 監修 中山裕史,竹内裕紀,門脇大介 編—腎機能に応じた投与戦略—重篤な副作用の防ぎかた

著者: 大野能之

ページ範囲:P.1465 - P.1465

 10年以上前に,本書の監修および執筆者の平田純生先生の講演を初めて聴く機会があり,「これが本当の薬剤師だ」と衝撃を受けた記憶があります.それからは,腎機能低下時の薬の使い方については,平田先生の本で勉強して,理解を深めていきました.脂溶性の高い薬物はなぜそのまま尿中に排泄されないのかを理解できたのも平田先生の本のおかげでした(本書の2章-2でも解説されています).今では一緒にお仕事をさせてもらえる機会もあり,本書の書評の執筆の機会をいただけたことは感慨深いです.
 薬物を投与する際にはその主な消失経路となる肝臓と腎臓の機能を評価することが“かんじん”です.高齢化社会や,腎疾患を有する患者の増加に伴い,まさに本書のタイトルのとおり「腎機能に応じた投与戦略」を立てることが必要不可欠となっています.本書は重篤な副作用を回避するために,医師,薬剤師が知っておきたいキーワード,考え方,計算式などを,症例を挙げながら具体的に解説しています.

—徳田安春 編—症候別—“見逃してはならない疾患”の除外ポイント—The診断エラー学

著者: 小泉俊三

ページ範囲:P.1524 - P.1524

 近年,改めて診断学への関心が高まっている.解説書の多くは臨床疫学やEBMを背景に合理的推論を推奨しているが,著名な臨床教育家の手によるパール集の人気も高い.
 本書の基となったのは『JIM』誌(現『総合診療』誌)の特集である.数ある“実践的”診断学書の中でも,“見逃し”に焦点を当てている点に特に注目したい.本書の各項は,“見逃してはならない疾患のリスト”に始まり,各疾患の“除外ポイント”へと続く.なかでもユニークなのは,“見逃すとどの程度危険か?”の一項である.診察を始める前にこの項に目を通すことによって読者の皆さんも身が引き締まる思いをされるに違いない.研修指導医としては,各診察室に本書を1冊ずつ常備し,研修医が患者の診療を終了する前に,症状ごとに記載されているこの項に必ず目を通すことをルールとするのも一案であろう.

--------------------

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.1576 - P.1577

購読申し込み書

ページ範囲:P.1578 - P.1578

次号予告

ページ範囲:P.1579 - P.1579

奥付

ページ範囲:P.1580 - P.1580

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

60巻13号(2023年12月発行)

特集 一般医家のための—DOAC時代の心房細動診療

60巻12号(2023年11月発行)

特集 内科医が遭遇する皮膚疾患フロントライン—「皮疹」は現場で起きている!

60巻11号(2023年10月発行)

増大号特集 患者さんの質問にどう答えますか?—言葉の意味を読み解きハートに響く返答集

60巻10号(2023年9月発行)

特集 ミミッカー症例からいかに学ぶか

60巻9号(2023年8月発行)

特集 症例から読み解く—高齢者診療ステップアップ

60巻8号(2023年7月発行)

特集 浮腫と脱水—Q&Aで学ぶジェネラリストのための体液量異常診療

60巻7号(2023年6月発行)

特集 整形外科プライマリ・ケア—内科医が知りたい整形外科疾患のすべて

60巻6号(2023年5月発行)

特集 Common diseaseの処方箋ファイル—臨床経過から学ぶ20症例

60巻5号(2023年4月発行)

特集 臨床医からみたPOCT

60巻4号(2023年4月発行)

増刊号 探求!マイナーエマージェンシー

60巻3号(2023年3月発行)

特集 令和の脳卒中ディベート10番勝負—脳卒中治療ガイドライン2021とその先を識る

60巻2号(2023年2月発行)

特集 慢性疾患診療のお悩みポイントまとめました—高血圧からヘルスメンテナンスまで

60巻1号(2023年1月発行)

特集 10年前の常識は非常識!?—イマドキ消化器診療にアップデート

59巻13号(2022年12月発行)

特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

icon up
あなたは医療従事者ですか?