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雑誌目次

雑誌文献

medicina55巻10号

2018年09月発行

雑誌目次

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

著者: 岩田充永

ページ範囲:P.1515 - P.1515

 私は,内科全般の研修をした後に救急で働いています.救急で働いていると,ERの現場では内科診断学が重要であること,集中治療室でも「診断に基づいたアプローチ」と「循環・呼吸の維持,代謝・栄養のサポート,感染管理など全身サポート」の両輪が必要であると感じてきました.
 米国では,呼吸器内科を中心にクリティカル・ケアが発展したのに対して,日本の集中治療は,麻酔科学をベースにして輝かしい発展を遂げてきました.これは,侵襲の高い大手術後の管理を行うという点で素晴らしいことと考えます.もちろん,現在もこのような患者さんも多数いるのですが,重症内科疾患で集中治療が必要な患者さんの増加が著しく,内科の重症疾患の管理(診断と治療を系統的なアプローチで並行すること)は,総合内科医が担うべき重要な分野であると考えます.このようなことを学びたいと考えている若手内科医が多い一方で,日本において,内科学をベースに集中治療のトレーニングを受ける機会は,きわめて少ないのが現状です.

特集の理解を深めるための25題

ページ範囲:P.1672 - P.1676

座談会

重症内科症例に対応できるためには

著者: 則末泰博 ,   北野夕佳 ,   岩田充永 ,   神宮司成弘

ページ範囲:P.1516 - P.1522

重症例の患者さんに対しては循環・呼吸の維持は当然として,代謝・栄養のサポート,全身管理,感染管理が必要となります.一方で,もともと何らかの重篤な病態があってICUに入室しているため,病態に対する診断も欠かせません.こういった点を踏まえると,内科医は重症の患者さんの治療にもっと参画していかなければならないと感じます.(岩田)

内科クリティカル・ケア実践編─このパターンを押さえれば8割は対応可能

てんかん重積状態の対応

著者: 安藤宏明 ,   丹羽淳一 ,   道勇学

ページ範囲:P.1523 - P.1526

Point
◎てんかん重積状態は緊急事態であり,救急処置,病歴聴取,一般身体診察,神経診察,検査,治療のすべてを並行して,ポイントを絞って効率的に行う.
◎てんかん重積状態の持続は重篤な臓器障害に繋がるため,発作のコントロールが不十分と判断したら全身麻酔を躊躇しない.
◎てんかん発作後のもうろう状態の不自然な遷延や原因不明の意識障害や臓器機能障害では,非痙攣性てんかん重積状態(NCSE)を鑑別に挙げる.

脳炎の対応

著者: 安藤孝志 ,   勝野雅央

ページ範囲:P.1528 - P.1534

Point
◎急性もしくは亜急性に中枢神経障害(大脳,大脳辺縁系,脳幹,小脳)をきたした症例では,脳炎を鑑別診断に含める.
◎頻度が高いとされる5つの脳炎の典型像を理解する.
◎主に自己免疫性脳炎は検査で異常が検出されにくい場合があり,診断においては,病歴・診察所見も含めた総合的な判断が必要である.
◎脳炎が疑われた症例では,頻度・重症度ともに高い単純ヘルペス脳炎を念頭に,アシクロビルをまず開始する.
◎自己免疫性脳炎を疑った時点,もしくは感染性脳炎の可能性が低くなった時点で免疫抑制療法を検討する.

特異的治療のある急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の原因

著者: 黒田浩一

ページ範囲:P.1536 - P.1540

Point
◎病歴,身体所見,画像所見,微生物学的検査で,多くの急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の原因は判明する.
◎ARDSの原因疾患がはっきりしない場合,または通常のARDSより緩徐に発症する場合は,特異的な治療のあるARDS mimicsの可能性を考慮する.
◎気管支肺胞洗浄(BAL)は比較的安全に施行可能なため,ARDS mimicsを鑑別する場合,またはニューモシスチス肺炎などの免疫不全者の呼吸器感染症を疑う場合などに積極的に施行し,外観の評価,細胞分画分析,微生物学的検査,細胞診を行う.
◎BALのみで確定診断に至ることは少ないが,臨床経過,胸部画像,微生物学的検査を踏まえて解釈する場合に,診断と治療方針の決定において有用な検査となる.

重篤な気管支喘息重積発作とCOPD急性増悪の対応

著者: 谷直樹

ページ範囲:P.1542 - P.1545

Point
◎喘鳴・呼吸困難を訴える患者では,喘息発作,COPD増悪,心不全,肺塞栓,上気道狭窄などを考える.
◎喘息発作,COPD増悪の呼吸器管理では,「吸気時間を短くして十分な呼気時間を作る」ことがポイントである.
◎非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)管理中に鎮静を要する場合には,デクスメデトミジンの使用を考慮する.

心原性ショックの対応

著者: 若林禎正

ページ範囲:P.1546 - P.1550

Point
◎心原性ショックの典型的な臨床像を知ることが重要である.
◎診断アプローチと同時にバイタルサインの安定化と緊急手術の検討を行う.
◎PreSepカテーテル®,FloTracセンサー®,Swan-Ganzカテーテル®などの循環動態モニタリングを使用して治療し,低灌流を改善する.
◎ショックが薬物療法で改善せず,低灌流が進行する場合には補助循環を導入する.

重篤病態に合併した急性冠症候群(ACS)の管理

著者: 松尾裕一郎 ,   平岡栄治

ページ範囲:P.1552 - P.1555

Point
◎重篤病態に合併した急性冠症候群(ACS)は,類似疾患が多く診断が難しい.救命には血行再建が必要な冠動脈疾患がないか,常に鑑別に挙げる.
◎重篤病態でACSの治療を行うに当たっては,抗血栓薬に伴う出血リスク,ステント血栓症リスクを常に念頭に置く必要がある.

急性腎障害(AKI)の対応

著者: 田川美穂

ページ範囲:P.1556 - P.1559

Point
◎急性腎障害(AKI)をみたら,病歴・身体所見,尿定性・尿沈渣(目視),腎エコーをチェックする.
◎AKIでは過剰輸液は避け,予防や尿量確保目的の利尿薬投与は行わない.
◎AKIの栄養管理では,エネルギー摂取については20〜30kcal/kg/日が推奨され,透析を避けるための蛋白制限は推奨されない.

緊急性の高い内分泌疾患の早期診断

著者: 竹内元規

ページ範囲:P.1560 - P.1564

Point
◎副腎不全,甲状腺クリーゼは内分泌系の緊急疾患であり,早期診断・早期治療が重要である.
◎これらは見逃しやすい疾患であるため,常に鑑別に挙げておくことが必要.
◎CIRCI(critical illness-related corticosteroid insufficiency)は,重症患者に生じるステロイド活性低下状態を示す,比較的新しい概念である.
◎甲状腺クリーゼの診断には,交感神経亢進症状と多臓器不全がポイントとなる.

高血糖緊急症のマネジメント

著者: 上田剛士

ページ範囲:P.1566 - P.1569

Point
◎補液は生理食塩水もしくはリンゲル液で循環不全を改善するように十分量投与するが,補液過多に注意する.
◎血糖は50〜70mg/dL/時で低下することが多いが,有効血清浸透圧の変化は最小限にとどめる.
◎血糖が200〜300mg/dLとなれば糖を補充しインスリン量を減ずる.
◎Kの補正は重要だが,アシドーシスと低P血症の補正の必要性には議論がある.

重篤な低ナトリウム血症のマネジメント

著者: 植西憲達

ページ範囲:P.1570 - P.1574

Point
◎複雑な症例では,診断フローチャート(図1)で診断にたどり着かないことが多いため,病態生理を考慮した病歴や身体所見が重要となる.
◎重篤な(=脳浮腫を示す)症状がある場合は,Na 5 mmol/Lの上昇を目標に3%食塩水で急速に補正を行う.
◎48時間以上低Na血症がある(またはあると考えられる)場合は,浸透圧性脱髄症候群(ODS)予防のため補正速度を緩徐に行う.

重篤なカリウム異常の対応

著者: 丹羽俊輔

ページ範囲:P.1576 - P.1581

Point
◎K異常は一般的によく目にする電解質異常であるが,重篤な場合は致死的となるために,緊急の対応が必要となる場面がある.
◎K排泄は主に腎臓で行われており,腎排泄が亢進することによる低K血症,腎排泄が低下することによる高K血症の鑑別が多岐にわたる.
◎低K血症に対して,Mg欠乏に気づかずにK製剤を補充していると治療失敗に陥ることがあるため,低K血症をみたらMgの評価を忘れずに行う.
◎高K血症に対してのglucose-insulin(GI)療法は低血糖のリスクがあるため,十分な糖を補充し,適宜血糖値を評価する.

消化管出血による出血性ショックのマネジメント

著者: 北野夕佳

ページ範囲:P.1582 - P.1588

Point
◎消化管出血の鑑別疾患を「型」として列挙できる.
◎消化管出血マネジメントを「型」としてアウトプットできる.
◎消化管出血以外の出血部位の「型」を列挙できる.
◎ショックの4分類の「型」を速やかに列挙・アセスメントできる.
◎輸血の「型」を頭に入れたうえで消化管出血に対する輸血を決定できる.
◎緊急止血術の選択肢の「型」をアウトプットできる.

重症病態に合併する血小板減少のアプローチ

著者: 高岸勝繁

ページ範囲:P.1590 - P.1595

Point
◎ICUにおける血小板減少では,敗血症や一過性侵襲による播種性血管内凝固症候群(DIC)として典型的かどうかに注目する.
◎典型的ではない場合は,治療が必要な病態を意識してチェックする.

重症病態に合併する腸管虚血の早期発見

著者: 三反田拓志 ,   則末泰博

ページ範囲:P.1596 - P.1600

Point
◎低心拍出または腸管を栄養する動脈の狭小化により,「すでに腸管への酸素供給量が必要最低限であった」患者が重症化したときに,非閉塞性の腸管虚血が起こる.
◎リスクは透析患者,心臓血管外科術後,不整脈,慢性心不全,血管作動薬使用,ジギタリス内服などである.
◎リスクがある患者で,原因の説明できない乳酸値上昇や代謝性アシドーシスが生じた場合は腸管虚血を疑う.

敗血症性ショックのマネジメント

著者: 小松孝行

ページ範囲:P.1602 - P.1605

Point
◎初期蘇生と同時に血液培養を2セット採取する.
◎広域抗菌薬の投与は容認されるが,決して感染巣の検索を怠らない.
◎外科的介入のタイミングを逸しない.
◎de-escalationを常に考慮する.
◎最初の1時間から目標を達成すべく,全身管理と感染症治療を行う.

深在性真菌感染の考え方

著者: 雨宮哲郎

ページ範囲:P.1606 - P.1609

Point
◎ICUにおける深在性真菌症は,カンジダ血流感染症と侵襲性肺アスペルギルス症が多い.
◎ガンジダ血流感染症,侵襲性肺アスペルギルス症は特有のリスク因子をもつ患者に生じる.
◎深在性真菌感染症の診断は血清学的検査に依存せず,可能な限り微生物学的に証明する.

壊死性筋膜炎の早期診断

著者: 伊藤亮太

ページ範囲:P.1610 - P.1613

Point
◎蜂窩織炎との鑑別は困難だが,「激痛」「急速進行性」「皮膚所見を越える部位の疼痛」などは早期診断の手掛かりとなる.
◎壊死性筋膜炎を疑ったら,早期に外科にコンサルトし,皮膚切開による確定診断を行うことが重要である.
◎治療の原則は,早期のデブリードマンと抗菌薬治療である.

内科医が診る急性薬物中毒

著者: 都築誠一郎

ページ範囲:P.1614 - P.1616

Point
◎原因不明の意識障害,呼吸不全,ショック,肝・腎機能障害,アシドーシスを呈している場合には薬物中毒も考慮する.
◎薬物中毒を疑った場合,トキシドロームを同定し原因物質の推測をする.
◎薬物中毒に対する基本的な対応や特異的治療薬を知っておく.

内科クリティカル・ケア 知っておくべき知識・技術をまとめる─重症にはこれを武器に立ち向かう

重症管理のカルテ記載

著者: 金光陽子 ,   藤谷茂樹

ページ範囲:P.1618 - P.1622

Point
◎誰が見ても直ちに概要を理解できるように記載する→short summary+problem list.
◎重要なプロブレムの見落としを防ぐために記載する→by system.

適切な鎮痛・鎮静

著者: 窪田佳史 ,   讃井將満

ページ範囲:P.1623 - P.1626

Point
◎痛みと不穏の評価を適切なスケールを用いて行う.
◎まず十分な鎮痛を行い,鎮静の必要があれば浅い鎮静,または1日1回の鎮静中断を行う.
◎鎮痛・鎮静を行う際には,十分なモニタリングと気道,呼吸,循環の悪化に対応できる準備をしておく.

モニタリング

著者: 辻坂勇太 ,   北井豪

ページ範囲:P.1628 - P.1631

Point
◎輸液反応性の指標としての中心静脈圧(CVP)は信頼性が低く,動的指標を用いるべきである.
◎至適な左室前負荷を得るためには,背景疾患を考慮した左室拡張終末期圧(LVEDP)の目標設定が必要である.
◎Swan-Ganzカテーテル®の適応は慎重に検討する必要があるが,依然として血行動態の把握において有用である.
◎近年ではより非侵襲的なモニタリングツールが開発されており,その使用頻度が高まっている.

輸液・血液製剤・輸血の管理と合併症対応

著者: 塩田修玄 ,   重光秀信

ページ範囲:P.1632 - P.1636

Point
◎重症患者の輸液管理は,体液動態の4つのフェーズを踏まえ慎重に行う.
◎輸液反応性を指標とした適切な輸液量を判断する.
◎クリティカル・ケアで用いられる輸液は,リンゲル液(バランス電解質液)が主流となってきている.
◎クリティカル・ケアでのアルブミン製剤・輸血の使用は,個々の患者の状態により限定的に使用すべきである.

急性呼吸窮迫症候群(ARDS)における人工呼吸器管理で最低限求められること

著者: 岩永航 ,   則末泰博

ページ範囲:P.1638 - P.1642

Point
◎急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の治療は,原疾患の治療と肺保護管理である.
◎肺傷害の原因は人工呼吸器関連肺傷害(VALI)や高濃度酸素,非同調などが挙げられる.
◎VALIを回避するために,至適PEEPやlow tidal ventilation管理を徹底する.
◎ARDSの人工呼吸器管理中の合併症を知っておく必要がある.

経鼻高流量酸素療法(HFNC)・非侵襲的換気(NIV)の活用と使い分け

著者: 神宮司成弘

ページ範囲:P.1644 - P.1647

Point
◎経鼻高流量酸素療法(HFNC)は,安定した吸入酸素濃度や呼吸仕事量の軽減,気道内圧上昇効果,相対湿度最適化を機序とし,QOLに優れた酸素デバイスである.
◎HFNCを活用しやすい臨床場面は,高圧PEEPを要さない急性Ⅰ型呼吸不全,術後,抜管後であり,他領域でも今後のエビデンスが期待される.
◎非侵襲的換気(NIV)は,NHFCと比較して高圧PEEPが可能で換気補助もでき,豊富なエビデンスが確立している.
◎NHFCとNIVのそれぞれに失敗予測因子があり,これらを見逃さないモニタリングが重要である.失敗が示唆されれば,早期に侵襲的人工呼吸器管理や,HFNCからNIVへの変更が求められる.

腎代替療法(RRT)の適切な導入と選択

著者: 稲熊大城

ページ範囲:P.1648 - P.1651

Point
◎腎代替療法(RRT)の開始に当たっては目的を明確にする(①尿毒素除去,②電解質バランスの是正,③水バランスの是正,④酸塩基平衡の是正).
◎治療モード選択に関しては,①間欠的か持続的か,②血液透析(HD),血液濾過透析(HDF)あるいは血液濾過(HF)か,③血流や透析量をどうするか,④アクセスはどうするか,⑤膜素材をどうするか,⑥抗凝固薬をどうするかを患者の病態ごとに検討する.
◎重症患者へのRRTは,血圧低下,出血ならびに感染症などの合併症に留意する必要がある.

重症病態の栄養管理と血糖管理

著者: 鈴木秀鷹 ,   安田英人

ページ範囲:P.1652 - P.1657

Point
◎重症病態におけるエネルギー供給は,異化から得られる「内因性エネルギー」と栄養療法から得られる「外因性エネルギー」の総和である.
◎患者の重症度に合わせた内因性エネルギー産生量を概算し,状況に応じた栄養投与量を設定する.
◎重症患者における栄養療法は早期経腸栄養を第一選択とし,重症化した後24時間以内に開始することが推奨される.
◎総栄養投与量だけでなく蛋白質投与量を確保することが重要である.
◎経腸栄養管理中には,経腸栄養不耐性,下痢,高血糖などのさまざまなトラブルが生じるが,適切に対応し,経腸栄養を中断しないように努めることが重要である.

重症管理中の合併症予防

著者: 畠山淳司 ,   武居哲洋

ページ範囲:P.1658 - P.1660

Point
◎ストレス潰瘍予防薬は適応およびリスクと利益を吟味し,薬剤を使い分ける.
◎深部静脈血栓症(DVT)予防は血栓と出血のリスクを併せて評価する.
◎人工呼吸器関連肺炎(VAP)予防は5つのバンドルを遵守する.
◎不必要な血管内カテーテルや尿道カテーテルは速やかに抜去する.

PICS(post intensive care syndrome)予防の実践

著者: 鈴木秀鷹 ,   安田英人

ページ範囲:P.1662 - P.1667

Point
◎Post intensive care syndrome(PICS)は,運動機能,認知機能,精神に障害が起こり,数カ月〜数年単位で持続する.
◎精神障害は患者家族にも生じる(PICS-F).
◎予防には“ABCDEFGHアプローチ”を用いる.
◎PICSを予防するためには多職種による関わりが必須である.

重症病態の常用薬管理

著者: 藤井健一郎

ページ範囲:P.1668 - P.1670

Point
◎重症病態では,昇圧薬使用や人工呼吸管理のため投与や調整が難しく,内服薬を使用することは少ない.
◎常用薬の継続が必要な場合は注射薬や貼付薬で代用するため,投与方法や換算のための力価を理解する.
◎常用薬管理として特に重要な循環器系薬,免疫抑制薬(ステロイド),ベンゾジアゼピン,抗Parkinson病薬を押さえる.

連載 見て,読んで,実践! 神経ビジュアル診察・5

顎や肩を叩けばアラ不思議!! 頸髄〜脳幹の役立つ反射

著者: 難波雄亮

ページ範囲:P.1509 - P.1511

 頭後屈反射,下顎反射,肩甲上腕反射(Shimizu reflex)──いわゆる健常者では,わずかに認められます.しかし,反射が存在すると病的な意義が強いとされ,頸髄から上の錐体路病変を示唆します.また,知っておくと病変の局在診断でとても有用です.一般臨床で皆さんのお役に立つように,一緒に学んでいきましょう!
 
*本論文中、関連する動画を見ることができます(公開期間:2020年8月31日まで公開)。

母性内科の「め」 妊婦・授乳婦さんのケアと薬の使い方・6

咳がひどくてつらいです

著者: 三島就子

ページ範囲:P.1678 - P.1683

症例
 32歳のAさんは妊娠28週になりました.2週間前に鼻汁とのどの痛みがあり,37℃くらいの微熱が出ました.症状は数日で治まりましたが,その頃から咳が出るようになりました.すぐに落ち着くだろうと思って様子をみていたAさんでしたが,なかなか治まらず,昨日は夕方から咳が強くなって夜も眠れないほどでした.以前,かぜをひいた後に咳が長引き,喘息っぽくなったことがあります.Aさんは今回も喘息っぽくなってしまうのではないかと不安になり,内科を受診しました.
Aさん:「咳がひどくてつらいです」

物忘れ外来から学ぶ現場のコツ 認知症患者の診かた・4

Alzheimer病はどのように診断されますか?—2)確定診断

著者: 重松一生

ページ範囲:P.1684 - P.1687

ポイント
・Alzheimer病は病理学的に確定されます.
・バイオマーカーで病理変化を推定できるようになりました.

医師のためのビジネススキル・4

人材マネジメント—人材は人財!

著者: 橋本法修

ページ範囲:P.1688 - P.1690

事例
 人口30万人の地域で3次救急を行っているのはX病院とY病院の2つであった.今年度,Y病院は諸事情のため3次救急対応が困難となり,X病院のみで対応することになった.X病院は500病床規模の急性期病院で,昨年度まで救急車受入件数4,000台/年前後だったが,今年度は6,000台/年前後になると予測されていた.
 X病院に初期研修医から勤務しているS医師は,今年度から内科スタッフとして採用された6年目の医師である.スタッフ医師の仕事内容や役割分担は毎年5月に個人事業計画を作成し,部長面談で決定することになっていた.先輩のE医師に計画の作成について相談してみると,「一般的には目標管理制度というんだ.私たちの病院では,それぞれの科に事業計画がある.それら事業計画について,具体的に1年間どのような業務を担い,行動をとるかを考え,部長面談で話し合って計画を決めている.もう少し制度について知りたいなら,MBOとか目標管理制度という言葉を調べてみるといいよ.」と教えてくれた.
 早速,A医師はインターネットで調べ,それらが人材マネジメントの一部であることを知った.

目でみるトレーニング

問題886・887・888

著者: 岩崎靖 ,   池上幸憲 ,   金澤健司

ページ範囲:P.1692 - P.1697

書評

—大村和弘,川村哲也,武田 聡 編—専門医が教える—研修医のための診療基本手技

著者: 青木眞

ページ範囲:P.1550 - P.1550

 編者のお一人である大村和弘先生とは,当時大村先生がご所属だった総合病院国保旭中央病院にカンファレンスなどで評者が定期的に伺っていたことでお会いして以来14年の付き合いとなる.初期研修の後,NPO法人JAPAN HEARTで吉岡秀人先生と出会い,アジアを中心とした国際医療協力に一時期身をていしたことは,明るく奔放なようでいて繊細な神経を持つ彼を知るものとして好ましく,ずっと好感を抱き続けてきた.プライマリ・ケア,総合診療といった世界から一見最も距離のある,巨大な機械力に取り囲まれた大学病院という環境に身を置きながら,臨床医として誰もが身につけておきたい「一定水準の診察,基本検査,救急を含めた手技の習得」をめざした本書を生み出した大村先生ならではの歴史である.本書の,特に大村先生自身が執筆された章には,大学病院で週6日の診療を受け持ちながら,年に一度は自費でアジアの国を訪ね,国際協力活動に取り組む一人の医師としての,単なる知識や技術を越えた優しさや矜恃が溢れている.

—篠原幸人 監修 永山正雄,濱田潤一,三宅康史 編—神経救急・集中治療ハンドブック—Critical Care Neurology 第2版

著者: 阿部康二

ページ範囲:P.1564 - P.1564

 2004年度から卒後臨床研修が必修化され,幅広い基本的臨床能力を身につけることを目標として,医学部卒業生が全国の基幹病院へ臨床研修に行く時代となって,もうすぐ15年になろうとしている.この間,大学医局を中心としたこれまでの教育システムから,より開かれた研修システムが少しずつではあるが定着してきつつある.すなわち,医学部で受けた教育を実際の臨床現場での研修によって自分のものとすることで,医師としての将来的な発展のための基礎づくりが標準化されたのである.同時に初期研修修了後は,引き続き後期研修を選択する人やより専門的分野への興味を実現したい人など,個々人によってさまざまな選択が可能となり,医師生涯教育の多様化時代といえる.
 医の原点は救急現場にありとはよく知られたことであるが,それまで必ずしも十分に救急や集中治療のトレーニングを受ける機会に恵まれなかった研修医たちにとって,新しい臨床研修制度下で救急現場研修が義務化されたことは歓迎すべきことである.救急現場における神経系の疾患は最も遭遇頻度が高いものの一つであり,脳卒中をはじめ,頭痛,めまい,ふらつき,しびれ,けいれん発作,髄膜炎,脳炎,せん妄など多様な症状から鑑別すべき疾患もまた多様であり,救急患者の意識レベルの判定や,基本的診察手技,脳画像検査,血液ガス分析,腰椎穿刺,脳血管造影など枚挙にいとまがないほど多数の検討項目がある.このような,一見難しいが基本をしっかり体得すればどのような救急・集中治療現場でも意外とすんなり対応できる神経救急について,これまで座右に置く参考書が少なかったのは不思議である.

—志水太郎,忽那賢志 編—病歴と診察で診断する感染症—System1とSystem2

著者: 岡秀昭

ページ範囲:P.1609 - P.1609

◆総合診療,感染症内科の実力者が執筆
 レプトスピラ症,メリオイドーシスなど感染症医が喜びそうな診断名も散見されるが,本書は決して,感染症オタクのための本ではない.
 私は常日頃から,感染症の研修を開始するに当たり,まずは内科の研修をしっかり修了することを勧めている.というのも私自身がそうであったのであるが,単なる微生物や抗菌薬に詳しいだけでは,バイキンの先生であって,真の感染症内科医にはなれないのである.これは循環器でも,消化器でも同じではないかと思う.感染症科医なのか,それとも感染症内科医なのか.循環器科医なのかそれとも循環器内科医なのか.私は真の内科医に憧れる.

—堀 進悟 監修 佐々木淳一 編—救急レジデントマニュアル—第6版

著者: 高橋毅

ページ範囲:P.1626 - P.1626

 『救急レジデントマニュアル』が5年ぶりに改訂されたのでご紹介したい.本書は,慶大病院救急部初代教授の相川直樹先生が初版を刊行され,堀進悟教授,そして佐々木淳一教授と,3代30年に及ぶ,慶大救急医学の,経験と英知が凝縮されたマニュアルである.日本の救急医学を臨床面のみでなく,研究面においてもリードしてきた,あの慶大救急医学の歴々が総力を挙げて執筆しているからこそ,エビデンスに基づいた格調高い教科書となっている.
 本書は,ポケットサイズでありながら550ページを超す情報量がある.内容は,全10章に分かれており,まずレジデントの諸君が救急診療を行う際の心構えと基本的な診察法に始まり,次にERでよく経験する症候や疾患について,「鑑別・診断の進め方」「重症度の判定」「救急処置」などが,表やイラストを多用してわかりやすく親切に解説される.また,慶大が得意としている「外傷・熱傷」「中毒」に関しては,新たに章を立てて詳述している.さらに,マイナー診療科を含む各科救急疾患についても網羅し,救急関連の処置や検査については,使用する器具,手順,ピットフォールまで丁寧に解説している.最終章では脳死や災害医療,医療安全,感染対策などにも触れてあり,もはやその射程はマニュアルを超えた広がりを持っている.

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目次

ページ範囲:P.1512 - P.1514

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.1704 - P.1705

購読申し込み書

ページ範囲:P.1706 - P.1706

次号予告

ページ範囲:P.1707 - P.1707

奥付

ページ範囲:P.1708 - P.1708

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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増刊号 探求!マイナーエマージェンシー

60巻3号(2023年3月発行)

特集 令和の脳卒中ディベート10番勝負—脳卒中治療ガイドライン2021とその先を識る

60巻2号(2023年2月発行)

特集 慢性疾患診療のお悩みポイントまとめました—高血圧からヘルスメンテナンスまで

60巻1号(2023年1月発行)

特集 10年前の常識は非常識!?—イマドキ消化器診療にアップデート

59巻13号(2022年12月発行)

特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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