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雑誌目次

雑誌文献

medicina55巻12号

2018年11月発行

雑誌目次

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

著者: 鈴木昭広

ページ範囲:P.1895 - P.1895

 超音波装置の高性能化・小型化と普及に伴い,point of care ultrasound(POCUS)と呼ばれる「ちょいあて」エコーが急速に広まりつつある.スイッチを入れ,プローブを「あてて,見る」だけで必要な臨床情報がリアルタイムに得られ,疾患の鑑別や基本的な診療方針の決定がきわめて簡単に行えるようになってきた.例えば救急領域で外傷初期診療に用いられるFASTプロトコールは,外傷性ショックの90%を占めるとされる出血性ショックの検索において,体腔内の液体貯留をYESかNOかで判断できる優れたツールとして,本邦では十数年以上も前から用いられている.近年では外傷以外のショックも網羅するRUSH examや,呼吸困難のスクリーニングを行うBLUE protocolなど,エコーを用いた生理学的異常へのアプローチが充実し,浸透してきている.
 また,簡単な医療処置や評価にエコーを用いることも普通に行われている.エコーガイド下の中心静脈穿刺などは医療安全の面からも優れており,院内での実施資格の取得にあたり,質の担保のために必須としている病院も多い.それ以外にも,胸水・関節・動静脈の穿刺や神経ブロック,生検などもエコーガイド下で行うことが広まっている.さらに尿閉の評価や尿道カテーテル挿入時の成否判断,残尿量の計測などでも,エコーは活用されている.

「ちょいあて」で,こんなにわかる!

ページ範囲:P.1896 - P.1897

特集の理解を深めるための28題

ページ範囲:P.2097 - P.2102

座談会

さぁ,エコーを始めよう!—point of care超音波のススメ

著者: 亀田徹 ,   鈴木昭広 ,   白石吉彦

ページ範囲:P.1898 - P.1905

従来,超音波検査(以下,エコー)は各科の医師や検査技師が臓器ごとに実施し,専門的かつ詳細な発展を遂げてきた.しかし近年,簡単・迅速で臓器を問わず全身のあらゆる部位で利用するpoint of care ultrasound(POCUS)が急速に普及しつつある.POCUSはエコーの入門編あるいはダイジェスト版とも言える側面をもち,初期研修医でもすぐに実践できるものも多い.また,診断に至らなくても,病態を判断する羅針盤としての役割や,手技を視覚化して安全・確実に実施することを可能にする.今回は,一時は検査室にこもってエコー修行を積んだこともある救急医で,現在はPOCUS発展のためのフレームワーク作りに取り組まれている亀田先生と,離島診療でエコーをフル活用し,後進の指導もされている白石先生をお招きし,エコーを気軽に使って診療をもっと楽しくするコツを伝授いただいた.(鈴木)

基本事項

「ちょいあて」前に—エコーの準備と使い方

著者: 西田睦

ページ範囲:P.1906 - P.1912

Point
◎超音波装置は,診たい部位にプローブをあてるだけで体の中が見える.
◎画像のオリエンテーションは,縦走査では被検者の頭部が画面の左に,横走査では被検者の右側が画面の左になるようにする(CT断面と同様).
◎臓器・領域に応じて,最適なプローブとプリセットを選択する.
◎鮮明な画像の描出には視野深度,フォーカス,ゲイン,STC(sensitivity time gain control)を適切に調整する.
◎診断推論に基づいて「ちょいあて」エコーをすることで,迅速な診断やトリアージに活用できる.

超音波検査と感染制御

著者: 鯉渕晴美 ,   谷口信行

ページ範囲:P.1913 - P.1917

Point
◎超音波探触子(プローブ)は細菌伝播の媒介になりうる.
◎プローブは頻回のアルコール消毒により劣化が早まってしまう.
◎患者1人ひとりの検査が終了する度に,ペーパータオルでプローブの表面に付着したゲルを完全に拭き取る.
◎1日の検査終了時や多剤耐性菌の保菌者を検査した後は,アルコール含有紙あるいはそれに匹敵する消毒薬含有紙で消毒する.

超音波によるABCD生理学的アプローチ

A:気道のエコー

著者: 浅野健吾 ,   鈴木昭広

ページ範囲:P.1920 - P.1924

Point
◎喉を切る前に気道エコー,切る時もやっぱり気道エコー!
◎挿管確認はカプノグラフィーがなければ気道エコー,聴診よりも気道エコー!
◎耳鼻科のファイバーが来る前に気道エコー,声帯が見えれば上級者!

B:肺エコー(気胸)

著者: 谷口隼人

ページ範囲:P.1925 - P.1931

Point
◎肺エコーでは,胸膜から得られる所見が重要である.
◎肋骨と胸膜を描出する「bat sign」が,肺エコーの基本ビューである.
◎肺エコーでは,気胸,肺水腫,肺炎,慢性閉塞性肺疾患(COPD)/喘息などを鑑別できる.
◎肺エコーによる気胸の検索では,まずlung slidingの有無を確認する.
◎lung pointが描出できれば,気胸の診断が確定する.

B:肺エコー(sonographic interstitial syndrome)

著者: 山田直人

ページ範囲:P.1932 - P.1936

Point
◎胸膜から画面の最深部まで伸びるB-lineの評価が,肺炎や肺水腫の診断に役立つ.
◎画面上でB-lineを1肋間に3本以上認めるmultiple B-linesは病的な所見である.
◎diffused multiple B-linesは,広範にわたる肺病変の存在を示唆する.
◎multiple B-linesを呈する疾患群をsonographic interstitial syndromeと呼び,肺炎や肺水腫,急性呼吸窮迫症候群(ARDS)が含まれる.
◎心原性肺水腫とARDSの鑑別は,B-line以外の画像所見もチェックしなければならない.

B:肺エコー(胸水,横隔膜)

著者: 下薗崇宏

ページ範囲:P.1937 - P.1942

Point
◎胸水の検出には超音波検査(以下,エコー)が胸部X線写真より断然優れており,CTと同程度に正確である!
◎胸水のスクリーニングは,セクター型または(マイクロ)コンベックス型のプローブを,中腋窩線より背側の第4〜8肋間にあてて行う.
◎エコーでは胸水の量や性状についての情報も得られるため,穿刺や鑑別のガイドとしても有用である.
◎胸水や横膈膜を描出する際には,肝臓や脾臓などの横隔膜下臓器を同定するのがコツである!
◎横膈膜は高輝度な胸膜と腹膜で両面を裏打ちされているため,プローブから近い位置では三層構造として,遠い位置では高輝度な太い線として描出される.

C:お手軽心エコー FATE

著者: 吉田拓生

ページ範囲:P.1944 - P.1948

Point
◎近年,的を絞って緊急病態を評価する心エコーの診断手法が注目されている.
◎心窩部四腔像,傍胸骨左縁長軸像,傍胸骨左縁短軸像,心尖部四腔像が基本のビューであり,これらに下大静脈の描出も加えて,ショックの鑑別を進めていく.
◎下大静脈の所見に心囊液貯留,左室過収縮あるいは低収縮,右心負荷といった所見を組み合わせて診断する.

D:transcranial color flow imaging(TC-CFI)

著者: 藤本佳久

ページ範囲:P.1949 - P.1954

Point
◎point of care ultrasonography(POCUS)の1つであるtranscranial color flow imaging(TC-CFI)は臨床医が習得すべきエコー技術である.
◎TC-CFIは心エコーと同じ機器とプローブで計測できる.
◎TC-CFIはミッドラインシフト,くも膜下出血後の脳血管攣縮,頭蓋内圧亢進,神経学的予後判定において特に有用である.
◎TC-CFIと他の所見(神経所見を含む)を合わせて総合的に評価する.

蘇生におけるエコー活用:CASA

著者: 舩冨裕之 ,   佐藤仁思

ページ範囲:P.1956 - P.1961

Point
◎蘇生エコーの4原則4課題を理解する.
◎CASAでは,①心タンポナーデ,②右心負荷,③cardiac activityの順に評価する.
◎心肺蘇生法の中断時間が延長しないよう,10秒以内での施行を遵守する.

「ちょいあて」エコーでショックを診断!—RUSHエコーで素早くショックの原因を見極める!

著者: 瀬良誠

ページ範囲:P.1963 - P.1969

Point
◎疑う者は救われる! 収縮期血圧<90mmHg(高齢者では<100mmHg)ではショックを疑おう.
◎ショックと判断したら直ちに治療(輸液)を開始!
◎閉塞性ショックを見逃さない!
◎ショックのエコー診断プロトコールであるRUSHを理解する.

頸部エコー

頸部のスクリーニング

著者: 古川まどか

ページ範囲:P.1970 - P.1977

Point
◎表在用の高周波数(中心周波数10MHz前後)で視野幅40mm前後のリニアプローブを選び,ゼリーを介して直接皮膚にあて,適度な圧で観察する.
◎「ちょいあて」の場合も,血管や筋膜の連続性を追いかけるように,プローブを軽くあててゆっくり動かしながらダイナミックに観察する.
◎頸部の解剖を意識し,耳下腺,顎下腺,甲状腺,リンパ節,その他の異常を総合的に診断する.
◎被験者の体位は,座位では観察できる範囲が限られるため,仰臥位が適している.
◎「ちょいあて」にカラードプラによる血流診断を加えると,疾患の鑑別や病勢の診断に役立つ.

皮膚体表エコー

皮膚科エコー(しこりなど)

著者: 清島真理子 ,   渡邉恒夫

ページ範囲:P.1978 - P.1983

Point
◎皮膚腫瘤の鑑別でエコーを用いたpoint of care ultrasound(POCUS)が注目され,ベッドサイドで利用されている.
◎エコー検査では,指や手で支えてプローブを安定させ,たっぷりエコー用ゼリーを塗って観察する.
◎エコー画像は①腫瘤径,②形状(整,不整),③境界(明瞭平滑,明瞭粗雑,不明瞭),④内部エコー,⑤音響効果(後方エコー,外側陰影),⑥血流で評価する.
◎病変部を評価するには,まず正常皮膚のエコー所見を熟知することが大切である.

褥瘡(DTI)エコー

著者: 藪中幸一 ,   真田弘美

ページ範囲:P.1984 - P.1988

Point
◎体表のエコーでは表皮・真皮層,皮下脂肪層,筋肉層といった層構造を意識する.
◎深部組織損傷(DTI)は深部組織から重症化していくので,初期には視認できず,エコーによる評価が重要である.
◎皮下脂肪層内に低エコー域と高エコー域の混在(cloud-like像)を認めた場合,DTIが強く疑われる.

腹部エコー

FASTプロトコール

著者: 金井克樹 ,   石田亮介

ページ範囲:P.1989 - P.1994

Point
◎外傷による活動性の出血の見落としは致死的となりうる.
◎FASTでは心囊,Morrison窩,胸腔,脾周囲,膀胱周囲の出血を評価する.
◎FASTは外傷診療の流れを妨げず,低侵襲で,繰り返し行うことができる.
◎FASTでは高位後腹膜の出血は検出しにくい.

肝胆膵の見かた

著者: 小川眞広

ページ範囲:P.1995 - P.2002

Point
◎POCUSにおける肝・胆・膵の描出のポイントを解説した.
◎系統学的な走査法を知り,その一部をPOCUSで観察していることを理解する.
◎早急に治療介入が必要な救急疾患を見落とさないことが重要である.

消化管の見かた

著者: 畠二郎 ,   今村祐志 ,   眞部紀明

ページ範囲:P.2004 - P.2010

Point
◎胃は多くの場合,エコーによる心窩部の縦走査で,肝左葉下面に接する管腔臓器として描出される.
◎上行結腸と下行結腸は腹腔内で最も外側かつ背側に位置する管腔臓器である.
◎消化管の異常所見として,壁の肥厚や内腔の拡張に注目する.
◎虫垂炎は腫大した虫垂が見えれば疑ってよいが,見えない場合でも否定はしない.

泌尿器の救急エコー

著者: 千葉裕

ページ範囲:P.2011 - P.2018

Point
◎泌尿器疾患の画像診断において,エコーは有益な検査法の1つである.
◎尿路結石による側腹部痛,急性尿閉による下腹部痛,精巣捻転に代表される急性陰囊症,小児〜高齢者まで突然発症する血尿など,救急現場で遭遇する泌尿器疾患は多岐にわたる.
◎特に在宅で遭遇するさまざまな合併症を有する高齢者,X線検査が困難な小児やできるだけ被曝を避けたい妊婦などの救急現場では,検査する部位や目的を絞ってベッドサイドで迅速に施行できるpoint of care ultrasound(POCUS)が,今後ますます普及すると考えられる.

「ちょいあて」エコー 産婦人科救急編

著者: 柴田綾子

ページ範囲:P.2019 - P.2023

Point
◎膀胱に尿を貯めてもらうと経腹エコーが見やすくなる.
◎妊娠6週以降は経腹エコーで妊娠の確認ができる.
◎女性の腹痛ではFASTで腹腔内出血を確認する.
◎腫れた卵巣は経腹エコーでも確認できる.

小児の腹痛

著者: 野中航仁 ,   市橋光

ページ範囲:P.2024 - P.2029

Point
◎事前の診察にて疑われる疾患や対象臓器を明確にし,焦点を絞って検査を開始する.
◎正常虫垂を描出できない症例では虫垂炎を否定できない.
◎腸重積症では,短軸像(target sign)と長軸像(pseudokidney sign)の両方を確認する.
◎感染性腸炎や便秘症など緊急を要しない疾患においても,超音波検査を取り入れることで疾患の絞り込みが可能になる.

血管エコー

頸動脈エコー

著者: 渡邊至

ページ範囲:P.2030 - P.2034

Point
◎頸動脈エコーは低侵襲かつ簡便で,感度・特異度にも優れたモダリティである.
◎脳血管障害を疑う症例では,頸動脈狭窄の有無を診断することは非常に重要である.
◎頸動脈エコーは動脈硬化症の早期スクリーニングにも使える.

下肢静脈血栓の簡易スクリーニング—2点圧迫法

著者: 児玉貴光 ,   太田智行

ページ範囲:P.2036 - P.2040

Point
◎肺血栓塞栓症の原因として,下肢の深部静脈血栓症(DVT)がその大部分を占める.
◎下肢DVTの検索には超音波が非常に有用である.
◎2点圧迫法による下肢DVTの検索は簡便かつ容易であるため,内科医の習得が望まれる.

下大静脈評価の最前線

著者: 伊藤亜紗実 ,   川本英嗣 ,   今井寛

ページ範囲:P.2041 - P.2046

Point
◎下大静脈(IVC)の評価は循環血液量(fluid status),輸液反応性(fluid responsiveness)に分けて考える.
◎fluid responsivenessの評価には,静的指標だけでなく,動的指標も併用する.
◎IVCの評価として,IVC径,collapsibility index(cIVC),distensibility index(dIVC)を計測する.
◎IVCの測定に影響を与えるさまざまな要因に注意する(陽圧換気か自発呼吸か,体勢,胸腔内圧,右心不全の有無など).

腹部の動脈

著者: 松本敬

ページ範囲:P.2047 - P.2051

Point
◎腹部大動脈瘤の超音波検査の感度はほぼ100%!
◎ただし,正確な評価には「全領域がくまなく観察できていること」が条件となる.
◎腹痛の鑑別に際しては,腹部大動脈の観察を怠らない.

運動器エコー

肋骨・胸骨骨折

著者: 小淵岳恒

ページ範囲:P.2053 - P.2056

Point
◎肋骨・胸骨骨折は打撲にて生じることが多いが,高齢者では軽微な衝撃(くしゃみなど)でも生じるため,内科外来を「胸痛」で受診することもある.
◎肋骨・胸骨骨折の診断においてCT検査は最も有効であるが,基本的には臨床診断になることが多く,X線検査では見逃しも多い.
◎内科医であっても肋骨・胸骨の痛いところに「ちょいあて」エコーをするだけで,その場で骨折の診断が可能である.

腰痛

著者: 並木宏文

ページ範囲:P.2058 - P.2065

Point
◎腰痛による健康問題は多く,内科医にも適切な保存療法を行うことが求められている.
◎腰痛患者でも問診・身体診察の延長として,まずはエコーをあてる.
◎腰痛患者にエコーをあてることで,明日からの腰痛診療が変わる.

肩こり・肩痛

著者: 多田明良 ,   白石吉彦

ページ範囲:P.2067 - P.2073

Point
◎肩こりや肩の痛みには,まずエコーをあててみる.
◎「五十肩」は上腕二頭筋長頭腱,棘上筋腱・棘下筋腱,「肩こり」は肩甲挙筋の描出から始めるとよい.
◎患側を見る前に健側を確認して比較する.

超音波ガイド下インターベンション

ここまでできる 超音波ガイド下中心静脈穿刺

著者: 丹保亜希仁

ページ範囲:P.2074 - P.2081

Point
◎超音波ガイド下中心静脈穿刺では,プレスキャン,静脈穿刺,ガイドワイヤー走行確認,ポストスキャンに超音波診断装置を使用する.
◎超音波ガイド下穿刺法には交差法と平行法があり,それぞれに長所と短所がある.
◎交差法では『一点』しか描出できないので,先端を描出するテクニックが必要となる.
◎平行法ではエコービーム面に穿刺針を乗せることができれば『線』として描出できる.
◎超音波ガイド下穿刺は,正しい知識と技術がなければ,合併症を生み出す『諸刃の剣』である.

超音波ガイド下血管確保

著者: 五十嵐浩太郎

ページ範囲:P.2082 - P.2089

Point
◎末梢血管の穿刺において血管が目視・触知できない場合,これまでは経験や勘に基づいて盲目的に針を進めていたが,エコーを用いた「交差法」が有用である.
◎エコーを用いたからといって,一発で目的の血管を穿刺できるわけではない.エコー画面で白点(針)を目標である黒丸(血管内)に向けて,出→消→出→消……と微調整しながら進めていく(針点滅法).
◎交差法の注意点として,白点は針先ではなく,“針の途中”である.針先は上記のように点滅させることで確認する.

エコーガイド下hydroreleaseの基本コンセプトと実際

著者: 白石吉彦

ページ範囲:P.2090 - P.2096

Point
◎肩こり,腰痛,五十肩といった運動器の痛みには,筋膜を含むfasciaの異常で起こるものがある.
◎fasciaとは筋膜,胸腹膜,靱帯,関節包,脂肪体,神経上膜,血管周囲の結合組織など,人体に張り巡らされた線維性結合組織の総称であり,侵害受容器が密に分布している.
◎異常なfascia(例:侵害受容器過敏)は,局所および中枢の疼痛閾値の低下,および局所の組織間滑走性・組織伸張性の低下による可動域制限の原因となる.
◎異常なfasciaによる症状は,局所麻酔薬を使わない局所注射であるhydroreleaseにより即時的に軽減される.
◎エコー下で注射を行うことで,安全かつ確実に治療部位へ針を進めることができる.

連載 見て,読んで,実践! 神経ビジュアル診察・7

幼い頃はあった反射 原始反射の有用性

著者: 難波雄亮

ページ範囲:P.1889 - P.1891

 原始反射は,乳幼児期に存在していた反射です.中枢神経が成長にするにつれて前頭葉からの抑制が働き,原始反射は徐々に抑制されていきます.原始反射は成人でも存在している可能性がありますが,陽性では前頭葉に何らかの障害(認知症,脳血管性障害,外傷など)の存在を示唆することもあります.頭部画像を撮影できなくても,前頭葉の抑制系の何らかの障害を簡単に検査できる手技です.ぜひ,この機会に練習してみましょう.
 
*本論文中、関連する動画を見ることができます(公開期間:2020年10月31日まで公開)。

ストレスと病気のやさしい内科学 診療の幅が広がる心療内科の小ワザ集・1【新連載】

心療内科の考え方—ストレス関連身体疾患をみるということ

著者: 大武陽一

ページ範囲:P.2103 - P.2105

 今回から,「ストレスと病気のやさしい内科学─診療の幅が広がる心療内科の小ワザ集」として連載を始めます.「なぜ今,心療内科を?」と疑問に思われた方も少なくないと思います.その理由は非常に多くありますが,大きくは以下の2点に集約されます.
・心療内科の診療スキルを学ぶことで,内科診療の幅が広がる.
・ストレスが多い現代において,ストレス対処法を習得しておくことは,患者さんのみならず,自身の心身の健康にも役立つ.

医師のためのビジネススキル・6

アカウンティング─管理会計—部門管理に会計知識を使ってみよう!

著者: 柏木秀行

ページ範囲:P.2106 - P.2109

事例
 内科医として総合病院に勤務しているK医師.卒後10年を超え,診療科の運営についても役割を担う.ちょっと頼りない部長が上司だが,その分,マネジメントも任せてもらえるのでやりがいを感じている.ある日,部長から呼び出され,「K先生,この前の院長面談でうちの科の売上が下がっていると指摘されたんだよね.いや,そんなに厳しく言われたわけではないけどさ.私は診療で忙しいし,お金のことは苦手だから,ちょっと何に取り組めばよいか考えてもらえないかな?」と相談を受けた.K医師は「やれやれ,俺だってお金のことは知らないよ.医学部で習わないし.でも,売上が下がったってことは,これから若手を採用するのも難しくなるのか? じゃあ,俺が必死に勧誘している若手も増えないじゃないか.これは部長任せにするよりも,しっかり取り組まないと……」と葛藤の末,診療科の売上を管理するという難題に取り組み始めた.

目でみるトレーニング

問題892・893・894

著者: 金澤健司 ,   池上幸憲 ,   岩崎靖

ページ範囲:P.2110 - P.2115

物忘れ外来から学ぶ現場のコツ 認知症患者の診かた・6

Lewy小体型認知症はどのように治療・対応すればよいでしょうか?

著者: 重松一生

ページ範囲:P.2117 - P.2121

ポイント
幻視が特徴的ですが,自発的に訴えるとは限らないため問診が大切です.誘因の除去,生活環境の整備に努めます.

心電図から身体所見を推測する・9

心電図から投薬内容を推測する(抗不整脈薬,利尿薬など)

著者: 栗田康生

ページ範囲:P.2122 - P.2125

 本連載第8回までは心電図から身体所見や胸部X線所見を推測してきたが,今回は心電図から投薬内容を探っていきたい.これにより薬剤の有効性や影響を判断することにつながる可能性がある.

書評

—宮本雄策 編著,大橋博樹 企画・編集協力—小児科医宮本先生、ちょっと教えてください!—教科書には載っていない、小児外来のコツ・保護者への伝え方

著者: 生坂政臣

ページ範囲:P.1919 - P.1919

 奇をてらったようなタイトルだが,“ちょっと尋ねてみたい”小児診療での疑問がユーモアに富んだ対話のなかで瞬く間に氷解する,表題通りのプライマリ・ケア医向け読本である.まず登場人物の構成が素晴らしい.大病院の小児科専門医に加えて,診療所の指導医クラスと若手の家庭医療専門医という,プライマリ・ケア医向けのスモールカンファレンスとして理想的な布陣となっている.ちなみにそれぞれ実在するモデルがおり,また執筆には若手からベテランの家庭医の先生も協力しているらしい.これらの登場人物が互いの特性を活かしつつ織りなすハーモニーが大変心地よく,そのせいなのか各章を読み終えた直後から,関連する問題で困っている子供を診たくなるのが不思議である.サブスペシャリスト監修にありがちな,プライマリ・ケア医がここまで知る必要あるの?などのマイナス感情が一切湧き上がらず,海馬に新しい知見がすーっとしみ込んでいくのだ.筆者のプライマリ・ケアに対する考え方が最終章に特別編として記してあり,なるほどと合点がいった.彼はプライマリ・ケア診療の特性を深く理解しており,それ故にテーマ毎のエッセンシャルミニマム伝授に成功しているのである.
 百聞は一見にしかず.とりあえず書店で手に取って,目次から気になる章を開いて欲しい.最初のページに目を通して,続きが読みたくなったら“買い”である.寝転んで読める学習書を目指したとあとがきに書いてあるが,筆者の文才の為せる技なのか,私は第1章から(不覚にも)通読してしまった.日常診療で誰もが遭遇するリアルな問題の現実的な解決策を,楽しみながら修得できる見事な一冊に仕上がっている.

—聖路加国際病院内科チーフレジデント 編—内科レジデントの鉄則—第3版

著者: 山中克郎

ページ範囲:P.1961 - P.1961

 私にとって聖路加国際病院は憧れの病院である.駆け出しの内科医であった頃,聖路加国際病院『内科レジデントマニュアル』を購入し必死になって勉強した.日本最高レベルの愛の心に満ちた医療が行われているという印象をずっと抱いている.
 聖路加国際病院内科チーフレジデントの皆さんが,実践力のあるレジデントを育てるために編集した『内科レジデントの鉄則』は2006年に初版が出版された.6年ぶりとなる今回の改訂では,アドバンスドな内容や根拠となる参考文献をより充実させたという.

—堀 進悟 監修 佐々木淳一 編—救急レジデントマニュアル—第6版

著者: 松嶋麻子

ページ範囲:P.2046 - P.2046

 約5年ぶりに改訂された『救急レジデントマニュアル 第6版』は第5版より約60ページも多い578ページに救急診療で必要な知識がコンパクトにまとめられています.救急診療に必要な知識は日々増大しており,これを白衣のポケットに入るサイズに収めることは大変なご苦労がおありだったと思いますが,救急の現場を知り,そこに必要なマニュアルとしてまとめてくださった監修の堀進悟先生,編集の佐々木淳一先生の熱意にあらためて感謝いたします.
 『救急レジデントマニュアル』は初版より,救急外来診療中に白衣のポケットから取り出して診療を「確認する」ことを目的に作成されています.レジデントから救急科の専門医まで,救急診療を知っている,理解している医師がすぐに見直せるマニュアルとしてどこの救急外来にも必ず1冊は置いてあることでしょう.第6版では,掲載される内容が多くなった分,各項,特に各論の部分についてはさらにコンパクトにエッセンスに絞った記載が行われています.このため,救急診療を学び始めた初期研修医にとっては「なぜ」「どうして」という記載がないため,この本のみを頼りに救急診療を行うことは危険です.初期研修医の方々には成書や自分にとってわかりやすい本で救急患者の「なぜ」「どうして」に目を向け,考えるトレーニングを積んだ上で救急診療に向き合っていただきたいと思います.

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目次

ページ範囲:P.1892 - P.1894

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.2132 - P.2133

購読申し込み書

ページ範囲:P.2134 - P.2134

次号予告

ページ範囲:P.2135 - P.2135

奥付

ページ範囲:P.2136 - P.2136

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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60巻2号(2023年2月発行)

特集 慢性疾患診療のお悩みポイントまとめました—高血圧からヘルスメンテナンスまで

60巻1号(2023年1月発行)

特集 10年前の常識は非常識!?—イマドキ消化器診療にアップデート

59巻13号(2022年12月発行)

特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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