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特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール
扉
著者: 徳田安春1
所属機関: 1群星沖縄臨床研修センター
ページ範囲:P.1307 - P.1307
文献購入ページに移動 人工知能(artificial intelligence:AI)は医師の仕事をどこまで奪うのか.医療界のシンギュラリティがもう現実となってきているなかで,21世紀における医師の役割が問われている.deep learningで鍛えられたAIアプリは画像と病理の診断で医師を超えた.AI搭載の手術ロボットは腸管吻合術において外科医よりきれいに縫い上げている.「医師の役割は,患者の話を聞いて診療情報をAIにインプットし,出てきた結果を患者に説明することになるだろう」と予言する急進派IT研究者もいる.はたして,未来の病院の外来部門では,AI搭載ロボットの前に患者が並ぶことになるのか.
私は,AI搭載ロボットにとって最も困難なスキルはフィジカルである,と思う.糖尿病網膜症の眼底スクリーニングなどの単純なスキルはAIでも代替可能である一方で,無数のパターンをとりうる個々の病歴に合わせて診察所見や手技を的確に取捨選択するフィジカル・アートは,AIには不可能に近い.フィジカル・アートは豊富な経験に基づく暗黙知であり,アルゴリズムとの親和性は低い.つまり,これからの内科医にとって最重要の課題は,フィジカル・アートを向上させることなのだ.
私は,AI搭載ロボットにとって最も困難なスキルはフィジカルである,と思う.糖尿病網膜症の眼底スクリーニングなどの単純なスキルはAIでも代替可能である一方で,無数のパターンをとりうる個々の病歴に合わせて診察所見や手技を的確に取捨選択するフィジカル・アートは,AIには不可能に近い.フィジカル・アートは豊富な経験に基づく暗黙知であり,アルゴリズムとの親和性は低い.つまり,これからの内科医にとって最重要の課題は,フィジカル・アートを向上させることなのだ.
参考文献
1)Sapira JD:Art & Science of Bedside Diagnosis, Williams & Wilkins, Baltimore, 1990
2)Constant J:Bedside Cardiology(4th ed), Little Brown, Boston, 1993
3)藤田芳郎,他:日常診療・当直で遭遇する水・電解質異常患者への対応.medicina 44:562-574,2007 http://www.igaku-shoin.co.jp/misc/medicina/zadan4403
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