icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

medicina57巻10号

2020年09月発行

雑誌目次

特集 循環器診療2020—どこまで攻めて,どこから引くか?

著者: 香坂俊

ページ範囲:P.1633 - P.1633

 循環器領域ほどカラフルな選択肢を提示する領域は珍しいのではないか.ただ,選択肢が多彩であるからといってそれらすべてを選ばなくてはならないということではない.たとえば冠動脈に対するカテーテルインターベンション(PCI)は素晴らしい技術であるが,ここ10年来エビデンスの集積によって,冠動脈に狭窄があったとしても症状が安定していれば安定狭心症に対する適応はかなり「限定的」であることがわかってきた.また投薬に関しても,ランダム化研究(RCT)の結果をそのまま鵜呑みにして,いくつもの薬剤を加算的に使用していくやり方から,近年は状況によっては薬剤を「絞る」という方向に舵が切られつつある.

座談会

これからの循環器診療戦略—各領域での進歩

著者: 木村剛 ,   後藤信哉 ,   香坂俊

ページ範囲:P.1634 - P.1641

本号では「2020年の循環器診療」という特集を組ませていただき,延べ26名以上の先生方に,虚血性心疾患・不整脈・心不全・弁膜症などの各領域の最近の進展に関して執筆をお願いしています.さらに各稿では,その進捗に関するエビデンスの提示と,そのエビデンスがどのように現場に取り入れられていくのかということを中心に構成させていただいております.本日は,循環器領域のエビデンスの提示や創出ということに造詣の深いお2人の先生方にお話を伺えればと思います.(香坂)
*新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い,本座談会はwebでの収録を行った(2020年5月22日収録).

予防医療

LDLは積極的に管理する!それを果たしてどこまで?

著者: 岡村智教

ページ範囲:P.1642 - P.1645

Point
◎動脈硬化性疾患の二次予防においては積極的なLDLコレステロールの低下が推奨されており,スタチンの効果が不十分な場合,エゼチミブさらにPCSK9阻害薬の追加も考慮される.
◎米国における一次予防ではスタチンの使用が推奨されている.
◎スタチンは有用な薬剤だがスタチン不耐の問題は常に念頭に置くべきである.

血圧も積極的に下げる!ただ結局そのカットオフはどうなった?

著者: 大澤正樹

ページ範囲:P.1646 - P.1652

Point
◎集団平均値で得られた血圧管理目標値は,患者個人の血圧管理にとってあくまで参考値である.
◎白衣高血圧や血圧変動の大きな個人には,ガイドラインの血圧管理目標値をそのまま適用することは危険である.
◎75歳未満かつ高血圧症以外の危険因子をもたない個人では,厳格な降圧治療を慎重に行う価値がある.
◎糖尿病患者,および75歳以上の高齢者では血圧値120〜139/80〜89mmHgを管理目標値とすべきである.

TGは良い治療ターゲットになるか?—REDUCE-IT試験を踏まえて

著者: 上野高史 ,   石松高 ,   山路和伯

ページ範囲:P.1654 - P.1657

Point
◎スタチン投与中の冠動脈疾患の残余リスクとして,高中性脂肪血症にも注目する必要がある.
◎エイコサペンタエン酸(EPA)には中性脂肪(TG)低減効果,心血管イベント抑制効果が報告されている.
◎REDUCE-IT試験を踏まえてEPAと今後のTG治療について言及する.

運動は体に良く,喫煙は絶対に悪い!でも実際の現場での指導法は?

著者: 野村章洋

ページ範囲:P.1658 - P.1661

Point
◎運動は軽度・短時間であっても体に良い.無理なく継続できる運動から勧める.
◎喫煙は体に悪い.1本/日でもダメ.禁煙するなら早いに越したことはない.
◎禁煙治療ではニコチン依存症治療用アプリという新しい治療法が注目されている.

循環器予防医学の未来

著者: 河面恭子 ,   渡邉至 ,   宮本恵宏

ページ範囲:P.1662 - P.1665

Point
◎現在の循環器疾患予防では,吹田スコアによる絶対リスク評価をベースに主要な危険因子(高血圧,糖尿病,脂質異常症,喫煙など)を包括的に管理することが推奨されている.
◎デジタル医療の進化やワクチンの開発などにより,未来の循環器疾患予防の戦略は劇的に変わる可能性がある.
◎総務省や厚生労働省を中心にデジタル医療の充実が検討されており,将来的には,主要な危険因子だけでなく各個人の背景要因も含め,EHR(electronic health record)・PHR(personal health record)に蓄積されているデータが人工知能により自動的に解析され,各個人に最適な治療や健康・介護サービスなどが提示されるようなシステムの構築が期待される.
◎近年,循環器疾患分野でも新規のワクチン開発が進められており,また,既存の感染症分野のワクチンの循環器疾患予防への有効性についても検討されている.臨床試験の段階に入っているものもあり,実用化が望まれる.

心不全

BNPを使った心不全診断とその功罪

著者: 川井真 ,   吉村道博

ページ範囲:P.1666 - P.1669

Point
◎心不全は各種の心疾患の終末像として発症する病態であり,疾患ごとの管理が必要である.
◎心不全診療ガイドラインでは,BNPやNT-proBNPなど血中のバイオマーカー測定が高い推奨クラスを得ている.
◎BNPやNT-proBNPはその特性が異なるため,それぞれの性質を理解したうえで活用する必要がある.
◎BNP測定においては,心外因子がBNP分泌を修飾して予想外の数値変動が起きることがある.

利尿薬でどこまで踏み込むか

著者: 武井眞

ページ範囲:P.1670 - P.1672

Point
◎心不全急性期には早期に十分量のループ利尿薬を持続静注もしくは6〜12時間ごとのボーラスで投与し,速やかなうっ血の解除を目指す.
◎心不全急性期に血清クレアチニンの上昇を認めた場合,利尿薬の減量を安易に判断せず,うっ血の改善具合,臨床経過を併せて検討する.
◎退院時の利尿薬量については確実なうっ血解除がなされる最低限度の量を見極める.

心不全慢性期の至適薬物治療を適切に導入するために

著者: 河野隆志

ページ範囲:P.1674 - P.1677

Point
◎左室駆出率の低下した心不全(HFrEF)患者では,ACE阻害薬(またはARB)とβ遮断薬を導入する.
◎ACE阻害薬とβ遮断薬導入後で,症候性かつ左室駆出率が35%未満の場合は,ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬を追加する.
◎ランダム化比較試験に反映されにくい集団(高齢者など)における真の至適薬物治療の検証が待たれる.

新規心不全薬—企業からの情報提供の前に知っておくべきこと

著者: 鍋田健

ページ範囲:P.1678 - P.1681

Point
◎アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)/SGLT2阻害薬いずれも収縮能が低下した心不全(HFrEF)への大規模臨床試験で予後改善効果が示されており,積極的な使用が望まれる.
◎ARNIの有用性はリアルワールドデータでも示されているが,非糖尿病心不全でのSGLT2阻害薬の有効性はリアルワールドデータではまだ検証されていない.
◎両薬剤ともに収縮能が保たれた心不全(HFpEF)への効果は現状証明されていない.

心不全診療の未来

著者: 小保方優

ページ範囲:P.1682 - P.1684

Point
◎HFpEF患者にはHFrEFに効果的な画一的な治療(“one-size-fits-all”アプローチ)は効果が乏しい.
◎この一番の理由はHFpEFが心臓・心臓外のさまざまな異常が混ざり合ったheterogenousな症候群であることだと考えられている.
◎このheterogenousなHFpEFを比較的均一なサブグループに分類し,個別治療をするフェノタイピングが今後のHFpEF治療の鍵である.

虚血性心疾患

トロポニン全盛期の急性冠症候群の診断をどうするか

著者: 井上健司

ページ範囲:P.1686 - P.1689

Point
◎2018年に改訂された心筋梗塞の定義では心筋障害と心筋梗塞を明確に差別化した.心筋障害はトロポニン値の異常値を示すものとし,急性心筋梗塞は心筋障害に虚血症状,もしくは画像診断で心筋虚血を示す根拠を伴うものとした.
◎0-hour/1-hourアルゴリズムは効率的な急性冠症候群を疑う患者の層別化を可能とした.

ISCHEMIA試験後の安定狭心症治療—今のカテの立ち位置は?

著者: 竹中秀 ,   永井利幸

ページ範囲:P.1690 - P.1695

Point
◎ISCHEMIA試験は,中等度以上の虚血所見を有する安定狭心症に対する冠血行再建の有効性を検討した大規模無作為化試験であるが,冠血行再建の予後改善効果は示されなかった.
◎安定狭心症に対する冠血行再建の適応適切性基準が提唱されているが,ISCHEMIA試験の結果を受け,今後は血行再建の適切性をより限定する方向に改定されるものと予想される.
◎ISCHEMIA試験以降,本邦においても“盲目的”な冠動脈造影・血行再建術は生命予後や医療費の観点からも,控える方向に舵を切らざるを得ない段階に来ていると考えられる.

血栓の二次予防はどこまで?—高齢化社会を迎えた日本での考え方

著者: 塩見紘樹

ページ範囲:P.1696 - P.1700

Point
◎冠動脈インターベンション(PCI)後の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)継続期間は,出血のリスクを鑑みて,“short DAPT”と呼ばれるより短い継続期間となりつつある.
◎心房細動合併PCI患者に対するDAPT+抗凝固療法による3剤抗血栓療法は出血リスクが高い.
◎心房細動合併PCI患者に対する抗血栓療法は,P2Y12阻害薬と抗凝固療法を用いた2剤投与が推奨されつつある.
◎心房細動合併PCI患者におけるステント留置1年以降の抗血栓療法は,抗凝固療法のみを行うOAC aloneを支持するエビデンスが国内から報告されている.

すべての方にスタチンを?—虚血性心疾患コレステロール管理のこれから

著者: 中尾一泰

ページ範囲:P.1702 - P.1705

Point
◎虚血性心疾患の2次予防においては,高用量ストロングスタチンを処方する.
◎高齢者における一次予防については,現在までに十分なエビデンスはなく,個別に考慮する.
◎エンドオブライフの患者に対しては,スタチン中止も選択肢に入れる.
◎スタチン不耐は投与開始後遠隔期にも起こりうるので留意する.

虚血性心疾患診療の未来

著者: 小船井光太郎

ページ範囲:P.1706 - P.1709

Point
◎慢性冠症候群の診療では,適切な薬物療法がまず行われるべきである.
◎COURAGE試験やISCHEMIA試験により,血行再建の効果は従来考えられていたよりも限定的であることが示された.
◎慢性冠症候群の診療では,カテーテル検査や血行再建を行わずに外来診療で薬物療法を行うことが標準治療となる可能性がある.
◎ハイリスク症例に対するCHIP PCIは,増え続ける心不全患者への治療の一つとして確立される可能性がある.
◎ハイリスクCHIP患者に対しては,各専門領域で構成されたmultidisciplinary teamアプローチが重要である.

不整脈

心房細動早期発見のために—いますべきこと,やっても意味がないこと

著者: 小田倉弘典

ページ範囲:P.1710 - P.1713

Point
◎各種ウェアラブルデバイスや植込み型心電計による心房細動の検出率は良好である.
◎心房細動の早期発見が予後や脳梗塞発症率などの改善に寄与するかどうかは明らかではない.
◎65歳以上の一般住民に対する機会あるごとの脈拍測定あるいは心電図は強く勧められる.
◎脳梗塞既往例に対する72時間以上の長時間心電計装着も強く勧められる.
◎植込み型心電計は,問診や各種画像診断で検査前確率を高めたうえでも診断のつかない潜因性脳梗塞に施行すべきである.

抗凝固のジレンマをどう解決するか

著者: 小川尚

ページ範囲:P.1714 - P.1717

Point
◎非弁膜症性心房細動では血栓塞栓症と出血リスクを評価し,抗凝固療法のリスクとベネフィットを考慮したうえで治療法を決定する.
◎血栓塞栓症高リスク患者は出血高リスク患者でもあり,出血リスクが高いことを理由に抗凝固療法を行わないのは慎むべきと考えられる.
◎血栓塞栓症と出血リスクがきわめて高い場合,左心耳閉鎖が良い選択肢となり得る.

アブレーション治療を再考する—CABANA試験を踏まえて

著者: 西原崇創

ページ範囲:P.1718 - P.1720

Point
◎薬物治療抵抗性および有症候であることが依然として治療選択の重要なキーワードである.
◎第一選択としてのアブレーション治療は過剰介入である可能性がある.
◎生命予後改善効果については今後も議論が必要である.

不整脈デバイス治療の明暗

著者: 谷本耕司郎

ページ範囲:P.1721 - P.1724

Point
◎洞不全症候群では心房ペーシングが重要であり,心室ペーシングを最小限とするペースメーカ植込み・モード設定を選択する.
◎低心機能心不全患者における植込み型除細動器(ICD)の突然死予防効果は虚血・非虚血を問わず確立している.
◎ICDのショック作動は患者のQOLのみならず,生命予後も悪化させるため,ショック作動を低減する設定が重要である.
◎欧米に比較し,日本では虚血性心筋症の予後が良いため,一次予防目的のICD植込み適応にはリスクを層別化し,判断する必要がある.

不整脈診療の未来

著者: 相澤義泰

ページ範囲:P.1725 - P.1730

Point
◎虚血性心疾患に伴う致死性不整脈に対しては,植込み型除細動器(ICD)が最も有効かつ確実な治療である.
◎除細動機能を有するデバイスはICDのほかに完全皮下植込み型除細動器(S-ICD),着用型自動除細動器(WCD)がある.
◎ICD植込み後の不整脈再発により頻回のICD作動がしばしば問題となる.
◎カテーテルアブレーションは不整脈再発によるICD作動を抑制するのに有効である.
◎マッピング技術の進歩により,カテーテルアブレーションの治療成績は向上している.

弁膜症など構造的心疾患(SHD)

あらためて弁膜症患者—古典的に聴診か?早めに画像診断か?

著者: 中西弘毅

ページ範囲:P.1731 - P.1733

Point
◎弁膜症患者の自覚症状には『攻める』問診が有効である.
◎弁膜症は高齢者では稀な疾患でなく,聴診は必須である.
◎心エコー図検査は弁膜症の診断や重症度評価に不可欠である.
◎心エコーの結果と身体所見の答え合わせが聴診スキルの精度向上に役立つ.

TAVIとMitraClip®の適切な適応とは?

著者: 足立優也 ,   志村徹郎 ,   山本真功

ページ範囲:P.1734 - P.1738

Point
◎現在,日本では外科中等度リスクまでが経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)の適応であるが,今後は欧米と同様に手術低リスク患者にも適応が拡大することが予想される.
◎標準的薬物治療後も心不全症状が残存する機能性僧帽弁逆流症患者に対するMitraClip®治療は患者の予後を改善する報告があり,治療の選択肢として考慮される.
◎TAVIとMitraClip®の適切な適応は拡大傾向にあるが,未解決な問題は多い.今後の多施設共同研究などの結果,長期成績も考慮し,時代背景に応じた適応判断が重要である.

成人先天性心疾患を成人循環器領域で扱うとき

著者: 木島康文 ,   椎名由美

ページ範囲:P.1739 - P.1742

Point
◎本邦における成人先天性心疾患(ACHD)患者数は約50万人であり,今後も年々増加する.
◎適切な心内修復術が施行されたACHD患者であっても,遺残症・続発症・後期合併症などに留意する.
◎中等度以上の複雑なACHD患者は専門施設での定期的な診療を要する.
◎本邦では心房中隔欠損症,動脈管開存症,卵円孔開存症に対するインターベンション治療が可能である.

画像診断・その他

冠動脈疾患に対する画像診断—CTか? それとも負荷検査か?

著者: 肥田敏 ,   近森大志郎

ページ範囲:P.1743 - P.1745

Point
◎冠動脈CT検査(CTA)は陰性的中率が高く,除外診断能に優れており,検査前確率が低い症例や慢性冠動脈疾患(CAD)診断がされていない症例に行うことが推奨される.
◎負荷心筋シンチグラフィ(MPI)は検査前確率が高く,高齢で冠動脈石灰化が高度であることが予想される症例や冠血行再建術が必要な症例,CTAに適さない腎機能障害,不整脈症例に行うことは適している.

MRIを用いた心筋症の鑑別

著者: 加藤真吾

ページ範囲:P.1746 - P.1750

Point
◎遅延造影MRIは,虚血性心筋症と非虚血性心筋症の鑑別に役立つ.
◎拡張型心筋症においてβ遮断薬などの薬物治療の効果予測ができる.
◎薬物負荷心筋血流MRIは虚血を正確に評価できる.
◎MRIは肥大型心筋症や心サルコイドーシスの診断やリスク評価に役立つ.
◎T1マッピングは,心アミロイドーシスや心Fabry病の鑑別に有用である.

心不全在宅診療の時代を迎えてEBMを考える

著者: 横山広行

ページ範囲:P.1751 - P.1755

Point
◎心不全在宅診療では,入院中の治療をシームレスに外来で継続することが重要である.
◎包括的疾病管理プログラムと退院後の看護師による訪問診療により心不全再入院率が減少する.
◎高齢者や多疾病合併心不全患者,HFpEF(左室駆出率の保たれた心不全)症例では包括的疾病管理の効果は限定的なため,症例の特性に合った介入が必要である.
◎退院早期の心不全増悪によるうっ血には,外来でループ利尿薬を静脈内・皮下投与する.
◎高齢心不全患者の在宅診療では,かかりつけ医はACP(アドバンス・ケア・プランニング)を導入する努力が求められる.

特集の理解を深めるための25題

問題/解答

ページ範囲:P.1756 - P.1760

連載 見て,読んで,実践! 神経ビジュアル診察・29

手が震える!今度はParkinson病!?—安静時振戦

著者: 難波雄亮

ページ範囲:P.1625 - P.1628

 前回は日常診療で頻度の高い本態性振戦について勉強しました.動作時振戦である本態性振戦のなかには,Parkinson病による安静時振戦が紛れています.圧倒的に本態性振戦に遭遇する頻度が高いのですが,どのように区別していけばよいのでしょうか? それでは安静時振戦の特徴について勉強していきましょう!
 
*本論文中、関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年8月31日まで公開)。

ケースレポートを書こう! acceptされるために必要なこと・6

英文校正

著者: 見坂恒明

ページ範囲:P.1761 - P.1765

 ケースレポートを英語で書いた場合,その英文が正しいかどうかを,まずは指導医や共著者に確認してもらう.そして次の段階として,英文校正を依頼する.帰国子女や留学で英語が堪能な医師であっても,英語が母国語でない限り,書いた論文を英文校正に出していることが多い.まして,英語が得意でなければ,投稿前に英文校正を受けることは必須である.今回は,意外に語られることが少ないものの,実はとても重要な英文校正について解説したい.

フレーズにピンときたら,このパターン! 鑑別診断に使えるカード・9

「手掌,足底の皮疹」「全大腸炎(pancolitis)」「脾機能低下患者の発熱」

著者: 長野広之

ページ範囲:P.1766 - P.1771

総論
 皮疹は鑑別が難しい症状の1つですが,手掌・足底に認めるということは鑑別を絞る大きな手がかりです.「手掌,足底の皮疹」の鑑別は表1に示す通りです.なお,表1には全身の皮疹の一部として手掌,足底に認めるものを含みます.
 この中でも,髄膜炎菌,リケッチア,トキシックショック症候群,感染性心内膜炎などは見逃すと致死性になりうるので注意しましょう.本章ではこの中でも注意したいものについて述べます.

本気で書く! 入院時サマリー! 患者情報,丸見え化プロジェクト・4

入院時から退院への戦いは始まる!〜最初が肝心! CGA!

著者: 徳田嘉仁

ページ範囲:P.1772 - P.1777

 「肺炎は治ったから退院させたいのに,なぜか退院させられない……」.皆さんも一度や二度ならず,経験したことがあるのではないだろうか? 退院時,思いもよらない問題に直面して退院が長引いていく,ということはしばしば起こりうることである.
 特に高齢者では,複雑な健康問題や社会問題をいくつも併せもっていることが多い.このような高齢者はその機能を障害する要因を「医学面」「心理・社会面」「機能面」「環境面」の観点から包括的に評価・管理を行うことで予後が改善すると報告されており1),入院時から退院を見据えたマネジメントができるよう,医学的情報以外の情報も迅速に収集しておく必要がある.

目でみるトレーニング

問題958・959・960

著者: 岩崎靖 ,   原田拓 ,   田中由佳里

ページ範囲:P.1778 - P.1783

物忘れ外来から学ぶ現場のコツ 認知症患者の診かた・28

高齢者2人世帯の認知症診療はどうしたら良いですか?

著者: 重松一生

ページ範囲:P.1784 - P.1788

ポイント
認知症では生活状況に合わせた支援が必要です

書評

—岩田健太郎,青柳有紀,岡 秀昭,本田 仁 著—プロの対話から学ぶ感染症

著者: 青木眞

ページ範囲:P.1685 - P.1685

はじめに
 年齢からくる役回りとして書評の依頼を受けることが多い.「書評は読んでから書く」というあたりまえの原則を維持するために前書きから後書きまで通読することになるが,自分の専門領域外の本となると興味はあっても,知らないこと,理解できていなかったことを消化しながらの作業となり結構つらい.が,今回は,その点,楽であった.本書は感染症専門医達による症例検討である.これは筆者が生活のため毎日行っていることである.(レベルは筆者のそれよりも遙かに高いけれど)さっそくプロ達のPearlを紹介すると…

—菅原岳史 著—絶対失敗しない! 臨床研究実践ナビ—臨床研究法時代のトラブル防止法を教えます

著者: 永井洋士

ページ範囲:P.1701 - P.1701

 万人が願う医療の進歩には,新たな治療法の開発だけでなく,今ある治療法の最適化が必要なことは言うまでもない.両者を推進する手段が臨床試験であり,その成果は直接医療に還元されるため,目の前の患者に不利益がなければよいものではなく,未来の多くの患者にも不利益があってはならない.しかしながら,臨床試験の発展の歴史は人体実験や研究不正との闘いの歴史であったと言ってよい.とりわけ,医が仁術から科学となり,特に19世紀後半に観察医学から実験医学へのパラダイムシフトがあって以降,世界では科学の名の下に度重なる人体実験が行われてきた.そうした,暗い歴史を経て完成したのが研究倫理であり,ルールとして明文化されたものが臨床研究規制である.とりわけ,わが国にあっては,2013年に発覚したディオバン臨床試験にかかる不正をきっかけに,研究の信頼性に関する議論が高まり,2018年の臨床研究法の施行に至った.実際,臨床試験は被験者の献身の上に成り立つ人類の事業であり,信頼できる研究成果であってこそ,疾病の診断・治療・予防に正しく還元されるのである.しかしながら,こうした考え方や研究の実践に必要な知識が研究者に浸透しているとは言い難い.

--------------------

目次

ページ範囲:P.1630 - P.1632

読者アンケート

ページ範囲:P.1795 - P.1795

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.1796 - P.1797

購読申し込み書

ページ範囲:P.1798 - P.1798

次号予告

ページ範囲:P.1799 - P.1799

奥付

ページ範囲:P.1800 - P.1800

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

60巻13号(2023年12月発行)

特集 一般医家のための—DOAC時代の心房細動診療

60巻12号(2023年11月発行)

特集 内科医が遭遇する皮膚疾患フロントライン—「皮疹」は現場で起きている!

60巻11号(2023年10月発行)

増大号特集 患者さんの質問にどう答えますか?—言葉の意味を読み解きハートに響く返答集

60巻10号(2023年9月発行)

特集 ミミッカー症例からいかに学ぶか

60巻9号(2023年8月発行)

特集 症例から読み解く—高齢者診療ステップアップ

60巻8号(2023年7月発行)

特集 浮腫と脱水—Q&Aで学ぶジェネラリストのための体液量異常診療

60巻7号(2023年6月発行)

特集 整形外科プライマリ・ケア—内科医が知りたい整形外科疾患のすべて

60巻6号(2023年5月発行)

特集 Common diseaseの処方箋ファイル—臨床経過から学ぶ20症例

60巻5号(2023年4月発行)

特集 臨床医からみたPOCT

60巻4号(2023年4月発行)

増刊号 探求!マイナーエマージェンシー

60巻3号(2023年3月発行)

特集 令和の脳卒中ディベート10番勝負—脳卒中治療ガイドライン2021とその先を識る

60巻2号(2023年2月発行)

特集 慢性疾患診療のお悩みポイントまとめました—高血圧からヘルスメンテナンスまで

60巻1号(2023年1月発行)

特集 10年前の常識は非常識!?—イマドキ消化器診療にアップデート

59巻13号(2022年12月発行)

特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

icon up
あなたは医療従事者ですか?