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文献詳細

雑誌文献

medicina57巻11号

2020年10月発行

文献概要

特集 皮疹はこう見る,こう表現する 皮膚病変の捉えかた

皮膚病変はこう捉える—そしてこう表現する

著者: 常深祐一郎1

所属機関: 1埼玉医科大学皮膚科

ページ範囲:P.1814 - P.1816

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皮疹を記載する意義
 皮膚病変を他人に伝えるため,自分で後日見た際に思い出せるようにするために皮疹を記載する.もちろん診療録として公式に記録を残すという意味もある.
 皮疹を記載する際には,できるだけ修飾語をたくさんつけて詳細に表現する.記載を見ればその皮疹の絵が描けるくらいの情報量を目指す.各発疹については,次章「基本の発疹を理解する」で解説されているので,ここでは修飾語について述べる.記録なら写真のほうが情報量は多いと思われるかもしれない.確かに単純な記録という意味なら,写真のほうが優れているであろう.しかし,写真だけ撮って満足していても,意外と皮疹を見ていないものである.皮疹をきちんと見ていないと正しい判断はできない.たくさん修飾語をつけて記載しようと思えば,それだけの情報を拾い上げようとするので,自ずと皮疹を入念に観察することになる.つまり詳細に記載しようとすることが丁寧な診察につながり,ひいては,正確な診断に結びつくわけである.皮膚病変の記載は,記録という意味もあるが,情報を抽出するという意味がもっと大きいのである.もう少し言えば,写真を撮ることは誰でもできるが,皮疹の観察の仕方をよく理解している人が撮った写真と,普段の写真と同じように深く考えずに撮った写真では,そこに含まれる皮膚科学的情報量には大きな差がある.後者では,全体像を見たいのに全体像がない,詳細に見たいのに接写像がない,一番みたいものにピントが合っていない,盛り上がった皮疹を横方向から取っていないので立体感がない,健側を撮っていないので比較ができない,などといった事態が起きる.結局,皮疹の見方を理解していないとたとえ写真を撮ってもやはり不十分な結果となってしまうわけである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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