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文献詳細

雑誌文献

medicina57巻11号

2020年10月発行

文献概要

特集 皮疹はこう見る,こう表現する よく見る皮膚疾患を発疹レベルで理解する 〈皮膚炎・蕁麻疹など〉

皮脂欠乏性湿疹

著者: 乃村俊史1

所属機関: 1北海道大学大学院医学研究院皮膚科学教室

ページ範囲:P.1870 - P.1871

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▶疾患の概要
 皮脂欠乏性湿疹は,皮膚が乾燥し,痒みや落屑,亀裂(ひび割れ)を生じる疾患である.本症は,欧米では“asteatotic dermatitis”または“eczema craquelé(eczemaは湿疹,craqueléはひび割れの意)”と呼ばれることから,乾燥によるひび割れが臨床的特徴であることが容易に理解できる.高齢者に好発するが,ほぼすべての年齢層に見られ,その有病率は高い.症状は,寒く乾燥した冬季に悪化し,暑く湿度の高い夏季に軽快することが多い.
 本疾患の発症には,加齢による皮脂腺や汗腺,表皮の機能低下に加え,環境因子が大きく関与し,湿度・気温の低下や,不適切な入浴習慣(頻回の入浴,ナイロンタオルなどによる過度の摩擦)などが原因となりうる.薬剤(抗癌剤や利尿薬,抗アンドロゲン薬など)や甲状腺機能低下症,放射線照射,知覚低下も本症の発症因子として知られている.また,遺伝素因も重要であり,その代表例はフィラグリン遺伝子変異である.筆者らは日本人の一般人口の約10%がフィラグリン遺伝子に機能喪失変異(ナンセンス変異またはフレームシフト変異)をヘテロ接合性に保有することを明らかにしてきた1,2).フィラグリンは,皮膚バリア機能の主な担い手である角層の形成に重要な働きをするほか,その分解産物は保水性に富む分子(これらの分子は“天然保湿因子”と呼ばれる)として機能するため,フィラグリン遺伝子にヘテロ接合性の機能喪失変異が存在すると,フィラグリンの産生量が正常の50%に低下し,潜在的に尋常性魚鱗癬と呼ばれる遺伝性の皮脂欠乏症を発症しやすくなる.いわゆる“乾燥肌”を見ても遺伝素因を想起しづらいかもしれないが,日本人の1000万人以上がフィラグリン遺伝子変異を持つと推定されるので,同変異は決して無視することのできない,本症の重要な発症因子である.

参考文献

1)Ait-Bamai Y, et al:Association of filaggrin gene mutations and childhood eczema and wheeze with phthalates and phosphorus flame retardants in house dust:The Hokkaido study on Environment and Children's Health. Environ Int 121:102-110, 2018
2)Kono M, et al:Comprehensive screening for a complete set of Japanese-population-specific filaggrin gene mutations. Allergy 69:537-540, 2014
3)Brown SJ, et al:Filaggrin haploinsufficiency is highly penetrant and is associated with increased severity of eczema;Further delineation of the skin phenotype in a prospective epidemiological study of 792 school children. Br J Dermatol 161:884-889, 2009

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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