icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

medicina57巻12号

2020年11月発行

雑誌目次

特集 膠原病・自己免疫疾患を「見える化」する

著者: 安岡秀剛

ページ範囲:P.2031 - P.2031

 まず初めに,今回大変ありがたいことに『medicina』の特集に携わらせていただくことになり,大変感慨深い気持ちになりました.私が内科研修医だった頃,インターネットも現在ほど便利なものではなく,図書館や大学の書店に頻繁に出入りしては成書や雑誌を手当たり次第に目にして情報を探したものだなあ,と.そして書店を訪れるとこの雑誌も手に取り,初めて回る内科各科の知識を整理したり,最新の情報を得たりしていたことを思い出しました.本当に懐かしく思います.そういった意味では,現在ではインターネットから知識を得ることも容易な時代となり,大きな変化が訪れていることを強く感じざるを得ません.
 私が専門医を目指し研修医をしていた頃は,リウマチ・膠原病の病態に関して明らかになっていることが現在に比べて圧倒的に少なかったと思います(もちろん勉強不足もあったと思いますが).また患者さんの疾患活動性の評価についても指標が整備されておらず,患者さんがどのような状態にあるのかを理解するのも大変難しかったです.さらに希少疾患ということもあり,治療に関するエビデンスも乏しかったと思います.結果として,指導していただいている先生方から「アート」としてリウマチ・膠原病診療を学ぶことが多かったと感じています.

座談会

膠原病を見える化する—過去・現在・未来

著者: 安岡秀剛 ,   高橋伸典 ,   小寺雅也 ,   山野泰彦 ,   林宏樹

ページ範囲:P.2032 - P.2038

近年,膠原病領域ではさまざまな発見がなされ診療も大きく変化しましたが,専門でない医師にとっては敷居の高い,難しい疾患というイメージをもたれることが多いように感じています.そこで今回は整形外科の高橋先生,皮膚科の小寺先生,呼吸器内科の山野先生,腎臓内科の林先生と,膠原病に関わるさまざまな診療科の先生方にお集まりいただきました.それぞれの先生方の視点から見た膠原病診療の過去,現在,そして未来をお話しいただくことで,より多くの読者にこの領域について理解を深めていただき,ぜひ関心をもっていただければ幸いです.(安岡)
*新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い,本座談会はwebでの収録を行った(2020年8月5日収録).

臨床から見える化する 【関節リウマチ】

関節リウマチ治療薬の効果を見える化する

著者: 金子祐子

ページ範囲:P.2040 - P.2045

Point
◎関節リウマチの病態解明に伴って,病態に重要な分子を直接的に阻害する治療薬の開発が進み,治療はこの20年で飛躍的に進歩した.
◎現在の治療目標は臨床的寛解であり,その目指すものは長期的な生活の質の向上である.
◎治療進歩に大きく貢献したのが,特定の分子を治療標的とした生物学的製剤や分子標的合成抗リウマチ薬である.

関節リウマチを見える化する

著者: 高橋伸典

ページ範囲:P.2046 - P.2051

Point
◎関節リウマチ(RA)は慢性多発性関節炎(滑膜炎)をきたす自己免疫疾患であり,著しい関節破壊を引き起こす.
◎RAの関節破壊は,蛋白分解酵素による軟骨溶解と破骨細胞による骨破壊が中心である.
◎RAによる関節破壊は,患者の日常生活動作および生活の質を著しく障害する.
◎RAの関節炎が遷延すると,全身性炎症性疾患としての側面により患者の生命予後が低下する.
◎抗リウマチ薬のリスク・ベネフィットバランスを適切に評価して,関節炎を最大限に抑制する必要がある.

関節リウマチの骨破壊を見える化する

著者: 平田信太郎

ページ範囲:P.2052 - P.2057

Point
◎骨・軟骨破壊は,関節リウマチ(RA)に特徴的な病理学的変化である.
◎単純X線では,RAの骨破壊は「骨びらん」,軟骨破壊は「関節裂隙狭小化」によって特徴づけられる.
◎RAの臨床試験では,単純X線上の「骨びらん」「関節裂隙狭小化」をスコア化するvan der Heijde's modified total Sharp score(mTSS)が骨関節破壊の評価法として主に用いられている.

関節炎局所を見える化する—関節エコーとMRI

著者: 池田啓

ページ範囲:P.2059 - P.2063

Point
◎関節炎の症状や所見は多様であり,問診および触診のみでの評価は難しい場合がある.
◎関節エコーおよびMRIでは,滑膜炎,関節包炎,腱鞘滑膜炎,滑液包炎,付着部炎,骨炎,結晶沈着などを見える化することができる.
◎関節炎の見える化により,疾患の診断と除外,モニタリングの精度が向上しうる.
◎関節炎の見える化により,疾患概念が変化することがありうる.

関節リウマチに関わる医療経済を見える化する

著者: 田中榮一

ページ範囲:P.2064 - P.2068

Point
◎関節リウマチ(RA)に関わる医療費は,高額な新規薬剤の開発・普及や高齢化に伴い,高額になることが予想される.
◎RAを発症早期から積極的にコントロールすることで疾患活動性を抑制できれば,身体機能障害も進まず,結果的に生涯の医療費が軽減する可能性が示唆される.
◎使用する薬剤の臨床的効果と経済的効率の両面を評価し,薬剤費用に見合った価値があるかを分析するのが薬剤経済評価である.RAにおいても,生物学的製剤などの高額な薬剤の費用対効果を検討していくことが求められている.
◎RA患者における生物学的製剤使用に伴う労働生産性改善の報告も散見されるようになってきている.
◎バイオシミラーの開発・普及は,RA医療費にとって良い影響を及ぼす可能性が高いと考えられている.

【SLE】

SLEの管理を見える化する

著者: 梶山浩

ページ範囲:P.2070 - P.2076

Point
◎全身性エリテマトーデス(SLE)は全身性自己免疫疾患であり,B細胞の過剰かつ異常な活性化から,多様な自己抗体が産生され,さまざまな臓器障害をきたす.
◎診断のための分類基準は,1997年ACR改訂分類基準と2012年SLICC分類基準を併用している.現在,2019年EULAR/ACR分類基準について本邦での検証が進められている.
◎SLEDAI,BILAGでSLEの疾患活動性を,ISN/RPS分類でループス腎炎の組織学的重症度を判定し,ACRガイドライン,EULARリコメンデーション,本邦のSLE診療ガイドラインを参考に治療方針を決定する.
◎グルココルチコイド,免疫抑制薬のシクロホスファミド,アザチオプリン,タクロリムス,ミコフェノール酸モフェチル,生物学的製剤のベリムマブと,処方できる薬剤の種類も増え,治療は進歩してきた.
◎低疾患活動性を目標に治療し,不可逆的な臓器障害を最小限にする.治療の進歩により近年では10年生存率が90%を超えている一方で,長期のステロイド投与による合併症管理,難治性病態の治療が課題である.

SLEの腎組織を見える化する

著者: 林宏樹

ページ範囲:P.2077 - P.2083

Point
◎全身性エリテマトーデスに伴う免疫複合体の沈着による糸球体炎をループス腎炎と呼ぶ.
◎多彩な免疫複合体沈着所見(フルハウス染色や糸球体外沈着病変)やtubuloreticular inclusionは,ループス腎炎としての診断的価値が高い.
◎SLEの欧州リウマチ学会(EULAR)/米国リウマチ学会(ACR)分類基準では腎組織診断が重要視されるが,感染関連腎炎の除外が必須である.
◎組織診断では糸球体病変による病型分類に加え,間質尿細管を含む活動性および慢性病変を評価する.

SLEにおける活動性とダメージを見える化する

著者: 花岡洋成

ページ範囲:P.2084 - P.2089

Point
◎全身性エリテマトーデスは多臓器に障害をきたす全身性自己免疫疾患である.
◎疾患活動性を正確に表現する指標の開発が望まれている.
◎ダメージの累積は予後を規定するため,疾患によるものだけでなく治療薬関連によるダメージも最小にすべきである.

【強皮症】

強皮症を見える化する

著者: 安岡秀剛

ページ範囲:P.2091 - P.2095

Point
◎強皮症は多彩な臓器病変をきたす全身性の線維化疾患で,現在も良い治療法がなく,重要臓器病変は生命予後を規定する.
◎生命予後の改善のためには早期発見・治療のアプローチが重要である.
◎分類基準が改訂され,感度・特異度とも上昇し,早期発見・診断への貢献が期待される.
◎新たな全般的疾患活動性指標は薬剤開発に貢献することが期待される.
◎抗線維化薬の登場は治療アプローチの変化をもたらし,新たな薬剤開発の契機となるかもしれない.

強皮症の疾患活動性,皮膚硬化を見える化する

著者: 白井悠一郎

ページ範囲:P.2096 - P.2100

Point
◎スキンスコア(mRSS)は強皮症(SSc)の日常診療や臨床試験で広く使用されている.
◎SScの臨床試験では,主要評価項目であるmRSSは治療群・対照群間の差を検出しづらい.
◎重症度分類は,個別に評価した臓器病変の状態を一見して把握するのに有用である.
◎SScの臨床試験における治療反応性の指標として,ACR CRISSが使用されている.
◎疾患活動性の指標として,EUSTAR Activity Indexが作成された.

強皮症における微小血管障害を見える化する

著者: 久保智史 ,   田中良哉

ページ範囲:P.2102 - P.2105

Point
◎毛細血管を爪郭部毛細血管ビデオ顕微鏡(NVC)により直接透見することができる.
◎強皮症の爪郭部毛細血管異常には,毛細血管の拡張・消失および毛細血管周囲の出血がある.
◎強皮症の爪郭部毛細血管異常の進行は臓器障害を予見する.

【筋炎】

自己抗体で筋炎を見える化する

著者: 濱口儒人

ページ範囲:P.2106 - P.2109

Point
◎多発性筋炎/皮膚筋炎では,筋炎特異的自己抗体(MSA)と臨床症状に関連がある.
◎いくつかのMSAはELISA検査試薬が開発されているが,それ以外は同定に免疫沈降法が必要である.
◎MSAを同定するには,蛍光抗体間接法とELISA検査の結果が一致するかを確認する.

筋炎でみられる難治性間質性肺炎を見える化する

著者: 五野貴久

ページ範囲:P.2110 - P.2117

Point
◎筋炎患者の大半では,疾患特異的な自己抗体(筋炎特異自己抗体:MSA)が血清から検出される.
◎筋炎関連間質性肺疾患でみられるMSAの大半は,抗ARS抗体と抗MDA5抗体である.
◎抗ARS抗体陽性例では筋炎症状に乏しく,肺病変が主体となる症例が存在する.
◎抗MDA5抗体陽性間質性肺疾患は,1年以内の死亡率が約30%と予後不良である.
◎抗ARS抗体陽性間質性肺疾患は,ステロイド薬の減量で再燃を繰り返す傾向にある.

【血管炎】

血管炎を見える化する

著者: 勝又康弘

ページ範囲:P.2119 - P.2125

Point
◎血管炎の診療は専門外の医師にはわかりにくいところが多かったが,ガイドラインが整備され,客観的に捉えられるようになってきた.
◎血管炎の用語体系が2012年から国際的に大きく変わり,指定難病の病名もそれに合わせて変更された.
◎ANCA関連血管炎の治療はグルココルチコイドに,シクロホスファミドまたはリツキシマブを併用するのが基本である.
◎高安動脈炎,巨細胞性動脈炎に対する画像検査としては,造影CT,造影MRIに加えて,側頭動脈の超音波やPETが有用である.
◎高安動脈炎,巨細胞性動脈炎の治療薬として,トシリズマブが保険適用の対象となった.

【自己炎症性疾患】

自己炎症性疾患を見える化する

著者: 古賀智裕 ,   川上純

ページ範囲:P.2126 - P.2131

Point
◎自己炎症性疾患は自然免疫の異常亢進が病態の主体であり,自己抗体は検出されない.
◎自己炎症性疾患の臨床的特徴は漿膜炎を伴う周期性発熱であるが,病型により多彩な症状をとりうる.
◎自己炎症性疾患の遺伝子検査は,臨床的に疑われる疾患を確認するために行われる.
◎家族性地中海熱はMEFV遺伝子エクソン2の多型のみで診断することはできない.
◎IL-1β阻害薬はインフラマソームシグナルを抑制し,自己炎症性疾患の治療に有用である.

難治性臓器病変を見える化する

間質性肺炎の局所を見える化する

著者: 山野泰彦

ページ範囲:P.2134 - P.2138

Point
◎膠原病関連間質性肺疾患(CTD-ILD)として治療目標を設定するよりも,発症様式,疾患挙動,画像よりILDパターンを想定し,それに準じて治療目標を立てることが推奨される.
◎関節リウマチに伴う通常型間質性肺炎(UIP)の局所所見では,線維化病変に加えて炎症細胞浸潤やリンパ濾胞の形成も伴うことが多い.
◎強皮症関連間質性肺炎は,大部分が炎症を伴わない線維性非特異性間質性肺炎(fNSIP)であり,抗炎症治療に加えて抗線維化薬の投与を考慮することも重要となる.
◎筋炎関連間質性肺炎では非特異性間質性肺炎(NSIP)や,器質化肺炎(OP)を伴うNSIPが多く,抗炎症薬の適切な使用が重要である.

肺高血圧症を見える化する

著者: 加藤将

ページ範囲:P.2139 - P.2144

Point
◎膠原病には,疾患に直接関連して肺動脈性肺高血圧症(第1群肺高血圧症)が合併する.
◎上記に加えて,強皮症では左心性疾患(第2群肺高血圧症)や間質性肺疾患(第3群肺高血圧症)がしばしば合併する.
◎強皮症の肺血管障害は,他の疾患と比較して,肺動脈のみならず肺静脈の異常を伴うことが多い.
◎各種モダリティを統合したアプローチが,肺高血圧症を合併した強皮症患者の病態把握に有用である.

基礎から見える化する

骨関節破壊を見える化する

著者: 鎗伸弥 ,   菊田順一 ,   石井優

ページ範囲:P.2145 - P.2149

Point
◎破骨細胞が出す酸を感知して蛍光がONとなるpH応答性蛍光プローブの開発に成功した.
◎炎症関節内部で破骨細胞が実際に骨を壊している様子を可視化することに成功した.
◎生物学的製剤はそれぞれ異なる作用機序で破骨細胞に作用し,骨破壊を抑制することがわかった.

膠原病における免疫反応を見える化する

著者: 藤尾圭志

ページ範囲:P.2152 - P.2157

Point
◎近年,フローサイトメトリー,マスサイトメトリー,シングルセルRNAシークエンスといった技術の普及により,末梢血中・組織中の免疫担当細胞の割合や遺伝子発現を評価することが可能となった.
◎関節リウマチでは制御性T細胞,末梢性ヘルパーT細胞,メモリーB細胞,滑膜線維芽細胞のクロストークが炎症を形成している.
◎全身性エリテマトーデスではⅠ型インターフェロンが適応免疫系を活性化し,B細胞やミエロイド系のエフェクター細胞が臓器を傷害している.

骨免疫で関節リウマチを見える化する

著者: 山岡邦宏

ページ範囲:P.2158 - P.2160

Point
◎関節リウマチ(RA)ではリンパ球を中心とした免疫担当細胞が滑膜内に遊走し,炎症性サイトカインやケモカインの多量産生により炎症の慢性化と全身の骨粗鬆化を引き起こす.
◎RAでは滑膜内に破骨細胞様細胞が形成され,関節表面の皮質骨を浸食し,骨びらんを形成する.
◎RAにおける滑膜炎の慢性化には,抗原提示に優れる樹状細胞を前駆細胞とした破骨細胞(DCOC)が関与していると考えられている.
◎抗RANKL抗体(デノスマブ)は骨びらんの形成を防ぐことができるが,滑膜炎は改善できないため,生物学的製剤を中心とした炎症制御の下で投与すべきである.
◎ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬は免疫抑制だけでなく破骨細胞への分化を抑制する作用もあり,これまでの生物学的製剤とは異なる作用を有する薬剤として期待される.

自己抗体の病原性を見える化する

著者: 松本功

ページ範囲:P.2161 - P.2164

Point
◎関節リウマチの診断には自己抗体が重要である.
◎自己抗体の病因性に関して,低シアル化が注目されている.
◎低シアル化自己抗体の産生において,濾胞性T細胞(Tfh細胞)およびOX40分子が関わっている.
◎OX40陽性Tfh細胞は形質芽細胞の増殖およびシアル酸付加酵素(st6gal1)の発現低下を促し,病態に関与する.

体内の分子状態をマルチオミックス解析で見える化する

著者: 鈴木勝也 ,   竹内勤

ページ範囲:P.2166 - P.2169

Point
◎体内の分子状態を精密に見える化する方法として,マルチオミックス解析法が登場した.
◎関節リウマチの疾患状態を体内の分子状態として見える化することにより,従来の臨床では捉えらない情報が明らかとなった.
◎体内の分子状態を見える化するアプローチは,将来の精密医療への応用が期待される.

線維化をモデル動物で見える化する

著者: 浅野善英

ページ範囲:P.2170 - P.2175

Point
◎全身性強皮症(SSc)の病態は,臓器横断的基本病態と臓器別病態修飾因子に分けて捉えることで一元的な理解が可能である.
◎SScの主要3病態は「免疫異常→血管障害→線維化」の順に列序性をもって臓器横断的に進展する.
◎皮膚では表皮細胞と脂肪細胞が臓器横断的基本病態を修飾し,高度な線維化が誘導される.
◎表皮細胞が皮膚と食道の線維化に関与しており,SScの線維化病態の臓器選択性に関与している.
◎マイクロサテライト多型の解析により,FLI1がSScの疾患感受性遺伝子であることが同定された.

GWASから膠原病を見える化する

著者: 友藤嘉彦 ,   岡田随象

ページ範囲:P.2177 - P.2181

Point
◎ゲノムワイド関連解析(GWAS)によって,膠原病・リウマチ性疾患に関連する遺伝子領域が同定されてきた.
◎GWASの結果を生物学的データベースと統合することによって,疾患病態の解明やドラッグ・リポジショニングが可能となる.
◎GWASを個別化医療へ応用する試みがなされている.

セマフォリンから膠原病を見える化する

著者: 西出真之 ,   熊ノ郷淳

ページ範囲:P.2182 - P.2187

Point
◎セマフォリンは免疫制御や分化の方向性を決定づけるガイダンス分子である.
◎セマフォリンの発現異常が,自己免疫疾患の発症・増悪に関わることが知られている.
◎関節リウマチの病態において,セマフォリン4Dは免疫細胞に作用し,炎症を促進する.
◎全身性強皮症の病態において,セマフォリン4Aは線維芽細胞による炎症メディエーター産生と線維化を促進する.
◎セマフォリン4Dは好中球の不適切な活性化を阻止するブレーキ役として,ANCA関連血管炎の発症に関わる.

特集の理解を深めるための17題

問題/解答

ページ範囲:P.2188 - P.2190

連載 見て,読んで,実践! 神経ビジュアル診察・31

歩き方がヘン!?—前頭葉性歩行

著者: 難波雄亮

ページ範囲:P.2023 - P.2026

 前回勉強したように,歩き方に注目すると,どの部位に障害が想定されるか,鑑別疾患にはどのような疾患があるかを短時間で判断することが可能となります.画像での一発診断のようにはいきませんが,病歴や複数の診察所見を組み合わせることでさらに診断技術が向上できます.今回は遭遇する頻度の高い「前頭葉性歩行」について勉強しましょう!
 血管障害を診ている皆さん,外来に意外とこの歩き方の患者さんが来てますよ.

本気で書く! 入院時サマリー! 患者情報,丸見え化プロジェクト・6

“本気の”入院時サマリー,完成!

著者: 徳田嘉仁

ページ範囲:P.2192 - P.2197

 半年にわたり続いた本連載も今回をもって最終回となる.既往歴情報の整理(第2回)と内服薬へのアプローチ(第3回)に始まり,高齢者総合的機能評価による包括的な情報収集(第4回),そして急性期病院の中でも実施すべきAdvance Care Planning(第5回)についてまで話を展開していった.すべて合わせるとかなりのボリュームになるが,ここまでやれば患者情報は“丸見え化”する.
 さっそく,これまでに“本気で”集めた情報を1つにまとめた入院時サマリーを見てみよう.ぜひ,第1回に掲載した入院時サマリーと見比べていただきたい.

フレーズにピンときたら,このパターン! 鑑別診断に使えるカード・11

「アルコール常用者のショック」「アルコール常用者の意識障害」「血小板数,凝固能正常の出血傾向」

著者: 長野広之

ページ範囲:P.2198 - P.2208

総論
 アルコール問題は頻度が高く,日本では生涯でアルコール依存と診断される患者が107万人と推計されています1).アルコール問題には図1のような各段階があります2).アメリカ精神医学会の診断基準であるDSM-5では,アルコール依存とアルコール乱用を合わせて「アルコール使用障害(alcohol-use disorder)」となりました.またproblem drinkingはアルコールによる健康上の問題が生じている状態です.注目されやすいのはアルコール使用障害ですが,重要なのはそこまで至らないrisky useの段階から介入することです.risky useは見逃されがちですが,危険なproblem drinkingやalcohol-use disorderに進行する可能性もありますし,多くのアルコール関連問題(喧嘩や自殺での入院など)はアルコール量や泥酔の頻度が低い群でも起こっていたという報告もあります3).risky useの定義は「65歳以下の男性では>14単位/week or 4単位/日,女性もしくは65歳以上では消費アルコール量が>7単位/week or >3単位/日」となっています.
 有名なCAGE questionはアルコール依存に対しては有用ですが,より早期の危険な飲酒(risky use)の検出には劣るとされます4).unhealthy useを疑ったときはAUDIT(アルコール依存症スクリーニングテスト)もしくは時間がなければAUDIT-C(AUDITの簡易版)を使いましょう.最近は計算に便利なアプリやWebサイトもあります.

物忘れ外来から学ぶ現場のコツ 認知症患者の診かた・30

認知症診療のフィナーレ

著者: 重松一生

ページ範囲:P.2210 - P.2214

ポイント
いくら医療が進歩しても,人は誰しもいつかは最期を迎えます

ケースレポートを書こう! acceptされるために必要なこと・8

査読の流れと“心折ポイント”

著者: 八幡晋輔 ,   見坂恒明

ページ範囲:P.2215 - P.2218

 ケースレポートを無事投稿し,ほっとしているのも束の間.投稿したケースレポートは査読を受け,再度自分の手元に返ってくる.査読者とのやりとりには,心が折れそうになるポイントが複数存在している.しかし,そのやりとりはケースレポートをより良いものとするための,貴重なプロセスである.査読者は“親切”に改善点を指摘してくれているのである.読者の皆様が,少しでも心穏やかに,楽しみながら査読者とのやりとりを行うことができるよう,具体的に誰もが経験する“心折(しんせつ)ポイント”を例示しながら,概説したい.

目でみるトレーニング

問題964・965・966

著者: 岩崎靖 ,   陶山恭博 ,   牧山純也

ページ範囲:P.2220 - P.2225

書評

—鈴木慎吾 著—外来診療の型—同じ主訴には同じ診断アプローチ!

著者: 志水太郎

ページ範囲:P.2133 - P.2133

 生坂政臣先生門下の鈴木慎吾先生のご本が出たということで,とても楽しみに拝読させていただきました.千葉大学の総合診療科は「診断推論学」を屋号にされることからも,最近では同門の鋪野紀好先生も診断学の探求を中心に同分野の本を出版されるなど,日本の診断学シーンを牽引される総合診療科だと思います.読後,その伝統のエッセンスが本書に満ち満ちていることが実感できました.
 本書が画期的であり,また多くの若手にとって希求の書である理由は何でしょうか.それは,外来診療の診断学の原則論に言及した本であることが第一と感じます.鈴木先生は本書を通して何を伝えられたかったのかを考えました.それは,多面において教育リソースの限られた日本の臨床教育現場において,最も難しいセッティングの1つである外来での診療における指導・学びの羅針盤を提示されたかったのではないか,と想像します.外来・救急・病棟という“3大臨床現場”のうち,キャリアの初期であまり立つことができないのが外来です.(おそらく)日本の多くの現場では,2年間の臨床研修を終え,3年目になれば外来の枠を持たされることが多いです.連続性のある病棟のケアとは異なり,リアルタイムでの即応性が求められ,かつ外来と外来の「ドット」同士をつなぐような非連続の時間軸で勝負していかなければならないのが外来におけるケアの難しさです.臨床実習の学生や臨床研修の初期臨床研修医は,制度上外来に立つことが多くなってきた現在,一方ではそこの訓練に必要な指南書は国内にほぼ存在しません.そこに登場したのが本書というわけです.そして,皆が潜在的に期待していた「型」が提示され,しかもそれが症状ごとにアレンジされた型であれば,これに比肩する書籍もそうないのではないかと感じます.

—黒川勝己,園生雅弘 著—《ジェネラリストBOOKS》—“問診力”で見逃さない神経症状

著者: 田妻進

ページ範囲:P.2151 - P.2151

 身体の異常,その謎解きのカギは持ち主の言葉の中にある!
 そんなメッセージを発信し続ける著者の神経症状シリーズ連載が一冊の書籍となって登場した.その名も,『“問診力”で見逃さない神経症状』,第一線でさまざまな症候に向き合うプライマリ・ケア医,病院の総合外来・ER担当の総合診療医・総合内科医に薦めたいピットフォールを意識したポケットサイズのメモファイルである.

—増井伸高 著—高齢者ERレジデントマニュアル

著者: 関口健二

ページ範囲:P.2226 - P.2226

 良質な研修病院で研修を行うことのメリットは何でしょう.僕が米国臨床留学で感じたそのメリットとは,「十分な知識や経験がなくても,その施設でルーチンとなっている診療がスタンダードな診療であるため,それらを体で覚えられること」でした.
 僕が20年前に経験した初期研修では,必ずしもスタンダードな診療がルーチンになっているとは言いがたく,バイブルとしたのは『ワシントンマニュアル』でした.ボロボロになるまで使い続けたワシマニに何度救われたことか.20年を経た今,良質なマニュアルが数多く出版されるようになって,研修医にとってはどこででもスタンダードな診療がやりやすい状況になったと言えると思います.

--------------------

目次

ページ範囲:P.2028 - P.2030

読者アンケート

ページ範囲:P.2231 - P.2231

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.2232 - P.2233

購読申し込み書

ページ範囲:P.2234 - P.2234

次号予告

ページ範囲:P.2235 - P.2235

奥付

ページ範囲:P.2236 - P.2236

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

60巻13号(2023年12月発行)

特集 一般医家のための—DOAC時代の心房細動診療

60巻12号(2023年11月発行)

特集 内科医が遭遇する皮膚疾患フロントライン—「皮疹」は現場で起きている!

60巻11号(2023年10月発行)

増大号特集 患者さんの質問にどう答えますか?—言葉の意味を読み解きハートに響く返答集

60巻10号(2023年9月発行)

特集 ミミッカー症例からいかに学ぶか

60巻9号(2023年8月発行)

特集 症例から読み解く—高齢者診療ステップアップ

60巻8号(2023年7月発行)

特集 浮腫と脱水—Q&Aで学ぶジェネラリストのための体液量異常診療

60巻7号(2023年6月発行)

特集 整形外科プライマリ・ケア—内科医が知りたい整形外科疾患のすべて

60巻6号(2023年5月発行)

特集 Common diseaseの処方箋ファイル—臨床経過から学ぶ20症例

60巻5号(2023年4月発行)

特集 臨床医からみたPOCT

60巻4号(2023年4月発行)

増刊号 探求!マイナーエマージェンシー

60巻3号(2023年3月発行)

特集 令和の脳卒中ディベート10番勝負—脳卒中治療ガイドライン2021とその先を識る

60巻2号(2023年2月発行)

特集 慢性疾患診療のお悩みポイントまとめました—高血圧からヘルスメンテナンスまで

60巻1号(2023年1月発行)

特集 10年前の常識は非常識!?—イマドキ消化器診療にアップデート

59巻13号(2022年12月発行)

特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

icon up
あなたは医療従事者ですか?