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雑誌目次

雑誌文献

medicina57巻13号

2020年12月発行

雑誌目次

特集 プライマリ・ケアにおける神経症候へのアプローチ

著者: 黒川勝己

ページ範囲:P.2245 - P.2245

 本特集は,プライマリ・ケアを担当する,非神経専門医の先生(勤務医・開業医・研修医)を対象に企画しました.プライマリ・ケアにおいて神経症候を認める患者に遭遇した際,非専門医の先生がどのように診療すれば良いかがわかるように,実践的な内容になっています.
 まず,総論として,非専門医は何をすべきか,どのように専門医と連携をとるべきかについて述べています.非専門医の先生は,危険な疾患を見逃さないための病歴聴取をとること,神経症候毎の必要最低限の神経学的所見をとることをしていただければと思います.病歴聴取を疎かにしての網羅的な神経診察や検査は,誤診の危険性があることを知っていただきたいと思います.

座談会

プライマリ・ケアにおけるより良い神経診察とは

著者: 園生雅弘 ,   田妻進 ,   黒川勝己

ページ範囲:P.2246 - P.2253

本日は,脳神経内科医の立場から帝京大学医学部医学科神経内科学講座の園生雅弘先生に,またプライマリ・ケア医の立場からは,先日,第11回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会の学会長を務められました広島県厚生農業協同組合連合会 尾道総合病院の田妻 進先生にご参加いただきました.それぞれのお立場から,プライマリ・ケアにおけるより良い神経診察についてのお話を伺えればと思います.
*新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い,本座談会はwebでの収録を行いました(『medicina』編集室).

総論

プライマリ・ケアにおける神経症候の診かたのポイント

著者: 黒川勝己

ページ範囲:P.2254 - P.2256

Point
◎critical diseaseを見逃さないため,神経症候ごとのred flagsを必ず確認する.
◎common diseaseを診断できるようになるため,まずは専門医のフィードバックを得る.
◎curable diseaseを見逃さないため,症状が改善しない場合は専門医に紹介する.
◎神経筋疾患の診断では,病歴聴取を重視し,神経症候ごとに必要最低限の神経診察を行う.
◎病歴聴取を疎かにしての網羅的な神経診察や検査は,誤診の危険性があることを知る.

各論(症状編)

頭痛の診かた—くも膜下出血などの危険な頭痛,片頭痛などの頻度の高い頭痛の鑑別ポイント

著者: 菊井祥二 ,   竹島多賀夫

ページ範囲:P.2258 - P.2261

Point
◎片頭痛の病態仮説として,三叉神経終末からsubstance Pやcalcitonin gene-related peptideなどの神経伝達物質が放出され,血管拡張や神経原性炎症が引き起こされることにより片頭痛発作が誘発される三叉神経血管説が提唱され,現在まで広く受け入れられている.
◎頭痛診療では,くも膜下出血などの緊急性の高い二次性頭痛を鑑別することが第一歩となる.二次性頭痛の鑑別は問診,身体所見,神経学的所見を丁寧にチェックし,画像検査や血液検査,髄液検査などを組み合わせて進める.
◎慢性的な頭痛のために医療機関を受診する患者の多くは片頭痛である.一次性頭痛の鑑別では,片頭痛があるかどうかを意識して問診する.

めまいの診かた—危険なめまい,頻度の高いめまいの鑑別ポイント

著者: 城倉健

ページ範囲:P.2262 - P.2267

Point
◎危険な中枢性めまいを鑑別するためには,めまい以外の神経症候(眼球運動障害,構音障害,麻痺,感覚障害,運動失調)を探す.
◎頻度の高い末梢性めまいを鑑別するためには,眼振(Dix-Hallpike testで誘発される回旋性眼振,supine head-roll testで誘発される方向交代性眼振,自発性に出現している方向固定性水平性眼振)に注目する.
◎中枢性めまいでしか出現しない眼振(注視誘発眼振,自発性の垂直性眼振や回旋性眼振)もめまいの鑑別に役立つ.

運動障害の診かた

著者: 園生雅弘

ページ範囲:P.2268 - P.2271

Point
◎発症の時間経過が最重要である.突然・急性発症では脳卒中を疑う.
◎麻痺の分布も有用.片麻痺は脳梗塞を示唆する.顔面麻痺,構音障害・失語の合併に注目する.
◎胸椎転移性腫瘍による対麻痺,脳卒中による単麻痺,Guillain-Barré症候群も救急対応を要する疾患である.
◎診察は,いわゆる上肢Barré試験,下肢Mingazzini試験,Babinski徴候ぐらいで十分である.

感覚障害の診かた—脳梗塞などの危険なしびれ,手根管症候群などの頻度の高いしびれの鑑別ポイント

著者: 大石真莉子 ,   神田隆

ページ範囲:P.2272 - P.2274

Point
◎「しびれ」の意味する内容は患者によってさまざまであり,運動障害や意識障害をしびれと訴える患者も少なくない.
◎感覚障害を主体とするしびれの診断には詳細な病歴聴取が重要である.
◎神経の障害部位により感覚障害のパターンはさまざまであり,障害部位による特徴的な症状のパターンを理解し,それぞれの症状に応じた代表的疾患を念頭に置き,診療に当たる必要がある.
◎急速進行性の感覚障害をきたす場合は,速やかに神経専門医へコンサルトする.

一過性意識消失の診かた—特に失神,てんかんとその鑑別診断

著者: 福武敏夫

ページ範囲:P.2276 - P.2279

Point
◎一過性意識障害の原因は多様であるが,数秒〜数分のものと数分〜数十分,さらに数時間に及ぶものに大別できる.
◎危険な一過性意識障害の原因として,くも膜下出血,低血糖,心原性失神,脳底動脈尖端症候群などが挙げられる.
◎失神と痙攣発作の鑑別は主に臨床的特徴の分析でなされる.
◎失神以外に注意すべき一過性意識障害をきたす疾患には睡眠時無呼吸症候群や代謝性意識障害,一過性全健忘などがある.

意識障害の診かた—脳ヘルニアなど緊急を要する病態の診断ポイント

著者: 藤井修一

ページ範囲:P.2280 - P.2282

Point
◎意識障害は緊急を要する病態が含まれるため,迅速に診断し治療を開始する必要がある.
◎診断のために要点を絞った病歴聴取・身体所見・神経診察を行い,脳器質的異常とびまん性神経障害のどちらなのかを考える.
◎神経診察は,意識レベル,目の診察,運動機能の3つを必ず行う.
◎初期対応はA(気道)・B(呼吸)・C(循環)の安定化から行う.
◎血糖測定は必須である.

痙攣・不随意運動の診かた—てんかん発作などの危険な痙攣・不随意運動,筋クランプなどの頻度の高い痙攣・不随意運動の鑑別ポイント

著者: 吉村元 ,   幸原伸夫

ページ範囲:P.2284 - P.2287

Point
◎痙攣という言葉が表す症候は多彩である.
◎痙攣・不随意運動の鑑別は,その発症様式と動きの特徴・出現部位を正確に把握することから始まる.
◎痙攣・不随意運動の鑑別には,随伴するその他の症状も大切である.
◎最終的には痙攣・不随意運動の原因を明らかにし,それに対処することが重要である.

もの忘れの診かた—治療可能な認知症,Alzheimer型認知症などの変性疾患による認知症の鑑別ポイント

著者: 玉岡晃

ページ範囲:P.2288 - P.2291

Point
◎認知症の診断には,まず「正常加齢に伴うもの忘れ」や「軽度認知障害」,「認知症と紛らわしい病態」を識別する必要がある.
◎その後,「治療可能な認知症」を除外し,Alzheimer型認知症をはじめとする認知症の鑑別診断を進めていく.
◎認知症の診断には何よりも問診が重要であり,適切な問診によって,「認知症か否か」,「生活機能障害をきたしている要因は何か」を明らかにすることが重要である.

歩行障害の診かた—頻度の高い歩行障害の種類と鑑別ポイント

著者: 赫寛雄 ,   相澤仁志

ページ範囲:P.2292 - P.2294

Point
◎診察では姿勢,歩幅,歩隔,足の挙上と接地,リズム,安定性に注目して観察する.
◎痙性片麻痺では内反尖足となり,足を外側に振り出して半円形を描くようにして歩行する.
◎腰帯部(中腰筋)の筋力低下により,動揺歩行が認められる.
◎Parkinson病では歩幅,歩隔,足の挙上,上肢の腕振りが減少する.

複視の診かた—脳血管障害などの危険な複視,糖尿病性末梢神経障害などの頻度の高い複視の鑑別ポイント

著者: 山原直紀 ,   吉倉延亮 ,   下畑享良

ページ範囲:P.2296 - P.2299

Point
◎複視は核下性,核間性,核上性に分けられる.
◎眼球運動の診察と,解剖学的診断の要点を理解する.
◎複視の診察は,単眼性・両眼性の判別,次いで脳血管障害やその他の危険な複視を除外する.
◎危険な複視が除外できたら,糖尿病性末梢神経障害などの頻度の高い複視を評価する.

嚥下障害の診かた—脳血管障害などの緊急を要する嚥下障害,Parkinson病などの頻度の高い嚥下障害の鑑別ポイント

著者: 谷口洋 ,   宮川晋治 ,   向井泰司

ページ範囲:P.2300 - P.2302

Point
◎嚥下は先行期,口腔準備期,口腔期,咽頭期,食道期の5期モデルで考える.
◎延髄外側梗塞の嚥下障害は時に重篤化し,唾液も飲めなくなる.
◎Parkinson病の嚥下障害は運動症状に比べ,抗Parkinson病薬の効果が乏しい.

呼吸困難の診かた—呼吸困難をきたす神経疾患の鑑別ポイント

著者: 清水俊夫

ページ範囲:P.2304 - P.2306

Point
◎神経疾患における呼吸障害は,さまざまな病巣が原因で起こる.特に呼吸中枢の障害による症状と横隔神経・横隔膜の障害による症状は異なることを理解する.
◎呼吸障害の評価法は,病歴・症状・理学所見のほか,外来診察室でできる検査としては経皮動脈血酸素飽和度,努力肺活量,咳嗽最大流量,最大呼気流量,呼気終末二酸化炭素分圧などである.
◎Guillain-Barré症候群は入院後呼吸モニターが必須である.筋萎縮性側索硬化症では,努力肺活量や終夜酸素飽和度測定が非侵襲的呼吸療法導入の目安になる.多系統萎縮症では,声帯麻痺などによる上気道閉塞に留意する.

各論(疾患編)

脳卒中を疑う神経症候とその対処法—突然の片麻痺,顔面麻痺,失語,構音障害

著者: 若林眞子 ,   鈴木健太郎 ,   木村和美

ページ範囲:P.2308 - P.2311

Point
◎プライマリ・ケア医には脳卒中を見逃さないことが求められる.
◎脳梗塞は血行再建により劇的な症状の改善が見込める.
◎脳梗塞治療の転帰改善には発症から治療までの時間短縮が重要である.
◎脳卒中はBEFASTで疑う.
◎機械的血栓回収術の適応症例はELVO screenを用いて簡便に検出できる.

てんかんを疑う神経症候とその対処法—痙攣以外にもある発作症状

著者: 岡山公宣 ,   松本理器

ページ範囲:P.2312 - P.2316

Point
◎痙攣や意識消失はてんかんとの鑑別が必要になる代表的な症候であるが,まずは早期の治療介入を要する急性疾患や心血管疾患などの除外が必要不可欠である.
◎てんかんの診断には何よりも詳細な問診が重要であるが,特に気づかれにくい高齢発症てんかんなどについてもアンテナを張っておくことが重要である.
◎てんかんが疑われる患者では一度は専門医へ紹介することが望ましい.

髄膜炎・脳炎を疑う神経症候とその対処法—どの髄膜刺激徴候を確認すべきか

著者: 亀井聡

ページ範囲:P.2318 - P.2321

Point
◎髄膜炎や脳炎は,初期治療が患者の転帰に大きく影響する緊急対応疾患である.
◎髄膜炎では,基本的に発熱に髄膜刺激症状である頭痛や悪心・嘔吐を呈する.
◎脳炎では,基本的に発熱に精神症状・意識障害・不随意運動・痙攣など脳症状を呈する.髄膜炎を伴っている場合には,これに髄膜刺激症状が加わる.
◎髄膜刺激徴候として,項部硬直,Kernig徴候,Brudzinski徴候を評価する.
◎症状と発症経過から髄膜炎や脳炎(髄膜脳炎)を想定し,神経所見を確認し,手順に従って検査を行う.
◎神経放射線検査が迅速に施行できない場合には,治療を開始する.

Guillain-Barré症候群を疑う神経症候とその対処法—急性発症の四肢麻痺やしびれ

著者: 国分則人

ページ範囲:P.2322 - P.2324

Point
◎Guillain-Barré症候群は,急性四肢麻痺の原因疾患として最も頻度が高い.
◎Guillain-Barré症候群の脱力は,基本的に近位筋と遠位筋の両方に分布する.
◎Guillain-Barré症候群の診断は,急性発症の上下肢の脱力が末梢神経障害に起因することを証明することによる.
◎急性期には,現在進行形で不可逆的な神経障害が起きている,という意識をもつ必要がある.

慢性頭痛—片頭痛を緊張型頭痛と誤診しない

著者: 清水利彦

ページ範囲:P.2326 - P.2328

Point
◎頭痛の分類と診断は『国際頭痛分類第3版(ICHD-3)』に基づいて行われる.
◎体動より頭痛が増悪するのは片頭痛の特徴的な症状である.
◎両側性および非拍動性など緊張型頭痛を疑う所見があっても,中等度以上の頭痛で,体動で増悪する場合は片頭痛の可能性がある.

認知症—Lewy小体型認知症をAlzheimer型認知症と誤診しない

著者: 和田健二

ページ範囲:P.2330 - P.2332

Point
◎Lewy小体型認知症(DLB)認知機能障害は,病初期には記憶障害が目立たず,注意,遂行機能や視空間認知の障害が前景になる.
◎DLBの行動・心理症状は,繰り返される幻視,誤認妄想や重複記憶錯誤が特徴的である.うつ症状から発症する例もある.
◎DLBでは,病初期においてパーキンソニズムが出現し動作緩慢や転倒が目立つ.ただし,運動症状を欠く例も存在する.
◎DLBでは,レム睡眠行動異常症,自律神経症状,嗅覚障害や抗精神病薬への過敏性の確認が診断に役立つ.

Parkinson病とその関連疾患を疑う神経症候および対処法—振戦,運動緩慢

著者: 柏原健一

ページ範囲:P.2334 - P.2336

Point
◎運動の遅さ,小ささ,手のふるえ,前傾姿勢,小刻み歩行,表情の乏しさなどを観察する.
◎Parkinson病診断には,静止時振戦,筋強剛,運動緩慢を評価する.
◎嗅覚障害,うつ,寝言,便秘,頻尿,立ちくらみ,疼痛などの非運動症状が3つ以上あるか,チェックする.

末梢神経障害を疑う神経症候とその対処法—手足のしびれ,筋力低下

著者: 三隅洋平 ,   植田光晴

ページ範囲:P.2338 - P.2341

Point
◎末梢神経障害はプライマリ・ケアにおいて最も多く遭遇する病態の一つである.
◎末梢神経障害による多彩な症候とその分布を正確に評価することが診断に重要である.
◎多岐にわたる原因疾患の鑑別を系統的に進め,疾患・病態に応じた治療を行う必要がある.

脊椎疾患を疑う神経症候とその対処法—手足のしびれ,筋力低下

著者: 伊藤翔太 ,   安藤哲朗 ,   川上治

ページ範囲:P.2342 - P.2344

Point
◎脊椎疾患は高頻度であり,病歴聴取のポイントをおさえておく.
◎しびれの発症経過,性状・範囲,増悪寛解因子の詳細な問診が必要である.
◎急激な筋力低下や排尿・排便障害は早急なコンサルトが必須である.

筋疾患を疑う神経徴候とその対処法—筋力低下,こわばり

著者: 砂田芳秀

ページ範囲:P.2345 - P.2347

Point
◎筋疾患ではどのような訴えがあり,それがどのような神経所見に対応するのか理解する.
◎筋疾患を神経疾患から鑑別する神経所見の特徴を把握しておく.
◎筋疾患の多様性と遠位筋が侵される筋疾患があることを知っておく.
◎補助検査の意義を理解し,適切なタイミングで専門医にコンサルトする.

神経筋接合部疾患を疑う神経症候とその対処法—筋力低下,疲れやすさ

著者: 畑中裕己

ページ範囲:P.2348 - P.2352

Point
◎筋力低下は近位筋優位にみられる.初発部位は重症筋無力症(MG)が眼筋,Lambert-Eaton筋無力症症候群(LEMS)は下肢近位筋が多い.症状の進展はMGが首から下肢へ,LEMSは下肢から首へと逆になる.LEMSは神経内科医にも診断が非常に難しい.
◎眼筋症状にテンシロンテストを施行するときは,プラセボを用意して併用する.全身型はクリーゼの危険を考慮しながら検討する.全身型への疾患特異性は低い.

筋萎縮性側索硬化症(ALS)を疑う神経症候とその特徴—筋力低下,体のぴくつき

著者: 和泉唯信 ,   福島功二 ,   沖良祐

ページ範囲:P.2354 - P.2357

Point
◎筋力低下,筋萎縮,線維束性収縮(体のぴくつき)は筋萎縮性側索硬化症を疑うきっかけになる.
◎それに加えて体重減少,球麻痺,呼吸筋麻痺を認める場合はより積極的に疑う.
◎画像検査で頸椎症などの脊椎・脊髄疾患が疑われたとしても筋萎縮性側索硬化症の合併は否定できない.

多発性硬化症関連疾患を疑う神経症候とその対処法—突然の歩行障害,視覚障害

著者: 越智一秀

ページ範囲:P.2358 - P.2360

Point
◎多発性硬化症関連疾患の診療では,疾患の特徴を理解したうえでの詳細な病歴聴取と生活環境を含めた調整が重要である.

特集の理解を深めるための26題

問題/解答

ページ範囲:P.2362 - P.2365

連載 見て,読んで,実践! 神経ビジュアル診察・32

歩き方がヘン!?—失調性歩行

著者: 難波雄亮

ページ範囲:P.2237 - P.2240

 皆さんは「歩いているとふらつくんです」という主訴で受診される方を診る機会はあるでしょうか? 最初から神経障害を疑って診ると,早期に発見することができます.「バランスがとれない」と言われたとき,どんな疾患を想定するでしょうか? バランス障害=小脳性失調だけではありません.今回は小脳障害・深部感覚障害で発症する「失調性歩行」について学びましょう!
 
*本論文中、関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年11月30日まで公開)。

ケースレポートを書こう! acceptされるために必要なこと・9

ケースレポート作成の障壁とは?

著者: 見坂恒明 ,   合田建 ,   鎌田百香

ページ範囲:P.2366 - P.2370

 本連載ではこれまで8回にわたり,ケースレポートになりうる症例の選択から,ケースレポートの書き方,投稿の実際,査読対策に至るまでを解説してきた.今回は連載の最終回として,ケースレポート作成の障壁となる要因と対策について解説したい.
 まずは筆者たちのチームでケースレポート作成を行った医師の生の声をお届けする.

フレーズにピンときたら,このパターン! 鑑別診断に使えるカード・12

「慢性下痢」「持続性/難治性吃逆」「片側性眼瞼下垂」

著者: 長野広之

ページ範囲:P.2372 - P.2381

総論
 急性下痢は「14日以内の1日3回以上の下痢」と定義され,多くは感染症(ウイルス,細菌)ですが,一部危険な重症感を伴う下痢もあるため注意が必要です.これについては本連載第2回の「重症感を伴う下痢」を参照してください.対して慢性下痢は4週間以上続く下痢と定義されますが,鑑別はかなり多岐にわたり中々覚えられません1).そこで筆者は重要な慢性下痢の鑑別を図1の「3×3+1」で覚えています.Watery,Fatty,Inflammatoryのカテゴリーはキレイに分かれるわけではなくオーバーラップすることも多いですが覚えやすくするために用いています.ではそれぞれ見ていきましょう.

目でみるトレーニング

問題967・968・969

著者: 岩崎靖 ,   久田敦史 ,   多賀谷知輝

ページ範囲:P.2382 - P.2387

書評

—岡 秀昭・川村隆之・西田裕介・山下裕敬 著—感染症プラチナ流コンサルト

著者: 伊東直哉

ページ範囲:P.2307 - P.2307

 私が岡先生を尊敬する理由の一つに岡先生が素晴らしい教育者であるということがあります.岡先生は,自身が長い修行期間を経たのだからといって,教え子にも同じ期間の修行を要求するタイプの医師ではありません.
 さて,感染症科にご相談いただく症例のなかには,発熱に対して必要な培養検査のみならずアセスメント不在で抗菌薬が処方されているケースがわんさかあります.少しでも臨床感染症を勉強したことのある人にとっては,こういったプラクティスが間違いであることは明白です.しかし,こういった症例に対して正論を相手にゴリ押しすれば,面倒なやつだとレッテルを貼られ,コンサルトが来なくなり,感染症科はいずれ沈没してしまうでしょう.私自身もそういったケースの主治医に対してネガティブな感情をぶつけてしまったことがありました.しかし,現在では長期間および頻回に同様のケースに曝露された結果,耐性機序を獲得しネガティブな感情は排泄ポンプですぐに排除され,日々の表情筋のトレーニングで感情を抑えた顔を保持することができるようになりました.とはいえ,私が“悟り”を開くまでにはある程度の期間が必要であったのは事実であり,そこに至るまでにいくつものトラブルがありました.

—黒川勝己・園生雅弘 著—《ジェネラリストBOOKS》—“問診力”で見逃さない神経症状

著者: 砂田芳秀

ページ範囲:P.2317 - P.2317

 著者の黒川勝己先生は,園生雅弘先生の薫陶を受けた電気生理診断を専門とする脳神経内科専門医であるが,臨床現場では一貫して患者第一主義を貫き,自らgeneral neurologyを標榜しているように,そのオールラウンドな臨床能力には定評がある.学生への講義,研修医やかかりつけ医を対象とした彼の講演は大変わかりやすいと高く評価されている.本書は彼が1年にわたって『週刊医学界新聞』に連載し,好評を博した「“問診力”で見逃さない神経症状」というシリーズに総論を加え単行本としてまとめたものである.
 神経解剖の複雑さ,鑑別診断の多さ,神経診察の煩雑さのゆえだろうか,神経疾患の診療に苦手意識を持っている研修医やかかりつけ医は多い.本書はそのような方にぜひ一読してもらいたい.本書のユニークな特徴は,神経診察手技や症候学ではなく,問診の仕方にフォーカスしている点にある.頭痛,めまい,しびれ,一過性意識消失などの日常診療で遭遇することの多いコモンな神経症状を取り上げ,見逃してはいけない重篤な神経疾患の鑑別に役立つ,問診のポイントが実際の質問のせりふとともにわかりやすく解説されている.例えば,めまいを訴える患者に対して,「めまいの持続時間」に加え「顔のしびれ感」の有無を聴くことで,椎骨脳底動脈系のTIAを見逃さない.けいれん発作患者の診察に際して,目撃者から「発作中,目は開いていましたか」と聴くことで,てんかん発作を鑑別できる,など.知っているか否かで診療レベルに歴然とした差が出るようなポイントが述べられている.一読いただければ,明日から自信を持ってこうした症状の患者の診療に向き合えるようになるだろう.

—瀬嵜智之 著—Dr. セザキング直伝!—最強の医学英語学習メソッド[Web動画付]

著者: 清澤宝

ページ範囲:P.2325 - P.2325

 “USMLE”と聞いて,憧れをもちつつも,ハードルが高いように感じて挑戦するに至らなかった学生も少なくないはず.「そもそもUSMLEって何から手をつけるの?」「英語力はどれくらい必要なの?」「自分でも合格できる可能性はあるの?」といったさまざまな疑問によって,やがては「やっぱりやめときますわ!」に落ち着いてしまう.そんな学生にとって,本書は必読の書籍ではないかと感じた.まさに英語力ゼロに近い状態からUSMLE最高得点を叩き出したDr. セザキングの医学英語学習メソッドは,英語に苦手意識をもつ学生に夢や希望を与える.
 第1章〜第4章では「なぜ英語力に乏しかったDr. セザキングがUSMLEに合格できたか?」「USMLE合格という目的を達成するために,どのように英語を勉強するべきか?」ということが具体的に書かれており,USMLEをゼロから勉強するための事前準備が明確になるであろう.また医学英語を勉強するうえで非常に役立つ知識や考え方がユーモアたっぷりに書かれているので,USMLEを受験しない医学生にとっても医学英語を勉強するきっかけになるに違いない.

—國松淳和 編—不明熱・不明炎症レジデントマニュアル

著者: 鈴木富雄

ページ範囲:P.2329 - P.2329

 この書の「序」は次の文章で始まる.
 “不明熱の臨床はざっくりと次の2つの問題を内包しています.

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目次

ページ範囲:P.2242 - P.2244

読者アンケート

ページ範囲:P.2393 - P.2393

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.2394 - P.2395

購読申し込み書

ページ範囲:P.2396 - P.2396

次号予告

ページ範囲:P.2397 - P.2397

奥付

ページ範囲:P.2398 - P.2398

「medicina」第57巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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