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雑誌目次

雑誌文献

medicina57巻5号

2020年04月発行

雑誌目次

特集 デキル内科医のコンサルト—専門医が教える隠れたエッセンス

著者: 和足孝之

ページ範囲:P.613 - P.613

 今から約7年前,私は戦国無双と名付けたフィールドワークを行っている最中でした.それは関東中の救急告示病院で「救急当直」を行うというもので,なぜ数多く病院があるはずの都市部で患者さんの応需困難が起こるのか? また,同じ病院にずっといるとわからなくなる医療のブラックボックスを確認するための実験的な調査でした.ある病院では,胸部X線,血液ガス,血糖測定のみで救急搬送者に対応しなければならず,ある病院ではすべての肺炎にはこの抗菌薬を使うというローカルルールがあり,またコンサルトを行うタイミングや自分が診なければならない診療の幅も施設ごとにかなり大きく異なるということを肌身に感じました.これは自分がそれまで経験したことのない医療の現場であり,そして自分の見ていた医療だけが当たり前のように感じていた自分の視野の狭さを強く恥じたことを鮮明に覚えています.非常勤の当直医師として連戦を重ねていく中で,特に一番難しく,気を使ったことが他科へのコンサルトでした.
 コンサルトを依頼する場合には,情報の集約化と簡潔性が重要です.時には相手が理解し映像化できるように情報を伝えるスキルが求められます.一方で,医学が細分化されて専門性が高まっているなか,隣の臨床領域でさえ,まるで外国語のように聞こえ,共通言語が持たれていない,と感じることもあります.また,適切なコンサルトであると思っている感覚は医師の経験や環境によって極めて容易に変動し,クリニカルセッティングとその現場での暗黙知で決まることもあります.

座談会

コンサルト技術のスキルアップとその前に立ちはだかるもの

著者: 徳田安春 ,   和足孝之 ,   志水太郎

ページ範囲:P.614 - P.621

コンサルトに苦手意識をもっている方は多いのではないでしょうか.自分が適切なコンサルトだと思っていても,逆の立場からするとそうでないこともあり,何をもって適切なコンサルトとするのか,その判断はことさら難しくなります.この鼎談では,私のメンターであり,スーパードクターのお2人がもつコンサルト・スキルの一端を引き出し,それを身につけるための術についてお話いただきたいと思います.(和足)

コンサルトを依頼する

意識障害を伴う脳梗塞を疑う場合

著者: 関根一朗

ページ範囲:P.622 - P.624

Point
◎意識障害は収縮期血圧(SBP)で頭蓋内病変の有無を判断する.
◎意識障害でSBP>180mmHgは脳卒中を疑う.
◎血圧正常〜低値の脳卒中症状は大動脈解離や感染性心内膜炎を疑う.
◎脳卒中症状を見たら,stroke mimicの除外も意識する.

COPDが疑われる場合

著者: 西野宏一 ,   関健一

ページ範囲:P.626 - P.629

Point
◎慢性閉塞性肺疾患(COPD)はcommon diseaseだが,未診断・未治療の「隠れCOPD」患者が多い.
◎COPDは症状や身体所見に乏しいこともあるため,喫煙歴などの患者背景から「まず疑うこと」が非常に重要である.
◎COPD-Q質問票はCOPDの簡便なスクリーニングとして有用である.
◎COPDでコンサルトを依頼する際には,詳細な喫煙歴や呼吸器症状の病歴を記載するとよい.少しでも疑われれば,精査する.

特発性肺線維症を疑う場合

著者: 新津敬之 ,   上野清伸 ,   内田純二

ページ範囲:P.630 - P.634

Point
◎特発性肺線維症(IPF)は診断が遅れることや,専門施設への紹介の遅れによる死亡リスク上昇の可能性も指摘されており,早期診断が肝要である.
◎今後,抗線維化薬の適用範囲は広がる可能性がある.
◎早期診断,介入のためには両側肺底部の捻髪音(velcro crackles/fine crackles)に注目することが重要である.

結核を疑う場合

著者: 中島啓 ,   吉見倫典

ページ範囲:P.635 - P.637

Point
◎呼吸器症状(咳嗽,胸痛,呼吸困難など)と全身症状(発熱,体重減少,寝汗など)に加え,結核のリスクファクターがあれば肺結核を疑う.
◎診断の基本は,抗酸菌染色(塗抹検査),核酸増幅検査(PCR法やLAMP法など),抗酸菌培養である.
◎喀痰の抗酸菌塗抹検査は3回まで繰り返す.痰が出ない場合には,高張食塩水(3%食塩水)の吸入で誘発喀痰を採取する.

急性心不全を疑う場合

著者: 田中寿一

ページ範囲:P.638 - P.641

Point
◎急性心不全の初期診断ツールとしては「問診」と「身体所見」が重要である.
◎問診に関しては,特に病歴と自覚症状に関する問診が有用である.
◎身体所見は一見簡便なアプローチと思われるが,習熟を要す.
◎診断が難しい症例もあるため,疑わしい症例に対してはタイミングを逃すことなく専門医へのコンサルトを検討する.

心原性失神を疑う場合

著者: 眞柴貴久 ,   水野篤

ページ範囲:P.642 - P.645

Point
◎心原性失神は予後不良であり,突然死にいたる可能性もある.
◎心原性失神でも,必ずしも前駆症状があるとは限らず,むしろ動悸や胸部絞扼感を伴わないことも多い.
◎初診時で原因が明らかにならない失神において,高リスク患者(≒心原性失神が疑われる患者)を判別し,重症度に応じたタイミングでの専門医へのコンサルトが重要である.

消化管出血を認める場合

著者: 岡本武士

ページ範囲:P.646 - P.648

Point
◎鉄欠乏性貧血ではない慢性貧血精査に内視鏡検査は必要ない.
◎消化管出血の精査目的での便潜血検査は必要ない.
◎胃洗浄だけでは上部消化管出血を否定できない.
◎便の性状やBUN/クレアチニン比率が上部・下部消化管出血の鑑別に有用である.

肝酵素異常を認める場合

著者: 岡本武士

ページ範囲:P.649 - P.651

Point
◎肝酵素上昇=肝疾患ではない.
◎肝胆道系酵素以外の採血項目も確認する.
◎肝移植の相談はお早めに!

検尿異常を認める場合

著者: 須藤航

ページ範囲:P.652 - P.654

Point
◎血尿+蛋白尿,細胞性円柱の存在は糸球体腎炎を疑う.
◎検尿異常や腎機能障害は「いつから異常所見が出現したのか」が重要である.
◎腎臓以外の症状(発熱,関節痛など)も糸球体腎炎を診断するうえで有用な所見となる.

低カリウム血症を認める場合

著者: 須藤航

ページ範囲:P.655 - P.657

Point
◎低カリウム血症では,時間的な発症経過に着目する(時間単位なのか,週単位・月単位なのか).
◎低カリウム血症の原因は,①経口摂取量の低下,②腎性喪失,③腎外喪失,④細胞内への移動の4つである.
◎急性発症の低カリウム血症では,カリウム細胞内移動を誘発する因子(代謝性アルカローシス,甲状腺ホルモン,インスリン,β2アゴニスト)の関与を疑う.

1型糖尿病を疑う場合

著者: 山本かをり

ページ範囲:P.658 - P.662

Point
◎1型糖尿病のほとんどは,インスリン治療が不可欠なインスリン依存状態を呈する.
◎直ちにインスリン治療を開始する必要があり,他の成因による糖尿病との鑑別が重要である.
◎膵島関連自己抗体が陰性である場合もあり,内因性のインスリン欠乏の評価には,空腹時血清Cペプチドを用いる.

糖尿病患者の血糖管理

著者: 辻本哲郎

ページ範囲:P.664 - P.669

Point
◎糖尿病の治療の流れや必要な臨床情報について理解する.
◎インスリンの適応があるかないかを見極め,必要時は至急コンサルトを依頼する.
◎糖尿病の成因・分類,患者背景,併存症・合併症の情報は,治療を考えるうえでも重要な情報である.

Parkinson病を疑う場合

著者: 山本大介

ページ範囲:P.670 - P.672

Point
◎診断で役に立つキーワードは,「MDSの診断基準」の中にちりばめられています.
◎運動障害をきたす疾患ですが,「非運動症状」がヒントになり重要です.
◎運動症状は,無動(動きの遅さ)が一番大切です.
◎「進行性」で「左右差」のある,「動作の緩慢さ」,が最もシンプルで重要な情報です.

片頭痛を認める場合

著者: 二村明徳 ,   兼元みずき ,   小野賢二郎

ページ範囲:P.673 - P.675

Point
◎頭痛の診断は『慢性頭痛ガイドライン』を参考にする.
◎片頭痛か緊張型頭痛の鑑別にはPOUNDが役立つ.
◎片頭痛の「誘因」,「予兆」,「後症状」も聞くとより理解が深まる.

特発性末梢性顔面神経麻痺(Bell麻痺)を疑う場合

著者: 藤原崇志

ページ範囲:P.676 - P.678

Point
◎中枢性顔面神経麻痺との鑑別のため前額の麻痺を確認する.
◎味覚障害や耳後部痛の有無,また顔面の感覚異常の有無を確認する.
◎鼓膜所見,耳下部所見を確認し,耳炎性,腫瘍性(耳下腺癌)を除外する.

良性発作性頭位めまい症を疑う場合

著者: 佐藤進一 ,   藤原崇志

ページ範囲:P.679 - P.681

Point
◎良性発作性頭位めまい症(BPPV)ではめまいは安静にすると1分程度でめまいが落ち着く.
◎BPPVの患者は頭位を固定して体位を変換したり歩いたりすることが多い.診察室に入り座るまでの患者の動きに注目する.
◎BPPVでは蝸牛症状(難聴)は生じない.蝸牛症状があれば別の疾患を鑑別診断として考える.

急性緑内障発作を疑う場合—この症例は「らしい?」「らしくない?」

著者: 能美なな実

ページ範囲:P.682 - P.685

Point
◎急性緑内障発作における眼圧は40mmHg以上のことが多い.
◎白内障手術歴があればほぼ除外できる.
◎薬剤使用歴は,内服だけでなく点眼薬についても聴取する.
◎角膜浮腫は角膜全体が白っぽく濁って見える.

溶連菌感染症後反応性関節炎を疑う場合

著者: 陶山恭博

ページ範囲:P.686 - P.689

Point
◎溶連菌感染症を治療する際のピットフォールは,ペニシリンへの過敏症やコーラ色の尿で有名な糸球体腎炎,急性リウマチ熱に加えて,溶連菌感染症後反応性関節炎がある.
◎結節性紅斑は診断名とは限らず,他の疾患を示唆する1つの徴候である場合がある.

ミルク・アルカリ症候群を疑う場合

著者: 陶山恭博

ページ範囲:P.690 - P.694

Point
◎ミルクとアルカリがなくとも,ミルク・アルカリ症候群を呈する.
◎ビタミンD製剤はビタミンだから安全とは限らない.
◎高カルシウム血症をみたら,アルカローシスの有無もチェックしよう.
◎カルシウムやビタミンD製剤による骨粗鬆症の治療,マグネシウム製剤やサイアザイド系利尿薬もミルク・アルカリ症候群のリスクになる.

薬疹を疑う場合

著者: 照井仁

ページ範囲:P.695 - P.697

Point
◎薬疹はすべての発疹型を取りうる.
◎まずは薬疹発症から2週間以内に内服した薬を洗い出す.
◎重症薬疹否定のために必ず粘膜をチェックする.

原発不明がん(潜在性乳癌)を疑う場合

著者: 伊藤亮治

ページ範囲:P.698 - P.701

Point
◎原発不明がんは最終的には病理診断ではなく臨床診断である.
◎一般的に原発不明がんは予後不良な疾患である.
◎原発不明がんには治療反応が望めるspecific treatable subgroupがある.
◎女性の腋窩リンパ節腫大をみたら,乳癌を想起する.

うつ病を疑う場合

著者: 高尾碧

ページ範囲:P.702 - P.705

Point
◎精神科領域の診断は,臨床面接で判断する.
◎本人のみでなく,周囲からの情報も考慮して判断する.
◎希死念慮,精神病エピソードを呈している場合は早めにコンサルトを依頼する.
◎普段から連携しやすい体制づくりをしておくことが重要である.

悪性リンパ腫疑いの場合

著者: 佐藤淑

ページ範囲:P.706 - P.709

Point
◎リンパ節腫大を主訴に来院する患者のうち,悪性腫瘍である可能性は20%程度である.
◎まずは,病歴と身体診察,エコー所見で良性か悪性かを考える.
◎弾性硬で圧痛のないリンパ節腫脹はリンパ節生検を考慮する必要がある.
◎悪性リンパ腫を疑った場合は,積極的に頸部から骨盤までの造影CTを行い,oncologic emergencyに至る病変がないか見逃さない.

リンパ節腫脹を認める場合

著者: 牧山純也

ページ範囲:P.710 - P.713

Point
◎リンパ節腫脹がある患者では,年齢,圧痛の有無,大きさ,全身瘙痒感の有無,鎖骨上リンパ節腫脹の有無,硬さなどに注意して診察する.
◎悪性リンパ腫を疑った場合には,成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)も鑑別に入れ,出身地などの詳細な病歴聴取に努める.
◎ATLでは高カルシウム(Ca)血症などの腫瘍随伴症候群を認めることもあり,迅速な治療介入が必要となることが多い.

急性大動脈解離を疑う場合

著者: 真鍋晋

ページ範囲:P.714 - P.717

Point
◎常に迅速な対応を心がける.
◎胸痛に関する綿密な問診が重要である.身体所見では,血圧左右差や巣状神経学的異常が有用である.
◎急性大動脈解離を万が一見落としてしまうと,重篤な転帰となる可能性が高い.解離を除外する場合には,体系的に複数の所見を組み合わせるなど,慎重な対応が必要である.

右下腹部痛を主訴とする急性腹症

著者: 佐藤武揚

ページ範囲:P.718 - P.722

Point
◎急性腹症は疾患名でなく症状から診断するもので,関わる臓器は複数にわたる.
◎急性腹症は血液検査や画像検査で偽陰性のことがあり,病歴や身体所見から総合的に判断する.
◎急性腹症は初療時に診断がつかないことが稀ではなく,まず生命に危険を及ぼす徴候があるかどうか(step1)を評価し,その後,病態,身体所見から診断を進める(step2).

足関節捻挫/骨折を疑う場合—圧痛点を極めよう!

著者: 藤井達也

ページ範囲:P.724 - P.727

Point
◎「内反」の受傷機転を確認し,足関節受傷部位を想起する.
◎圧痛部位は,細かく外果の前方,後方,第5中足骨基部を確認する.
◎歩行可能か確認し,できない場合骨折を除外しないようにする.
◎コンサルト依頼内容は,「固定」と「免荷」で判断する.

高齢者の脊椎圧迫骨折を疑う場合

著者: 宮川慶

ページ範囲:P.728 - P.730

Point
◎高齢者の腰痛のなかには,脊椎圧迫骨折が潜んでいる可能性がある.
◎単純X線検査を行う際には,腰椎2方向+立体側面を撮影するとよい.
◎脊椎圧迫骨折を少しでも疑えば,ためらわずにすぐ整形外科医にコンサルトを依頼する.

未破裂脳動脈瘤を疑う場合

著者: 壽美田一貴

ページ範囲:P.732 - P.735

Point
◎脳動脈瘤において出血を疑う場合,動眼神経麻痺が出現している場合は緊急でコンサルテーション,もしくは脳神経外科医が対応できる病院へ搬送する.
◎未破裂脳動脈瘤は成人の約2〜3%に認められる.(少なくない!)
◎未破裂脳動脈瘤の年間破裂率は約0.95%である.(高くない!)
◎未破裂脳動脈瘤と診断されることにより患者の不安が高まることが報告されており,不用意な説明は避け,脳神経外科医と相談することを勧める.

女性の腹痛—コンサルトのコツと落とし穴

著者: 柴田綾子

ページ範囲:P.736 - P.740

Point
◎月経中だと言っていても妊娠していることがある.
◎骨盤内炎症性疾患では帯下の異常が重要.
◎骨盤内炎症性疾患では発熱がないこともある.

排尿障害のマネージメント依頼

著者: 水流輝彦

ページ範囲:P.742 - P.745

Point
◎腹部所見:腹部膨満は尿閉の可能性がある.
◎超音波検査:残尿の有無の確認,残尿が多いときは水腎症の有無を確認する.
◎主訴が蓄尿障害のとき:排尿障害が隠されていることを意識して問診・検査を行う.

乳幼児の尿路感染症を疑う場合

著者: 倉橋幸也

ページ範囲:P.746 - P.749

Point
◎乳幼児の熱源不明の発熱では尿路感染症(UTI)を必ず鑑別に挙げる.特に咽頭発赤がない場合は,注意が必要である.
◎尿培養は,クリーン・キャッチもしくは導尿で確保した尿を提出する.
◎バッグ尿で尿培養を提出すると,コンタミネーションの確率が高い.
◎抗菌薬投与前には必ず血液培養も提出する.

コンサルトを依頼されたら

ポリファーマシーのコンサルタント依頼を受けたら

著者: 野溝崇史

ページ範囲:P.750 - P.752

Point
◎ポリファーマシーは多くの薬物有害事象につながるだけでなく,多くの患者不利益を生じさせる.
◎処方カスケードと潜在的な不適切処方を知り,各種クライテリアを参考にして薬剤を評価する.
◎総合的な判断も必要なことも多いため,迷ったら各併診科・他職種・患者を巻き込み総合的に介入する.

食べられない高齢者のコンサルタント依頼を受けたら

著者: 野溝崇史

ページ範囲:P.754 - P.756

Point
◎高齢者の“食べられない”はコモンプロブレムだが鑑別は多岐にわたり,介護・方針決定で問題になる.
◎口腔内の問題は稀ではなく,簡単にわかるのでしっかり診察しよう.
◎薬剤性が原因であることも多く,詳細な内服歴の聴取が大切である.
◎食事が摂れないのに制限食を続けない,食形態を落としすぎない.

特集の理解を深めるための31題

問題/解答

ページ範囲:P.757 - P.761

連載 見て,読んで,実践! 神経ビジュアル診察・24

眼の位置がおかしい!?—眼球運動障害の診方①(外転神経麻痺)

著者: 難波雄亮

ページ範囲:P.605 - P.608

 物を見るときに,われわれは瞳孔を調節し眼球を動かします.眼球を動かすのは外眼筋です.この筋肉に元々異常がある場合にも複視が生じます.しかし後天的に外眼筋の麻痺が生じている場合,神経障害による影響を考える必要があります.神経支配で言うと動眼神経・滑車神経・外転神経が眼球運動を司ります.今回は,外転神経麻痺について勉強していきましょう.
 
*本論文中、関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年3月31日まで公開)。

ケースレポートを書こう! acceptされるために必要なこと・1【新連載】

ケースレポートにできる症例・できない症例って?(前編)

著者: 見坂恒明

ページ範囲:P.762 - P.766

 「学会発表した症例をケースレポートにしてみよう」という声はよく聞かれるが,実際にケースレポート作成にまで至ることは多くない.その理由として,指導医も含めて,具体的な書き方や投稿方法がわからないということがしばしば見受けられる.しかし,論文として掲載されたケースレポートは,日常診療で困ったときに解決の一助として役立つだけでなく,それ自体が臨床研究の起点となることがある.
 そこで本連載では,ケースレポートになりうる症例の選択から,書き方,投稿方法,査読対策に至るまでを提示・解説していく.まずは,ケースレポートになりうるのはどのような症例なのかを考えてみよう.

フレーズにピンときたら,このパターン! 鑑別診断に使えるカード・4

「CT正常のthunderclap headache」「回腸末端炎,回盲部炎」「反復性めまい」

著者: 長野広之

ページ範囲:P.768 - P.776

総論
 thunderclap headache(TCH,雷鳴頭痛)は一瞬で最大に達する突然の激しい痛みとされ,さまざまな重篤な疾患が原因となり,くも膜下出血(SAH)が代表的な疾患である(図1)1)
 SAHはCTで診断がつくことが多いが,貧血の場合や発症から時間が経った場合は偽陰性になりうる2).CT陰性でもSAHが疑われる場合はMRI,髄液検査の適応となる……というように,CT正常でもSAHの可能性は残るのだが,他にTCHの鑑別は何だろうか?

物忘れ外来から学ぶ現場のコツ 認知症患者の診かた・23

超高齢者への治療はどのようにしたらよいですか?

著者: 重松一生

ページ範囲:P.778 - P.782

ポイント
高齢者の認知症では自発性低下が目立ちます.超高齢者では治療の“エビデンス”は少なくなってきますがQOLが目標となる点は変わりません.

目でみるトレーニング

問題943・944・945

著者: 黒田浩一 ,   會田哲朗 ,   梶原祐策

ページ範囲:P.783 - P.789

書評

—岸田直樹 著—誰も教えてくれなかった—「風邪」の診かた—感染症診療12の戦略 第2版

著者: 草場鉄周

ページ範囲:P.645 - P.645

 風邪は毎日遭遇する大切な健康問題であるが,多忙な外来の中でその背後に広がる深みのある世界に思いをはせることはそう多くはない.本書はその風邪を入り口としながら,風邪,そして感染症の診かたを実にわかりやすく具体的に解説した素晴らしい良書である.
 第1章では当たり前に思える風邪を主症状ごとに分類し,そのアプローチを明確に説明していく.第2章では風邪として扱われやすい〈発熱+α〉の症状を症状ごとに分類し,同じくそこに隠れているさまざまな疾患について鑑別診断のポイントを強調しながら解説する.第3章では高齢化が進む日本で重要となる高齢者診療において,感染症治療のスタンダードがいかに変化するかに力点を置きながら,12の指針を示す.最後の第4章はインフルエンザ診療に特化したノウハウが語られる.

—稲次直樹 著—見逃してはならない直腸肛門部疾患—「おしりの病気」アトラス—[Web動画付]

著者: 清水誠治

ページ範囲:P.731 - P.731

 稲次直樹先生は1970年のご卒業である.私の一回りより上の大先輩であり,既に50年のキャリアを重ねておられる.しかし直接お目にかかった印象は,とにかく若々しくエネルギッシュである.情熱を持続させることの難しさを痛感する昨今であるが,かくも永きにわたり第一線で大腸肛門病の診療に携わってこられたことにまずは敬意を表したい.外科医である稲次先生と私の接点は主に大阪で開催されている「大腸疾患研究会」であるが,これまでに実にいろいろなことを教えていただいた.その稲次先生が多くの協力者や共同研究者とともにワンチームとして咲かせた大輪の花が『「おしりの病気」アトラス[Web動画付]—見逃してはならない直腸肛門部疾患』である.
 本書の第一印象は,見た目に何とも美しい.表紙の赤とクリーム色で塗り分けられた「おしり」のデザインはシンプルでいて洒脱である.大判の本を手に取ってみると,程よい重さと滑らかな手触りで非常に心地よい.扉を開くと1ページ4〜5枚大迫力の「おしり」の画像が黒を背景に26ページにわたって押し寄せる.ソフトなタイトルとは裏腹に中身が極めてハードであることを予感させる.続く本編のⅠ編「直腸肛門部診療の基本」には必要な基礎的知識が全て盛り込まれているが,手間暇かけたシェーマがふんだんに用いられている.Ⅱ編「直腸肛門部疾患アトラス」は本書の核心部分であり,多くの疾患の画像が提示されるとともに,凝縮した解説が加えられている.それにしても何と掲載された画像の多いことか! 帯紙には“画像・イラスト約1,250点”と記載されている.疑り深い私が実際に数えてみたところ,実に写真が1,025点,イラスト(シェーマ)195点,加えて盛りだくさんの表やチャートが40点以上と宣伝文句に偽りはなかった.画像の多い本は一般に字が大きく文字数が少ないものであるが,さにあらず.相対的に小さい文字がびっしりと並び,内容が濃いことこの上ない.巻末のⅢ編「内科医・内視鏡医が知りたかったQ&A集」や付録「おしり問診票」も気が利いている.外科医が内科医の視点を持つことは難しいと思うが,それができているところがただ者でない.まさに痒いところに手が届く気配り満載である.所々に埋め込まれたQRコードにスマホをかざすと,「おしり」のアイコンが現れ「鑑別診断トレーニング(略して“尻トレ”)」や診察・手術の多数の動画が閲覧できる.

—余宮きのみ 著—がん疼痛緩和の薬がわかる本 第3版

著者: 伊勢雄也

ページ範囲:P.741 - P.741

 ヒドロモルフォンやメサドンなど,がん疼痛に対するオピオイド製剤が数年の間に相次いで登場し,個々の患者の疼痛や病態に適応した治療が行えるようになりました.また,オピオイド製剤以外にもナルデメジンといった副作用対策の薬剤も発売され,緩和医療分野における薬物治療は新しい時代に突入したといっても過言ではありません.しかし,これらの薬剤は痛みに苦しむがん患者にとって有用である一方,使い方を間違えれば重篤な副作用を発現する可能性があります.例えば,メサドンはQT延長などの致死的な不整脈を発現する可能性があり,使用の際には定期的に副作用をモニターしなければなりません.また,ナルデメジンも下痢などの消化器症状に十分注意しなければなりません.そのため,緩和医療の分野でも知識を日々アップデートしていくことが必要です.
 本書は「難しいことをやさしく理解できるように」「臨床現場で役立つ」というコンセプトのもと記載されており,緩和ケアをこれから学ぼうと思っている薬剤師の方々や学生でも,個々のがん疼痛治療薬の有効性や副作用を短時間で学べるよう,たくさんの工夫がなされています.

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目次

ページ範囲:P.610 - P.612

読者アンケート

ページ範囲:P.797 - P.797

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.798 - P.799

購読申し込み書

ページ範囲:P.800 - P.800

次号予告

ページ範囲:P.801 - P.801

奥付

ページ範囲:P.802 - P.802

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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