文献詳細
書評
—稲次直樹 著—見逃してはならない直腸肛門部疾患—「おしりの病気」アトラス—[Web動画付] フリーアクセス
著者: 清水誠治1
所属機関: 1大阪鉄道病院消化器内科
ページ範囲:P.731 - P.731
文献概要
本書の第一印象は,見た目に何とも美しい.表紙の赤とクリーム色で塗り分けられた「おしり」のデザインはシンプルでいて洒脱である.大判の本を手に取ってみると,程よい重さと滑らかな手触りで非常に心地よい.扉を開くと1ページ4〜5枚大迫力の「おしり」の画像が黒を背景に26ページにわたって押し寄せる.ソフトなタイトルとは裏腹に中身が極めてハードであることを予感させる.続く本編のⅠ編「直腸肛門部診療の基本」には必要な基礎的知識が全て盛り込まれているが,手間暇かけたシェーマがふんだんに用いられている.Ⅱ編「直腸肛門部疾患アトラス」は本書の核心部分であり,多くの疾患の画像が提示されるとともに,凝縮した解説が加えられている.それにしても何と掲載された画像の多いことか! 帯紙には“画像・イラスト約1,250点”と記載されている.疑り深い私が実際に数えてみたところ,実に写真が1,025点,イラスト(シェーマ)195点,加えて盛りだくさんの表やチャートが40点以上と宣伝文句に偽りはなかった.画像の多い本は一般に字が大きく文字数が少ないものであるが,さにあらず.相対的に小さい文字がびっしりと並び,内容が濃いことこの上ない.巻末のⅢ編「内科医・内視鏡医が知りたかったQ&A集」や付録「おしり問診票」も気が利いている.外科医が内科医の視点を持つことは難しいと思うが,それができているところがただ者でない.まさに痒いところに手が届く気配り満載である.所々に埋め込まれたQRコードにスマホをかざすと,「おしり」のアイコンが現れ「鑑別診断トレーニング(略して“尻トレ”)」や診察・手術の多数の動画が閲覧できる.
掲載誌情報