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雑誌目次

雑誌文献

medicina57巻7号

2020年06月発行

雑誌目次

特集 運動・スポーツ×内科—内科医に求められるスポーツ医学とは

著者: 田中祐貴

ページ範囲:P.1049 - P.1049

 近年のさまざまなスポーツにおける日本人選手の活躍はめざましく,世間の競技スポーツに対する関心は高いものがあります.一方で健康スポーツが,メタボリック症候群やロコモティブ症候群の予防に有用であることは明らかです.今回『運動・スポーツ×内科 内科医に求められるスポーツ医学とは』をテーマに,運動やスポーツと内科疾患の関連に焦点を当てた特集を編集させていただきました.
 私はまさに『運動・スポーツ×内科』を実践する「スポーツ内科」をメインの仕事にしています.スポーツ内科は,主に①運動・スポーツにより生じる内科的問題の予防や治療を行う医学,②生活習慣病などの内科疾患の予防や治療に運動・スポーツを積極的に活用する医学から成ります.本特集においては,①②それぞれの領域のテーマを幅広く扱うよう努めました.

対談

—プロアスリートに聞く—運動・スポーツと内科的トラブルの関わり

著者: 田中祐貴 ,   早狩実紀

ページ範囲:P.1050 - P.1057

運動・スポーツと医学の関連というとまず整形外科を思い浮かべる方がほとんどですが,近年,内科との関わりにも注目が集まっています.
本日は,私が主治医としてサポートしている,女子3000 m障害の日本記録保持者であり,47歳でなお現役を続けられている陸上界のレジェンド,早狩実紀選手をお招きし,早狩選手がこれまでの競技生活のなかで経験してこられた内科的な問題などについてお話を伺いたいと思います.(田中)

運動・スポーツ×内科 総論

プライマリ・ケア医こそ「運動・スポーツ×内科」に取り組もう

著者: 松田諭

ページ範囲:P.1058 - P.1061

Point
◎スポーツ活動は多岐にわたる健康問題が生じるため,プライマリ・ケア医がスポーツ医学に関わる意義は非常に高い.
◎スポーツ医学の領域は,個別の対応として整形外科領域のみならず内科疾患,月経・妊娠,脳震盪や眼科・歯科などの幅広い領域への対応が含まれる.
◎また健康増進のためのスポーツという視点でみると,慢性疾患への運動処方や成長・発達,妊娠・出産,予防などが含まれる.
◎さらにコミュニティにおけるスポーツ医学に視点を当てると,学校医活動や予防接種,大会救護や安全管理など幅広い活動がある.

運動・スポーツのライフステージ別効果

著者: 國友耕太郎

ページ範囲:P.1062 - P.1065

Point
◎座りがちな生活による運動不足が原因で,心疾患や糖尿病,認知症,一部のがんを発症しやすい.
◎幼児期から青年期は,発育発達を考慮する必要がある.
◎座位を頻繁に中断して,立ち上がって動くことは重要である.

競技アスリートを対象としたスポーツ内科

著者: 田中祐貴

ページ範囲:P.1066 - P.1068

Point
◎スポーツ内科は,運動・スポーツにより生じる内科的問題の予防や治療を行う医学分野である.
◎「スポーツ医学」=「スポーツ整形外科」ではなく,内科からもアスリートやスポーツ医学に貢献できる.
◎「トレーニング」「食事(栄養)」「休養(睡眠)」「メンタル」の4要素を意識して診療を行う.
◎スポーツ内科の啓発を推進し,アスリートが容易にアクセスできるよう環境整備が必要である.

外来で遭遇する運動愛好家からの声

息切れがします

著者: 田中祐貴

ページ範囲:P.1070 - P.1073

Point
◎息切れを訴えるアスリート・運動愛好家では,貧血・呼吸器系・循環器系の異常を考える.
◎運動・スポーツが原因で生じる貧血を「スポーツ貧血」と呼び,持久系競技に多い.
◎息切れなどの症状が目立たず,「パフォーマンスの低下」のみ認めることもある.
◎主な原因は「鉄欠乏」であるが,「エネルギー不足」や「溶血」も関与することがある.
◎アスリートは酸素需要が多いため,一般人より少し高いヘモグロビン値が必要である.

走ると咳が出ます

著者: 金子正博

ページ範囲:P.1074 - P.1078

Point
◎運動で誘発される咳嗽では,運動誘発性気管支収縮(EIB)の可能性を考える.
◎EIBはコントロール不十分あるいは未診断/未治療の喘息症例で多くみられる.
◎EIBは換気量増加により気道表面が高浸透圧となることで誘発される.
◎EIBの予防として,十分なフォーミングアップとともに,運動前の短時間作用性β2刺激薬(SABA)吸入が推奨されている.
◎治療に禁止物質を用いる場合は治療使用特例(TUE)の申請が必要となるので,β2刺激薬の投与には注意が必要である.

疲れが抜けません

著者: 本庄友行

ページ範囲:P.1079 - P.1081

Point
◎「疲れが抜けない」アスリートをみたらオーバートレーニング症候群を鑑別に挙げる.
◎オーバートレーニング症候群の診断には,他疾患の除外が必要である.
◎治療は完全休養であり,競技復帰には長期的なプランニングが必要である.

月経がこなくなりました

著者: 楳村史織

ページ範囲:P.1082 - P.1085

Point
◎運動性無月経は過度の運動負荷による身体的・精神的ストレスが原因で生じる.
◎長期の低エストロゲンは骨粗鬆症,疲労骨折のリスクのほか心血管や妊孕性など全身に影響する.
◎運動性無月経の主因に利用可能エネルギー不足(LEA)があり,その是正が治療上最重要である.
◎低エストロゲン状態の長期化を防ぐためホルモン補充治療も選択される.
◎診断時には運動性以外の原因による無月経の鑑別も必ず行う.

胸が苦しくなります

著者: 本庄友行

ページ範囲:P.1086 - P.1089

Point
◎若年アスリートの心原性胸痛は稀であるが,重篤な疾患が隠れているかもしれない.
◎中高年アスリートでは,通常通りさまざまな疾患を鑑別する必要がある.
◎疾患によっては,競技継続の可否を評価する必要がある.

お腹が痛くなります

著者: 烏山司

ページ範囲:P.1090 - P.1092

Point
◎スポーツシーンにおける特徴的な消化器症状,またその対策,改善法について理解することが大切である.
◎「緊張による腹痛」は,過敏性腸症候群が大きく関与している.
◎非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの鎮痛薬の多用は腹痛の原因になる可能性がある.

めまい,立ちくらみがあります

著者: 辻本昌史

ページ範囲:P.1093 - P.1095

Point
◎めまい,立ちくらみの原因は多岐にわたる.いつ,どのようなめまいがあるのかを理解することが大切である.
◎運動後のめまいは,運動前後のアプローチおよびトレーニングプログラムの見直しをすることが重要である.
◎頭位により発症するめまい,頭部外傷後のめまいについては医療機関にて評価すべきである.
◎競技会前,トレーニング期のめまいは,交感神経の過剰興奮が原因となっていることがある.個々のリラックス方法を持っておくことは大切である.

頭がぼーっとします

著者: 新美太祐

ページ範囲:P.1096 - P.1099

Point
◎暑熱環境における体調不良では,常に熱中症を念頭に置く.
◎気温だけでなく,暑さ指数(WBGT)による運動指針を参考に熱中症予防を行う.
◎早期認識,早期治療を行うことで重症化を防ぎ,熱中症による死亡を回避する.
◎熱中症予防・治療には,経口補水液のように水分に加えて電解質も適切に補給することが重要である.

血尿が出ます

著者: 國友耕太郎

ページ範囲:P.1100 - P.1102

Point
◎運動による着色尿では,血尿,ヘモグロビン尿,ミオグロビン尿を鑑別する.
◎臓器損傷による血尿が疑われれば,迅速に紹介する.
◎ヘモグロビン尿は,足底部での機械的な衝撃による赤血球破砕(溶血)で生じる.
◎ミオグロビン尿は,激しい運動,慣れない運動,長時間の運動,高温多湿などが発症促進因子である.

筋肉痛がひどい/筋肉がつりやすいです

著者: 平塩秀磨

ページ範囲:P.1103 - P.1107

Point
◎筋肉痛の予防,治療に確立したものはない.
◎運動誘発性横紋筋融解症の筋痛症状には個人差があるが,暗赤色の着色尿は比較的高頻度で特異的な所見である.
◎運動誘発性横紋筋融解症後の運動再開は少なくとも4週間の安静の後に段階的に行う.
◎運動誘発性筋痙攣の予防に確立したものはないが,十分な飲水や暑熱順化,芍薬甘草湯内服などにより対応する.

風邪をひきやすいです

著者: 清水和弘

ページ範囲:P.1108 - P.1111

Point
◎風邪をひきおこす病原体の侵入を防ぐ粘膜免疫(バリア機能)を高めることが重要である.
◎病原体を体に入れないことも重要であり,できるだけ粘膜を触らないことや,こまめな手洗いが重要である.
◎運動は高強度になると免疫低下を招くが,中等度では継続すると免疫機能を高める効果がある.
◎日常の歩行量を少しでも増やすことで免疫機能の亢進につながる.

基礎疾患をもつ運動愛好家からの声

心臓病と言われているのですがどんな運動ならしてもよいですか?

著者: 紺野久美子

ページ範囲:P.1112 - P.1115

Point
◎心疾患患者が運動を行う際には,循環器医師による運動処方の下に行われる.
◎運動の安全性を確保するため,定期的な心肺運動負荷試験(CPX)を実施し,継時的評価の下に行われる.
◎心疾患患者に対する運動療法には,運動耐容能の改善やQOL(quality of life:生活の質),ADL(activities of daily living:日常生活動作)の改善,死亡率の低下や長期予後改善の効果がある.

糖尿病の改善にどんな運動をしたら良いですか?—糖尿病に対する運動療法の推奨や逆に禁忌となる症例について

著者: 原知之

ページ範囲:P.1116 - P.1118

Point
◎座位時間を減らすことから始めよう。
◎具体的な運動療法の適応基準や禁忌となる可能性がある患者背景を理解しておく.
◎有酸素運動とレジスタンス運動の具体的な方法や目標を整理しておく.
◎実際の臨床現場で運動療法を勧めてみよう.

生活習慣病(高血圧,脂質異常症,慢性腎臓病,COPDなど)の改善にどんな運動をしたら良いですか?

著者: 松田諭

ページ範囲:P.1119 - P.1123

Point
◎健康づくりのための運動について運動の内容を決定することを「運動処方」と呼び,頻度(frequency),強度(intensity),時間(time),種類(type)の形で作成する.
◎運動を開始する一部の患者では運動負荷テストが推奨されるが,多くの場合必要ではない.
◎高血圧や脂質異常症等の患者では,一般的に有酸素運動は,週に150分の中強度の運動,もしくは週に75分の高強度の運動が推奨される.
◎慢性腎臓病患者では近年,運動制限にエビデンスはなく運動制限をしないことが一般的となっている.

減量のために運動を始めたいのですが注意点はありますか?

著者: 上村公介

ページ範囲:P.1124 - P.1127

Point
◎メディカルチェックの最大の目的は運動への安全な参加の確保である.
◎運動中の突然死の原因は中高年では急性冠症候群,若年者では肥大型心筋症が最も多い.
◎自己の健康状態の把握のためのセルフチェックもメディカルチェックの一部である.

食物アレルギーがあるのですが運動しても大丈夫ですか?

著者: 相原雄幸

ページ範囲:P.1128 - P.1132

Point
◎食物アレルギー患者の運動制限はほとんど不要である.
◎食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)は原因食物を同定することが重要である.
◎FDEIAでは原因食物を摂取した場合は最低2時間の運動制限が必要である.

運動愛好家にみられる健診異常

健康診断で血液検査異常を指摘され受診しました—ALT,AST,LD,Cre,BUNなど

著者: 原知之

ページ範囲:P.1133 - P.1135

Point
◎ALT,AST,LDはどのような指標なのか理解しよう.
◎細胞傷害の考え方を整理しよう.
◎アスリートに潜む「溶血」を疑う血液検査結果について知っておこう.
◎Cre,BUNはどのような指標なのか理解しよう.
◎BUN/Cre比から原疾患が潜む可能性や有効循環血液量を考えよう.

健康診断で心電図異常を指摘され受診しました

著者: 秋田朋己

ページ範囲:P.1136 - P.1139

Point
◎スポーツ選手(運動愛好家も含む)にみられやすい心電図変化のなかで,循環器内科へ紹介すべき所見を把握する.
◎運動により突然死のリスクが高くなる不整脈を把握する.

プライマリ・ケア医が知っておきたいスポーツ内科の知識

プライマリ・ケア医が知っておきたい運動愛好家の皮膚トラブル

著者: 大森俊

ページ範囲:P.1140 - P.1143

Point
◎スポーツに関連する皮膚トラブルは競技特異的な物理的刺激や過酷な競技環境が影響する.
◎競技中に受傷した出血性皮膚外傷は迅速かつ適切な処置が求められる.
◎接触による皮膚感染症の蔓延防止には適切な診断,治療,予防対策が必要である.
◎紫外線による急性障害および慢性障害を理解し,サンスクリーン剤をうまく使いこなす必要がある.

プライマリ・ケア医が知っておきたい運動愛好家の耳鼻科トラブル

著者: 大谷真喜子 ,   保富宗城

ページ範囲:P.1144 - P.1147

Point
◎18歳以下の眼窩壁骨折,甲状軟骨骨折,外リンパ瘻は緊急性が高い.
◎運動誘発性喉頭閉塞症は運動誘発性喘息と誤診されやすい.

プライマリ・ケア医が知っておきたい月経周期とパフォーマンスの関係

著者: 伊藤宏一

ページ範囲:P.1148 - P.1150

Point
◎月経周期による女性ホルモンの濃度変化は,パフォーマンスに影響を及ぼす.
◎月経周期による体重の変化,女性ホルモン服用による体重の変化が競技に影響を及ぼす可能性がある.
◎服薬を行う場合,最高のパフォーマンスを引き出すには少なくとも2〜3カ月前から服用する必要がある.

プライマリ・ケア医が知っておきたいアスリートのうつ病と運動療法

著者: 中島和樹 ,   山口達也 ,   三村將

ページ範囲:P.1152 - P.1155

Point
◎トップアスリートも一般の人々と同様にうつ病を発症するリスクがある.
◎診療場面ではアスリート特有のリスクファクターの有無を確認しながら診療する.
◎診断や治療方針の選択が難しい際は精神科へ依頼・相談するのが望ましい.
◎うつ病の軽症例における運動療法はガイドラインでも推奨されている.
◎認知症患者に対する運動療法では認知機能改善と脳実質の容積増加が認められる報告もある.

プライマリ・ケア医が知っておきたいスポーツ栄養の基礎知識

著者: 長島未央子

ページ範囲:P.1156 - P.1158

Point
◎アスリートの貧血,月経異常,疲労骨折などの諸問題の根源はRED-S(相対的なエネルギー不足)である.
◎RED-Sの改善には栄養指導が必須であり,できるだけ早期発見・早期対処が必要である.
◎アスリートを中心として,さまざまな専門家が連携し,医療の地域格差をなくしていくことが選手育成・競技力向上の底上げとなる.

プライマリ・ケア医が知っておきたい障害者スポーツと生活習慣病

著者: 山本満 ,   藤本幹雄

ページ範囲:P.1160 - P.1162

Point
◎障害者のスポーツ実施率は19.2%である.
◎近年の脊髄損傷者の死因は,肺炎,悪性腫瘍,高血圧症,糖尿病,心疾患である.
◎パラアスリートでは,BMI(body mass index)25以上の肥満者が多い反面,BMIが18.5未満のやせた選手も多い.
◎エリート選手では,BMI低値や高クレアチンキナーゼ(CK)血症,貧血などのオーバートレーニングに起因する異常結果も散見され,厳密な運動指導と栄養指導が必要である.

プライマリ・ケア医が知っておきたい運動愛好家の口腔内環境

著者: 田邊元 ,   上野俊明

ページ範囲:P.1164 - P.1167

Point
◎運動実施に伴う口渇や口呼吸が長く続けば,う蝕や歯肉炎といった歯科疾患リスクが上昇する.
◎激しい運動後,唾液免疫グロブリンs-IgAは有意に減少するため,口腔内環境は易感染性になる.
◎う蝕予防には2-bottle strategyが推奨される.スポーツドリンクと水(お茶)の両方を用意し,練習内容や強度,気象条件などに応じて飲み分けるよう指導する.
◎酸蝕歯を発見した際は,スポーツドリンクの過飲と決めつけず,摂食障害の可能性も疑って,吐きダコや唾液腺肥大といった特徴的所見を診査する.

ドーピング・ゼロを目指すために

著者: 吉田哲朗

ページ範囲:P.1168 - P.1170

Point
◎スポーツファーマシストはアンチ・ドーピングの専門家であり,ドーピングからアスリートを守る存在である.
◎アンチ・ドーピングの知識を知る必要があるのは「スポーツに関わる以上,他人事ではない」からである.
◎アンチ・ドーピングの知識は1年に1回更新される.いわば「生もの」であり,常に新しい情報に触れておく必要がある.
◎サプリメントと薬の調査ツールがあることを知っていただき,自分にもアンチ・ドーピング活動ができることを知ってほしい.

プライマリ・ケア医が知っておきたいスポーツ整形外科との連携

著者: 立原久義

ページ範囲:P.1172 - P.1175

Point
◎スポーツ整形外科医は,理学療法士やトレーナーと連携した運動療法を治療の主軸としている.
◎スポーツ整形外科を受診し,リハビリを開始することになった選手の約14%がスポーツ内科的疾患を有していた.

特集の理解を深めるための28題

問題/解答

ページ範囲:P.1176 - P.1180

連載 見て,読んで,実践! 神経ビジュアル診察・26

顔が曲がる! 病変はどこ?—顔面神経麻痺

著者: 難波雄亮

ページ範囲:P.1041 - P.1044

 顔面に麻痺が起きると,まず目に飛び込んでくる部位でもあり,とても症状が目立ちます.その顔面の筋肉を支配するのが「顔面神経」です.顔の表情は複雑な表現をするために,筋肉の動きも多彩です.額の皺,眼の周りの動き,鼻周囲の動き,口周囲の動き,頸部の筋肉の動き,と顔面神経麻痺には診るポイントが満載です.
 顔面神経麻痺には大きく分けて2つの機序があります.末梢性顔面神経麻痺,中枢性顔面神経麻痺です.ではこの2つをどのように区別すればよいのでしょうか? 今回は顔面神経の所見の取り方を勉強しましょう!
 
*本論文中、関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年5月31日まで公開)。

本気で書く! 入院時サマリー! 患者情報,丸見え化プロジェクト・1【新連載】

なぜ“本気の”入院時サマリーなのか

著者: 徳田嘉仁

ページ範囲:P.1182 - P.1186

 超高齢社会を迎え,多くの患者が複雑な病態と並存疾患,困難な社会歴,その他多くのプロブレムをもって入院してくるようになった.“担当入院患者は90歳,並存疾患5つ以上,独居で全盲,キーパーソンは遠方でフルCPR(心肺蘇生)を希望中”というケースでも,皆それほど驚くことなく「うんうん,似たような患者さん,いるいる(orいたいた)……」と思うだろう.
 一方,病院のベッドは数に限りがある.患者がどれほど多くのプロブレムを抱えていても,迅速に情報を整理し,入院契機となった病気を治療して,その他多くの問題も並行してさくさく解決し,可能な限り最短時間で転院・退院といったdispositionを決めていかなくてはならない.

ケースレポートを書こう! acceptされるために必要なこと・3

文献はどう探す?

著者: 隈部綾子 ,   見坂恒明

ページ範囲:P.1187 - P.1194

 ケースレポートの作成にあたって,医中誌WebやPubMedなどを用いた文献検索は必須である.また,文献検索の結果そのものが,その症例がケースレポートに値するかどうかの重要な判断材料にもなる.報告数が少なければ“稀な症例”であるし,疾患自体はcommonでも,新規な症状・所見・経過だとわかれば,そこに着眼してケースレポートを作成できる.したがって,感覚的に「この症例,珍しいのでは?」と思ったら,まずは文献を検索してそれを客観的に確かめなければならない.
 文献検索のツールとしては,書籍,雑誌,教科書,原著論文,ガイドライン,Cochrane libraryなどがあるが,商業書籍や雑誌,さらにGoogle検索で見つかるような出典・引用文献が明記されていないものについては,信頼性がないので注意が必要である.また,前述の医中誌WebやPubMedで検索しても文献がヒットしなかった場合,稀なのではなく,単に教科書レベルの当たり前のことで,論文化されていないだけという可能性もある.そのため,まずは教科書レベルかどうかの確認後に文献検索を行うのが,効率的かつ漏れのない調べ方である.

物忘れ外来から学ぶ現場のコツ 認知症患者の診かた・25

進行期の認知症対応はどうしたら良いですか?

著者: 重松一生

ページ範囲:P.1195 - P.1199

ポイント
キーワードは①介護者支援,②持続可能性,③幸せこそが目標,です.

フレーズにピンときたら,このパターン! 鑑別診断に使えるカード・6

「polyclonal ganmmopathy」「蛋白アルブミン逆解離」「M蛋白関連疾患」

著者: 長野広之

ページ範囲:P.1200 - P.1207

総論
 polyclonal ganmmopathyは多クローン性のγグロブリンを認める状態である.血清総蛋白(total protein:TP)の正常値は6.5〜8.0g/dLで約65%がアルブミン(Albumin:Alb),約35%がグロブリン,約20%がγグロブリンである.正常ではTP 6.5g/dL,Alb 4.3g/dL,γグロブリンは1.3〜1.6g/dL程度となる.例えばTP 7.6g/dL,Alb 2.2g/dLのときは蛋白とアルブミンが乖離しており,γグロブリンが上昇していることが予想される.次に判断するのは上昇しているγグロブリンが多クローン性(polyclonal)か単クローン性(monoclonal)かである.
 検査としては蛋白分画/血清蛋白電気泳動(serum protein electrophoresis:SPEP),免疫電気泳動法(immunoelectrophoresis:IEP),免疫固定法(immunofixation electrophoresis:IFE),血清free light chainなどがある(図1).SPEPよりIEP,IFEのほうが微量なM蛋白を検出できるとされており(IEPのM蛋白の検出感度:100mg/dL,IFEの検出感度:5mg/dL),例えば多発性骨髄腫のM蛋白の感度はSPEPのみの場合82%,SPEP+血清IFEの場合93%.SPEP+血清IFE+尿IFEの場合感度97%と言われている1).血清free light chainは最も微量なM蛋白を検出可能(κ 0.15mg/dL,λ 0.3mg/L)でκ/λ比(正常比0.26〜1.65)でcheckする.筆者は多発性骨髄腫などを強く疑うときはSPEPに加えて血清/尿のIEPやIFEもするが,あまり疑わないときはSPEPのみ(早く結果が出て安い)にしている.

目でみるトレーニング

問題949・950・951

著者: 岩崎靖 ,   黒田浩一 ,   大浦誠

ページ範囲:P.1208 - P.1213

書評

—大村健二,濵田康弘 編—新・栄養塾

著者: 佐々木雅也

ページ範囲:P.1181 - P.1181

 もう10年以上前の話である.日本臨床栄養代謝学会(旧:日本静脈経腸栄養学会)のNST専門療法士にかかわる委員会に初めて参加した際に,外科系の先生方の熱心な議論に圧倒された記憶がある.その議論の中心におられた先生方のお一人が,大村健二先生であった.小生は,内科系の医師が少ないとのことで委員に加えていただいたのだが,先輩の外科の先生方の前で,なかなか声があげられなかったのを覚えている.中でも大村先生は,専門とされる消化器外科学はもちろんのこと,生化学の知識が豊富であることに驚かされた.臨床医としての多忙な日々の合間を縫って,生化学の教科書を精読されているように感じられた.
 その後,その委員会の委員長を小生が引き継ぐことになった.その際,新しく委員に加わっていただいたのが濵田康弘先生であった.私と同じ内科系であったが専門領域が異なり,濵田先生は腎臓病学を専門とされておられた.濵田先生も生化学や生理学の知識が豊富であり,また当時から仕事の正確さが際立っておられた印象がある.

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基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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